爆発の前に両耳を塞いたが、爆音はKutoのところまで伝わってきた。

保安官補佐が拘束されているというホテル、Bison Steveへは戦前ローラーコースターの足場だったところを伝って侵入できた。まさか二階から襲撃者が来ると思っていなかったのか、二階の警戒は緩かった。無防備な囚人たちに向かって、KutoはGood SpringのPete老人から貰ったダイナマイトで対処した。

爆発によって巻き上げられた煙や埃が晴れる。二階をうろついていた囚人たちは足や胴を吹き飛ばされてばらばらになっていた。まだ動くものはいるだろうか。少し警戒しながら進む。
軽快なビープ音と共に、Kutoの頭上からレーザーが発射され、倒れている男の1人の頭を撃ち抜いた。彼は落ちていたサブマシンガンに手をかけようとしていた。どうやらまだ息があったようだ。危なかった。
「ありがとう、ED-E
Kutoがレーザーガンを搭載したアイボットに礼を言うと、そのロボットは電子音とともに小さく身体を揺すった。まるで喜んでいるようだ。

ED-EはMojave Expressのカウンターに放置されていたアイボットをKutoが修理したものだった。Mojave Express地方支部の社員であるJohnson NashにKutoが頼んだこととは、彼のことだったのだ。カウンターに置かれたアイボットを連れて行っても良いか、と。Johnsonは修理できるのなら持っていても良い、と言った。
もちろんKutoには機械工学の知識などない。ただ物は試しで、自分の荷の中に入っているガラクタパーツとアイボットの壊れた部位のパーツを適当に取り替えてみたら稼動してくれたのだった。正常に起動しているのか、どういう行動原理で動いているのかは謎で、実際Johnson Nashに成果を見せに行ったときもJohnsonに向かって一度発砲したが、今は一応Kutoの言うことを聞いてくれているようである。どうやら口頭での自然言語を理解しているようだ。敵性対象も理解しているようで、Kutoに敵意を持っている人間をサーチし、Kutoに報せた上で自動で攻撃してくれる。誤作動さえなければなかなかの高性能の機械といえよう。

二階はあらかた探し終えたが、Beagleという名の保安官はいなかった。一階にいるのか、まさか囚人たちと一緒にダイナマイトで吹っ飛ばしてしまったか。前者であることを祈りつつ、騒ぎを聞きつけて一階から脱獄者たちがやって来る前に一階へと降りる。一階の手近なドアを引いてみる。鍵が掛かっていたがヘアピンで簡単に錠開けできた。

鍵のかかったドアを進んでいくと、調理場のような場所が見えた。そこに後ろ手で縛られている男の姿があった。
「おぉ、お嬢さん」とその男もKutoに気付いたのか小声で言った。近くにではないが、見張りがいるらしい。「こんにちは
「こんにちは」とKutoも男に近づきながら片手を挙げる。「保安官補佐のBeagleさんですよね?」
Kutoは調理場らしき場所にゆっくりと侵入する。調理場には誰もいなかったが、隣室である広場のような場所にはPowder Gungersの姿が数人見えた。まだ気付かれていないようだが、警戒は怠れない。
「その通り。こんな状況できみのような美しいお嬢さんが助けに来てくれるとは嬉しいね」と男は緊張感のない表情で言った。「縛られた指の感覚がもうなくなってしまっていてね。ぼくはちょっとした窮地にあるんだ。知っていると思うけど。もしきみがこの手を自由にしてくれたのならば、ぼくは最大限の感謝をきみに示そう」

「その感謝、先払いしてもらっても良いですか? この町に来たっていう縞のスーツの男とGreat Khansについて聞きたいんですけれど……」
「うーん……」Beagleは笑顔で首を小さく振る。「美しいお嬢さん。確かにぼくはきみの知りたい情報を持っている。しかしこのままでは伝えられない。もしきみがぼくを解放してくれるというのならば、ぼくは嬉しいし、きみにも情報を与えられて2人とも幸せになれる、最高の選択だと思うのだがね」
「先に喋っちゃうのが楽だと思うんですが……。そう長い話でもないでしょう?」Kutoは最大限の笑顔を作る。「このままここで過ごすのは厭でしょう?」
Beagleは大仰な調子で首を振った。身体を拘束されているというのに動作がいちいち大きい。
「オーケィ。どうやらきみはぼくを信用していないようだ。では先にぼくの知りうることから伝えよう」とBeagleはあくまで緊張感のない様子で言った。「彼らはNovacに行くと話をしていたよ」
「Novac……。ここから東にある町ですね」Kutoは頭の中で地図を描く。
「そう。とはいえ間には砂漠もあるし、野生の動物も多いからね。Novacを目指すのであればNiptonを通っていくのが良いだろう。そちらから行けば舗装された道路もあるし、商隊の周回ルートでもあるから安全だ。ぼくはここでPrimmを守るという使命がある以上、きみを守ってあげることはできないからね」
「PrimmからNiptonを通ってNovacですね……。そうですね。確かにそれが良さそうです」
「では、改めて縄を解いて欲しいんだがね」
「はいはい、もちろんですよ」KutoはBeagleの後ろに回りこんで彼の拘束されている手足を見る。縄でぐるぐるに縛られている。端は固結びになっており、Kutoの力では外れない。「うーん……、かなりきっちり縛られてますねぇ………」
「そうだろう? これがきつくてきつくて……。彼らはサディストの集団だね。SMプレイでNCRに捕まっていたのかな」
「ちょっと難しいですねぇ……。その辺に包丁とかないですか?」
「きみはナイフとか持っていないのかな?」
「一応拳銃はありますけど、腕に穴が開くのは厭ですよね?」 

会話を遮ってED-Eが警戒を示すビープ音を鳴らした。囚人たちに気付かれたと思ったが、距離があるせいか音は聞かれなかったようだ。
「どうしたの、ED-E?」
Kutoは尋ねてみたが、返答はED-Eからではなく、ホテルの入口方面からの銃声で示された。悲鳴や怒号も同時に聞こえ、広間の脱獄者だちが銃を取って警戒する様子を見せる。
何かしら事態に発展があったようだ。NCRが踏み込んできたのだろうか? なんにせよ、このままでは危険だ。囚人たちが人質のBeagleの様子を確認するかもしれない。

「すみません、危険そうなのでわたしはここで」とKutoは調理場を出て行くことにした。
「は?」とBeagleは目を丸くする。「いや、ちょっとちょっと……」
「ごめんなさい。次に来る人に助けてもらってください」Kutoは手を振る。「情報、ありがとうございました」

■ルート前述の通り、同じクエストを受注できるのは(DLCなど特例を除くと)そのクエストを別々の解法で達成できる場合のみである。
今回Kutoは話術を駆使してBeagleから話を聞き出す方法、SiはBeagleを救出し、さらに彼の手助けをして話を聞き出すという方法を取っている。
KutoのルートではSpeechの25および40のチャレンジを達成する必要があり、かつBeagleを助けるという動作が入らないためMy kind of townのクエストを達成する事ができず、報酬が受け取れない。代わりにSiルートで必要なPrimmの手助けの行動をスキップする事ができる。
ちなみにBeagleを助けない場合、エンディングを迎えても彼は腕を縛られたままである。

Beagleの批難の声を背に受けつつ通路を戻る。先ほどピッキングしたドアから様子を覗くと、囚人たちと侵入者が銃撃戦を繰り広げていた。侵入者は、どうやら1人のようだ。
Kuto!」その侵入者が叫んだ。「無事か!? どこにいる!?
侵入者はGood Springで出会った牧師だった。Kutoを探しているようだ。助けに来てくれたのか、それとも物資を持ったままとんずらしたKutoを捕まえに来たのか。
どちらにしろいじらしいな、とKutoは思った。わざわざこんなところにまで危険を冒してやって来るだなんて。笑みが零れてしまう。
Kutoはホテルを出て、Niptonへと向かうことにした。


「Kuto! 無事か!? どこにいる!?」

Siの叫ぶ声を聞いたとき、Sumikaは胸が苦しくなった。
Vikki and VanceカジノでJohnson老人からKutoが保安官補佐を助けるためにBison Steveホテルに侵入したという話を聞くや否や、SiはSumikaの静止をも振り切ってホテルに突入した。時間のかかる2階からのルートは選択せず、二挺拳銃を携えて正面から、堂々と。

囚人たちではSiの相手にはならなかった。彼の前に出るものは一人残らず頭を砕かれて死んだ
暗いホテルの中、血と肉と火薬の臭いがする。

彼によってこれだけの人間が死んだ。Kutoを助けるために彼はこれだけの人間を殺した。そう、助けるために。

Siは決してKutoを捕まえ、Good Springでの償いをさせようとしているわけではないのだ。彼はKutoを助けようとしているのだ。


どうして?


あの女は酷いことをしたのに。


Siもあの女のせいで怪我をしたのに。


それなのに、どうして?


ぱっと目の前の一点が明るくなる。その点は轟音を立てながら大きくなって近づいてきた。火炎放射器だ。NCRCFを脱獄した囚人たちは、こんなものまで持ち出していたというのか。

Siは飛んでくる炎を躱したが、コートの端に火がついた。ポケットの中のSumikaを引っ張りだし、Siはすぐさまコートを脱いだ。服に燃え移った炎を転がって消しながら、肩越しに火炎放射器のタンクを狙い撃つ。タンクは爆発し、それを背負っていた男は胴体を3つに千切られて死んだ。

身体が痛い。Siの掌は固く、大きく、Sumikaの身体をすっぽりと包み込んでしまうほどだった。包む力が強すぎて身体が痛かったが、Sumikaはそれを訴えられないでいた。


Siは無言で立ち上がり、投げ出したコートを拾い上げる。もう火は消えていたが、コートはぼろぼろになってしまっていた。

「それくらいな……、繕えるよ」

Sumikaはおそるおそる言った。

「いや、いい」

Siはコートを投げ捨てて進んだ。着古しのコートだ。何度かSumikaが繕ったり、布を当てたりしたコート。ごみのように捨てられたコート。


死体を踏み越えてSiは進む。握られっぱなしの身体が痛い。Siの手は熱い。特に露出している肩と背中から、SumikaはSiの体温を感じた。

そこはダンスホールのような場所だった。天井は高く、広いスペースの周囲に椅子などが並んでいる。もっとも脱走囚人たちがここで寝泊まりしていたせいか、辺りには布団やビール瓶、焼きかけのBrahmineが丸ごと一頭(あの火炎放射器はこの肉を焼くために使用されていたものかもしれない)あったりなどして、元の華やかさは微塵も感じられなかったが。


「やあ……、そこのきみ、きみ
不意に聞こえてきた男の声に対し、Siは瞬時に銃口を向けた。
「ぼくは敵ではないよ。そう簡単に人に銃を向けないでくれ……」声を発したのはホールに連なった厨房の奥にいた男だった。彼は後ろ手の状態で膝をついて座り込んでいる。どうやら両手両足を拘束されているらしい。「今度こそ、窮地を助けるヒーローが現れてくれたんだろうね?」
「今度こそ……?」
Siは厨房に入り、Sumikaを開放して肩に乗せる。密着していた肌が急になくなり、なんとなく寒く感じた。羽が汗で濡れてしまったため飛び難いため、Siの肩にしっかりと掴まる。
「もしかして、この人って………」
Sumikaの言いかけた言葉を引き継いでSiが言った。「あんたがBeagleか?」
「その通りだ……。さぁ、ぼくを解放してくれたまえ」なぜかBeagleという保安官補佐は偉そうに言った。
褐色の肌の女を見なかったか?」SiはBeagleから距離を取ったまま言った。「銀髪の、褐色の肌の若い女だ」
「見たよ」Beagleは頷く。「だがこの縄が解かれるまで、ぼくは彼女について一切話す気はないよ。一切だ。決して、交渉には乗らない
なぜ彼はこんなにも頑なな態度なのだろうか。Siも同じ疑問を抱いたのか、舌打ちをしてからBeaglの背後に回った。サバイバルナイフで彼を締め付ける縄を切る。
「おぉ……、素晴らしい」縄を解かれたBeagleはゆっくりと立ち上がって言った。「これでようやく外に出られる。ああ、外の正常な空気はすぐそこだ。きみには感謝を」

Beagleの慇懃な態度にSiが腹を立てているのがSumikaにはわかった。彼の余裕ぶった喋り方が心配だ。傍から見ていてはらはらする。
ホテルを占拠していた囚人たちはもう一人残らず倒してしまったようだった。しかしKutoの姿はなかった。KutoについてSiがBeagleに尋ねると、彼は「まぁとにかく、外に出てからだ」と答えた。彼の言い方だと、Kutoが危険に晒されているという可能性はないように思われた。もっとも、あの女は殺しても死なないような性格だ。危険を察知したら真っ先に逃げ出すだろう。

「いやぁ、素晴らしい冒険だったなぁ」ホテルの外に出て、Beagleは言った。「囚人どもに一泡吹かせてやれた。いやぁ、素晴らしい。実を言うと自分で縄を破って逃げ出すこともできたんだがね、きみのような人間が来るのを待っていたのだよ。それに非常にスリリングだったし」
「いいから」眉間に青筋を立ててSiが言う。これは非常に怒っている。「話せ。褐色の肌の女について」
「彼女か……、ああ、そう、確かにぼくは彼女を見た。きみが現れる10分やそこら前だ。ちょうどすれ違いだったね」
「どこへ行った?」
「まぁまぁ……」
言いつつ、Beagleはホテルの通りを横切ってVikki and Vanceカジノに入る。Primmの人々はSiとBeagleを出迎えた。そして褒め称えた。主にSiを。しかし彼らの緊張は収まらないようであった。

「さて、見ての通りまだ問題があるんだ。われわれの町にはね」とBeagleが言う。「いつ次の悪漢どもがやってきて、ぼくを人質に取るなどという暴挙に出るかわからない。ぼくたちには保安官が必要だ……、おっと、きみはぼくが保安官じゃないかと思ったね? 残念、ぼくはあくまで補佐だ。保安官なしで保安官補佐の仕事は不可能だ。そう、このPrimmには新たな保安官が必要なのだ。そこでぼくは提案したい。悪漢どもが蔓延るホテルに堂々と突入してきた勇気、そして銃の腕前。それらを併せ持つきみこそがこの町の保安官に相応しい

Beagleが言い終える前にSiのホルスターに収まっていた.357リヴォルバーの銃口がBeagleの開かれた口の中に突き刺さっていた

おれは」Siが低い声で言う。「彼女の行方を話せと言っている
Beagleが倒れこむ。カジノ内に留まっていたPrimmの住人が慌ててBeagleとSiを引き離そうとする。
「待ってくれ……」倒れたBeagleが咳き込みながらも訴えかける。「これは取引だ、そう……、きみの知りたいという褐色の肌の美女に関する情報を提供しよう。その代わり、保安官となりうる人間を連れてきてくれ。きみのような勇気があり、それでいてこの町に腰を落ち着けてわれわれを守ってくれるような………」

Siが住人たちの身体を振り切り、Beagleの腹を蹴りつける。腹部を蹴られたBeagleは身体をくの字に折って吐瀉物を撒き散らした。

「女の行方を話せ」

Siはもう一度、今度はBeagleの頭を蹴りつけようと足を振る。Sumikaは見ていられずにBeagleの頭の前に飛び出した。
寸前でSiの足が止まる。そしてPrimmの住人が今度こそSiを取り押さえる。いきり立つSiと咽るBeagleがようやく引き離される。
すまん……、抑えて、抑えてくれ………」Siを押さえつけるJohnson老人が言う。
「だったらあいつにKutoの行方を喋らせろ」僅かに冷静になったのか、ホルスターに銃を収めたSiが言った。
「それは………」Johonsonが視線を下げ、それから言う。「Beagleはああ見えて、一度言ったことはなかなか変えない男だ。彼女の行方を知っているのは、おそらくあいつだけだろう。彼の言うことを聞くしか……」
「Powder Gangersだ……」ふらふらと立ち上がってBeagleが言う。「牢獄に捕らえられている……、Meyersという男が保安官の経験があるらしい……。彼ならきっと………」

そう言ってBeagleは再度倒れた。気絶したようだ。

Beagleは奥の部屋へと運ばれた。Siは住人ら数人と共に部屋を移した。
「すまんが……、われわれからも頼ませてくれんか」とJohnson老人がPrimm住人を代表してか言った。「保安官探しのことだ。この町はPowder Gangersの拠点にほど近い。危険なんだ。腕の立つ人間はいない。庇護を与えてくれる人間が欲しい
「おれは急いでいるんだ」Siは溜め息を吐く。
「それは……、知っている。だがどちらにせよBeagleは保安官が見つかるまで、あんたに彼女の情報を渡さないだろう。だったら……、わしらからも頼む」


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