「ふむ、怪我をしたか。どれ、見せてみなさい」
突如として現われてSiを助けた深緑色の肌の巨大な生物、Super MutantはSiの傍に跪き、Siの足に手を伸ばした。調子を確かめるかのように撫で擦る。
「骨は折れてはいないようだな……。捻っただけか。固定すれば歩けるようにはなるだろう」

しかしSiは.38口径拳銃を抜いて怪我の状態を見るSuper Mutantに銃口を突きつけた。
あんた、何者だ?」とSiは搾り出すような声で言った。
「Silas!」
Sumikaは彼を嗜めるために叫ぶ。
見ての通りのSuper Mutantだ。名はNeilという」とNeilと名乗ったSuper Mutantは肩を竦めた。「言っておくが、わたしは人間に対して友好的というわけではない。人間と同じように知性があり、理性がある。それだけだ。他のSuper Mutantも同様だ。もしきみがその撃てない銃で喧嘩を売っているのではあれば、買わせてもらうがね……。どうだろう?」
NeilはどうやらSiの拳銃が撃てない状態であることも知っているらしい。
すみません……、ほら、Siも謝って!」Sumikaは慌ててSiの頭を下げさせる。素手でSuper Mutantと争いになって勝てるはずがない。

Sumikaの言葉はNeilに伝わらなかったが、Siが頭を下げていちおう謝罪の姿勢を見せたためか、Neilは仰々しく頷いてくれた。
「とりあえず手当てをするぞ」
Neilは背中に剣とともに括り付けてあった荷物袋を下ろし、その中から治療箱を取り出して手当てを始めた。足のほうは彼に任せて良さそうだ。
SumikaのほうもSiの医療キットを使って足以外の手当てをすることにする。

しかし不思議だ、とSumikaは思う。Neilは明らかにSuper Mutantだ。Super Mutantといえば人間を襲うと相場が決まっている。にも関わらず彼は自分で言うように理性的だ。人間でもいろんな種類があるように、Super Mutantでも種類があるのだろうか?

「なぜこんな危険なところに来たんだ?」とNeilが治療をしながら訊いてくる。「今のBlack Mountainは危険すぎる。迷子かね?」
「さっきのCentaurか?」
Siは.38口径回転式拳銃を弾装の掃除をしながら言う。.44口径拳銃のほうはフレームごとごと換えないと撃てるようにはならないだろうが、.38口径のほうは弾装と弾丸だけ換えればとりあえずは撃てるようになるだろう。
「違う。あんなものは危険でも何でもない。わたしが言っているのはTabithaNightkinのことだ」
「Tabitha?」
Black Mountain Radioのパーソナリティだ。聞いたことはないか?」
「ラジオはあまり聞かんね」
「彼女は最高司令官を自称し、この場所を『Utobith州』と呼んでいる。Tabithaの理想郷、だな。彼女がこのBlack Mountainを支配し始めたのは2年前からだ。今ではここのSuper Mutantは皆彼女の言うことをきく。たとえば」とNeilは横目でSiを見やる。「人間を殺せ、だとかね」


Siは無言で.38口径拳銃の手入れを続けている。治療してもらっいる立場だというのにあまり礼儀が良くないな、とSumikaは思った。Neilに失礼だ。

「数年前まではBlack Mountainは平和な場所だった……」Neilは気にした様子もなく話を続ける。「当時はMarcusがリーダーだった……。彼にはアメリカ中からSuper Mutantを集めていて、わたしも彼に集められたSuper Mutantのひとりだった。だがほとんどのSuper Mutantは第二世代だった。Marcusは第二世代のやつらも暖かく受け入れたが……、あれが彼の失敗だった」
「第二世代って、なんだ」とSi。
Super Mutantとしての誕生の仕方が違うんだ。第二世代は粗暴で流されやすい性格だった……。それでもTabithaらNightkinたちがやってくるまではまだ良かった……。1週間だ」Neilの双眸が鋭くなる。「1週間で彼女は第二世代のほとんどを掌握した。第二世代のやつらはMarcusではなくTabithaのラジオを信じるようになった。Marcusは事の大きさを理解して、手がつけられなくなる前にラジオを破壊してBlack Moutainを去り、Jacobstownを作った」
「Jacobstown?」
「こことは正反対の場所だ。穏やかで良いところだよ。人間でも受け入れられる」
で、あんたはどうしてここにいるんだ?」とSiは続けて尋ねる。「Jacobstownってところは良いところなんだろう?」
「わたしは2ヶ月前にMarcusにBlack Mountainの状況を調べてくるように遣わされた。いってみれば、スパイだ。だが今のところはTabithaの弱点も、第二世代のJacobtownへの襲撃の兆しも見つけられないでいる……。ここにいることでBlack Mountainを訪れようとするSuper Mutantoを助けられることもあるが……、だが………」
Neilは何かを考えるように黙り込んだ。

彼はそれからは黙々と治療を続けた。
「これでどうだ」と治療を終えてNeilはSiを立たせた。
Siの片足首は添え木とテープでがちがちに固定されていた。少し歩きにくそうだが、全力疾走するとか片脚歩行をするとかではない限りは行動に支障はないだろう。
「まぁ」とSiは軽く足を動かして頷く。「すまん
「いや、構わん。人間と話すのは久しぶりだ……」Neilは目を細める。「さぁ、第二世代やNightkinに見つからないうちに早くここから離れると良い。銃は直ったんだろう?」
「ああ」
Siは.38口径回転式拳銃を掲げてみせる。Super Muntant相手ならともかく、Siの腕でCentaur相手ならこの1丁があれば十分だろう。
「さぁ」とNeilが急かす。
「Silas……、行こう」Sumikaも彼の服を引っ張って言う。Super Mutantの力は驚異的だ。
しかしSiは足を動かさずにホルスターに銃を収めて、「あんたは」と口を開く。
「なんだ?」
「さっき言ったよな。MarcusというやつがJacobstownに行く前にラジオを壊したって。それで状況は良くはならなかったのか?」
Neilは息を吐いて首を振った。

「そこまで良かったんだ」とNeilは言う。「だがその結果、彼が捕まえられた。Ghoulの機械工だ。今ではTabithaに奴隷のように使われている。名前はRaul……」

急にNeilが背中の大剣を構えた。反射的にSiもリヴォルバーを抜く。
「くそう」とNeilが悔しそうに呟く。「だから早く逃げるようにと言ったのに
「なんだ」とSi。
「さっきも言っただろう。わたしはスパイだ。第二世代のやつらがきみの後方200m程のところにいる。もうすぐ気付かれる。いや、もう気付いている。調査のためにわたしは表立ってきみを庇うことができない。人間を殺そうとしているように見せないといけない。いいか、よく聞いてくれ。できるだけ攻撃は当てないようにする。きみも当てないでくれ。接近してくる第二世代のSuper Mutantの数は3。うち2人はミニガンを持っている。機関銃だ。命中率は悪いだろうが気をつけろ。あとの1人は投擲型の火炎放射器を持っている。こっちのほうが危険だ。気をつけなさい。念のため言っておくがSuper Mutantの皮膚はそんな銃じゃ貫けない。逃げるんだ」
「わかってる」

Siが銃把握っていない左手を開く。ここに来い、という合図だ。Sumikaが彼の左手の上に乗ると、コートのポケットではなくシャツの狭い胸ポケットに押し込まれる。火炎放射器でコートに火がつく可能性があるから、こちらに入っていろということだろう。いつもよりは狭いが仕方がない。

背中のほうが五月蝿くなる。Neilの言う第二世代の連中に気付かれたらしい。

「縦に振るぞ!」

Neilは叫ぶや否や宣言どおり剣を縦に振り下ろした。Centaurを切り裂いた大剣はSiのすぐ横30cmほどのところにあった岩を砕いた。
Siは後ろに跳び、Neilの足元に向かって一発撃った。Neilは足元に弾が当たったことを確認してから威嚇するように吼えた。早く逃げろ、と言っているかのようだ。
機関銃の動作音がする。この距離なら弾はそう当たるものではないが、流れ弾が一発や二発当たらないとも限らない。SiはSuper Mutantたちに背を見せて、やってきた金網のほうへと逃げる。

しかし金網が急に燃え上がった。火炎放射機の火が燃え移ったのだ。通り抜けできない。
前には燃え盛る門、後ろにはNeilらSuper Mutantが4体。


前は駄目、後ろも駄目。

横は?

考える暇もなく機関銃の弾丸と火炎放射器の炎がSiとSumikaを包む。

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