2日目

改めてシャリズの商人から話を聞き、盗賊との戦いに承諾してしまったということに気付き驚いた。謝って、すぐに断らなければなるまい。
「これで人を雇ってください。少なくとも5人は必要ですね」

100ディナル貰ってしまった。嬉しい。セドは人集めのためにシャリズを出た。
シャリズの近隣にはハワハヤン・アスアディミットナンの村がある。新兵を集めるためには村で人を募集するのが基本だ。かつて所属していた隊商でも、普通は村で人を雇っていた。
もちろん村で雇った新兵など、戦ですぐに役に立つものではない。しかし戦い、訓練をしているうちに強くなるものだし、そもそも100ディナルでは街で傭兵を雇うことはできない。

馬がないため、徒歩でまずハワハに向かう。村に赴くと、幸いなことに村を出て人稼ぎしたいと考えている若者がふたりいた。ひとり10ディナルで彼らを雇い上げ、次のヤン・アスアディでは4人雇えた。これで6人、シャリズの商人の言っていた人数は越えた。
意気揚々とシャリズに戻ろうとした道中で、セドはこちらの約2倍、13人の小規模の盗賊団と遭遇した。

隊商が襲われてからというもの、長いこと一人旅をしていたセドにとって、盗賊に囲まれるという経験をしたのは一度や二度ではない。2倍の人数くらいは慣れっこだ。
今のところ数少ない武器の棒を振って盗賊を撃退したは良かったが、後ろを振り向くと倒した盗賊たちの中に、雇ったばかりの新兵たちが混ざっていた

戦いの結果、盗賊たちの荷を奪った代わりに、セドの隊の新兵のうち3人が殺された。6人雇い、3人死んだのだから、残りは3人、セドをあわせて4人
宿屋の個室にいるというシャリズの商人のところに向かい、新兵を雇ったものの途中で死んでしまった旨を説明する。
「4人では少なすぎますね……」とシャリズの商人は渋い顔をして言う。「そんな少ない人数では、もし敵の隠れ家を見つけても、逆に倒されてしまうかもしれません」
「4人も5人も同じなような気がします」セドは言ってみる。
「4人じゃフットサルのチームとして半端でしょう。やるなら5人いないと」
「なるほど」
納得してシャリズの商人と別れたセドだったが、何の話をしていたのだっただろうとふと考えてしまった。そのため、声をかけられてもすぐに気付かなかった。
「お嬢ちゃん」とセドを呼ぶその人物は、宿酒場のテーブル卓に座っているエプロンをした40代ほどの女性だった。「こっちいらっしゃい」

人攫いかと一瞬思ったが、そうではなかった。セドが卓に着くと、彼女は、話は聞かせてもらった、と言った。
「フットサルをやるんでしょう?」
「違います」セドは即答する。
「冗談」と女性は笑った。「傭兵を探しているんだって? だったらわたしを雇わない?

その女性は、カトリンと名乗った。
「30年、軍隊について商売をやってたの。でも旦那も子どもみんな死んじゃって、店仕舞いってわけ。でも商売をやめても、軍隊のことしかわたしは知らないから、だから、わたし、兵隊になりたいの
自衛のために、軍隊とともに寝起きするうちに戦い方や傷の縫合、軍の賄い方を学んだというカトリンは、余裕があるなら雇ってくれと言った。

卓にはもうひとり人間がいた。カトリンの知り合いというわけではなく、この宿酒場で出会ったのだという。たまたま近くの席に着いただけだというオールバックの30代くらいのその男は、自分はレザリットという名で、シャリズの元士官だと自己紹介した。
「おれはゲロイア伯爵の息子だったから、次男だったので遺産も貰えなかった。だからこのカルラディアに来て、とりあえずサラン朝に仕官してみたんだが……、あいつらは兵士の鍛え方というものを知らん。おれのやり方でやればすぐに一流の兵士が育つっていうのに、話を聞きもしやしない。兵士なんて甘やかしても育ちやせんのだから、鍛えて勝利を得るのが一流の指揮官だってことがわかっていないんだ」
酔った勢いか、レザリットはそう言った後に、セドがもし新兵だらけの軍隊にいるのならば、雇わないかと持ちかけてきた。
「フットサルは苦手だが、剣も兵士の教練も得意だ」
「フットサルはいいです」

性格的に不安があったものの、セドはふたりを隊の仲間として迎え入れた。不安が残るメンバーだが、とにかくこれで6人。
セドは再度シャリズの商人に会いに行き、人数が揃った旨を告げた。彼は既に盗賊たちの出没時間帯を突き止めており、夜になるまで待てと言った。
セドは宿の外に出て、馬商の元へと赴いた。そこにはセドが先日売らされた馬がいた。
「待っててよ」とセドは呟く。「絶対取り戻してあげるからね」



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