1257年08月11日
149日目
白の一角獣、かつて略奪を働いた村に舞い戻り、村の若衆に傭兵くずれから身を守る術を教えること

Name: Bill
Sex: Male
Level: 20
HP: 61
Attributes: STR18/AGI12/INT11/CHA12
Skills:
【STR】鋼の肉体4/強打4/弓術6
【AGI】武器熟練4/馬術4/馬上弓術4/略奪4
【INT】訓練1/戦略3/経路探索1/観測術1/荷物管理1
【CHA】捕虜管理2/統率力4/取引1
Proficiencis: 弓224/長柄武器203/片手武器106
Equipment: 壮麗なバシネット/ベージャー・ラメラー・アーマー/錆びた鉄の脛当て/革の手袋
Arms: パルチザン/黒檀の剛弓/大袋入りの黒檀の征矢/強化された重カイトシールド
Horse: 逞しく優秀な駿馬
Companion: マンスール/ボルチャ/バエシュトゥール/マテルド

マテルドさえ思い出すのに時間がかかったということは、傭兵隊、白の一角獣がそれだけ多くの村で略奪を働き、家々を焼き払ってきたということだ。

傭兵隊隊長、ウィリアムが治めることになった村、ハヌンの村人の態度はこれ以上のないほどに反抗的だった。
もちろん農民が貴族に向ける態度が良いはずがない。農民は、虐げられながら貴族に税を納めるしかないのだ。自分たちの上で胡坐をかいて生きている相手を見て、好意的な視線を向けられるはずがない。
だが彼らの視線の意味は、単に相手が税収を取り立てる代官だからという理由にしては、あまりにも厳しいように見えた。

「これは……」と村々を周っているときに呟いたのはマンスールである。
つられてマテルドも眺め回してみれば、なるほど酷い惨状である。焼かれて崩れた家があり、農具は錆付き、家畜は死んでいる。村人の服は粗末で、身体も痩せ果てていた。前任の代官の税の取立てがよほど酷かったのか、あるいは近くに盗賊団がいて、前任の代官はその襲撃から村を守りきれなかったのか。でなければ、ここはベージャー王国とカーギット・ハン国の国境にある村である。戦闘のいざこざで焼かれたのか。

ある意味では、3番目の可能性が正しかった。
その村は、以前にカーギット国と傭兵契約を結んでいた白の一角獣が訪れ、略奪を働いた上に焼き払った村だったからだ。

なるほど村長の態度も捻くれた態度になるというものである。普通ならば、這い蹲ってでも代官の機嫌を取ろうとするものであるが、この村長はそんな段階を既に飛び越えており、なるようになれ、と達観しているようだった。既にして地獄なのだから、もうこれ以上は悪くなりようがないだろう、目の前のほとんど盗賊と同じ傭兵隊が剣を抜いて、自分たちを切り裂いたとしても、それはそれで構わないという態度だ。

「気味が悪い」
それが傭兵隊隊長にして、現在のハヌンの代官である男、ウィリアムの言葉だった。どうにかならんのか、あいつらは生きているのかいないのかわからん態度で、気味が悪すぎる、と。

「自業自得だろう」
マテルドはそう言ってやった。
「にしても、あれはなんだ」はん、と傭兵隊長は鼻を鳴らした。ああ、厭だ厭だ、気味が悪いったらない。あいつら、いつ鎌で喉を掻き切っても良いって顔してやがる。あんな時化た顔、見てるだけで気分が悪くなる。彼はそう言って毒吐く。
「まぁ、自業自得ですな」マンスールも言う。「それでもどうにかしたいのであれば、どうにかするしかないですな」
「どうしろってんだ」
「適当に、村人が好感を持ってくれそうなことをすればよろしい
「それがわからんから訊いてるんだろうが」
「わたしもわかりませんよ」お手上げです、とマンスールは澄ました顔で肩を竦めた。「土台が、農民というものが代官が嫌いなものです」

泣く子も黙る傭兵隊である。日頃やっていることは盗賊と変わらない。元が騎士のマンスールとて、村を治めた経験があるわけでもない。
ふぅと息を吐いた後、マテルドは言ってやった。「村人の悩みでも聞いてやれば良いだろう」
「なぜそんなことをせにゃならん」
「村人に悪く思われたくないんだろう」
言いながら、もう一度息を吐いてしまう。傭兵団というものは、道徳というものがないのか。戦い方はともあれ、日頃の生活を見ていれば、モラルというものがないわけではないというのはよくわかる。しかしどうにも、彼らの考え方の軸というものは、明らかに一般のそれとかけ離れていた。

ともかくとして、ウィリアムは村人の悩み事を解消してやるというマテルドの提案に、いちおうの同意を示した。
翌日、ウィリアムはハヌンの村の村長のところへと向かった。悩みはないか、とぞんざいに尋ねる。
「ええ、最近は盗賊に悩まされておりまして」いつぞやもカーギットの傭兵を名乗る集団がやってきたことがありましたが、へぇ、あれとは別で、まぁ盗賊なんてどれも同じようなものですが、と村長は言った。当の傭兵隊隊長を目の前にして、大した胆力というものである。「悩みを聞いてくださるってんなら、あの盗賊どもをどうにかして欲しいもんですなぁ」

ウィリアムは別段気分を害したふうでもなく、なるほどと頷いて返した言葉はこうだった。「村を焼き払えば良かろう」
何を言っているのかと、思わずマテルドは彼の顔面をぶん殴りかけた。
彼の理屈はこうだった。傭兵なり盗賊なりは、村に略奪を働くためにやってくる。火をかけるのも、略奪がしやすいようにである。だから、最初から火がかけられていれば、略奪するものがないと判断して近寄ってこない、と。
「なんでおれが守ってやると、そう言えないんだ」
「そんなことしても無駄だ。村人が邪魔臭いから、それに構っている間にやられる

では村人を訓練すれば良いでしょう。そう提案したのは元、サラン朝の栄えあるマムルーク隊の騎士、マンスールだった。
「鍛えれば、邪魔にはなりません。どころか、戦力になる」
なるほどとウィリアムは頷いた。「じゃあ勝手にやれ」

ひとつ悩みを片付いたな、とウィリアムは村を馬で闊歩しながら言った。
「どこがだ」とマテルドは言ってやった。「まだ何も解決していないだろう」
「訓練して、盗賊が攻めてきたら追い返せば良い。簡単だ」
「あんたも手伝うんだ。でなければ、信頼なんて取り戻せないぞ」

さすがは傭兵隊の隊長である。手加減がないのは問題であるが、村人に対するウィリアムの稽古は大したものだった。
村人の訓練を続けて3日、ついに盗賊が攻めてきた。盗賊はいつものように、手に手に刃物を見せれば村人は平伏するとは思わなかったのだろう。しかし今回はそうはならなかった。盗賊がやってきたとき、既に村人たちは村を離れ、小高い丘の上に避難していた。
逃げたわけではない。その証拠に、手に手に手ごろな石や武器になりそうな農具を携えていた。
ウィリアムの号令によって、村に入ってきた盗賊たちに投石が開始される。傭兵隊、白の一角獣の傭兵たちも弓に矢番え、銃に弾丸装填し、盗賊を殺戮していく。
遂には散り散りになり逃げ出そうとする盗賊たちに止めを刺したのは、ウィリアムやマンスールが率いる騎馬隊であった。

こうして26人の盗賊の魔の手から、死傷者どころかひとりの負傷者も出すことなしに、白の一角獣は村を守りきったのだ。
「まぁこんなもんだな」
どうだ、これでましになっただろうと、ウィリアムはそう言ったが、そう簡単に村人の頑なな姿勢が緩和するとは思えない。
とはいえ、村人をこれ以上苦しませるつもりはないと、傭兵隊は外には厳しいが、中にはむしろ温かいものなのだと、それくらいは伝わったかもしれない。

ノルド王国との戦争が始まったのは、そんな夏の終わりの頃だった。


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