Elder McNamaraが居る部屋を離れると、壁に寄りかかっていたVeronicaが歩み寄ってきて言った。
「こういうこと」
「どういうこと?」とKutoは返す。
「BOSっていうのは、基本的に自分たち以外の人間は利用価値があるかないか、程度でしか見ないってこと。Elderは当たり前のようにKutoのこと、協力してくれるっていう前提で話をしてたけど、あれはべつに、わたしが予め話を持ちかけてたとかじゃないんだからね」
「おかげさまで、今度は斥候の人と連絡を取り合わなくちゃいけなくなったんだけど」
断れば良かったのに……。そんな、わたしに気を遣わなくても
「べつにあなたに気を遣ったわけじゃあなくて、近くにPower Armorを着た人たちが立ってるんだから、断りようが無かったってだけ。あんなの、脅されてるも同然じゃない」
ふつうは爆弾付きの首輪を付けて脅すから、それよりはマシだよ」
 それはまるでどこぞのカジノのような話である。Kutoは頭が痛くなった。

 歩きながらこれからのことを話し合おうとしていると、近づいてくる人物がいた。禿頭の男である。
「あんたが客人か」とその禿げ頭は言った。「Head PaladinのHardine。お互いにとって、良い話があるんだが、聞いていかないか」


 KutoはVeronicaと視線を見合わせたのち、首を振った。
「おい、あんたにとっても悪い話じゃないぞ。Elder McNamaraには無茶な依頼でもされたんだろうが、おれはあんたをそういうふうには扱わん。ちゃんと客人として扱うし……」
「あの、すみません、急いでいるので………」
 Hardineには皆まで言わせず、KutoはVeronicaの手を取って彼の下から逃げ去った。

「嫌いなタイプだった?」とにやにやしてVeronicaが訊いてくる。
「あの人、どういう人?」
Elderの反対派のひとりだね。Elder McNamaraが気に入らないんだったら、あっちに乗り換えても良いんだよ?」
「それは……、なんかやだな」
「禿げだったから?」
「禿げは良いんだけど……、簾禿げだったから」
「なんか違うの?」
「簾は執着してるっぽい感じがして、なんかやだ」

 禿げはともかくとして、Elder McNamaraから命ぜられた任を達成しなければいけない。Veronicaは、「べつにそんな真面目にやらなくたって良いのに」と言っていたが、KutoはKutoで考えがある。
 山々を駆け巡り、KutoはElder McNamaraから言われたとおりにBOSの斥候たちと連絡を取り合い、ホロテープを受け取った。途中、NCRの兵士たちと出くわしてしまったものの、先制攻撃を仕掛けてなんとか対処することができた。


 ホロテープを渡し、さてこれで一安心かと思いきや、次にElder McNamaraは「空気清浄機に異常が起きているんだが、どうにかしてくれないか。詳しくはSenior KnightのLorenzoに聞いてくれ」と言った。
「そろそろ諦める気になった?」とVeronicaがポケットに手を突っ込んだまま尋ねてくる。
「諦めるって?」
「もう、なんかやだな、間違ってるな、もうやめようかなっていう気」
「わりと」
「そっちはLorenzoが居るほうだよ」
「うん、だから、空気清浄機のことで話を聞こうと思って……」
 とKutoが言うと、ふぅとVeronicaは息を吐く。「まだ手伝うんだ」と言う彼女は、諦めの表情であった。


若い命をまた死なせてしまうと思うと、心が痛むよ」
 と言ったのはElder McNamaraから指名されたSenior Knight Lorenzoで、この言葉に対しVeronicaは、「気にしないで。Lorenzoはなんでも大袈裟に言うのが特徴なの」と言った。
「いや、Veronica、これに関しては本当に重大ごとなんだよ。きみたちは今回の、空気清浄機の部品を調達してくる任務、任されたのは自分たちが初めてだと思っているだろう? 聞いて驚け、きみたちで4グループ目だ」
「ああ、良かった。てっきり、100人目だ、とか言われるのかと」
「そんなに死んでたら、もうこのバンカーは空っぽになってる」
「そだね。で、どこ行けば部品はあるの?」
「Vaultだよ」

 Lorenzoの挙げた場所は、Vault3、Vault11、Vault22ということで、いずれもKutoが行った覚えのない場所であった。
で、行くの?」とVeronicaが気の乗らぬ様子で尋ねてくる。
「まぁ、いちおう」
「Lorenzoは危険だって言ってたのに」
「Veronicaがいるから、大丈夫でしょ」
「まぁ、そうなんだけどさぁ………」


 Vault 11はGiant Mantisだらけでところどころ浸水していたが、Nellis空軍基地からかっぱらってきた爆薬やRebreatherが役に立った。Vault 22は荒廃した砂漠の中にあって、新緑繁る奇妙な場所であったが、つい最近Scavengerか何者かが侵入して探索した形跡があり、その過程で中の動植物を駆逐したらしく、探索は楽なものだった。立ち塞がる草木は、放置されていたFlamerで焼き払って進んだ。


 問題はVault 3であった。
 Vaultの重苦しい扉を開けたところで出くわしたのは、骨の被り物をし、銃を構え、目が血走った女だった。これがFiendではないと言う人間とGhoulは、Mojave Wastelandにはいない。
 しかも扉が開きかけのところでKutoから入ったものだから、Verconicaが盾になることもできず、Kutoは死を覚悟した。
「Great Khanか」とFiendは冷たい、しかし敵意の色を孕まぬ口調で言う。「薬の販売だな、よく来た」


 そういえばKutoはGreat Khanの服を着ていた。べつにGreat Khanと過去に何かあったわけではなく、足や腕が出ていて涼しいので気に入って着ている服がもとはGreat Khanの人間が着ていたものであり、Great Khanのロゴが入っているというだけのことなのだが、まさかこんなところで役立つとは夢にも思っていなかった。
「あー、薬ですか」これは風邪薬とかその手合いではないな、と思いつつ、Kutoは適当に話を合わせた。「まぁ、そんなところで………」
Motor-Runnerはメンテナンス通路を行ったところだ」
 言って、Fiendの女は銃を下ろし、近くの仲間にKutoたちを撃たぬようにと注意した。どうやら通って良いらしい。


(完全にFiendにやられたって感じだね)
 言われたとおりに通路を進み、Vault 3の中を見て回る。野生動物はいないようだが、中はFiendがうろつきまわり、壁には血痕が染み込んでいる。このVaultが開かれ、Fiendが流れ込んできたのはつい最近なのかもしれない。


前に売りに来たときから随分と早かったな」
 と言ったのは犬を連れた大柄な男で、どうやらこれがこの辺りのFiendsの親玉と思しきMotor-Runnerらしい。
「そうですか?」とKutoは言葉を濁す。Great Khanではないことがばれたら、これはVeronicaがこの一帯のFiendsをすべて殺戮することになるな、大変だろうな、と思いつつ。
「まぁ、いい。いつもどおり、JetやPsycho、Buffoutひとつにつき20 Caps払うぞ」


 JetやBuffoutなら幸い、幾つか蓄えがある。鞄の中を探りながら、ふと思いついて、「えっと……、いまちょっと入り用なので、22 Capsに値上げしても良いですか?」と言ってみる。

 Challenge: Bater≧65→SUCCEEDED

「まぁ……、いいだろう」
 とMotor-Runnerは少々渋い顔になって応じた。薬品類を幾つか売る。


「そういえば」と彼は薬を受け取りながら、何か思いついた様子で言った。「Red Rock Canyonが襲撃を受けたそうだが、それは大丈夫だったのか?」
「それは、ええ、まぁ」
 と事情を知らぬKutoは曖昧に頷いた。

 おそらくはNCRの襲撃だろう、とKutoは検討をつける。Hoover Damでの戦争を見越して、Caesar's Legionと同盟を結んでいるGreat Khanを叩こうとしたに違いない。
 Kutoは、己の目的も早く果たさねば、と思った。

「あ、そうだ。ついでに訊きたいんですけど、いまちょっと必要なものがあって、こういう」
 機械なんですけど、とKutoが空気清浄機の部品について尋ねると、Motor-Runnerは少し思案したような顔をしたのち、ロッカーのひとつを漁り、該当の部品を持ってきた。
「これか」
「あ、そうですそうです。えっと、譲っていただけると嬉しいんですが………」
 何か難題を突きつけられる覚悟でKutoが言うと、意外なことにMotor-Runnnerは頷いて部品を差し出した。「まぁ、良いだろう。Great Khanには世話になっている。持っていけ」

 BOSよりも、Caesa's Legionよりも、そしてたぶんNCRよりも情に厚いFiendsの態度に、Kutoは礼を言った。BOSのバンカーに戻れば、また何か面倒ごとが起きるのだろうな、と思いつつ。


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