叫び声があがったので、Ritaは殆ど終わりかけていたAmataとの会談を打ち切って、声の発生源である医務室へと向かった。中ではエントランスでOfficer Taylorと諍いを起こしていたFreddieがへたり込んでいた。声は男のものだったので、どうやら叫び声をあげたのは彼らしい。
 何が起きたのか。
 問わずとも、彼の視線の方向を見れば、悲鳴の理由は分かった。


 だからRitaはFreedieではなく、診察室の中のものへと声をかけた。
「何をやってる」
『ああ、新しい患者ですか。要望は虫垂切除ですか? 扁桃腺切除ですか? それとも子宮摘出?』


 Mr. Gutsy、Andyは、血塗れの身体を隠すことなく振り向いた。血飛沫をあげたチェーンソウは回転し続けていて、傍らには既に絶命していることが明らかな、Vault 101の住人、Beatriceの姿があった。片足が無かった。
『ああ、これは不幸な出来事だったのです。Beatriceさんが捻挫をしたため、治療のために切除をせざるを得なかったのですが、不幸なことに手術は成功しませんでした』

 どうやらかつて医者として働いていたJamesと、その助手であるJonasがいなくなった現在、Mr. GutsyのAndyがその代役を務めていたらしい。いや、務めようとしていた、か。
 Ritaは幼い頃のことを思い出した。Ritaの10歳の誕生日、Andyは誕生日ケーキを切り分けようとして、ぐちゃぐちゃにしてしまった。力加減は、昔から下手糞だった。


「Andy、あんた、昔から失敗ばっかりだったもんね」
 Ritaは無造作に.45口径を抜いて一発撃った。.45AP弾が蛞蝓のように突き出たAndyの眼球、メインカメラを貫き、球状の本体部分に侵入。ボディを完全に貫通する前に止まった。
 Gutsyはすべての機能を活動し、動かなくなった。


「Overseerのところ行ってくる」
 Ritaは踵を返して、近くで見ていたAmataやFreedieに告げた。涙は見られたくなかった。

 エントランスまで降りて、そこから階段を上って進む。Overseerのいる場所といえば、Overseer室と相場が決まっている。もう少し、というところで、Officerに出くわした。Officer Gomezなら良かったのだが、そうではなかった。
「戻って来たか! Jimはおまえのせいで死んだ」
Officer Wilkins、Jimが死んだのは残念だったけど……」
「おまえがあの日、出ていこうとしたせいで!」 
 怒りか恐怖かで身を震わせて10mm Pistolを抜いたのは、Vaultの入り口で死んでいたJim Wilkinsの兄、Officer Wilkinsであった。

 言葉による制止は効果を持たず、既にOfficer Wilkinsは引き金に手をかけていた。
 Ritaは一瞬だけ迷ってから、ホルスターのBrowning High-Power Pistolの抜いた。
 Wilkinsの10mm Pistolから弾丸が発射される直前に、Ritaが撃った拳銃弾が銃を弾く。


Perk: Gunslinger (拳銃の精度上昇)


 上手く弾丸が銃にだけ当たったことにほっとしながら、Ritaは落ちた銃を遠くまで蹴り飛ばす。
「争うつもりはない。Overseerに会わせてほしい」
 そう告げて見せても、無駄だった。Officer WilkinsはPolice Batonを抜いて跳びかかって来た。


 狙って撃つ。が、外れた。Wilkinsの太腿に突き刺さる。
 もう一発。今度こそPolice Batonを弾き飛ばした。拳銃と同じように蹴り飛ばす。
「まだやるの?」
 武器は無く、足からは相当量の出血をしている。行動にそこまで影響はなかろうが、止血しないとそのまま失血死するだろう。Officer Wilkinsもそれを理解したのか、Tunnel Snakeでも使わないような卑猥な捨て台詞を残して去って行った。

 安堵の吐息とともに、Browningをホルスターへと戻しかけたRitaだったが、すぐに抜き直して振り返る。
 男が立っていた。安っぽい赤の野球帽に、Officerであった頃と同じ防弾チョッキ、にやにや笑いを浮かべた、いまやOverseerとなったAllen Mackであった。
「いやぁ、見事なもんだ。また人殺しの腕を上げたみたいだな」
 とAllen Mackは手を叩いて言った。
 Ritaは昔から、この男が嫌いだった。
 とはいえ、今は争い事を起こしたくはない。人を殺したくもない。
「話し合いに来た。事を荒げるつもりはない」
「へぇ、前のOverseerにも同じことを言ったのか?」
 Allen Mackはにやにや笑いを浮かべて言った。激昂しそうになったが、深呼吸をして気分を落ち着ける。


「あんたはVaultを以前と同じように閉鎖し続けるつもりらしいが」
「ああ、そりゃあ、そのほうが良いと思ったからさ。べつに嫌がらせってわけじゃあない。外は危険だ。それだけさ。おれだって、Vaultのことをいちばんに考えているんだ」
「そのことで、話し合いたいことがある」
「話し合いね……、じゃあ銃を捨てな」
「は?」
「銃だよ。さっきの動きを見てりゃわかる。すぐに抜いて撃てるんだろう? 信用できん。だから、銃を捨てろ」
「あんたは捨てないのか」
 と、RitaはAllenの背中にかけられたAssault Rifleを見て問う。
「おいおい、忘れんなよ。おまえは前科があるんだぜ。Overseer殺しのな。おれとおまえじゃあ、立場が違うんだ」

 ぎりと歯を噛み締めて、RitaはBrowningを床へと捨てた。
「これでどうだ」
 Ritaが床に落とした銃からAllenへと視線を移したときには、既に彼は行動していた。背負っていたAssault Rifleを構え、口が動く。
 口の形で何が言いたいのかは解った。ば、か、め、だ。

 銃撃が起きた瞬間、Ritaの目の前は真っ暗になった。


 目の前に漆黒のスーツを纏った男の姿があった。
 漆黒のスーツを身に纏ったLynnは、Assault Rifleの銃撃も意に介さずに、Allen Mackの首根っこを掴み、引き千切った。




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