デニム生地のホットパンツとノースリーブのシャツを脱ぎながら、気になるのは爆撃機に爆薬を取り付け浮上させるという荒事ではなく、周辺に散らばるCazadorの屍骸でもなく、何かを期待するかのような視線であった。


 飾り気の無い鼠色のスポーツブラとショーツ姿になると、Kutoは即席の水中呼吸器を身に着ける。

「あれっ」
 あれっ、あれっ、ちょっと待って、なんか、おかしいんじゃないの、とそんな声をあげるのはKutoとは対象的に濃い緑色のコートを頭からすっぽり被り、ほとんど皮膚を見せていないVeronicaである。
「全部脱がなくていいの?」
 などと欲望そのままに問いを投げかけてくるVeronicaに、「いいんです」とKutoは応じた。
「でも、濡れちゃうよ。帰り、ぐしょぐしょになって気持ち悪いんじゃない?」
「すぐ乾きますから」
わたしは脱いだほうが良いと思うけどなぁ……。ぜったい、そのほうが良いって」
 その言葉を無視してKutoは水中に飛び込んだ。下手に色気の有る下着を着てこなくて良かった。
 Mead湖の汚染されていない水中遊泳を楽しみながら、KutoはVeronicaに出会ってからのことを回想した。


 言うだけのことはあり、Veronicaは確かに役に立った。ちなみに昼の話。BOS仕込みのPower Fistと古武術は、NCRやRaiderに襲われても、ものともしなかった。
 Boomersが住まうというNellis空軍基地に辿り着いたKutoとVeronicaは、Loyalという老人に、頼みをしたいのならば代わりに誠意を見せてくれと言われた。Veronicaと旅をしている間、夜になれば昇るのは桃色めいた下の話ばかりだったため、Kutoは危うくLoyalの言葉を曲解しかけた。危なかった。


 KutoはBoomersの信頼を得るため、Nellis空軍基地で働き始めた。戦いはてんで駄目なKutoであるが、Jackという男が恋した女性を探したり、子どもと遊んでやったりと得意分野でなんとか役立つことができた。なかなか楽しかった。

Perk: Black Widow(男性との対決にボーナス)

 Nellis空軍基地に到着して数日、Loyalが最後に頼んで来たのは、Mead湖に沈んだというB-29の引き揚げ作業であった。沈んだB-29の両翼にバラストを取り付けて浮き上げさせるという作戦らしい。

●バラスト
 船が安定性を確保したり、潜水艦が浮力をコントロールするために積んでいる装置。
 液体中の浮力はアルキメデスの原理の通り、浮力は物体の押し退けた液体の重さと同じ大きさである。つまり水より密度の重い物体は沈み、軽い物体は浮く。そのため船体の大きさを一定のままに質量のみを変化させたり、質量をほとんど変えずに船体の大きさを変化させることで潜水艦は浮上や潜水のコントロールを行うことができる。Loyalの作戦は、展開可能なバラストを用いてB-29の平均密度を水より軽くし、この後者の作用を利用したものである。

 彼は、望みを叶えてくれるのならば、Kutoの背後に存在する勢力に手を貸しても良い、と申し出てくれた。
「そんな簡単に言っちゃって良いのかなぁ」
 相手は悪名高きCaesar's Legionなのですよ、とはKutoは言わないでやった。言ったとしても、Loyalの決意は変わらなかっただろう。ただ、彼の気分を害するだけだ。Legionに協力してでも成し遂げたい、彼の夢なのだ。


「夢ね」
 夢、成る程ご立派だ。夢、成る程素晴らしい。光り輝く翼である。Kutoには残念ながら、縁が無い。

 展開式のバラストをB-29の両翼に取り付け、Kutoは岸へと戻った。濡れた肢体をVeronicaが嬉しそうに眺める中、Kutoは無視して起爆装置を起動した。バラストの展開と、機体の押し上げを行うための爆薬の起爆装置だ。
 水飛沫が持ち上がり、B-29が湖面に姿を現す。これが夢か。何処までも飛んでいく翼か。成る程、美しい。


 Kutoの仕事は、とりあえずは湖面に引き揚げるまでだ。後のことはLoyalに任せて、KutoはNellis空軍基地に戻った。出迎えたのは、Hunting Revolverを構えたRangerであった。
「両手を真っ直ぐ上に挙げろ」と威圧的な声がRanger Helmetから発せられる。見知った、あの牧師のものだ。「武装解除はしなくて良い。おれがやる。動いたら腕をぶち抜く。それでも抵抗すれば足を撃つ」


 言われ、Kutoは言う通りにした。すぐ撃たないということは、殺す気は無いということだろう。単に尋問する気かもしれないが、いちおう知らぬ仲でもないわけだし、手荒な拷問は勘弁してくれるはずだ。
 だがVeronicaは大人しく降伏の姿勢を取ったりなどはしなかった。彼女は牧師の目の前へと飛び出していった。これは死んだな、と思ったが、一瞬の後には形勢は逆転していた。牧師はRanger Helmetを弾き飛ばされて膝を突き、Veronicaは無防備になった彼の頭に拳を振り翳していた。

 第188交易所のときのように、牧師の頭をそのまま弾き飛ばすかと思われたが、Veronicaは跳ねるように跳び退った。遅れて聞こえてきたのは、覚えの有る狙撃銃の射撃音である。
「Booneさん………」
 彼がKutoとVeronicaを狙っている。殺す気で。彼のほとんど平素と変わらぬ表情を見て、Kutoにははっきりとそれが解った。Mariaを抜き、カートリッジが空になるまで連射した。この距離で、Kutoの腕前だ。当たるとは思っていない。だが、確かに彼に向けて撃った。もう仲間になってはくれないだろう。

 騒ぎを聞きつけたBoomerたちが屋外に出てきていた。非常に不味い状況だ。BoomersがNCRの味方とは思えないが、Caesar's Legionと比べてどちらを好意的に感じるかといえば、言葉にする必要も無い。
「逃げましょう」
 とKutoはVeronicaに向けて叫ぶ。彼女は無事だった。狙撃銃の弾丸をかわしたらしい。まったく、Veronicaといい、Booneといい、牧師といい、Mojave Wastelandの人間の戦い方はKutoの常識を超えている。

 Loyalも外に出てきていた。信頼しているKutoに向けて、何があったのだ、などと聞いてくる。Kutoは装填し直したMariaの引き金を彼に向けて引いた。六連射。


 全弾当たったとは思えないし、頭や胸に当てられたかどうかも判らないが、Loyalの年齢を考えれば致命傷には達しているだろう。Caesa's Legionから受けた任務は、Boomerからの救援を約束させろ、不可能そうなら指導者を殺せ、だった。これで十分だろう。

 遁走しながら、ちらと背後を振り向けば、口元から、つうと血を垂らしてこちらを睨む牧師の姿が目に入った。KutoはMariaの銃口を向け、引き金を引いた。弾切れだった。夢は終わった。死んだのだ。


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