第一行
Wherefore Art Thou, Mercurio?
あなたはどうしてメルクリオなの?

Name: Azalea
Clan: Toremere
Sex: Femele
Disciplines: Auspex (1), Dominate (1). Thaumaturgy (2)
Feats:
-Combat: Unarmed (1), Melee (1), Ranged (2), Defense (1)
-Covert: Lockpicking (2), Sneaking (3), Hacking (1), Inspection (3), Research (3)
-Mental: Haggle (2), Intimidate (2), Persuasion (2), Seduction (3)
-Soak: Bashing (1), Lethal (0), Aggravated (0)
Equipment: Tire Iron, Light clothing

「喉乾いた……」
 Azaleaはベッドに寝転んだまま、煙草の脂がこびり付いて黄色く濁った天井を眺めて呟く。
 殆ど這いずるようにして台所に向かう。冷蔵庫からミネラルウォーターのペットボトルを取り出して喉に流し込むが、途中で咽てしまう。ひとしきり咳をしたあと、冷めた宅配ピザを摘んで口に入れるが、ほとんど味がしない。端のほうだけをちょっと齧るのが限界だ。


「お腹減った………」
 食事を目の前にしながらも、そんな呟きが出てしまうのは、口に入れたものが己が欲しているものではないからだ。Azaleaは自分自身、それを理解している。
 耳障りな音がするドアを開いてアパートの部屋を出て、階段を降りる。Azaleaのほかには誰も住んでいないアパートなので、誰ともすれ違うことはない。

 外は暗い。夜なのだから当たり前だ。しかし光が全くないわけではない。街灯、家や店から漏れ出る灯り、月明かり、星明かり。たくさんの光は、いまのAzaleaには眩しいほどだ。貰い物のサングラスを掛ける。

「お嬢さん……、可愛らしいお嬢さん」
 アパートを出たところで暗がりから声をかけられた。汚らしい格好の中年男が手招きしている。物乞いのようだ
「この哀れな男に恵んでくれんかね。ひもじくてひもじくて、凍えてしまいそうなんだ………」
 Azaleaはぐるりと辺りを見回した。辺りは暗く、また細い路地であるため、Azaleaと物乞い以外にはこの場で起きる出来事を見る者はいない。


Tutorial: 明度
 Ctrlキーを押すとしゃがみ/立ちの状態を切り替えることができる。しゃがみ状態になると画面左の体力バーの右側に明度バーが表示され、その上にNPC距離が表示される。
 明度バーはPCの周辺の明るさを示す。バーが示す値が低ければその周辺は暗いため、行動が見付かりにくくなる。逆にバーが高い値を示していると明るいため、少し距離があっても行動がばれやすくなる。
 NPC距離は近くにいるNPCとの距離を表す。0なら周囲にはおらず、100に近づくにつれて接近した距離にNPCがいることになる。またNPC距離の色は、相手の警戒度合いを示し、緑なら無警戒、黄色なら警戒中、赤なら敵対中を意味する。
 また、Shiftキーを押しながら移動することで歩くことができる。 

わたしもです」
 Azaleaは物乞いに一歩近づいた。両手には何も持っていないし、凶器を携帯しているわけでもない。表情も、そう、なるたけ穏やかに近づいたはずだ。
 だというのに彼が一歩下がったのは、笑顔を作ったAzaleaの口の中に牙が見えたからかもしれない。
「ひもじくて、凍えてしまいそう………」

 Azaleaは物乞いに抱きついた
 そしてその毛だらけのぬるぬるした首に、牙を突き立てた。

Tutorial: Feeding
 画面右側にあるバーは血液バーであり、現在保持している使用可能な血液量を表す。補充するためにはFeedingを行う。
 Feedingをするためには、対象に近づいてFキーを押す。
 画面上部に対象の血液残量を表すバーが現われる。これが0になると対象は死亡する。
 FeedingをやめるためにはFキーを再度押すか、左クリックをする。
 吸血された対象は、昏睡状態に陥る。対象が吸血鬼化する心配はない。


「また、やっちゃった………」
 血を吸われて意識を失った物乞いから急いで離れ、Azaleaはアパートの己の部屋に戻った。不味い血ではあったが、腹を満たしたことでようやく落ち着いてきた。
 胸の内に広がるのは、後悔の感情ばかりである。

「Arthur………」
 恋人の名を呼んでも返事はない。当たり前だ。ここはもう、かつて住んでいたDowntownではなく、Santa Monicaなのだ。恋人もいない。彼には別れを告げて、用意されたこのアパートに住み着いたのだ。
 だがここにやってきてから一週間というもの、日中は外に出られないAzaleaは、ふつうの食事は宅配で買えるものだけを食べ、夜になると人気の少ない道をうろついて、さっきのように血を吸う。そして帰って寝る。それだけの生活を続けている。

 Azaleaは腕を擦る。その腕は、以前のような黄色人種の肌の色ではない。真っ白な、そう、白人のような、いや、それよりも白い、血が全く通っていないかのような肌の色だ。これが、いまのAzaleaだ。
「世界中、みんな違う人間だけど、同じ人間なんだから、いつかは解り合える」
 母が好きだった言葉だ。何度も何度も、その言葉を呟く。

 Azaleaがこうなったのは、一週間前のことだ。Arthurの母親に挨拶に行き、そして帰ってきてから、ひとりで考え事がしたくなって夜の道を歩いていた。たったひとりで、無防備な状態で歩くのは、思えば二年ぶりだった。Arthurと出会ってから、さまざまな人が手助けし、守ってくれるようになっていたから。
 久し振りにたったひとりで夜道を歩いた帰りに、Azaleaは暴漢に襲われた。ホテルの部屋に連れ込まれ、薬を使われ、手錠で拘束されて、でなくても相手は男で、抵抗できなかった。Azaleaは涙を耐え、声を出すのを耐え、薬でぐちゃぐちゃになった意識の中でただただArthurのことを想った。

 だからホテルの部屋に踏み込んできた者があったとき、初めAzaleaは、警察かと思った。Arthurが助けに来てくれたのだ、と。
 しかし違った。ひとりの男はAzaleaを襲った暴漢にナイフを投げつけた。その刃は狙い違わず男の心臓を射抜いた。血が吹き出て、動かなくなった。
 そしてもうひとりの男はAzaleaの胸に刃物を突き立てた。Azaleaは死んだ。そう、死んだと思った。

 だが次に目覚めたとき、意識はぼぅっとしていたものの、Azaleaは生きていた。死んだはずのAzaleaを襲った男も、隣に跪いていた。


「こんばんは、わが同胞たちよ。お忙しい中、急な召集をかけてしまって申し訳ない。不幸な事件があったものでね」と喋っていたのは、茶髪のオールバックの男だ。俳優のようによく通る声で話している。話の内容も、まさしく演劇のようであった。「法は組織、社会を支える根本たるものだ。だがその法が破られた。ご存知の通り、この都市のPrinceとして、わたしは秩序を支えなければならない立場にある。同胞を増やす行為はわたしの承認が必要としているのは、ひとえに秩序を守るためだ。しかしながら、ここにいる被疑者たちは許可を得ずして、わたしの承認など必要ないとばかりに行動したのだ。彼らは変異の後に捕らえられた。旧世代からの同胞ならば知っているだろうが、まだ歳若いメンバーのために心苦しいが伝えなければならない。法を犯したものの代償は、死だ」

 Azaleaはぼぅとした目で、ただ床だけを見ていた。床は木目だ。硬くて、ちょっと古臭く、黴臭い。
 まるで劇場の演台のような場所に彼女は跪かされていた。いや、実際に演台なのだろう。劇場なのだ。満員御礼というわけではないが、観客席に着いている人々の姿がある。

「誤解している諸君はいないと思うが、念のため付け加えておきたい。わたしは決して正義の代表者ではなく、法の遵守者だ。われわれすべてを束ねる法の、ね。われわれは血と、そして何よりもわれわれ自身を守るために、遵守しなければならない掟があるのだ。さようなら。許してくれ。さて、刑罰を執行する」


 Princeを名乗る茶髪の男が指を鳴らした。
 それを合図に、Princeの傍に付き従っていた男たちが動く。ひとりはAzaleaと同じように跪かされている男の首根っこを掴み、首を差し出させる。
 そしてもうひとりの男、背中に巨大な大剣を担いだ死刑執行人のような人物が、暴れる男目掛けて剣を振り下ろした。目の前で、Azaleaを乱暴した男は死んだ。いや、弾けて灰になった
 死んだ男は人間ではなかった。いや、彼だけではない。俳優のように立ち回るPrinceも、大剣を担ぐ処刑人も、舞台上を見守る観客も、人間ならざる生き物であるということが本能的に理解できた。
 そしてAzaleaも。


「世界中、みんな違う人間だけど、同じ人間なんだから、いつかは解り合える」
 だがAzaleaは人間ではなくなったのだ。この世ならざるものになったのだ。吸血鬼といわれるものに。だからもう、永遠に解り合えるはずがない。

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