Azaleaは頭に受けた衝撃で、空中で殆ど半回転した。床にぐしゃりと落ちる。


 体組織を治癒しながらむくりと起き上がり、状況を確認しようとするが、頭を撃たれたせいか、思考が回らない。


 場所は、そう、場所はSurfsideダイナーだ。食事を摂りに来たのではない。Thereseの指示でやって来たのだ。

「ふざけないで! 自分が何をしたのか……、あの画廊にどれだけ投資したと思ってるの!?」
 Noir画廊のBlood Gurdianを命辛々撃退したAzaleaは、痛む傷口を抑えながら、Asylumのオーナー室に戻った。しかしJeanetteは居らず、代わりにThereseの姿があった。そして彼女はAzaleaに強烈な言葉を浴びせかけてきた。
「Tungがいなければ、Jeanetteも大人しくしていると思ったのに……、糞、何もかもTungの考えね。あなたまでほかのやつらと同じように、Jeanetteの良いように扱われるなんて………。もう顔を見せないで。さっさと出て行ってよ!」
「あの、Tungのことは……」
「うるさい。出て行け」
「ちゃんとペンダントも取ってきたのに……、約束が違
 AzaleaがOcean Houseホテルから取ってきたペンダントを差し出すと、Thereseはそれを毟り取って言葉を叩き付けてきた。

Lost: Pendant

「先に手を出したのはどっち!? Jeanetteの言いなりになってわたしの邪魔をしたのはあなたでしょう!?」
 びりびりと耳に響く金切り声にAzaleaはひたすら耐えた。Tungの情報を聞き出さない限りは、ここを動けない。なんのためにOcean Houseホテルであれだけ恐い思いをしたのかわからなくなる。

 さんざん怒鳴って、多少は落ち着いたのだろう。ThereseはぎろりとAzaleaを睨みつけ、大きく息を吐いた。


「とりあえず、Jeanetteのことに対処しないと……。あれと話し合う必要があるわ。Surfsideダイナーに呼び出しておくから、あなた、わたしが仕事を片付けるまで、Jeanetteと話し合っておいて
 それは有無を言わせぬ言い方だった。Azaleaはただただ頷くことしかできず、Surfsideダイナーへと向かったのだ。


 そうしたら、こうだ。
「おい、死んだか?
「頭と腹に一発ずつ当たったな。死んだだろ」
ぐちゃぐちゃになるまで弾ぶち込んどけって話だ。もうちょい撃っとこう」
女なのに勿体無ぇな」
「女っつっても、小娘だろ? おれは御免だね」
おれはこのくらいのほうが良いな」
「おまえはロリコンなだけだろ」
 と男たちが会話を交わしながら近づいてくる。ダイナーでたむろしていた4人の男たちだ。 

「”Purge”」
 Azaleaは倒れたまま血力を解放する。4人の男たちのうち、前方にいた2人の男が血力に当てられて、血を嘔吐する


 体勢を崩した男たちに向かって、Azaleaはナイフを持って跳びかかった。目の前のふたりの男を片付けたのち、後ろに居た男に切り付ける。

Tutorial: Unarmed/Melee Combat
 打撃/近接武器はインベントリ(Iキー)かF1/F2キーで装備する。左クリックで攻撃を行う。
 TABキーを押すと防御状態に移行し、ダメージ減少のFeatsにボーナスを得る。

 最後のひとりは叫び声をあげて、こちらに銃を向けていた。拳銃ではなく、散弾銃だ。
「”Trance”」

Discipline: Trance
 能動型のDiscipline。
 DominateのLv1.対象は単体。
 対象を深い昏睡状態に陥らせる。

 青白い光に包まれた暴漢は、銃を取り落として茫然自失の状態になった。
 その男の首筋に向けて、Azaleaは牙を突き立てる。いつもの遠慮した啜り方ではなく、心臓から末端まで全ての体液を啜りだすつもりで血を吸収する。


「あぁ………」
 血液を完全に吸いだされ、干からびた木乃伊のようになった男を足元に見て、Azaleaは呟いた。
(殺しちゃった………)
 男たちは銃を持っていた。撃ってきた。殺すつもりだった。殺さなければ止まらなかった。だから殺した。

 言い訳は幾らでもできるが、人間を殺したという事実は覆らない。

Retrieved: Utica M37

 Azaleaは床に落ちた散弾銃を拾い上げてから、Tranceで銃撃戦に怯えるダイナーの店員を昏睡状態に陥らせ、吸血して記憶を消す。
 対処し終えたところで、ダイナーの電話が鳴った。
Azalea、逃げて! Thereseはあなたのことを殺そうとしてる!』
 という声はJeanetteのものだ。
「知ってる」
『Azalea……、無事なの?
「いちおう」とAzaleaは己の頭の傷を確かめながら応じる。もう傷は治っていた。
『そう、良かった』と心底安堵した声でJeanetteは息を吐いたが、すぐに焦りの色を見せる。『Azalea……、こんなことを言うのは厚かましいのかもしれないけど、助けて。いま、Asylumのオーナー室のバスルームにいるの。Thereseはわたしのことも殺そうとしてる……。お願い。助けに来て』
「いま行く」
 受話器を置いて、Azaleaはダイナーを出た。ThereseとJeanetteの正体について、Azaleaはうすうす気付き始めていた。


 Asylumのオーナー室でAzaleaが見た光景は、やはりありきたりなものだ。B級映画なら。たぶん役者を雇うのを嫌ったのだろう。
 目の前で展開されるのは、ひとりの女が銃を構えて延々と独り言を叫び続ける姿だった。
 女の容姿は、右側はTherese、左側はJeanette
 つまりはこれが、Santa Monicaの主の姿だった。解離性同一障害、いわゆる多重人格というやつの特殊なものだろう。

 予想ができていたため、驚きは薄かった。JeanetteとThereseが同時に出てくることはなかったし、ふたりの容姿は、化粧や衣服の違いで誤魔化されていたが、よく似ていた


出て行け! Jeanetteごとあんたを殺すことなんて簡単なんだから」
Azalea、助けて! わたし、Tungが何処にいるのか知ってるの! あなたのこと、助けてあげられるから、だから………」
黙れ、Jeanette! あの男のせいであんたはわたしに立てつくようになったんだ! あの醜いNosferatauのせいで! あんたたちを殺したら、次はあの男だ!」
Therese、あなたはわたしに何もくれなかった。愛も、お金も、自由も。Bertramは、そんなわたしの辛さを解ってくれた………」
黙れ! 黙れ! いますぐ殺してやる!」
Therese、あなたはわたしとパパを殺したのに、またわたしを殺すの?
違う、父さんを殺したのはあんただ、Jeanette!」


「黙れ」
 Azaleaは血力で言い争うTherese/Jeanetteを拘束した。ふたりは拘束を弾こうとしてきたが、互いに相争っているTherese/Jeanetteには反撃しようもなかった。でなくても、Azaleaの人並み外れた血力には抗えない。
何も説明せずにわたしを使ったJeanette、殺そうとしたTherese。わたしはどっちにも腹が立ってる。姉妹喧嘩なら余所でやって。わたしはTungの居場所が知りたいだけ」
 AzaleaはTherese/Jeanetteが取り落とした拳銃を拾い上げ、弾丸を抜いてからTherese/Jeanetteに向ける。
あんたたちはもうやっていけない。どっちかが死ぬしかない。いまから引き金を引く。そうしたらどっちかが死ぬ」
「「やめて!」」
 ふたりが同時に叫んだが、Azaleaは構わず引き金を引いた。




「その血力……、Tremerだな。あんたがAzaleaか
 廃墟になった元ガソリンスタンドの巨大なタンクの中に、Bertrum Tungは住んでいた。
 だがもしもTungがここに住んでいると知っていなければ、彼を見た瞬間に逃げ出してしまっていただろう。
 Tungは瘤だらけの頭をした、化け物といってもいいような醜悪な容姿をしていた。
「すまなかったな。Princeから話は聞いていたが、見ての通りの面構えなんで、表立っては動けなかったんだ」
 と語る様子は気さくで、成る程Jeanetteが惚れ込んだのも解る。


 この場所を教えてくれたのは、Jeanetteだった。死んだのはThereseだ。Jeanetteは、死んだ姉のことを悲しんでいた。殺したのはAzaleaだ。血力で、彼女の魂を消すのは容易なことだった。
 人を殺すのは、簡単だ。

「おい、あんた……、なんだ、泣いてるのか」
 とTungが言っていた。ぽたぽたと涙が零れた。
「勘弁してくれ。女と子どもと泣き虫は苦手なんだ。あんたは全部満たしてる」

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