かくもあらねば/17/03
3
『あれが、このSierra Madreの住人だ』
Collar 8なるSuper Mutantを助け出せという指令を受けて、Sierra Madreの中央噴水広場から西へと向かったSiたちが出くわしたのは、槍を背負い、フードを被った不気味な人物だった。顔はガスマスクのようなものをつけていて、容貌は判然としない。その人物はまるで蛙のような動きで飛び跳ねながら移動していた。
『わたしはあれをGhost Harvesterと呼んでいる。非常に危険な生き物だ』何処からか見ているのか、それともGhost Harvesterの存在を検知する機能でもあるのか、Pip-Boyを通じてElijahが語りかけてくる。『先ほども言ったように、彼らを殺すことは非常に困難だ。たとえそのHolorifleを持ってしても』
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待て、と言う暇もなかった。
彼女が引き金を引くと、眩い輝きがHolorifleの銃口から発射された。ふたりにそれぞれ支給されたこの武器は、どうやらエネルギー兵器の一種らしいが、Siがこれまで見てきたNCRの保管している遺産兵器と比べても遜色ないほどの高い威力と精度を兼ね備えたものだった。
Ghost Harvesterはぶっ飛び、動かなくなった。
「おお、すごいですね、これ」KutoはHolorifleを背負いなおして、にっこり笑った。「これがあれば、問題なく進んでいけそうですね。弾が心配ですけど」
「危険だと、言っていただろうが」
「いやいや、案外どうにかなるもんですよ、ほら、この通り」と彼女は倒れたGhost Harvesterを蹴りつける。「それに、牧師さまもSumikaちゃんを助けるために、さっさとここから出ないといけないんでしょう? こんなところで躊躇しているわけにはいきませんよ」
そう、KutoはSumikaについて知っていた。
見えている、と彼女は言った。ああ、可愛い妖精さんですね、でもこの空気の中で辛いみたい、だったら早くここから出ないといけませんね、と。
そう言われては、彼女の言葉に従わざるを得なかった。もとより、爆弾首輪を嵌められたこの状況下では、Elijahという男に従わざるを得ないのだ。
なんだ、どうなったんだ、Ghost Harvesterの反応が消えたぞ、というElijahからの通信は無視して打ち切った。どうせ相互通信ではなく、ラジオ電波を利用した一方的な電波受信である。打ち切っても問題はない。
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腕だけではない。まるで痙攣したかのように足や首を震わせ、身体を仰け反らせる。ブリッジのような体勢から一動作で起き上がる。その手には槍が握られたままで、切っ先はKutoへと向いていた。
Siは背負っているHolorifleを一動作で引き抜くと、Ghost Harvesterの頭に押し当てた。
今度の一撃で、Ghost Harvesterの首が吹っ飛んだ。
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なるほど、確かに、とKutoが言った。「Elijahさんの言うとおり、簡単には倒せないみたいですね」首を落とせば大丈夫みたいですけど、と。
あるいは首でなくても、腕や足を捥げば良いのかもしれない。気のせいかもしれないが、千切れた首から赤い霧のような物質が逃げていくのを見た。Sierra Madreに浮かぶToxic Cloudと同じ色だった。あれが死体に活力を与えているのかもしれない。ならば、あの気体を抜けば良いのだ。
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「牧師さま、ありがとうございました」
Aniseとそっくりのその笑顔を向けられるのが、Siには辛かった。
Sierra Madre中央噴水広場から歩いて約1時間。ようやくSiたちはSierra Madre西警察署らしき家屋に到着した。
「何か書いてありますね」と警察署の戸の脇の壁にKutoが近づく。
彼女の言うとおり、確かに扉の横には文字が書かれていた。 ”単純なる獣の中に神を見出せ”、と。
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おそらく死に瀕して狂った戦前の人間が書き残したか、そうでなければSiやKutoと同様にElijahによって遣わされた人間が書いたものだろう。どちらにせよ、この文の真意は汲み取れそうにもない。Siは文字を無視して扉を開けた。
警察署の中に入ると、まず目に入ったのは膝を抱いて座する一体のSuper Mutantの姿だった。
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