展覧会/『ラストクロニクル』/第2弾フレーバー考察
■5の国―グランドールとイースラ、ゼフィロン
アトランティカを五分する国家、グランドール、ガイラント、ゼフィロン、バストリア、イースラ。
それぞれの国家には特徴があり、また異なる政治形態を取っている。
ここではその政治形態について、五か国をグランドール、ゼフィロン、イースラの三か国と、ガイラントとバストリアの二か国に分けて説明する。
なぜこのような分け方をしたのかというと、前者と後者では政治形態が大きく異なるからだ。
2-100U 《グランドールの同盟兵》 |
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我らは聖王と教皇様の仰せに従い、この地に馳せ参じました。水と光が手を結んだとき、空に希望の虹がかかるでしょう。 |
まずグランドールという国だが、この国は非常に排他的だ。
人種(ここでいう「人種」とは形が人間らしい種族ということではなく、人間レベルの営みをしていると考えられる種族。たとえば人間に似た形をしていても精霊などは含まないが、人間とはかけ離れた牛面のミノタウロスなどは含む)の数はもっとも少なく、人間、エルフ、天使の3種のみである。
《グランドールの同盟兵》のフレーバーでは、グランドールという国が王政であり、聖王によって治められていること、そして聖王と同等かそれ以上の権力を持つ教皇という存在が確認できる。
聖王というのはイデアス聖王家の王のことで、この息子はアリオンのリーダーである《聖王子 アルシフォン》だ。
彼らの祖先は《竜王の厄災日》の際に竜王ヴィルフレイマと戦い、和睦を収めたことで、グランドールという国の立ち上げに貢献している。
またアトランティカの5国は、バストリアを除いてそれぞれ異なる精霊神を信仰対象としているため、教皇は聖母神ヴェスを崇める教会のトップの人物と考えられるだろう。
次にイースラだが、この国を治めるのは青武皇である。
本人は病気がちで、未だその名前は明らかになっていないが、血縁者のうち娘である《海凪の皇女 ナナツキ》の名が明らかになっており、また最低でも男子がひとりいることが知られている。
また、《覇力の戦巫女》の存在などから、グランドールと同じく宗教団体が一定の力を持っていることが示唆されている。
しかしイースラ最強の剣士である《皇護の刃 イズルハ》が青武皇の護衛であり、彼女と唯一対等に渡り合える《蒼眞の剣華》が蒼眞勢に属していることを考えれば、宗教団体はグランドールよりも弱い立場なのかもしれない。
本人は病気がちで、未だその名前は明らかになっていないが、血縁者のうち娘である《海凪の皇女 ナナツキ》の名が明らかになっており、また最低でも男子がひとりいることが知られている。
2-102C 《皇帝の奇兵》 |
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「いくらなんでも、奇兵ごときに帝の名を冠するとは!」 「ははは、よいよい。できるものなら、面倒な謁見の儀やら御前会議の間、余はあの者に代理を務めさせたいくらいなのだ。」
~青武皇の寛容さを示す逸話~
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また、《覇力の戦巫女》の存在などから、グランドールと同じく宗教団体が一定の力を持っていることが示唆されている。
しかしイースラ最強の剣士である《皇護の刃 イズルハ》が青武皇の護衛であり、彼女と唯一対等に渡り合える《蒼眞の剣華》が蒼眞勢に属していることを考えれば、宗教団体はグランドールよりも弱い立場なのかもしれない。
2-052R 《解放された雷鳥》 |
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「はばたくときの大風はまだいい。だが、飛び散る雷火には我慢ならん。美しい鳥ではあるが、今後、王宮では飼育禁止とする。」
~雷帝宮の侍女長~
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《解放された雷鳥》のフレーバーでは、ゼフィロンの雷帝宮なる宮殿の存在と、そこが王宮であることが示唆されている。
雷帝といえば《雷帝 バルヌーイ》だが、まさかバルヌーイが執政を行うわけがない、というか執務を行うバルヌーイなんて想像できない。
王が直々に執政を執り行うというのではなく、ちょうど日本でいうところの天皇に相当する象徴的な存在であり、実際の執務は民選された議員が行う、という可能性もないではないが、素直に考えれば《雷帝 バルヌーイ》にちなんで王宮を「雷帝宮」と名付けたのであり、実際の王は人間かスワントか、はたまたミノタウロスかは不明だが、別に存在すると考えるのが素直だろう。
またゼフィロンに関しては、第三弾では《飛雷宮の衛士》のフレーバーから、飛雷宮という宮殿も同じく存在していることがわかる。
グランドールやイースラのように、政権が王と僧侶で二分されているのであれば、雷帝宮が王宮である以上、飛雷宮が神殿と考えるべきであろう。
■5の国―ガイラントとバストリア
ガイラントは5か国の中で最も歴史が古い国家ではあるが、その権力は分散しており、幾つかの地方で小規模な領土がそれぞれ治めている、いわば地方分権型だ。
そのためかどうかはわからないが、ガイラントではほかの国のように、名のある英雄の存在があまり確認できていない。
第三弾の《神山の竜脈》で登場するドルイドの長と思われるナーシアという人物を除けば、政のリーダーとなりえそうな人物というと、《土皇の子 エルトバウテル》くらいしかいない。
2-037R 《土皇の子 エルトバウテル》 |
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私が想像するに、父なるガイラはきっとこう思っていたはずだ――勇気の力は、大地に宿るものだけで十分だ、と。 |
また、バストリアを治めるのは傭兵から立身出世したといわれる黒の覇王(=黒太子?)であるが、彼が完全にバストリアを掌握できているかというと、それは非常に怪しい。
もともとバストリアという地は荒れ果てており、戦国割拠していた場所を黒の覇王が制定しようとしているようなものだ。戦国乱世の織田信長のようなもので、未だ天下統一はなされていない。
そのため、黒の覇王以外にも王を名乗るものは存在し、第一弾では《命なき者の王 ロヴォス》が、第二弾では《吸血》のフレーバーで、鮮血王アシャーなる人物が確認できている。
2-091U 《吸血》 |
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「奪い、与える。それが契約というものだ。さて汝への報酬だが、栄誉ある敗北と我が永遠の従者たる資格、どちらが好みか?」
~鮮血王 アシャー~
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こうした政治形態の背景には、ガイラントとバストリアの民族多様性が影響しているのかもしれない。
ガイラントには人間、ノーム、ドワーフ、ワービースト、リザードマンなど、様々な種族が存在し、バストリアでもオーク、ダークエルフ、リャブーなど、生活している住民は多種多様だ。
一方で中央集権国家のグランドールはといえば、わずかに人間、エルフ、天使の3種類しか確認できていないことは最初に述べたとおりである。
そう考えると、種族や民族の多様性の違いが、中央集権か地方分散化で分かれているのかに影響しているのがわかる。
- 少民族・少種族
- ↑グランドール:人間、エルフ、天使
- |イースラ:人間、ヘルネブ、人魚、ワーシャーク
- |ゼフィロン:人間、スワント、ミノタウロス、ケンタウロス、飛龍、妖精、
- |ガイラント:人間(アルバネス、ドルイド?)、ノーム、ドワーフ、リザードマン、ワービースト、巨人
- ↓バストリア:人間、ダークエルフ、オーク、リャブー、悪魔、堕天使、ナイトメア、サキュバス、アンデッド(ゾンビ、スケルトン)
- 多民族・多種族
考えてみれば当たり前のことで、多様な民族、種族を抱える国家ほど、統率しにくいというのはどの世界でも変わらない。
バストリアは魔の大陸であるが、その実、国民に対して非常におおらかであるともいえる。その結果として、黒の覇王は災害獣との戦いにおいて、得体の知れない騎士である《黒騎将 ウーディス》を受け入れることができた。
もしこれがグランドールやイースラのような政治形態なら、きっと《黒騎将 ウーディス》は軍に迎え入れられることなく、災害獣との戦いには敗北していたであろう。
■8の兵棋
第二弾から新たに追加されたカテゴリに、イースラの兵棋がある。
2-101C 《軍馬の奇兵》 |
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馬は乗り手次第だが、奇兵はミスラムの力次第だ。 |
ハンドブックでは、兵棋(奇兵)はからくりと魔法技術の融合であることが述べられており、《軍馬の奇兵》のフレーバーを見ると、イースラのソウルストーン (SS) であるミスラムが使われていることがわかる。
ミスラムを使った製品というと、ほかにはたとえば《ミスラムの神玉》が存在する。《ミスラムの神玉》のフレーバーでは、その効果が時間に干渉することであるということが示唆されているので、兵棋を動かす力がミスラム特有の効果というわけではないのだろう。単純に、電池のような機構にミスラムを使っているのかもしれない。
実際、第三弾からはイースラから得た技術を取り込むことで、バストリアでも《竜王の奇兵》や《猛虎の奇兵》のような兵棋が開発されたているのだから、ソウルストーンであれば種類には拘らないのであろう。
しかしソウルストーンはどの国でも種類の異なるものが産出するとはいえ、国によって技術水準は異なる。
各国の技術水準についてはおおむね以下の通りであり、
- グランドール:鎧や剣
- ガイラント:ゴーレム?
- ゼフィロン:空中都市、飛行船、雷力術デバイス
- バストリア:兵棋、機械
- イースラ:覇力発生装置、兵棋
と、ゼフィロン、バストリア、イースラが高い技術水準を持っている。
ガイラントはゴーレムを生成する技術はあり、これも一種のメカニカルなものであると考えられないでもないが、科学技術かというとだいぶん違うだろう。
とはいえガイラントの技術が低いというのは、いかにもだ。ガイラントには未だ《ガイラの末裔》のような、古代の精霊神の力が強く宿っている。
グランドールの技術水準があまり大したものではないように思えるが、鎧や剣に使われている鉄や鋼は、ひとつの技術水準の象徴である。
鉄の融点は約1800ケルビン。
この温度を発生させるには、単に火で炙るだけでは不可能である。
2-014U 《鋼のファランクス》 |
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「うわあ! 奴らの陣形を見ろよ、まるで鋼鉄の壁みたいだ!」 「馬鹿言え、壁に足があるかよ。ほら見ろ、少しずつにじり寄ってきやがる!」 |
大航海時代、スペインのインカやアステカ侵攻の際に、スペイン兵は鉄の武器を使った。それは銃ももちろんだが、刀剣や鎧にも用いられており、石器や木材はもちろん、青銅器よりも遥かに強靭だった。
他の金属と合成することで合金となり、さまざまな特徴を得るこの物質は、高い強度を誇っており、製鉄技術を持たない民族との戦いでは大きな貢献を果たしたのだ。
このように、製鉄技術や金属加工技術は科学技術の象徴であり、グランドールの技術水準がけっして低いとはいえない。
とはいえグランドールの技術水準がバストリア、イースラ、ゼフィロンに比べて低いということは間違いなく、グランドールが今後兵棋を開発する可能性は低いだろう。
■10の奇跡
奇跡というカテゴリのカードがある。
そのカテゴリを持つカードは第一弾から第三弾までで10種類存在するが、実は第三弾の《不屈の闘志》を除いて、すべて橙のカードである。
これを偶然の偏りと考えるべきだろうか、それとも橙に奇跡が多い理由があると考えるべきだろうか。
そもそも奇跡とは何か。
2-006U 《懇願するエルフ》 |
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「祈れば、必ず奇跡は起こりますか?」 「いいえ、そうではありません。祈り自体が、ヴェスが我らに与えた福音であり、魂の癒しなのです。」
~修道院の問答~
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奇とは稀なこと、跡とは目に見える形での過去のことなので、既に起きたことのうち、非常に珍しいことが奇跡として捉えられる。
もっともこれは、われわれの世界での考え方だ。
ではアトランティカではどうだろう?
そもそもアトランティカの場合、すべての物事(実際には空白のページがあるが)が記載されている書物、クロノグリフが存在しており、その存在はある程度周知されている。
実際にクロノグリフを読み解くことはできないが、アトランティカの人々は、すべての物事が記載されている書物の存在を認知しているのだ。
そうした書物、いってみれば台本のようなものがあると知っていて、目の前で起きた珍奇な現象を、「奇跡」と感じられるだろうか?
それは筋書通りの内容を演じられているだけ(と想像できるはず)の映画を見るようなものだ。もちろん、そのとき一瞬一瞬では、それがとても輝いて見える。
だがあとから冷静になって、その場面で起きた出来事を振り返ってみて、「あれは奇跡だった」と思えるだろうか?
「書いてある通りの出来事だったのだ」と思ってしまいやしないだろうか?
だからガイラント以外の国では、奇跡は奇跡として認知されにくいのかもしれない。あまりにクロノグリフの力が強すぎるゆえ。
2-042R 《ガイランストライク》 |
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「「「「よっこらせっと!!!!」」」」 |
しかしガイラントの人間は違う。
彼らもクロノグリフのことは知っている。すべての出来事が記載されている(はず)の予言書のことを知っている。
だが奇跡的な出来事が起こったとして、それが既に予言されているからといって、彼らは斜に構えて、「どうせ予言の通りだったんだろう?」なんてことは言いはしない。
クロノグリフの記述を尊んでいるからだ。崇めているからだ。クロノグリフに反するオーラの存在を憎んでいるからだ。
彼らもクロノグリフのことは知っている。すべての出来事が記載されている(はず)の予言書のことを知っている。
だが奇跡的な出来事が起こったとして、それが既に予言されているからといって、彼らは斜に構えて、「どうせ予言の通りだったんだろう?」なんてことは言いはしない。
クロノグリフの記述を尊んでいるからだ。崇めているからだ。クロノグリフに反するオーラの存在を憎んでいるからだ。
クロノグリフの記述通りだったとしても、それが素晴らしい御業の上に成り立っているとすれば、彼らは素直にそれを受け止める。
だからこそ、過去を振り返ったとき、「あれは奇跡だった」と思えるのだろう。
だからこそ、過去を振り返ったとき、「あれは奇跡だった」と思えるのだろう。
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2 件のコメント:
なるほど、今回も勉強になりました。想像力を使ってフレーバーを読んでみるだけで、かなり面白く楽しめるものですね。
第3弾とは違って、第1-2弾はストーリーがほとんど進行しない中で無理矢理書いているので、むしろ苦しいです。
開発ブログ(13年9月10日のエントリ)によると、1-2弾はプレーンな世界観を作るためにあえてストーリーを進ませていないようなので、第4弾からはまた楽しめると思います。
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