アメリカか死か/17/02 Rescue from Paradise -2
「ヘイ、止まれよMungo。それ以上動いたら頭かち割るぜ」
Little Lamplightの看板のある洞窟の中、不思議な装飾が為された通路を進んだ先のバリケードのところで、そんな声が投げかけられてきた。声の方向を見れば、旧世紀の陸軍の兵士がするような恰好をした、幼い少年の姿が見える。
Ritaが何気なく手を振ってやると、「こっちは冗談言ってるつもりはないんだ。さっさと回れ右したらどうだい」と、さらなる強気な口調が飛び出してくる。
「Vault 87への道を探しているんだけど……、きみ、知ってる?」
とLynnが尋ねれば、少年は唇を捻じ曲げて応じた。「Vault 87? あそこは化け物だらけだね」
「行ったことあるの?」
「Little Lamplightの中を通る必要がある、が、そうさせるつもりはない。あんたらはMungoだからな。諦めて別の道を探しな」
幾つかの応答の中でわかったことはみっつ。
ひとつ。このLittle Lamplightと呼ばれる洞窟の先に、Vault 87へと通じる道があること。
ひとつ。MacCready市長を名乗る少年によると、Little LamplightではMungoを拒んでいるということ。
そして最後にひとつ。Mungoとは大人の意味であること。
それらを踏まえて説得を試みたものの、大人びた幼子は頑なだった。
力づくで通ろうと思えば、幾ら大人ぶっていても、相手は子どもだ。簡単に押し通れる。しかしそうした行動は躊躇われるものだ。
「あんたらみたいなMungoがいつも問題ばっかり起こすんだ。SammyやSquirrelだって、そのせいで……」
「なんかあったのか」
と話を聞き出してみれば、Sammy、Squirrel、Pennyという名のLittle Lamplightの住人3人が、Paradise Fallsの奴隷商人たちに連れ去られたらしい。
Paradise Falls。元はVaultという閉鎖空間で過ごしてきたRitaたちでも、Wastelandに出てからその名はすぐに知ることができた。奴隷を作り、奴隷を捕え、奴隷で商う、Raiderとはまた少し異なる危険集団だ。
「じゃあそいつら助けてやるから、入れてくれ」
とRitaが提案してみせると、MacCreadyはしぶしぶといった調子で承諾した。
「いいの?」
とLittle Lamplightを出てからLynnが訊いてくる。
「何がだよ」
「Paradise Fallsの奴隷商人のことはよく知らないけど、たぶんそのへんのRaiderよりは良い装備だろうし、危険だと思うよ。ほかに方法もあったと思うけど……」
「そりゃそうだろうが、子どもを助けんわけにはいかんだろう」Ritaはバイクに跨り、エンジンをかける。「行くぞ。乗れ」
Capital Wastealnd中央部からやや北。岩山に囲まれた地帯に、Paradise Fallsの看板は立っていた。
「要塞みたいだな」
バイクのエンジンを切って遠方から観察する。Paradise Fallsは戦前の建築物を最大限に利用しており、四方を硬い壁に囲まれているだけでなく、中央に見張り台もある。中に入るには唯一の門を通らなければならないようだが、そこには定期的に2、3人の見張りが入れ替わりで立っている。
「おれひとりで行こうか?」
とLynnが提案してきたが、Ritaは却下した。内部の状況がわからないのでは、子どもたちを助け出すのは容易ではない。人質にされてしまう可能性もあるのだ。
「誰か出てきた」
Lynnの声に反応し、RitaはInfiltratorのスコープを覗いた。
Paradise Fallsの門から出てきたのは、4人の人間と1匹のBrahminだった。行商だ。誰かと思えば、知った顔である。Doc Hoffだった。
ふたりはDoc Hoffの行商隊のところまで降りていく。行商のほうもRitaたちに気づいたようで、途中で足を止めた。
「いらっしゃい。こんなところで会うなんて珍しいな」
「あんたはParadise Fallsによく来るのか? 目的はなんだ」
「そりゃ、医薬品の行商に決まってる」とHoffは肩を竦める「Raiderどもだって、薬は扱うからね。で、きみたちは、奴隷を買いに来た……、ってわけじゃなさそうだな」
RitaはLynnと視線を合わせた。中に入ったことのあるDoc Hoffなら、何がしかの情報を提供してくれそうだ。彼があくまで医療品の商売をしに来ただけで、Paradise Fallsの奴隷商人たちと奴隷の売買目的で繋がっていなければ、だが。
「Paradise Fallsの中に入るには、どうすればいいの?」
「方法は3つだろうな。堂々と入るか、無理矢理入るか、こっそり入るか。堂々と入るんだったら、賄賂でも必要かもな。でなければ、奴隷。無理矢理入るんだったら、銃弾だな」
「こっそり入る場合は?」
「そこに下水口があるだろう」とHoffはParadise Fallsの壁の近くにある下水口を指す。「確かめたことはないが、内側に通じているはずだ」
「こんな狭いところ……、あ、いや、Ritaなら入れるか」
とLynnが言っので、「入れるか、阿呆」とRitaが言い返す。「こんなところに入れるのは子どもだけだ」
「そうだね。でも、子どもを助けるつもりなんだろう?」
Doc Hoffの瞳が眼鏡越しに光る。
「中に入ったときに新しい商品が入荷しているのを見たからね。きみたちがここに来た理由と無関係じゃないと思って」
「あんた……、なんか手助けしてくれんの?」
「怪我したら、Stimpakでも売るよ」
Little Lamplightの看板のある洞窟の中、不思議な装飾が為された通路を進んだ先のバリケードのところで、そんな声が投げかけられてきた。声の方向を見れば、旧世紀の陸軍の兵士がするような恰好をした、幼い少年の姿が見える。
Ritaが何気なく手を振ってやると、「こっちは冗談言ってるつもりはないんだ。さっさと回れ右したらどうだい」と、さらなる強気な口調が飛び出してくる。
「Vault 87への道を探しているんだけど……、きみ、知ってる?」
とLynnが尋ねれば、少年は唇を捻じ曲げて応じた。「Vault 87? あそこは化け物だらけだね」
「行ったことあるの?」
「Little Lamplightの中を通る必要がある、が、そうさせるつもりはない。あんたらはMungoだからな。諦めて別の道を探しな」
幾つかの応答の中でわかったことはみっつ。
ひとつ。このLittle Lamplightと呼ばれる洞窟の先に、Vault 87へと通じる道があること。
ひとつ。MacCready市長を名乗る少年によると、Little LamplightではMungoを拒んでいるということ。
そして最後にひとつ。Mungoとは大人の意味であること。
Challenge: Speech (28%) → FAILED
それらを踏まえて説得を試みたものの、大人びた幼子は頑なだった。
力づくで通ろうと思えば、幾ら大人ぶっていても、相手は子どもだ。簡単に押し通れる。しかしそうした行動は躊躇われるものだ。
「あんたらみたいなMungoがいつも問題ばっかり起こすんだ。SammyやSquirrelだって、そのせいで……」
「なんかあったのか」
と話を聞き出してみれば、Sammy、Squirrel、Pennyという名のLittle Lamplightの住人3人が、Paradise Fallsの奴隷商人たちに連れ去られたらしい。
Paradise Falls。元はVaultという閉鎖空間で過ごしてきたRitaたちでも、Wastelandに出てからその名はすぐに知ることができた。奴隷を作り、奴隷を捕え、奴隷で商う、Raiderとはまた少し異なる危険集団だ。
「じゃあそいつら助けてやるから、入れてくれ」
とRitaが提案してみせると、MacCreadyはしぶしぶといった調子で承諾した。
「いいの?」
とLittle Lamplightを出てからLynnが訊いてくる。
「何がだよ」
「Paradise Fallsの奴隷商人のことはよく知らないけど、たぶんそのへんのRaiderよりは良い装備だろうし、危険だと思うよ。ほかに方法もあったと思うけど……」
「そりゃそうだろうが、子どもを助けんわけにはいかんだろう」Ritaはバイクに跨り、エンジンをかける。「行くぞ。乗れ」
Capital Wastealnd中央部からやや北。岩山に囲まれた地帯に、Paradise Fallsの看板は立っていた。
「要塞みたいだな」
バイクのエンジンを切って遠方から観察する。Paradise Fallsは戦前の建築物を最大限に利用しており、四方を硬い壁に囲まれているだけでなく、中央に見張り台もある。中に入るには唯一の門を通らなければならないようだが、そこには定期的に2、3人の見張りが入れ替わりで立っている。
「おれひとりで行こうか?」
とLynnが提案してきたが、Ritaは却下した。内部の状況がわからないのでは、子どもたちを助け出すのは容易ではない。人質にされてしまう可能性もあるのだ。
「誰か出てきた」
Lynnの声に反応し、RitaはInfiltratorのスコープを覗いた。
Paradise Fallsの門から出てきたのは、4人の人間と1匹のBrahminだった。行商だ。誰かと思えば、知った顔である。Doc Hoffだった。
ふたりはDoc Hoffの行商隊のところまで降りていく。行商のほうもRitaたちに気づいたようで、途中で足を止めた。
「いらっしゃい。こんなところで会うなんて珍しいな」
「あんたはParadise Fallsによく来るのか? 目的はなんだ」
「そりゃ、医薬品の行商に決まってる」とHoffは肩を竦める「Raiderどもだって、薬は扱うからね。で、きみたちは、奴隷を買いに来た……、ってわけじゃなさそうだな」
RitaはLynnと視線を合わせた。中に入ったことのあるDoc Hoffなら、何がしかの情報を提供してくれそうだ。彼があくまで医療品の商売をしに来ただけで、Paradise Fallsの奴隷商人たちと奴隷の売買目的で繋がっていなければ、だが。
「Paradise Fallsの中に入るには、どうすればいいの?」
「方法は3つだろうな。堂々と入るか、無理矢理入るか、こっそり入るか。堂々と入るんだったら、賄賂でも必要かもな。でなければ、奴隷。無理矢理入るんだったら、銃弾だな」
「こっそり入る場合は?」
「そこに下水口があるだろう」とHoffはParadise Fallsの壁の近くにある下水口を指す。「確かめたことはないが、内側に通じているはずだ」
「こんな狭いところ……、あ、いや、Ritaなら入れるか」
とLynnが言っので、「入れるか、阿呆」とRitaが言い返す。「こんなところに入れるのは子どもだけだ」
「そうだね。でも、子どもを助けるつもりなんだろう?」
Doc Hoffの瞳が眼鏡越しに光る。
「中に入ったときに新しい商品が入荷しているのを見たからね。きみたちがここに来た理由と無関係じゃないと思って」
「あんた……、なんか手助けしてくれんの?」
「怪我したら、Stimpakでも売るよ」
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