展覧会/『War of Brains』/1-3弾ストーリー&フレーバー解読(後編)
化学ー朝と夜の歌ー
最後に化学世界である。
一見するとMAGNAの化学世界とE.G.UNIONの化学世界は人間中心のよく似た世界にも見える。だがその世界観は明らかに違う。
EGUの化学世界の科学者たちは、進みすぎた機械技術のために役目を追われたなれ果てたちだ。
EGUの化学世界はあまりに秩序がなく、その世界観は判然としないうえ、登場人物たちがみな《マッド・テンション》なためにその方向性が判然としていない。
一方で、MAGNAの化学世界の方向性ははっきりしている。
そもそも、MAGNA化学世界の物語は、謎の生物たちが地上に現れたことから始まる。
のちに明らかになるその性質から——《死闘の傍観者》と呼ばれることになる生物と《均衡の指導者》たちは、人間たちに力を与えた、その上で互いに戦い合わせた。
それだけではない。《死闘の傍観者》は戦い合っている人間たちの片方の陣営が有利になると、その陣営がすぐに勝利せぬよう、《死槍》を打ち込んで勝利を妨害した。
《死闘の傍観者》に反逆しようとも、その試みは無駄に終わった。《死闘の傍観者》の領域に入った者たちは容赦なくその力で排除されていった。
殺し合わせ、逃亡を封じる。この行為を《死闘の傍観者》たちは続けた。
それはさながら児戯のような行為ではあったが、彼らの中に遊びはなかった。
古代中国に、蠱毒と呼ばれる呪法がある。蛇だの蠍だの蜘蛛だのと毒を持つ生物をひとつの龜に封じて戦い合わせ、生き残った生物の毒を特別に優れたる呪具として用いる呪法だ。
さながらこの地上は蠱毒の舞台であった。彼らは探していたのだ。己らの意思——いや、遺志を伝えるに耐える存在を。
そして彼らは、それを死闘の生き残りの中に見出した。その者の名は、オズワルド。
具体的に《オズワルド》のどこが優れていたのか? それはおそらくは、己が己として意思を保つ力であろう。
《青の超越者 オズワルド》は特殊な——そう、特殊なところのある人間であった。肉体的な力強さはともかく、彼の自我意識は高く、己の主張をぶつけることについては誰よりも優れた男だった。
身体はいくらでも強化が利く。必要なのは、障害を乗り越えるための意志の力だ。
なぜならば、敵は意志を挫く存在——悪魔なのだから。
《ヘルヘイム》という存在が如何なるものなのか、それは明らかになっていない。
わかっていることはみっつ。
ひとつは《ヘルヘイム》が悪魔であること。
ふたつめは《ヘルヘイム》が停滞しつつある文明の種を判断し、継続と滅びを判断する権利と力を持っている存在であること。
みっつめは、《死闘の傍観者》たちが《ヘルヘイム》によって滅ぼされた文明の生き残りであること。
それまで、己を蠱毒の舞台に引きずり上げ、遊びのように力を分け与えてきた《死闘の傍観者》たちの目的がこの《ヘルヘイム》という明らかなる外敵存在に対抗するためのものであることに《オズワルド》たちは気付いた。
《ヘルヘイム》という名の由来は、北欧神話の世界を構成する三つの平面のうちの最下層、ニヴルヘイムから来ているのだろう。ニヴルヘイムは霧の国とも呼ばれ、その中の死の国ヘル(統治者である女王も同じ名)から、ヘルヘイムとも呼ばれる(ヘイムHeimは英語のHomeに近い意味)。
ゆえに《ヘルヘイム》がもたらすものは何もかも包み込むような暗黒であり、緩慢な死であり、身体を蝕む腐食である。《ヘルヘイム》は無秩序に死をぶち撒ける存在ではないが、停滞した世界と判断すれば、その力で文明を闇夜に導く。
《青の超越者 オズワルド》たちは《死闘の傍観者》らの力を借りて進化を果たした。だがそれはあくまで一時的なものである。真に死の霧を退けるためには、戦ってその存在価値を証明しなければならないのだ。
終曲
本ストーリー・フレーバー考察は、文化学の《竜騎士 ヴァイパー》の存在から「同一国家間ではなく、同一学問世界間でストーリーは関連しているのではないか?」という考え方から始まった。
神と龍の信仰からなる文化学、キメラが獣となった生物学、堕天使が戦を引き起こす医学に関してはある程度の繋がりが追えたが、現時点で学問世界が直接的に繋がっているように見える世界は残念ながら少ない。
では逆に、明らかに学問世界を通過している——すなわちふたつ以上の学問世界に跨って存在している存在はどれだけいるだろうか?
まずひとりは《華の女神 ヴェーダ》だ。
文化学世界のところで述べたが、「神」を冠するユニットは文化学世界の存在である。文化学世界は群雄割拠、戦乱の世であり、人々は神——あるいは龍を崇め奉っている。
本来であれば神に分類される《ヴェーダ》は、しかしなぜか医学世界に伝わっており、〈死地の華〉の信仰対象とされている。単純に信仰対象としてその名が残っているだけではなく、たとえば《神官 アイリス》であれば、彼女に仕えたという歴史さえある(もっとも、この「仕えた」という意味が直接主従関係にあったという意味なのか、それとも宗教的に神体として崇めていただけなのかどうかはわからないが、《決意の華王 アン・サリヴァン》のフレーバーなども《ヴェーダ》を直接知っているかのような言い方のように感じる)。
もちろん、「女神」という表現がある種の比喩である可能性もありえる。「白衣の天使」のようなものだ。だが彼女が文化学世界の神であるならば、SHEDOの文化学世界と医学世界は同一世界であり、時間的に見てもそれほど離れてはいない可能性がある。
もうひとり、同一文化世界から逸脱した存在として、《ナディア》が挙げられる。
彼女は文化学世界の存在だが、《冒険少年 ホーギィ》のフレーバーによれば、生物学世界に彼女の冒険記が存在していることになる。
では文化学世界とLAPIS生物学世界もまた、時空間的に非常に近い存在なのだろうか?
《ナディア》の目的は様々な景色を見ることである。だが世界には限りがある——もしその二本の足で歩くのなら。
もしその限界を突破できるとすれば、到達する場所は未知の世界だ。
ところで、《ナディア》には二つ名が存在しない。
他に二つ名が存在しない(人型の)キャラクタとしてはたとえば《ジェリス》でいる。彼女が本性を表したとき、《白界王 シン・ジェリス》となった。ゆえに二つ名がないことは、彼女の本当の性質がまだ明らかになっていないことを示すのだろう。それは次元を超えることのできる力かもしれない。
間接的に異文明間を繋ぐ存在としては、《ヘルヘイム》も挙げられる。
化学世界の《ヘルヘイム》は現在唯一の悪魔であるが、一方で医学世界には《堕天使 ジェノア》がいる。堕天使とは堕天した天使のことで、有名どころだとルシファーがそうだが、これはつまり悪魔のことである。
《ジェノア》の目的も未だ不明だが、あるいは《ヘルヘイム》と出自を同じくする存在なのかもしれない。
何にせよ、物語は未だ始まったばかり。物語の核心は次なるパックで語られるだろう——だとかなんとか言っていたらいつの間にかSeason Blastに移行していた。
←Season: A 中編へ
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6 件のコメント:
すごく面白い考察でした
コメントありがとうございます。
ウォーブレはストーリーやフレーバーが面白いので、もっと公式で露出してほしいですね。
最近このゲーム始めた者ですが、ストーリーがわからなかったので助かりました!
これからも読ませていただきたく思います。
コメントありがとうございます。
基本的にフレーバーに沿っているつもりですが、わりと妄想なところもあるのでご了承ください。
めっちゃ面白かった!!
ウォーブレを忘れてしまう前にこのブログを見つけられて良かった…
たぶんもう忘れた頃かと思いますがコメントありがとうございます。
結局最終弾の解読していないことをいま思い出しました。
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