展覧会/『War of Brains』/1-3弾ストーリー&フレーバー解読(前編)

8月 09, 2017


序曲


 2016年にAndroid/iOS用のアプリゲームとして登場したWar of Brains。その中にはLAPIS、TAOSIN、SHEDO、MAGNA、E.G.UNIONの五カ国が登場し、プレイヤーたちはWar of Brains中のそのいずれかの国の代表選手として、現実世界の電子戦争の道具として利用される――。

 これはあくまでWar of Brainsの中の世界であるWar of Brainsという世界のストーリーであり、War of BrainsというDTCGのストーリーではない。

 などと書いてもさっぱり意味がわからないのは、War of Brainsの世界が二重構造になっているからだ。
 わかりやすくこの構造を書き下すと、まずプレイヤーがWar of Brainsというアプリを起動すると、2091年の電子世界へと飛ばされる。この世界では2091年に世界電子平和推進条約が定められており、現実の戦争の代替品として電子戦争が行われている。
 そしてその世界でGoodbook Inc.によって提供されているデジタルカードゲームが『WAR OF BRAINS』という名前なのだ

 もう少しわかりやすく書くために、我々がアプリとして起動するWar of Brainsをウォーブレ、ウォーブレの中で遊ぶことのできるGoodbook Inc.のカードゲームWAR OF BRAINSをWoBと書くと、つまり、我々はウォーブレを通して2091年の電子世界にアクセスし、さらにそのウォーブレからWoBをプレイしているというわけだ。
 ナビゲータであるSINOやANILA、WHITEといった人物やストーリーモードはウォーブレの物語の中の存在である一方、アン・サリヴァンや獅子王、ウィットフォードさまといった人物はWoBの人物である。ゆえにDTCGとしてのWpB世界はウォーブレの世界のストーリーとは(少なくとも現段階では)関係がない。それゆえ、ウォーブレのストーリーモードの内容は現状ではフレーバーの考察やWoB世界観理解にはまったく役に立たないといって間違いないだろう。

 さて、WoB世界はあまりに《武闘派戦士 シリメツレツ》に見える。片や人と同様に思考するロボットが宇宙レベルでの戦いを繰り広げ、片や獣と人が合わさったような生き物が跋扈する。片や神々が戦い続ける一方で、片や金と暴力と権力の闘いが繰り広げられる。

 こんなふうに滅茶苦茶な世界観に見えるのは、我々が前提条件を知らないからだ。
 まずは代表的なLAPISのゲームチェンジャー(GC)、《覇王 白獅子》を見てみよう。《白獅子》のフレーバーでは、「白獅子が王として君臨する世界」があるということが述べられている。

A1-L-生物学《覇王 白獅子》
白獅子が王として君臨する世界。ここでは獣と人間が種の境界を越え共生していた。

 ここでいう「世界」という表現が国だとかの意味である可能性はないではないが、素直に考えれば、この世界は全体がすべてがそうした人と獣が共生する世界であり、なおかつそうした世界は(当たり前だが)一般的ではないということが理解できる
 つまるところ、LAPISの生物学世界と機械工学世界はまったくの別物ということだろう。

 となれば、それぞれの国ごとに2種類の学問があるため、2x5=10のまったく相互の関係がない世界があることになるだろうか? そんな雑多な世界観ということで完結してしまって良いのだろうか?
 いや、そうではない。そんなはずがない。これらの世界は、何らかの形で繋がっているべきなのだ――それを確かめるために、《龍狩兵 ヴァイパー》というカードを見てみよう。

A1-S-文化学《龍狩兵 ヴァイパー》
いいだろう…お前達の望み通り龍狩りを続けてやる。但し俺はもうここには戻らない。 
~龍狩兵 ヴァイパー~

 彼は龍狩り(ちなみに『竜』ではない。竜と龍はこうした世界観ではまったくの別物として扱われれることが多い)の戦士で、それはフレーバーにもカードテキストにも現れている。
 では『龍』といえばWoBではどの世界を連想するか?
《ヴァイパー》は【ドラゴン】を破壊できるカードだが、SHEDOには【ドラゴン】のカードは存在しない。

《導きの風 パルテノア》というニュートラルの例外はあるが、【ドラゴン】といえばTAOSINである。この国は【ドラゴン】にシナジーがあるカードがいくつかある。
 そしてその【ドラゴン】を見ていくと、あることに気付く。(《パルテノア》を含め)すべて文化学なのである。

 SHEDOの文化学である《龍狩兵 ヴァイパー》が【ドラゴン】に対して効果を持ち、TAOSINの【ドラゴン】が文化学である。
 このことから結論付けられる、WoB世界観理解のための前提条件はひとつ。

『WoBには5つの学問世界があり、同一学問世界は何らかの形でつながっている』
ということである。



文化学ー龍と神々の歌ー


 神の号を冠するユニットは、後述する〈死地の華〉では伝説的な存在である《華の女神 ヴェーダ》を除き、SHEDOの文化学にしか存在していない。

A1-S-医学《華の女神 ヴェーダ》
伝説の女神ヴェーダは、今尚「死地の華」に大きな影響を与え続けている。

 医学世界での伝説的な女神《ヴェーダ》が果たして文化学世界の神々たちとどのような関連を持つのかはここではさておく。
 文化学の世界では神の力は当たり前のように行使されており、5つの学問世界の中では最も力強く、神々と龍が支配する最も強大な世界観であるように感じられる。
 しかし現代でいう神話のように、神々たちが相争っている人間の天の上の世界かというと、どうもそうではないように感じる。

A1-S-文化学《蛇神 ナーガ》
私を呼び出す時は注意しなさい。機嫌が悪いとあなたに噛みついちゃうわよ。フフフ… 
~蛇神 ナーガ~

《蛇神 ナーガ》のフレーバーの「呼び出す」という表現を見る限り、文化学世界観は神々が存在しているというよりは、神々を呼び出すことが可能な世界のようだ。とはいっても、完全に創造された召喚体かというとそうでもなく、自立した意思を持ち力を行使するものの、世界への影響に関しては制限された存在なのかもしれない。あるいは古き神々の時代の化石のようなもので、力が限定的なのかもしれない。
 そうやって見ていくと、《古の巨兵 グオラス》のフレーバーで語られる《炎神 アゴウ》の復活も、この「呼び出す」ことの一種なのかもしれない。

A1-S-文化学《古の巨兵 グオラス》
炎神アゴウの復活は、永きにわたり封印されていたグオラスをも目覚めさせた。

 そういうわけで、どうやら文化学世界では群雄割拠の戦国時代で、各国では神々の力を借りて覇権を争っているらしい。

 そしてこの時代は神々の力の時代であるが、SHEDOとTAOSINの文化学世界が同一世界であるのならば、同時に龍の時代でもある。

A1-T-文化学《天を貫く王龍》
終わらぬ戦乱に終止符を打つべく、各国の将は金色の龍の強大な力を求めた。

 龍は西洋では悪魔の使いとされることもあるが、東洋では神の一種である。
 神ではなく龍を信奉する勢力があることからも、文化学世界での龍=神の一種という捉え方が理解できる。

A2-T-文化学《龍軍師 アドラ》
龍頭は龍を信奉しその生涯を龍に捧げんとする人兵である。

《炎神 アゴウ》などは他の神と争っているような描写があることから、神々対龍という構図というよりは、国ごとにさまざまな神を擁し、己の信仰を確固たるものにするために相争っている世界観というふうに見ることができるだろう――もし後述する医学世界と繋がりがあるのだとすれば、医学世界は《華の女神 ヴェーダ》の勢力が勝利したあとの世界なのかもしれない。

 さて、そんなふうに互いに神々と龍の力を使って食い合う文化学世界ではあったが、《炎神 アゴウ》によれば、そこに何かが紛れ込んだ。

A2-T-文化学《魔導神兵 ミルディン》
戦に紛れてろくでもねぇ奴が紛れ込んだな。
~炎神 アゴウ~

果たして「ろくでもねぇ奴」とは何か? 彼が敵対する神か? 「腹黒すぎる神」で知られる《土神 モルド・マルド》か?

A3-T-文化学《土神 モルド・マルド》
何故自ら戦うのです。その辺の生物にでもやらせなさい。
~土神 モルド・マルド~

 いや、たしかに《モルド・マルド》は性格最悪かもしれないが、彼はあくまで手段が卑怯なだけで、「戦に紛れて」はいない。

 ひとつ思い当たるとすれば《不徳なる策士 コウメイ》である。
 邪眼術と呼ばれる術法を操る《コウメイ》は竜と敵対しており、人間よりも遥かに強大な力を持つ冥龍や灰龍を操り、我が物とした。

A3-T-文化学《邪眼に狂いし冥龍》
取り合わぬ冥龍はコウメイの邪眼術にかかり、三晩で形勢を変え、七晩で天地を変えてしまった。

 神たる龍を従えた彼は世界を一変させてしまったが、彼の目的は未だ語られてはおらず、その真意を知るためには次弾を待つしかない。



生物学ー獣たちの午後の歌ー


 LAPISとE.G.UNIONというふたつの生物学世界は、片や人と獣が共存する世界、片や合成獣(キメラ)が人に反旗を翻す世界と、一見するとまったく異なる世界のように思える。
 だがこのふたつの世界ではひとつの共通する要素がある。それは「獣に他の要素が混じっている」ということだ。《覇王 白獅子》は明らかに獅子ではなく、人の要素が存在している。キメラたちはその名の通り、複数の動物を組み合わせた生物である。

A1-U-生物学《ゲノ・カスタム》
遺伝子操作による人工生物の開発は、研究者達によってその後も秘密裏に行われていた。

 先にキメラたちの饗宴を見てみよう。人間による戯れか研究か、はたまた戦争利用か、目的は判然としないが人工的に生み出された生物である彼らは、人間たちに怒りを感じていた。

A1-U-生物学《醜悪のギャルファー》
キメラ達は怒っていた。彼らを身勝手に生み出した研究者達とその世界に。

 とはいえ彼らは人工的に作り出され、檻に閉じ込められたままの身の上。どれだけ怒りに身を震わせようとも、それが世界を揺るがすことなどありえるはずがなかった。
 だがキメラプロジェクトの終了と、ほぼ時期を同じくして生まれた新たなキメラ――キメラとさえ呼べぬ生物、《新世界の王 メア》の出現によって、彼らの世界は一変した。

A1-U-生物学《テスタ・パンク》
その時、プロジェクトが終わりを迎え、キメラ達が反撃の狼煙を上げた。

 キメラたちは反旗を翻し、人間たちの虐殺を開始した。
《新世界の王 メア》を王と掲げて人間の撲滅を目指すキメラたち。

A3-U-生物学《暴喰臨塊 ギャルファリオン》
新しい世界を築こう。僕たちの未来を紡ごう。
~新世界の王 メア~

 彼らが目指すのは、人間たちの撲滅。
 だが果たしてその先に、彼らの未来はあるのか?

A3-U-生物学《バットラム》
力を貸す代わりに一つ答えろ。人間を滅ぼした後はどうするのだ?
~バットラム~

 キメラたちは人間たちが嫌いだった――思うがままに醜悪な生物として己らを作り出し、傲慢のままに命を弄ぶ彼らが。
 だが人間たちをただ殺し、彼らに成り代わるだけでは、今度は己らが人間になるだけではないのか? 最も嫌っていたはずの存在に。

A3-U-生物学《シャーベア》
ボクは怖いのです。このままだと、ボク達が彼らみたいになりそうなのです。
~シャーベア~

 だから彼らは人間に成り変わるのではなく、獣として生きる道を選択した。
 ――そして新たな世界が産まれた。

 キメラの反乱から幾年の月日が流れただろうか。
 新たな世界。それは雑多な遺伝子を残すキメラが【獣】として認められた世界だった。

 だがその新たな世界でも、また新たな暗き意思が蠢こうとしていた。

A1-L-生物学《不死梟》
不死身の梟の出現は、歴史の変革が起こる前兆といわれている。

 歴史の変革が起きる前兆と言われる《不死梟》の出現だけならば、王たる《白獅子》も一笑できただろう。だが山の占い師さえも、そう遠くはない未来に訪れる脅威の存在を予想した。

A1-L-生物学《山の占い術》
その山の占い師は、そう遠くない未来の山の脅威を予感した。

 果たしてその「脅威」とはなんなのか?
 そんなふうに訝しんでいるところで、かつて《白獅子》たちの里を去った《邪怨を纏う豪虎》が現れる

A2-N-生物学《山の女王 プルト・ナジャ》
豪虎? 見張りは何してたんっだい? 今すぐ獅子王に伝えな! 全速力だよ!
~山の女王 プルト・ナジャ~

 故郷を追われた黒虎――果たして彼が、その山の脅威だったのか。
 否、そうではない。彼は相も変らぬ乱暴者ではあったが、彼は山を襲うためではなく、守るために戻ってきたのだ

A1-L-生物学《黒般若》
突如として森に現れた碧い焔。徐々に拡がる焔の中で彼女は小さく息を吐いた。

 山を襲った脅威、その名は《屍刀 クロホムラ》。碧い焔を駆るその妖剣は、次々と山の獣と人間たちを葬っていった。その力はまさしく脅威と呼ぶほどのものであり、王たる《白獅子》ですら太刀打ちできるものではなかった。

A3-L-生物学《屍刀 クロホムラ》
今宵、妖剣『屍刀』が獲りし命が百千。絶望への執着こそ黒焔の力と恐れられ。

 あらゆる命を奪い去ろうとした《クロホムラ》。《白獅子》さえも打ち払い、もはや脅威はないものと思っていた。
 だがその前にとある獣が立ち塞がる。

「――おれたちが相手をしてやる」

 その獣の名は《覇獣 獅子王》。《覇王 白獅子》と《邪怨を纏う豪虎》が融合した姿である。

A3-L-生物学《覇獣 獅子王》
融合を提案したのは豪虎じゃよ。その奇跡がクロホムラの侵攻を退けたんじゃ。
~パシルの老婆~

「融合」とは何か?

 それは、忌むべき力。『ブースト』とも呼ばれるその力は、かつて獣たちが人間たちに味あわされた改造の証左。獣たちが合成獣キメラと呼ばれていた頃の能力の断片。人工的に遺伝子改造を受けた人工生命であるからこそ扱える、己の遺伝子を他の遺伝子と組み合わせる力。
 負の遺産であるそれを、片や王として世界を守るため、片や己の我を通すために機能させた。

A2-L-生物学《霊林》
邪怨とは、現世との離別が出来ぬ哀しき死獣の成れ、半幽質の仮初である。

 こうして融合を用いた《覇獣 獅子王》は《屍刀 クロホムラ》を追い払うことに成功した。
 しかし果たして《クロホムラ》とは何だったのか。何を目的としていたのか。その正体は、未だ明らかになっていない。

A2-U-生物学《エージェント ヴァネッサ》
エージェント達はキメラの死骸から遺伝子を採集していた。全ては組織のある目的の為。



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