The Superhuman Gambit

おれたちは兵士だったから
戦争の意味は知っていた
勝ったほうが全部とるのだ

おれたちは外交官だったから
嘘の意味は知っていた
といってもたいしておえら方じゃなかったけれど

おれたちは民主党だったから
政治の意味は知っていた
人間は人間だ

諸君はおれたちの土地を盗った
おれたちはそういう諸君を 理解しようとした
だが諸君はそこに住みついただけで その土地を愛さなかった

わが友よ
(たしかに諸君なりの友情でもってしばしば諸君はおれたちのよき友であった)

だがそれにしてもわが友よ
いったいどういうわけで諸君は
おれたちの子供の口元から
あのほほえみを盗んだのか?
(「盗人」 詩人トム・ホワイトクラウドの歌 『アメリカ・インディアンの詩』より)

Lynn
Lv. 2
S/P/E/C/I/A/L=8/3/10/5/4/8/2
Tag: Melee Weapon, Science, Unarmed
Skill:
[S]: M.Weapon=35
[P]: E.Weapon=10, Explosives=10, Lockpick=22
[E]: B.Guns=31, Unarmed=41
[C]: Barter=16, Speech=16
[I]: Medicine=18, Repair=13, Science=23
[A]: S.Guns=25, Sneak=25
Perk:
[Others] Lawbringer, Charge!
Equipment: Vault Jumpsuit


「そこの人類、動くな!」

 またか、と思うと同時に、今度はなんだ、と思った。
 Lynnは疲れていた。

 Dave共和国を朝5時に出てから4時間、何も飲まず食わずで歩き詰めだったというのもあるが、肉体的な負担よりも精神的な負担のほうが大きかった。
 Dave共和国の自称大統領であるDaveの言うとおり、Lynnが核シェルターVaultに入っている間に世界は様変わりしてしまったようだった。
 これまで出くわした生物はDave共和国で出会った人々を除くと四種類。明らかに尋常ではない目つきをして垂涎を撒き散らしながら追ってくる野犬の群れと、何か執着があるかのようにLynnに向かって飛来してくる巨大な蠅、皮が弛んだ生まれたてのような哺乳類、それに頭が二つある牛だった。牛以外は明らかに敵意剥き出しでおり、Lynnは必死で野犬と蠅から逃げた。

 おそらく200年前の核戦争による影響で突然変異した種が繁栄してしまったのだろう。まともな動物はもういなくなってしまったのだろうか。Dave共和国には人間がいたが、彼ら以外に人間はいないのだろうか。否、そもそも彼らもまともな人間だったのか。

 考えるのはVaultで目覚めたときに聞いた、Jamesという男の言葉だった。彼は、自分がLynnを目覚めさせたことを恨むかもしれない、と言っていた。それはこういうことだったのだろうか。核戦争が終わって200年、いまさら外に出たとしても人類を受け入れてくれる場所はないのだ、と。

 あてどなく彷徨って辿り着いたのは、町のような場所だった。


 Dave共和国にようにみすぼらしい家屋が犇めき合っているというわけではなく、しっかりとした煉瓦造りの建築物がゆとりあるスペースをもって点在している。この辺りは核戦争の被害を受けなかったか、戦争後に建てられた建築物なのだろう。戦争後に建てられたのだとすれば、それを建て、住む人間がいるということだ。
 人間がいるかもしれない。そう期待してLynnはその町の入り口へと近づいた。そのときに女の声が聞こえたのだ。

 振り向く直前にLynnが考えたことは、いきなり他人に命令するな、何が人類だ、などということだったが、振り向いてからはまったく別のことを考えた。こいつはなんだ、こいつが新しい人類か、と。

 女の声のした方向は岩場で、その頂点には奇妙な鎧を着た女がいた。昆虫を模したような黒塗りのてかりのある細身の鎧で、兜の部分は蟻のようなデザインだった。
「まずはあんたから血祭りにしてあげるわ……」と女は芝居がかった調子で指を鳴らした。「いきなさい、兵士たちよ!
 鎧を来た女の背後から出てきたのは大型犬ほどのサイズの蟻だった。巨大な節足動物の姿にLynnは息を呑んだ。

 女は高さ1.5メートルほどの岩場から飛び降り、しゃがんで着地した。鎧が重かったのか、着地して立ち上がるまでには結構な時間を消費した。その間に蟻が岩場のなだらかなスロープ部分を使って降りてきて、女の横に規則正しく整列した。
「ふっふっふ……、愚かな人類の運命もここで終わりよっ」
 女はLynnを指差して高笑いした。蟻よりもこちらのほうが怖かった。

「待てぇーいっ!」
 女とは逆方向から今度は男の声が聞こえてきたが、Lynnは振り向かなかった。振り向いている間に女や蟻から攻撃されるかもしれない。そう思ったからだったが、女が「き、きさまはMechanist !」と言ってLynnの背後を指差したので、振り向いて良いのかもしれないと思って振り向いた。
 女と同様、あちらと違ってこちらは何かをモチーフにしたというよりも、ブリキのおもちゃのロボットから外装をそのまま引っぺがして継ぎ接ぎしたような様子だったが、男も鎧を着て地面から1メートルほどの高さの岩場の上でポーズを決めていた。
「それ以上の暴虐非道は許さんぞ、AntAgonizer !」鎧を来た男の後ろには彼の着る鎧に似た装丁のロボットが三体いた。男は小さい岩から飛び降りた。「とぅっ!」


 蟻と女、ロボットと男がLynnを挟んで相対する。 

「おい、あんた!」とまた声が聞こえた。町のほうからだった。町の門前部分から小太りの中年男がLynnに向かって手招きをしている。こちらは鎧など身に着けておらずごくごく普通の一般的な服装だった。「危ないぞ! こっちへ来なさい!」

動いたら何かされるのではないかとも思ったが、何もしなくても変な二人組みに絡まれては危険であることには変わりがないので、Lynnは中年男のほうへと走った。


「あんた、旅人か?」と中年男がLynnを町の中へと迎え入れて言う。さらにLynnの服装を見て、「いや、Vaultの人か。災難だったな、いきなり巻き込まれて」と早口で言った。
「あれはなんですか?」

 Lynnは鎧を着た二人組みを振り返って尋ねた。彼らは「地球を核で汚染した人類に未来はない」だの「人類の未来を信じている」だのと浪漫溢れる台詞を言い合っていた。

見てわからんのか?」と中年男が顔を顰める。
「すいません、わかりません」とLynnは正直に答えた。
「見ての通り、馬鹿二人だ」
「なるほど」

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