エネルギーが尽きたのか、それとも吐き出すものを吐き出して気が済んだのか、恐るべき兵器、ARCHIMEDESは停止した。
無言のBooneに連れられて、Kutoは起動の最後のスイッチを押すためのタワーを降りた。
(怒ってる………)
Booneの目はサングラスで隠れて見えないが、たぶん怒っている。今は違うとはいえ、この基地に所属していた彼のかつて所属していた組織の人間をすべて焼き殺してしまったのだ、当然だろう。
もしかすると別れを告げられてしまうかもしれない
Kutoは青くなる。こんなところで彼と別れるのは厭だ。ちょっとした間違いから起こった出来事だというのに。

Kutoから離れていこうとする彼の背に向かって手を伸ばしかけようとしたとき、鋭い声が響いた。
「止まれ!」とそう言って銃を構えていたのは生き残っていたNCRの兵士だった。「こんなことを仕出かしたのはおまえだな! くそぅ、Legionのスパイか……、動くな! 正直に答えろ!」
「いえ、あの、わたしは……」Kutoは手を挙げる。「発電機を起動させろを言われただけで……」
「発電機を……、やはりおまえだな
NCR兵が銃の引き金にかけた指に力を込めるのがわかる。撃たれると思ったが、Kutoはやはり目を瞑らなかった。瞑りたくなかった。負けたくなかった。負けを認めるのが厭だった。

響いた銃声はNCR兵の持っていたサブマシンガンの乾いた音ではなく、長く打ち付けるようなスナイパーライフルの音だった。
脳天に穴を開けて吹き飛ぶように倒れるNCR兵に背を向けて、Kutoは硝煙の流れる銃を構えるBooneに抱きついた。
「Booneさん! ありがとうございます」
助けただけだ」とBooneはKutoを引き剥がそうとする。
助けてくれたから嬉しいんじゃないですか」
しばらく抵抗していたが、結局は引き離されてしまった。まだキスもしていないのに。

とりあえずここを離れるべきだというBooneの言葉に従って、Kutoたちを捕らえようとする生き残ったNCR兵を撃退しながらHELIOS Oneの外へと逃げた。

えらいことになっちゃいましたね………」
ようやく一息吐いて、Kutoは言った。
離れたところからでもHELIOS Oneは煌々と光り輝いて見える。あれが戦前の、世界を破滅させた輝きのひとつだ。
Booneは答えずにスナイパーライフルをKutoに向かって構えた。
「だれだ」
どうやらBooneはKutoに向かってではなく、背後にいる人物を牽制しているらしい。振り返るとKutoのすぐ背後にふたりの人間がいた。男女。
(こんな近くにいたなんて………!)
Kutoは特段感覚が鋭敏だったり、軍隊で気配探知の訓練を受けたというわけではないが、人より鈍いと思ったこともない。それなのにこんなすぐ近くに、ふたりの人間が接近するのを気付かなかったとは。

ふたりの人間のうち、女のほうが口を開く。
「NCRは害になる人間に対してわれわれを送る……」
「おまえらは、Rangerか」Booneは銃を構えたまま威圧する声で言う。
「おまえたちはNCRに害を与えた悪人だろう。そうではないと証明できなければ、いつかNCRが、わたしたちがおまえたちを殺すだろう
ふたりのNCR Rangerはそう言い捨てると去っていった。

「いやぁ、ほんとにえらいことになっちゃいましたね………
Kutoは改めて呟く。Booneは同意してくれなかったが、きっと心の中では同じことを思っていたことだろう。


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