(Super Mutant、じゃあないなぁ………)



 Rynnは地下鉄の上で目の前にいる非常識な巨体を見て考えていた。見た目は一見、現在Capital Wastelandの人々がSuper Mutantと呼ぶものそのものであるように見えるが、大きさが段違いだった。

 Super Mutant。人間を捕食するミュータント化した人間。

 Rynnが最初に会ったLeoという人物は、見た目はSuper Mutantではあったが人間くさい人物だった。
 だがそれが特例なのであるということを、彼はGalaxy News Radioまでの道中で思い知った。地下鉄まではバイクに乗っていたおかげで出くわしても逃げ切ることができたが、地下鉄であった個体からは逃げ回るしかなかった。地下鉄にはRaiderや、他にも化け物がいたおかげで、それらが同士討ちしてなんとか命からがら逃げ切ることができた。変身すれば対抗できるはずなのだが、やはり変身はできなかった。


(地下鉄か………)


 前回も変身できなくなったのは地下鉄に入ってからだった。やはり場所が関係しているのだろうか。
 なにはともあれ、今回も変身せずに生き延びることができた。
 地下鉄から出てGalaxy News Radioに向かってからは、数多くのSuper Mutantの死体に出くわした。何があったのだろうかと調べているうちに、巨大な爆発音を聞いた。ラジオ局のほうだった。

 そうして巨大な化け物と、それに相対する鎧を着た人物たちの戦いの場に出くわしたのだった。


(変身……、できているな)

 両手の平を見る。黒く、軽い。
 敵は巨大だ。

 だが変身さえしていれば、負けない。

 腰のナイフを引き抜き、投擲する。巨大なSuper Mutantの顔面に突き刺さり、爆発する。
 巨体が怯んだ瞬間に跳躍し、巨人の額に跳び蹴りを食らわせる。


 反動で左肩に着地。左手の先のほうへと向かって駆ける。左手の先には人間が握られていた。その人物を開放しようとするが、がっちりと固定されていて抜け出させることができない。

 Lynnは変身と同時に右腕に出現した手甲から針状のナイフを引き抜くと、巨人の手に突き立てた。巨人の身体に電流が走り、手の拘束が緩む。
 いつの間にか自分がこのスーツの機能を使いこなしていることに気付いた。しかし今はそんなことを気にしている場合ではない。

 巨人の手から拘束されていた人物を引き抜き、手から飛び降りる。
 空中で、捕まっていた人物の安否を確認する。目を瞑り、肩で息をしているので何処か骨でも折れているのかもしれないが、意識はある。命に関わるほどの怪我はしていない。大丈夫だ。

珍しいな………)

 着地の瞬間にLynnの腕の中の人物は薄目を開けたため、瞼の中のグリーンの瞳が見えた。緑色の瞳、玉蜀黍のような薄い金色の髪、そして浅黒いというよりはやや味がかかった肌の色。年齢はまだ若く、十代そこらの少女だった。目立つ容姿だな、とLynnは感じた。

 彼女の身体を下ろす暇もなく、Super Mutantの化け物が棍棒を手当たり次第に振り回す。スーツを着たLynnなら回避できるスピードだった。
 化け物のほうも簡単に回避されてしまうということを悟ったらしい。巨大な首を動かして、それまで化け物と戦っていた鎧を着た人物に視線をやると、そちらに棍棒を振り下ろす。
 Lynnは左手で少女を抱えたまま鎧の人物の前に立ち、右手を掲げた。棍棒を受け止めようとする。

 棍棒は、止まった。
 重い。

 両足が沈んでいく。痛みは感じなかったが、このままでは不味いということは明らかだ。動けない。
 しかも巨人はほとんど無傷のようだった。最初にLynnが投げた爆薬付きナイフも、怯んだだけでダメージは与えられていなかった。このままでは、押し切られて負ける。

「そのまま………」


 搾り出すような声が聞こえた。Lynnが左腕で抱えていた少女の声だった。彼女は巨大な射出機を巨人に向けていた。


 Super Mutantも少女の持つ武器に気付いたのか、視線が動き、棍棒にかかる力が緩まる。だがもう遅い


 引き金が引かれる。ランチャーから弾が発射されるのを確認した瞬間、Lynnは棍棒から逃れて少女を抱えたまま背後の鎧の人物と一緒に塹壕の影に倒れた。一瞬遅れて、巨大な爆発が巻き起こった。


 舞い散った砂埃が収まってから、Lynnは塹壕から顔を出して巨人の様子を確認した。巨人はランチャーから射出された弾丸で頭部を吹き飛ばされ、完全に死んでいた。

 腕の中の少女が息を吐いた。痛みを堪えるように目を瞑っている。
「楽勝だったな………」
 震える声で、彼女はそう言った。どこがだ、とLynnは思った。

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