1458年03月17日
359日目
蠍、針を取り戻し、巣穴を取り返さんと画策すること

Name: Rana
Sex: Female
Level: 19
HP: 55
Attributes: STR12, AGI15, INT13, CHA13
Skills:
【STR】鋼の肉体4, 強打4, 豪投4
【AGI】武器熟練3, アスレチック5, 乗馬2, 略奪3
【INT】訓練3, 戦略3, 観測術2, 荷物管理2, 治療2
【CHA】説得3, 捕虜管理2, 統率力4
Proficiency: 長柄武器179, クロスボウ178, 火器113
Equipment: 貴婦人の頭布, サランの鎖の上着, 痛んだ薄片の篭手, 粗雑なLeather Steel Greaves
Arms: エレガント・ポールアックス, 重い投擲斧, 軽弩弓, 大袋入りの鋼鉄のボルト
Horse: 重い駿馬
Companions: ユミラ




 カーギット・ハン国の領土となったバリーエ。がらんとした牢屋に入ってくる足音を聞いたとき、ラナは単に、また拷問が始まるのか、と思った。単純に戦争の情勢のために行われる詰問であればまだしも耐えられるが、男の愉悦を満たすためだけにそれが行われると思うと、如何に暗殺者として拷問に耐えるための訓練を受けたラナとはいえ、遣り切れないものがある。
 が、牢屋に入ってきた男はラナを縛り付けていた鎖を断ち切ると、服と武器、それに枷を外すための鍵を投げて寄越した。バートルだった。

「旅人から聞いた。アジズとユミラはアーメラッドへ連れて行かれたらしい」


 平素と変わらぬ表情で言葉を紡ぐバートルの様相は、しかし普通ではなかった。手傷を受けた様子はないのに、顎やら襟元に血の跡が付着しており、顔色は蒼白だった。
おれはもう駄目だ、などとは言わんが………」
「わたしに独りで行けと言うのですね」
 ラナは枷を外し、久し振りに身軽になった身体を衣服で隠しながら言葉を紡いだ。久し振りにまともな布地を身に纏うと思うと、ようやく人心地がつく気分だ。
「そうだ」
そんなことに構わずにハキム帝を暗殺しろ、とは言わないのですね」
 今度は、そうだ、とは言われなかった。



 バートルは、城を抜け出し街を抜けるまでは協力してはくれたが、そこまでだった。後は自分でどうにかしろと言わんばかりに、途中で馬首を返してしまった。城を抜け出す戦いの中でも何度も血を吐いていた。たぶん、もう長くは無いのだろう。

 ラナはそのまま単騎でアーメラッドへと向けて馬を走らせた。
 アーメラッドにアジズを移したのは、サラン朝との交渉のためというよりは、サランに簡単に奪われないようにするためだろう。元、サランの領土の中でも、バリーエは僻地だ。いざ襲われたときの対応がしにくい。一方でアーメラッドなら、すぐに守備兵を集められる。
 ユミラも一緒に連れて行かれた理由は解らないが、カーギットの貴族に見初められでもしたのかもしれない。奴隷として、政治的な取引に使われるのだろう。ラナの受けた拷問を考えれば、彼女の身も危うい。

 アーメラッドの街は、一見いつもと変わらぬように見えた。
(いや、出歩いている女子どもの数が少ないか………
 カーギットの兵士の数が多く、人々は警戒の様子を見せている。カーギットのサランの市民に対する対応はあまり良いものではないようだ。
 ラナは巡礼者の扮装をして、静かなアーメラッドの街に紛れ込んだ。


 牢までは簡単に辿り着けた。アジズは牢の中に居るだろうか。まだバリーエでの戦いから幾日も経っていない。ユミラも牢に居る可能性のほうが高いが、下手なことはできない。騒ぎを起こせば、次に潜入するのが難しくなる。
「もし……、あの、旦那さま」
 とラナはフードを僅かにずらし、髪と顔が見えるようにして、ひとり牢の前に立っている番兵に声をかけた。わたくし、サラン王ハキム帝の下で働いておりました奴婢でございます。此度、アジズさまが囚われたと耳にしましてアーメラッドまでやって参りました。今は風呂屋で働いておりますが、以前にアジズさまとは親しくさせていただいておりまして、できれば一度、一度だけでも顔を見て声をかけてやりたいと、元気付けてやりたいと、一目でも会いたいと、そう思ってやってきたのでございます。こちらにアジズさまはいらっしゃいますでしょうか。
「お願いします、親切なお方」
 ひしと手を握ったその兵士は、まだ歳若い男であった。幼さの残るその顔立ちからして、新兵だろう。顔を赤らめてラナの顔だの手だの胸元だのを見て、あ、ええ、などとしどろもどろになって応じるからには可愛らしいとさえ思う。きっと村から徴兵されたばかりなのだ。
「ええ、確かに、その、サランの王子という方は捕らえていますが………」
 その言葉を聞いた瞬間に、ラナは抱き締めるような姿勢で袖口に隠しておいたナイフで番兵の延髄を突いた。呼吸神経を破壊し、声を出すこともできずに倒れた番兵の身体から鍵を抜き取り、牢の鍵を開けた。

「ラナ!」
 運良く、牢の中にはアジズだけではなく、疲れた表情のユミラの姿もあった。ラナ、ラナ、ああ、良かった、と抱きついている。見たところ、まだ酷い目には遭わされていないようだが、怖かったのだろう。
 アジズはそんなユミラを励ましていてくれたらしい。殺されるかもしれない彼の恐怖は、せいぜいた奴隷の身分に落とされるだけのユミラのそれと比べて劣るものではなかったはずだが、よく耐えてくれたものだと思う。



 アジズとユミラを背後に庇いながら、ラナはアーメラッドの街を駆け抜けた。交代の番兵には見付かったものの、雑兵のひとりやふたり、隠しておいたエレガント・ポールアックスを振るえばどうということもなかった。


 アーメラッド市街を抜けた後、ラナとアジズ、ユミラは夜の闇に紛れて以前にも助けてもらったことのある、ダシュワル女公のシャルワ城に身を寄せることとなった。



「調子はどうだ」
 アーメラッドから抜け出した翌日、広間で休んでいたラナに声をと尋ねるのは城主のダシュワル女公であった。
「ええ、怪我などは特に有りませんでしたが……、少し疲れたんだと思います。気丈に振舞ってはいましたが………」
 ダシュワル女公は少しの間、呆然としていたが、やがて言い直した。「アジズさまのことではない。あなたのことだ。バリーエからこっち、働き詰めだろう」
「わたしは………」
 両の掌を見る。ずっとエレガント・ポールアックスや軽弩弓を握っていたその手は、酷く強張ってしまっている。腕や足は傷だらけで、しくしくと痛む。
わたしのことはどうでも良いのです。バリーエを奪い返さなくてはなりません。今、サランの情勢はどうなっているのでしょうか?」


「マンドハリル公がバリーエ奪還の作戦を立てている。明日にでも包囲戦の準備が整うはずだ」
「そうですか。では、わたしもその作戦に参加させていただきます」
 ダシュワル女公は眉間に皺を寄せた。「あなたが行かなくとも、300以上で囲んでいるのだから問題は無いはずだ。今のバリーエは、守備が整っていないからな」
「それでも、雑兵のひとりとして扱ってもらえれば、幾らかでも役に立つはずです。助けていただいて感謝します。アジズのことはよろしくお願いします」
「戦争に勝っても、女に得はないぞ」
「わたしは戦争に勝ちたいわけではありません」
 ラナはダシュワル女公に背を向けた。

 翌朝、ラナはシャルワ城から出立した。ダシュワル女公は見送りに来なかった。
 朝早くから出てきてくれたのは、アジズだけだった。
「ラナ、ほんとに行ってしまうのか」
「アジ、ダシュワルさまの言うことを聞いて、大人しくしていてくださいね」ラナはアジの傍にしゃがみ込み、彼の小さな身体を抱き締めた。「アーメラッドでは偉かったですね。よく頑張りました」
「ダシュワルは、ラナは行く必要が無いと言っていた」
すぐにバリーエに戻れます。少しの辛抱ですから」
 ラナはわざと、アジズの言葉から少しずれた内容を回答して寄越した。アジズの言葉に、真っ向から向き合える自信が無かった。

 シャルワ城からバリーエへ向かう途中、カーギットのパトロール隊と遭遇した。

サラン朝 対 カーギット・ハン国
サラン朝 13名
ラナ

カーギット・ハン国 24名
バリーエパトロール隊

結果 勝利



 練達したカーギットの騎馬兵に対し、馬は駄目にされながらも、ラナは辛くも勝利を収めた。

(不思議なものだ)
 どんなにかしてもハキム帝は殺せなかったのに、バリーエでもアーメラッドでも、そして今も、アジズを守るためならば簡単に敵を殺せた。
 単に弱いから、彼を守りたいというのではない。相手は小さな少年であるので、ハキム帝に感じるような、性愛の感情を抱いているわけではない。
 だがしかし、ラナはアジズを守りたいと思っていた。 

サラン朝 対 カーギット・ハン国
サラン朝 359名
マンドハリル公
ヌアム公
ビリヤ公
ラナ

カーギット・ハン国 115名
バリーエ守備隊

結果 勝利

 バリーエを囲む、サランの元帥たるマンドハリル公の軍に合流し、攻城戦に参加した。バリーエを落としたばかりで未だ守備兵の配備の整わぬ兵を蹴散らすのは簡単なことだった。



 だがこの先、簡単にカーギットの敵を蹴散らして領土を取り返していけるとは思えない。やはりサランも、バリーエを守備しなければならないわけだが、守備が整わなければ今度は逆に、またこの街を奪い返されることになってしまうのだ。



 ならば、攻め込まれる前に攻めるしかなかった。



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