アメリカか死か/19/03 Point Lookout -3
A Meeting of Mind
Tribalの教会で、Jacksonという男がTribalのリーダーであることを聞いたRitaは、彼を追って鍾乳洞窟へと向かった。
Ritaはそこで、Jacksonは真のTribalのリーダーから指令を受け、Tribalを動かしているということを知った。
真のリーダーは、まるで古いSF映画に登場する悪の科学者のような、培養液に浸かった脳だった。
Desmondのところに戻れば、その脳はかつてCalverts教授と呼ばれていた者のもので、対処法に心当たりがあるということだった。
RitaはPoint Lookout港湾の観覧車に妨害装置を取り付た。
やった、勝った。勝利だ。すべて終わった。パスワードは?
「違う!」
ひとりきりでPoint Lookoutの霧に包まれた街を歩きながら、Ritaは徐々に思い出し始めていた。
Calverts教授は、Ritaが幼い頃にVaultで見た映画に出てきた悪役の名だ。
Desmondも同じ映画に出てきたキャラクターだったと思う。
Point Lookoutのこの街も、違う映画だが見た覚えがある。
この場所は。
この事件は。
この世界は……。
すべてRitaの脳の中の出来事だ。
Vault 87で、RitaはEnclaveに襲われた。EnclaveもG.E.C.K.の場所を突き止めていたのだ。
だが彼らはGECKを入手しても、それをProject Purityのために使うことができないでいた。なぜなら、スーパーユーザーとしてProject Purityを実行するためのパスワードを知らなかったから。
Autmun大佐曰く、パスワードはたった3桁の暗証番号だということだった。だが総当たりで確かめようとすれば、すぐにProject Purityはロック状態へと移行してしまう。そうなったら、より厳重なセキュリティを潜り抜けなければ、実行ができなくなる。
だからEnclaveは、何をしてでもパスワードが知りたがった。
そしてRitaは、そのパスワードに心当たりがあった。
右目からどろりと血が溢れた。右目が痛い。右腕も。
Enclaveは、思い出すだけでも恐ろしい拷問をRitaに施した。
だがそれでもRitaは口を割らなかった。耐えた。耐えられたはずだ。いまも耐えている。
この世界も、おそらくはEnclaveによる拷問、というより自白強要だ。Ritaの脳を掘り起こして、どうにかしてパスワードを得ようとしている。
この世界から出なくてはいけない。この霧に包まれたPoint Lookoutから。
だが、どうすれば出られるというのだろう?
桟橋の先には船が停留している。あの船に乗ることができれば、この世界から抜け出せるような気がする。
だがどんなに走っても、船まで辿りつけない。桟橋が永遠に続いているかのように。
ついにRitaはその場にへたりこんだ。
もう疲れた。
右腕が痛い。頭が痛い。右目が痛い。
もう何も考えたくない。
それなのに、考え続けてしまう。
自分が諦めたら、パスワードを教えてしまったら、Project Purityはどうなるだろう。Vault 101の古き友、Rivet CityのBryanや、CitadelのBOS、Little Lamplightの子どもたちは。
「助けて………」
Ritaは、諦めそうになった。
だから助けを求めた。
「Lynn………」
遥か遠く、水平線の向こうに水飛沫が立ち上がった。何かが走ってくる。
海を走ってきたのは赤と白で塗り分けられたバイク。
唐突に現れたそれを見て、RitaはVault 87でのLynnの言葉を思い出した。
「BOSに新しいバイクを作ってもらったんだ。おれの意志で、近くに呼び出せるやつ。たぶん、もう完成したはずだから、急に目の前にバイクが現れても、吃驚しないでね」
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