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《トール》
 たとえトールは、時々すさまじく怒ったとしても、決して長い間怒っているようなことはありません。貧しい家族全員がどんなに恐怖にとりつかれているかということがわかると、彼の身体をかけめぐっていた血は静まりました。
「シアルヴィとロスクヴァをおれの召使いとして連れていく。それで一件落着だ」とトールは荒っぽく言いました。
『北欧神話物語』 1983/10/1 キーヴィン クロスリイ・ホランド (著), 山室 静 (翻訳), 米原 まり子 (翻訳)『十六 ウトガルドへのトールの遠征』p148より

 トールはアース神族(エシール)という神族のうちのひとりである。投げて当たれば稲妻を引き起こす魔法のハンマー、雷槌ミョルニルを持ち、これは稲妻の象徴である。

 世界的に見れば、おそらくは北欧神話で――あるいは他の神話も合わせても最も有名な神のうちのひとりであろう。というのも、アメコミでは「マイティ・ソー」(ソーはThorの英語読み)としてキャラクター化もされているほか、他のコミック、ゲームなどにも登場し、その力強い人物像や武勇伝も相まって人気は高い。


《雷電神 トール》
地を崩す巨人でも、 海を飲む蛇でもいい! 私を満足させる敵を、 さっさと連れてくるのだ!

 その外見的特徴は〈巨人殺し〉の異名を実現する巨躯と体躯、そして赤毛である。彼が怒りに震えたとき、その赤毛と赤髭が逆立ったと言われている。これらの特徴はDxMでも表現されている。

 空、雷鳴、豊穣、秩序などを司るが、特に重要なのは戦車を駆る戦神としての性質である。彼はミョルニルを携え、敵対する巨人族を叩き潰していく。
 しかし彼は無敗の最強であるかというと、そんなことはなく、彼が敗北するエピソードも存在する。特にそれが顕著に描かれているのは『ウトガルドへのトールの遠征』であろう。ロキとともに巨人族の本拠地ウトガルドへと向かったトールだったが、彼はまず道中で出くわした大巨人〈大きい野郎〉スクリューミルを攻撃しようとして、一切歯が立たずに彼に恭順の意を示す。
 次にウトガルドへ辿り着いたあと、巨人族と飲み比べをするも、杯の中身を僅かに減らすことしかできずに敗北する。
 さらに巨人族はトールに巨大な猫を持ち上げさせようとするが、胴体を持ち上げるだけのことしかできず、最後に巨人族と相撲で勝負をしようとするが、巨人族の王はトールを馬鹿にしてとある年寄りの乳母と戦わせるが、必死の抵抗かなわず最後には膝をついてしまう。

 あらゆることに敗北したトール(とロキ)は、「戦っても無駄だ」という巨人族の王の言葉に頷き、歓待だけを受けて王の館を去る。そして去り際に真実を告げられる。
〈大きい野郎〉は山を使って見せかけていた幻術であったこと――トールの攻撃によって山に陥没ができてしまったこと。
 飲み比べに使った杯は海と繋がっていたということ――トールが一生懸命飲もうとするものだから潮汐が作り出されてしまったこと。
 巨大な猫は《大地蛇 ヨルムンガンド》だったこと――世界をひと巻きするほどの巨大な化け物の胴を持ち上げたこと。
 相撲を取った年寄りの乳母は「老い」という概念そのものだったこと――トールが信じられないほど長時間長く耐え、負けるにしても片膝しかつかなかったこと。

 トールは強いが、時に負ける。負けるが、彼は最後まで諦めずに戦う――どれだけの傷を負っても。だからこそ、その雷で空気だけではなく、敵対する者の心さえをも震わせるのだ。


《ミョルニルの掲揚》
力を貸せ雷鎚! その雷を我らが心臓に、その熱を我らが拳に与えろ!

 彼を象徴する武器は雷槌ミョルニルである。先に述べたように、ミョルニルは基本的に投擲するためのハンマー(直接殴りつける場合もある)であり、投げつけると稲妻を撒き散らす(あるいはこれはトール自身の力かもしれない)。ゆえに彼は雷神であり、古代北欧では雷は彼が引き起こしているものとされる。また雷以外にも、潮汐、クレーター、魚の尾が薄いことなどはトールが引き起こした結果であるとされる。

 ミョルニルは柄が短いが、これは邪神ロキの妨害による。あるときロキはトールの妻であるシフの金髪を刈り取ってしまった。これに怒ったトールはロキを問い詰めたが、彼は神々たちの黄金を利用して小人たちに鬘を作らせると言って、黄金を携えて小人のもとへと向かった。
 ロキは実際にうまく小人たちを利用して見事な魔法の鬘を作らせたが、それだけではなく複数の神々の宝物さえも作らせた。それが標的を外さない戦槍グングニル、持ち運びできるほど小さくなる巨大船スキーズブラズニル、黄金を生み出す黄金腕輪ドラウプニル、空海駆ける猪グリンブルスティ、そして巨人を駆逐するための雷槌ミョルニルである。
 ミョルニルはトールが全力で使っても壊れないほど強力で、投げれば手に戻って来るうえ、ポケットの中に入れられるほど小さくすることもできる――ただしロキの妨害によって、柄だけが短くなってしまったのだ。

 最終的に神々に敵対することになるロキが、なぜこれらの道具を神々に与えたのか――その真意は謎のままであるが、間違いなく言える事実はアース神族たちはこれらの新たに手に入れた神々の宝物を使い、巨人たちとの戦争を有利に進めていったということである。とりわけ、最高の宝物であるミョルニルを。

 ちなみにミョルニルはあまりに強力すぎるため、時にそれを奪われたり、使えないようにされたりするときがある。
 巨人ゲイルロドの場合、ロキを使って歓待のふりをしてトールに武器を持たせないように館に招いた。このときはオーディンの愛人である女巨人グリッドが鉄の手袋と力が倍加する帯、そして杖を貸し出したことで窮地を乗り切った。
 また巨人スリュムの場合はさらに周到で、トールに気づかれないうちにミョルニルを奪い取って隠してしまった。ただし彼が欲を出して「ミョルニルを返して欲しければフレイヤを差し出せ」と言った結果、《暁陽神 ヘイムダル》の機知でトールはフレイヤに偽装して花嫁の格好をしてスリュムの元へと赴き、婚姻の儀式の最中にミョルニルを取り戻して彼を撲殺した。


《大地蛇 ヨルムンガンド》
巨体と共に持ち上げられた海水が、 陸を洗い流す。やがて龍は、 宿敵を目指し動き始めた。 
――「黄昏の記」より

 ヨルムンガンドは〈ロキの呪われた三人の子〉のうちのひとりである。彼らはロキと女巨人アングルボダの間に生まれたとされる化け物である。あるいはロキが「アングルボダの心臓を食らって」産んだとも言われる。

〈ミッドガルド蛇(ミズガルズオルム)〉あるいは〈世界蛇〉という通称で知られる通り、ヨルムンガンドは三層で構成された世界のうちの第二の平面、人間や巨人の暮らすミッドガルドを一巻きにしてさらに己の尾を噛むほどに巨大であるとされている。
 トールとヨルムンガンドの戦いは三度ある。一度は先に述べた『トールのウトガルドへの遠征』で、巨人族の王ウトガルドロキの魔法によって猫に見えるようにされたヨルムンガンドをトールは持ち上げようとし、胴しか持ち上げることが叶わなかった。これは見ようによってはトールの敗北だが、戦闘ではなく重さと力を比べた結果であるといえ、ヨルムンガンドの勝ちに結びつけるのは難しい。
『ヒュミルの歌』では巨人ヒュミルを屈服させるため、彼の牡牛ヒミンヒョールトの首を餌にしてヨルムンガンドを釣り上げた。陸に揚げられてミョルニルの一撃を喰らえば、あとはヨルムンガンドは針の絡んだ肉を引きちぎって逃げるしかなかった。
 そして最後の日ラグナレク。フェンリルとともに進撃したヨルムンガンドは因縁の相手であるトールと対峙し、やはりヨルムンガンドはこれまでそうだったようにトールの雷槌を受けて死亡する。そう、これまでそうだったように。

 勝利を収めたトールは九歩だけ下がると倒れ伏した。ヨルムンガンドの毒が彼を死に至らしめたのだ。歴戦の将であるトールとは違い、ヨルムンガンドは若かった。彼は成長していたのだ。






《フレイヤ》
 フレイヤはオーディンをじっと見つめました。
「これがわしの条件だ。彼らが望もうと望むまいと、人々はお互いにばらばらに引き裂くことなのだ」
 フレイヤは頭を下げました。「それでは、わたしの首飾りをください」と、彼女は言いました。
『北欧神話物語』 1983/10/1 キーヴィン クロスリイ・ホランド (著), 山室 静 (翻訳), 米原 まり子 (翻訳)『十三 ブリーシングの首飾り』p133より

 フレイヤはヴァン神族(ヴァニール)といわれる神族で、オーディンやトールらアース神族とは別の民族である。かつて戦いの神々アース神族はヴァン神族と戦争を行い、最終的に和睦にこぎつけた時、彼女は兄フレイや父ニヨルドともに和睦の使者としてアース神族たちの元にやってきた客分である。


《フレイヤの促成》
体が倍になりゃ、倍働けるし、 倍稼げる…と思うだろ? なぜだか食費は倍以上かかんだ。 
――大食いのガルザ

 フレイヤは豊穣神であるが、その性質の強さはむしろ兄であるフレイ(*1)のほうが強い。彼は雨の降る時期と大地の豊作を決める。豊穣というのはようは大地の恵みだが、これは出産・他産に通じることは少なくはない。なんとなれば、人々の反映に食料は不可欠だからである。


*1) 個人的な話だが、北欧神話世界ではフレイが最も好きだ。


 豊穣神は日本語では地母神とも表記されるとおり、女性である事が多い。しかし北欧神話ではその代表格はなぜかフレイという男性神である。豊穣神が女性であれば、それを表現した像は尻が大きかったり、乳房が大量にあったりすることが多い。では男性であればどうだろう、というのを教えてくれるのがフレイで、陰茎が大きい。


《豊穣神 フレイヤ》
万物に豊穣を。人々に喜びを。 我が愛はひとところに在らず。 あまねくすべてに、 この愛が届かんことを。

 ではその妹であるフレイヤはどうか、といえば、豊穣神としてもちろん重要な性質を持ってはいるのだが、その性質はフレイのような大地の恵みに通じるものというよりは、むしろ性愛や他産に偏っている
 
 DxMではフレイヤでは慈愛の性質を持ち、ユニットや自身を癒す。だが、実はフレイヤには慈愛などといった要素はない。むしろガーディアンの中で「HP=生命力を回復させる」という能力に最も近い要素を司るのは一見して強面の戦士でしかないトールである。
 既に述べたように、トールは空、雷鳴、豊穣、秩序、戦を司り、人々に最も親しまれた神である。彼の癒しの性質は、たとえば『ウトガルドへのトールの遠征』で語られ、この中で彼は殺した山羊の皮の上に骨を集め、ミョルニルを通じて祝福をして山羊を生き返らせるという魔法を使った。

 だが彼女にはそのようなエピソードはない。フレイヤは確かに美女であり、人々を惑わす存在だが、慈愛とは程遠いのだ。


《ブリシンガメンの慈愛》
首飾りよ―― この者に慈悲を。 消えゆく命に、 再び光を与えたまえ。

 イラストでは首に金の首飾り――ブリシンガメン(ブリーシングの首飾り)が見える(*2)が、そもそもからしてこのブリーシングの首飾り自体が慈愛とは程遠い由来である。


*2) ちなみにイラストでは肩に毛皮のようなものが見えるが、これは姿を鷹に変える力を持つ魔法の道具、鷹の衣であろう。


『ブリーシングの首飾り』では、彼女がこの首飾りをどのように手に入れたかの経緯が語られる。この黄金の首飾りは、もとは小人たちの作った黄金の首飾りであった。その美しさに見惚れたフレイヤは首飾りを買い取ろうとするが、小人たちが要求したのは黄金ではなく、彼女自身の身体であった。彼女は僅かの逡巡を経たものの、最終的にはその黄金の首飾りのため、醜い小人たちに四夜の間、身体を欲しいままにさせた。

 ゆえにフレイヤは性愛や出産そのものを司どりこそすれ、慈愛などとは程遠い――美しく、しかし己の美しさとそれを着飾るものを好み、若い男を愛し、しかし欲求のためなら己の身体を望むがままにさせることなど厭わない――そんな女なのだ。


《エインヘリヤルの召致》
奴らは朝から、死ぬまで戦うと、夕方にはしれっと蘇って、夜は朝まで宴をするんだとよ。正直、ちょっと羨ましいよなあ。

 むしろフレイヤは戦に結びつく。彼女は二頭の猫の曳く戦車を駆り、戦場で戦死者の魂を集める。一般に死んだ英雄――エインヘリヤルの魂はオーディンの館ヴァルハラに集められ、最終戦争に向けて互いに殺しあって鍛えるとされるが、実はそれは半分だけで、もう半分はフレイヤの館セスルームニルに集められる。

 フレイヤが戦死者の魂――エインヘリヤルを集め出したのはそもそも『ブリーシングの首飾り』の物語が関係している。
 醜い小人たちとの同衾は、実はロキに目撃されていた。彼がその事実をオーディンに告げ口すると、オーディンは怒り、ロキにブリーシングの首飾りを盗んでくるようにと伝えた。ロキがそれを実行すると、首飾りを取り戻しに来たフレイヤに対し、オーディンは交換条件を告げたのである。すなわち、人々の心を掻き乱して戦争を引き起こさせ、互いに争わせよ、と。そして戦争で生じた死体に魔法をかけ、死んでもなお戦う戦士を作り出せ、と。

 こうしてフレイヤは戦を象徴する女神となり、オーディンと戦死者の魂を分けることになったのである。
 

《フレイヤの戦猪》
まれに猪に車を引かせるのですが、あの子、どうにも気が荒くて…このあいだもトールに、無理矢理止めてもらいました。

 フレイヤといえば猫だが、他にフレイヤを象徴する動物として猪がいる。

 彼女自身の持つ猪として、〈戦いの猪(ヒルディスヴィニ)〉がいる。戦争を司るフレイヤの猪らしい名前だが、これはフレイヤの愛人オッタルが変身した姿とされる。
 また、こちらはフレイの持ち物になったものだが、小人たちの作品のひとつである〈金の剛毛〉ことグリンブルスティは黄金の猪で、これは豊穣のシンボルである


《狩猟神 スカジ》
白い息で居場所がばれるよ。死にたくないのなら、口に雪を入れな。

 フレイヤ本人から少し話が逸れるが、彼女の父であるニヨルドは実の妹と姦通してフレイとフレイヤを産んだとされている。

 そのあとで彼の妹であり妻である女性がどうなったのかは神話では語られていないが、ニヨルドの再婚話は神話で語られている。
 雷神トールに殺された巨人シアチの娘、スカジはたったひとりでアース神族たちの元へと乗り込んできて、賠償を要求する。彼女の要求した賠償内容はふたつで、ひとつは夫。もうひとつは「自分を心から笑わせること」であった
 スカジが求めていた夫というのは神々の中で最も美しいバルドルであったが、オーディンは足だけを見せてスカジに夫を選ばせた結果、彼女はニヨルドを選んでしまった。こうしていまひとつの経緯から結婚したスカジとニヨルドであったが、片や雪山、片や大海を司る者同士だったため、ほどなくして彼らの結婚は解消されてしまった。

 さて、スカジにしてみれば義理の娘となるフレイヤだが、DxMではダメージを受けたスカジを癒して何度も能力を発動させることができる、といった具合にふたりの相性は悪くはない。あるいはこれがフレイヤの女性らしさなのかもしれない。

 ちなみにスカジのもうひとつの要求――彼女を笑わせること、についての顛末だが、それはロキの項で語りたい。




《ロキ》
ロキは片手を上げて、頭を振りました。「おれは神々と神々の息子たちに、おれの辛辣な考えを明らかにしてきた。だが、おまえのために、おまえ一人のために、今は別れを告げようと思う。おまえの強さについては、残らず知っているからなぁ」
『北欧神話物語』 1983/10/1 キーヴィン クロスリイ・ホランド (著), 山室 静 (翻訳), 米原 まり子 (翻訳)『三十 ロキの口論』p259より

 ロキは邪神という表現もされるが、巨人族の息子なので正確には巨人族である(*3)。


*3) ただし祖父の死体から世界を作り上げたオーディンでさえも、もとは霜の巨人の孫である。ゆえに巨人や神といった分類はあくまで民族的なもので、種族的なものではないのかもしれない。


 彼は巨人族ではあるがオーディンと義兄弟であり、巨人族に敵対するアース神族たちとともに暮らしている。狡賢く嘘つきで、神々を混乱の最中へと巻き込むと同時に、危機的状況から助け出しもする。


《混沌神 ロキ》
誰でもいい――俺の退屈を紛らわせろ。そのためならば救世主にも、破壊者にでもなってやる。

 ロキは美形である――と北欧神話を再編した12世紀の詩人、スノリ・ストルルソンは述べている。なるほどDxMでのロキは整った顔立ちに美しい金髪と、十分に美形らしい容姿をしている。

 ところでフレイヤの項で述べたスカジの要求、「自分を笑わせろ」だが、父親を失って悲嘆に暮れる彼女を見たオーディンは、この状況で最も適当な人物としてロキを呼び出した。あるいはこのときオーディンが彼を呼び出したのは、スカジの父であるシアチが死んだ原因を作ったのは彼だったので、失敗したらその命で償わせようとでもしたのかもしれない。そして彼女を笑わせろと、そんなことを要求した。芸人相手でも無茶な要求である(*4)。


*4) 上島竜兵が「おいしい」と思うギリギリのラインである。


 しかしそこは機知に富むロキである。彼は山羊を連れてやってきた。そしてこう言った。
「山羊を市場に連れて行こうとしたんですが、農作物を運ぶために両手が塞がっていたんです。だから山羊が逃げないように、山羊を繋いだ革紐とわたしの外皮(*5)を結びつけたんです」


*5) 睾丸。


 そしてロキはスカジの――婚前の若い娘である――目の前で下穿きをずり下げ、どのように結んだかを実際に示して見せた――山羊と己の睾丸を革紐で結んだのである。そしてロキは山羊と綱引きを始めた。インドの修行僧やジョニー・イングリッシュがやれといわれても、こんなことはやらないだろう(*6)。


*6) 上島竜兵が「おいしい」と思うギリギリのラインである。


 最後には山羊が綱引きで負け、ロキに倒れこんできて、ロキはその勢いのままにスカジの腕の中に飛び込んだ。下半身丸出しのまま――いやもうそんなことはどうでもいい。幸いスカジは下ネタ大好き系女子だったので(*7)、スカジ大爆笑、みんな大爆笑。世界平和である。下ネタは世界を救う。


*7) たぶん手を目で覆い隠したまま、指の隙間から見ていたに違いない。


 とまぁ、こんなエピソードがあると知れば、このスカし顔を見ても、なんとなく溜飲が下がる想いになるのは自分だけではないと思う。


《ロキの悪戯》
「火を放て! い、いや放つな! 船が燃える! 海水をかけろ!」
「なあ、本当に俺たちこの隊長に ついていっていいのか?」

 ちなみにロキは男性神だが、時に女性の形態を取る。
 ロキが神々に敵対する『ロキの悪口』の歌では、彼はオーディンにこう言われる。「乳搾り女の格好をして赤子を産み、8年間の間、赤子に乳を搾られて過ごしていた」と(*8)。


*8) これに返してロキは、「オーディンは魔女の姿で人々の間を歩き回っていた」と返す。


 また岩の巨人が人間に変装して「工期以内にアースガルドの壁を修復できたらフレイヤと太陽、月を貰う」と言ってフレイヤと太陽、月を奪い取ろうとしたとき、ロキは雌馬に姿を変え、巨人の連れていた雄馬を誘惑し、その工期以内の完成を防いだ。

 時に彼はシフの髪を切ったりなどという悪戯をするが、最後にはそれを修復する。だがその性質は徐々に変化を示す。彼は光の神バルドルを彼の兄弟であるヘズを利用して殺し、神々に対して敵対宣言をしたのだ。
 鮭に姿を変えて川に乗り逃げ出そうとしたロキだったが、トールは恐るべき反射神経で逃げ出そうとした鮭の尾を掴んだ。ロキを逃さないようにあまりに激しくトールが掴んだため、鮭の尾は薄くなったとされている。


《療法手 シギュン》
愛する者のため身を挺することに、 何の迷いがありましょう。 さあ、我がすべての力、 お受け取りください…

 ところでロキには妻がいた。名はシギュンという。

 正反対の性格をしていたこの妻とロキの間には、ヴァーリとナルヴィという名のふたりの息子がいた。そしてロキの行動に憤慨していた神々は、その怒りの矛先をロキの家族へと向けた。神々がヴァーリに魔法をかけると狼へと変化し、彼は兄弟であるナルヴィに襲いかかり、喉笛を引き裂いて殺してしまった。ヴァーリが逃げ出すと、神々はナルヴィの腹を裂き、腸を取り出した。そして拘束したロキの身体と岩を、彼の息子――すなわちナルヴィの腸で縛り付けたのだ。
 彼は鍾乳洞に放置された。彼の上に設置された毒蛇とともに。蛇は毒液をロキの顔の上に滴らせた。それは絶大な痛みを引き起こし、ロキはその痛みに苦しんだ(*9)。


*9) DxMでのロキの顔の刺青は、あるいは顔に降りかかるこの毒液の暗喩かもしれない。


 ただひとり、ロキを見捨てなかったのは彼の妻であるシギュンだけだった。彼女は木の鉢で毒液を必死に受け止めようとし続けた。だがその鉢がいっぱいになり、捨てようとするとき、ロキの顔にかかる毒液を遮るものは何もなかった。
 毒液がロキの顔に降りかかるたびに、彼は苦痛で激しく身体を動かそうとしたが、彼自身の息子の腸は固く結ばれ、身じろぎひとつ許されなかった。それでも彼は痛みに悶え、激しく身体を揺すると大地は振動した。このため、北欧神話世界では地震の起源はロキとされる。

 この後、最終戦争ラグナレクの到来とともにロキは縛めを破り、神々への復讐を開始する。己の子であるフェンリル、ヨルムンガンド、ヘルらと、巨人族、そして《焔巨人 スルト》とともに。


参考文献

  • 『北欧神話物語』 1983/10/1 キーヴィン クロスリイ・ホランド (著), 山室 静 (翻訳), 米原 まり子 (翻訳)
  • 『図解 北欧神話』 2007/6/26 池上 良太 (著)

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