展覧会/『デュエルエクスマキナ』/ガーディアン考察(オリンポス:ギリシャ神話)
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オリュンポス十二神が一柱。処女神であり、永久の処女。
常に気高く、兜と槍と円盾で武装をしており、胸には山羊の皮で作られたアイギスという鱗状の短い胸甲をつけており、これには怪物メドゥーサの首と蛇の房が飾られている。戦争、知恵、学芸、織物を含む工芸、治金、医術、オリーブ栽培などを司り、学者には啓示を、発明家には霊感を、裁判官には公平を与える。ローマ神話ではミネルヴァ。
紀元前480年に破壊されたあとに再建された世界遺産、パルテノン神殿はアテナに捧げられたものである。
ティタン神族メティスは「男子を産めばその子が父親を殺す」と予言されていたが、天神ゼウスによって孕ませられる。
予言を知ったゼウスはメティスを丸呑みし、子どもが産まれないようにしたが、その後に恐ろしい頭痛に苛まされた。耐えきれなくなったゼウスが鍛冶の神ヘパイトスに頼み、鑿で頭を割ってもらうと、割れた頭の中から背の高い灰色の目の美女が槍を振りかざし現れた。これがアテナである。
このような経緯で頭から産まれたため、知恵を司る女神とされるとともに、アテナは聖獣として知恵の象徴である梟を従えている。
ちなみに聖獣は聖なる蛇である場合もある。
ギリシャ神話には《航海長 イアソン》に代表される英雄が7人おり、七英雄と呼ばれる。天神ゼウスとアルゴス王の娘ダナエとの間に産まれたペルセウスも、その七英雄のひとりであり、アテナの胸甲アイギスは彼の物語に由来するものである。
懐胎したダナエの父、アルゴス王アクシリオスは「孫によって殺される」と予言されていた。そのためペルセウスを恐れ、娘ダナエともども木箱に詰めて海に棄ててしまった。
しかし幸運にも木箱はセリポスの浜辺に流れ着き、セリポス王ポリュデクケスに保護される。
美女、ダナエに魅せられたポリュデクケスは、ペルセウスが成長するにつれてその存在を疎ましく感じ始め、ペルセウスを殺すために女怪物ゴルゴンであるメドゥーサの討伐へ向かわせる。
メドゥーサはその顔を見るとあらゆる生き物が石化してしまうという能力を持つ、恐ろしい魔物であり、逞しい青年に成長したペルセウスにとっても、勝ち目の無い相手であった。
だが討伐前に朝日に祈りを捧げていたペルセウスの前に、異母きょうだい(*1)であるヘルメスとアテナが現れ、それぞれ黄金の剣と盾を与える。
*1) 言うまでもなく父はゼウスである。
アテナの盾は鏡のように磨かれており、ペルセウスはこの盾越しにメドゥーサを確認し、ヘルメスの剣でその首を落とすことに成功した。
ペルセウスはこのメドゥーサの首の石化能力を用いて、将来の妻となるアンドロメダや、ポリュデクケスと無理矢理婚姻されそうになっていた母ダナエを助けた。
最終的にメドゥーサの首はアテナに献上された、胸甲にこの恐ろしい首を取り付けた。こうしてアテナのはあらゆる脅威を跳ね返すものとなったのだ。
なお、現代でもアテナのアイギス(イージス)は艦載対空システムの名称として用いられている。
ギリシャ神話の神々で性格の良いやつは殆どおらず、アテナもその例外ではない(*2)。
*2) 例外を挙げるのであれば、慈悲のヘスティア、火のプロメテウス、正義のアストライアくらいのものだろう。
リュディア生まれの女アラクネは優れた織物の腕前を持っていて、いつもそれを自慢しており、機織りの守護神アテナにさえも負けないと吹聴していた。アテナは始め、老婆に姿を変えてアラクネを嗜めようとしたが、それが功を為さないと知ると、本来の女神の姿でアラクネと織物勝負を挑んだ。
アテナが作り上げた織物はオリュンポス十二神とそれに罰せられる人間を描いたものだったが、アラクネは神々が人間の女に手を出そうとしている情景を描いた。アラクネの作品は非の打ち所のない出来ではあったが、アテナは織物に神々を貶めるような内容を織り込んだことに怒り、織物を引き裂いたうえにアラクネを蜘蛛に変えてしまった――こうして、現代でも蜘蛛は織物を作り続けている。
オリュンポス十二神が一柱。海、地震、気象、馬と馬術などを司る。ローマ神話ではネプチューン。
豊かな髭と髪を持ち、力強く威厳のある老人の姿をしており、緑の衣を纏い真珠の冠を被っている。手には三又の矛を持っていることが多い。聖獣はイルカで、戦車を引かせることもある。
余談だが、フィレンツェのシニョリーア広場には1575年にはネプトゥヌス(ポセイドン)の噴水があり、噴水の中央に裸身のポセイドンが飾られているが、角度によっては手の位置も相まってでかいおっさんのしょんべん小僧にしか見えない。
ポセイドンは海や地震を司るとともに、馬を作り出してその飼育法や馬術を人間に教えたことから、競馬の守護神でもある。
彼は気まぐれであり、気前が良く財宝をたくわえたり、様々な生き物を作り出したり、海のニンフたちを驚かせたり楽しませたりする一方で、ちょっとしたことで微笑みが怒りに轉じて竜巻や嵐、地震を引き起こしたりする。
ポセイドンはかつて、アテナとアテナイ・アッティカの領土をめぐって争ったことがある。このとき、彼らは最終的に武力ではなくそれぞれ奇跡を示すことで雌雄を決しようとした。
アテナイのアクロポリスの丘で、最初に奇跡を起こしたのはポセイドンだった。彼が三又の矛を振り上げて岩を打つと、そこから勢い良く塩水が吹き出た。
それに対抗してアテナが槍で地面を打つと、今度はそこから小さなオリーブの芽が生え、大樹として成長し、大きな実をつけた(*3)。
*3) アテナがオリーブの栽培も司っているのはこのためである。
判定をしたオリュンポスの神々とアッティカの王族はふたつの奇跡を比べてアテナに軍配を上げたが、怒りの収まらないポセイドンはアッティカ地方に大洪水をもたらしたとされる。
前述の通り、馬を作ったのはポセイドンだが、これは収穫の女神デメテルのための贈り物である。
その美しさにポセイドンは何度もデメテルに迫ったが、彼女はポセイドンを嫌がって陸地に逃げ込んでしまった。そこで彼は誰も見たこともないような美しい陸上生物を送ろうとした。彼は様々な試作を作り――それはたとえば、カバ、キリン、ロバ、シマウマなどである――最終的にあらゆる生物よりも美しい陸上生物、馬を完成させた。
また、彼の妻はデメテルではなく《海侵神 アンピトリテ》だが、彼女の嫉妬を宥めるための贈り物としてやはり作り出されたのが、ポセイドンの聖獣となったイルカである。
天空神ゼウス、海洋神ポセイドンの兄弟であるが、オリュンポス十二神には数えられない冥府神。ローマ神話ではプルート。
地下世界を支配しており、陰気で変化を嫌い、緩慢で陰険、嫉妬深くケチであるとされる(*4)。
*4) わたしがハデスのGPが嫌いだからこんなことを書いているわけではない。念のため(*5)。
*5) でも嫌われたんだろうなぁ……ハデスくんってさぁ、そういうタイプだよね(*6)。
*6) いやまぁ、きみの人生だからいいんだけどね、うん。ちょっとGPを見直したほうがいいかなって思うよ。
ハデスは攫って無理矢理妃とした美女ペルセポネをはべらせて黒檀の玉座に座り、亡者たちの訴えを聞くふりをしながらそれを退けることを好む。
あまりに嫌われていたので彼はハデスという名の本名で呼ばれることを避けられ、あえて良い名前として「プルトン(豊かな者。ローマ神話ではこちらの名で知られる)」と呼ばれた。
地下から植物を芽生えさせるということで豊穣性と関連づけられたり、富の神として信仰されることもある。手に持っている杯はコルヌ・コピアエと呼ばれる豊穣の角杯である。ワカメに関するエピソードは特にない。
神話ではままあることだが、神々のエピソードは語り継がれるうちに変化していき、人気のある神々に他の神々のエピソードが移ってしまった結果として、あまり物語に語られなくなってしまった神々も多い。
たとえば前述のポセイドンもそのひとりだが、物語にときたま登場したり、単独で像が作られたりするだけワカメよりはマシである。
ゼウスが天空、ポセイドンが海洋を支配するのに対し、ハデスは地下世界を支配する。ギリシャ神話ではそもそも地下は死者の向かう冥府であり、神々からも人間からも疎まれる存在である。ゆえにハデスはオリュンポス十二神にも数えられておらず、その名もほとんど露出することがない。ハデスには祀る神殿すらほとんど存在しない。唯一記録に残るのは、エリス地方にある神殿である。
ちなみにギリシャ神話の冥府の物語というと、日本神話のイザナギ・イザナミの物語に通じるオルフェウスの物語が代表的(*7)だが、その物語でもハデスは僅かにしか登場しない。
*7) 彼の妻エウリュディケが毒蛇に噛まれて死んだとき、オルフェウスは自慢の竪琴を武器に妻を冥府から連れ出そうとするが、最後に約束を破って振り向いてしまい、妻の朽ち果てた姿を見るとともに冥府から連れ出すことに失敗する。これはイザナギが妻のイザナミを冥府から連れ出そうとして失敗する物語と符合する。
あまりにハデスについて書くことがないので、ゼウスらオリュンポスの神々が誕生した物語についてここでは解説する。ちなみに最初に述べておくと、特にハデスの活躍はない。
はじめに生まれたカオス(虚空)の子がガイア(大地)、タルタロス(冥府の最深部)、エロス(原初の力)であり、ガイアが生んだのがウラノス(天)、山々、ポントス(荒海)である。その後、ガイアは息子であるウラノスを夫としてテミス(掟)、オケアノス(大洋)、テテュスなどを生み、さらに100手の巨人へカントケイルや単眼のキュクロプスなどを生んだ。しかしウラノスはこれらを嫌い、タルタロスに投げ込んで閉じ込めてしまったため、母のガイアは夫を殺して子どもたちの恨みを晴らすため、末子クロノスに黄金の斧を渡した。彼はガイアとウラヌスが性交をしているときにいきりたった彼の男根を切り落として海に投げこんでしまい、彼から支配権を取り上げたとされる。
ちなみにこのときに海に落ちた精液から美の女神アプロディテが、地に染み込んだ血からギガス(巨人族)とエリニュス(復讐の三女神)が生まれたとされる。
その後、クロノスは妹であるレアを妻とする。レアとの間に産まれたのがヘスティア、デメテル、ヘラ、ハデス、ポセイドンであるが、クロノスは天の神によって「息子に殺されるだろう」という予言を受け、子どもたちを産まれた端から飲み込んでしまう(*8)。
*8) ゼウスもそうだが、息子に殺されそうになると洋画のアスピリンみたいに妻や子どもを飲み始めるのがギリシャ神話である。
子どもが食われてしまうことに嘆き悲しんだレアは、密かに計略を案じてクロノスに気づかれぬように末子ゼウスを産み、育てる。成長したゼウスは薬で飲み込まれたきょうだいたちを吐き出させ、力を合わせてクロノスとそのきょうだいであるティタン神族とともに戦い、最終的には勝利する。
勝利を得た神々の中で代表格であるゼウスは兄であるポセイドン、ハデスとともに籤を引き、ゼウスは天空、ポセイドンは海、ハデスは地下(冥府)を支配するようになったという。
神々が世界の支配権を得たのちに襲ってきたのは、《万魔帝 テュポーン》であった。
ガイアがタルタロスと交わって産まれたテュポーン(台風)はどんな山よりも巨大で、頭は天に届かんばかりに高く、両手を広げれば世界の端から端まで届き、肩からは百の龍の頭が生えており、腰から下は大蛇の足になっていた(*9)。
*9) ぼくのかんがえたさいきょうのかいぶつギリシャ神話版。
オリュンポスの神々から支配権を奪うため、火の岩を投げながら攻め込んできたテュポーンに恐れをなし、ほとんどの神々はエジプトまで逃げてしまった。唯一ゼウスのみが残り、一度傷ついて捕まるが、最終的には勝利を果たす。
ゼウスはシチリア島のエトナ山にテュポーンを押しつぶしたため、シチリアと南イタリアに閉じ込められたままのテュポーンは、ときおり地震で地を揺るがし、炎の息でエトナ火山を噴火させるというお話。
最後に襲来してきたのはウラノスの血から産まれたギガスたち(ギガンテス)である。この襲来に対し、神々が受けていた予言は「神々だけでは巨人族を滅ぼすことはできないが、人間の英雄によって勝利を得るだろう」というものだった。そのため神々は人間の英雄ヘラクレスを呼び寄せ、オリュンポスの神々と天体や星辰の神々、海の神々も含んだ大決戦となる。
この戦いは神々と巨人族の戦い――ギガントマキアとしてギリシア人が最も好む美術の主題になったといわれる。
■参考文献
- 『ギリシア神話物語事典』, 原書房, 2005/10, バーナード エヴスリン (著), Bernard Evslin (原著), 小林 稔 (翻訳).
- 『図説 ギリシャ神話「神々の世界」篇』, 河出書房新社, 2001/5, 松島 道也 (著).
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