『雲歩き』制作録 物理挙動編

11月 08, 2025

  10月後半〜11月頭の進捗報告です。



 今回のイラストは『霜夜ゆく/Cold Bed on Route』が全機種合計で1万本突破ということで、販売数記念&感謝のお花少女です。

 フラワーガール的なイメージで冬村さん(@huyumura)にお願いしました。髪型もふわっとさせておしゃまなかんじ。


 外伝の『犬と狼の間』では名前が出ているのですが、いまだに〈少女〉と書いてしまう。べつに隠しているというわけでもないのですが、慣れの問題で。


 さて、今回の制作録は以下の通りです。


  • 🟦霜夜ゆく、全機種合計1万本ありがとう
  • 🟪雲歩き、物理の時間
  • 🟪スローモーションとカメラ移動


 詳細は以下から。






🟦霜夜ゆく、全機種合計1万本ありがとう

 久しぶりに販売本数数えたところ、全媒体合計1万本! めでたい。ばんじゃらほい。

 返品含めると超えていないかも。それでも四捨五入すると1万本です。遊んでいただきありがとうございました。


 パブリッシャーはいねぇ、イベント出展も(初期のINDIE Live Expoくらいしか)してねぇ、SNSでも普通の宣伝以外してねぇ、交流もねぇ、何もわからねぇ有料の処女作にしてはけっこう売れたのでは……と思うのですが、まったく横のつながりがないので一般の個人のデベロッパーがどのくらい売れるものなのかよくわかってない。

 

 最近出したSteam版はそこまででもなくてAndroidとどっこい程度。やはりiOSがいちばん強い。

 最初期のiOS版(SwiftUI)発売から考えると4年くらい経っているし、価格的にそこまでなので実入りは大したことがないですが、愛されてくれることは嬉しいものです。


 ちなみに自分は価格とコンテンツは特に意識していなくて、コンテンツの深さで価格が変わるとは思っていません。だから基本的に語呂合わせとかで値段決めている。

 ただ、ハードルだとは思っています。安いほど買いやすく、高いほど買いにくい。霜夜はお求めやすい値段ですが、中身があまり暖かくないのでもう一歩入口を広げた作品も出したいところ。


 こういうときに今まで出していなかった設定資料とか出せればいいのだけれど、イラストお願いしたときのラフとかは資料集に出しちゃっているし、基本がテキストなので特にないな……「〈少女〉が密航者じゃなくてプリキュアだったら」というifストーリーでも書こうかな……と思いましたが、プリキュア知らないので諦めました。


 ふと思い立って探したら最初期(15年くらい前)に『冷たい方程式』を読んでゲームの設定を思いついたときの最初の会話部分と、エンディングに直行する会話部分のテキストが出てきたのでせっかくなので掲載しておきます。

 当時のタイトルは『世界でいちばん冷たいところ』でした。

 文章にはほとんど手を加えず誤字脱字を直しただけの状態なので、だいぶ稚拙でいまいちです。なので折りたたみにしておきます(クリック/タップで展開)。あと〈少女〉がすげぇ美少女っぽい言動。改めて見ると、この状態だとキャラが普通で面白くないですね。


オープニング

 4ケルビンの宇宙は冷たい。

『寒いですか?』

 モニターに現われる文字に対して、「少し」と彼は答える。


「あとどれくらいだ?」と彼は尋ねる。

『もうたいしてありませんよ。あなたが眠っている間に航海の大部分は消化しました。だからあなたを起こしたんですよ。着陸の準備に入ってもらうために』


 1週間ほど前に星間宇宙船が開拓惑星オングルからSOS信号を受け取った。疫病が発生したため、すぐにワクチンを送って欲しいという報せだった。幸いにもその疫病の特定は簡単で、ワクチンも星間宇宙船にあった。

 この船、宗谷は開拓惑星へとワクチンを届けるために星間宇宙船から射出された最終緊急艇だ。火急の事態を想定して速度と航行距離を上げるために余計なも のは乗せず軽量化に軽量化を重ねて燃料さえも機体から切り離し、たったひとりの乗員とそれをサポートするAI、エンジンと母機から射出されるレーザーを受 ける止める受光パネル兼パラシュートだけとなったこの船は、人類史上最速の宇宙船という名に恥じぬ速さで開拓惑星目前まで来ていた。唯一のパイロットである彼はつい先日、AIによって起こされたばかりだ。


 開拓惑星はまさに開拓惑星という名前通りの惑星で、周囲に人間が居住可能な惑星もなく、ゆえに今回のような緊急事態があった場合には自力でどうにかする しかないという立地にあった。今回の疫病騒ぎは開拓惑星単位ではどうにもできないものであり、近くの宙域(といってもSOS信号がぎりぎり受け取れるよう な遠距離だったが)をに最終緊急艇を乗せた星間宇宙船が飛んでいたのは幸いだった。

 疫病での死者はまだ出ていないものの、放置しておけば惑星に居住している半分の人間が死ぬ可能性もある危険な病気だ。この船には数多くの人間の命が懸っている。自然と緊張する。


 最終緊急艇のパイロットは緊急事態においては任務遂行の障害となるあらゆるものを跳ね除けて自分の任務を遂行しないといけない。そのためには超法規的も 許されており、たとえば船に乗り込んでいた密航者などがいた場合は許可を得ることなく(といってもたいていの場合は最終緊急艇が飛んでいる宙域は光でも他 の惑星に到達するまで何日もかかるような場所なので、許可を得ようとしてもまず無理なのだが)撃ち殺すことができる。もっともそんなことがそうそう起きる わけもなく、彼が緊張していたのは未開惑星という場所を探索して町までたどり着かなければならないということの難しさに対してだった。最終緊急艇はある程 度落着位置のコントロールはできるものの、惑星のどこに着陸するかわからない。下手すると目的の場所に辿り着くまでに何十キロという距離を歩かなければな らなくなる可能性もある。最終緊急艇には乗り物など積んではいない。


 だからモニタに表示された文字を見たとき、彼は驚いた。AIからの密航者の知らせだった。

 彼は銃を構え、貨物室の扉を開ける。密航者は一体何者だろう。男か、女か。多くの人間の命が懸った最終緊急艇を自分の目的のために利用しようとしているのだから、碌な人間ではないだろう。さっさと射出し、機体の重量を戻す。

「出て来い。大人しく出てくれば撃ちはしない。出てこなければ撃ち殺す」

 それは嘘だった。出て来ようと来まいと、密航者は撃ち殺して放り出す。そうしなければ開拓惑星オングルの数多くの人間が死ぬのだから。

 彼がそう言ったのは、銃を外して最終緊急艇の船体に穴が開いたら困るからだ。弾丸は貫通力の低いホローポイント弾で船の外壁もホローポイント弾一発程度なら耐えられるはずだが、用心に用心を重ねるに越したことはない。

「出てこなければ、こちらから行く」


「ごめんなさい、悪いことをするつもりじゃないんです」

 聞こえてきた声は彼の想像していたものとは違っていた。小さく高い少女めいた声だった。「今、出て行きます」

 貨物室の中から出てきたのは美しい少女だった。少女は宇宙服など身に着けておらず、肩と腿の辺りが不自然に空いた白い簡素なワンピースを着ていた。

 想像していたあらゆる密航者像との違いに、彼は動くことができなかった。声を発することも。

「あの、本当にごめんなさい。悪気はなかったんです。でも、わたし、どうしてもあそこから逃げ出したくて………」少女は僅かに膨らんだ胸に手を当てた。 「すみません、いくらでも償いはします。ですからわたしを何処かに連れて行ってください。わたしにできることならなんでもします。ご飯を作ったり、お掃除 とか、できます。ですから、お願いします」



(料理? 掃除?)

 彼女が何を言っているのか、彼にはわからなかった。

(償い?)

 最終緊急艇は発進してから目的の惑星に着くまで何処にも止まらない。決まった軌道を航行しなければエネルギーを補給できないため寄り道するということはできないし、そもそも着陸するような装置が使い切りなので目的地以外の惑星に着陸することはできない。

 そして最終緊急艇は予定されているより多くの貨物を運ぶことはできない。完全に計算されつくされた航路を航行するためには、余計な重量は邪魔なのだ。異物は除かなければならない。彼女は殺され、宇宙に放り出されるしかない。

 それなのに、彼女は何を言っているのだ?


『なんてこと………』

 AIがモニタにそう表示するのが見えた。AIは小型のカメラ・アイを少女に向けていた。

『あなたはドギーですね?』

 少女は躊躇った挙句、頷いた。「あの、でも、わたし、何も変なことはしません。わたしは、ただ、逃げてきただけで……」

 少女はぽろぽろと涙を流し始めた。そしてぽつりぽつりと語り始め、彼女の事情を知った。

 ドギーとは人造人間のことだ。正式な呼称ではないが、だいたいそれで通じる。

 彼女はこの船が搭載されていた大型旅客船、昭和の金持ちに飼われていたのだった。もちろんこれは違法行為だ。人工生命には個体の肉体的・精神的な能力に よってレベル1から100までの段階が振られており、レベル50以上の生命体はいくらか条件はつくものの人間と同等に扱わなければならないことになってい る。

 少女はまるで人間と同じような、あるいは人間以上の容姿と心を持っていた。推定レベル70だろう、とAIは言う。レベルというのは人間に近ければ100 に近づき、遠ければ1に近づく。80というのは相当高い。推定レベルというのは、ようは下限で見積もった値で、中央値はそれよりも高くなることは間違いな い。彼女は人間を越えている。

 彼女は金持ちの手で、まさに飼われていた。奴隷のように。いや、人形のようにといったほうが正しいかもしれない。

 逆らえなかった。人工生命は基本的に人間に逆らえないように設計されている。もちろん人権を認められたドギーからその枷は外されているはずなのだが、お そらく違法に作られた存在なのであろう少女にはその枷があった。どんなに厭な行為をされても、傷つけられても、掻き乱されても抵抗できなかった。

 だが彼女は何度も努力をした。心の枷を打ち破れるように、何度も何度も。そしてある日、船から小型船が発進するということを聞きつけ、これが最後のチャ ンスだと信じ、彼女は心の枷を打ち破った。そしてドギーであるがゆえの驚異的な身体能力を駆使して船に乗り込み、そこで安心しきってしまい、貨物室で眠り 込んでしまった。おそらく相当消耗していたのだろう、彼女の眠りは身体をスリープモードに移行させるほどで、体温もかなり低下させていた。AIが感知でき なかったのはこのためだ。

 そしてついさきほど、目覚めた。彼の呼び声に呼び起こされた。

 目覚めなければ良かった。それならば何も知らないまま死なせてやることもできたのかもしれない。


 少女は一切、何もかもがわかっていなかった。

 この船が未開惑星オングルに向かう最終緊急艇であるということ。

 船の構造上、重量が僅かにでも増えれば船は目的地に到達できないということ。

 船が目的地に到達できなければ、未開惑星の数多くの人間が疫病で死んでしまうということ。

 最終緊急艇のパイロットは予定外の荷重に対して、いかなる手段を行使してでもその荷重を取り除き、船を目的地まで到着させる義務があるということ。

 少女のことを殺さなければいけないということ。


「ごめんなさい………」

 少女はすべての説明を訊いて、謝罪を始めた。

「殺さなくちゃいけないことになって、ごめんなさい」

 彼女はパイロットに対し、人殺しの罪を被せることに対して謝っていたのだった。正確にはドギー殺しだが。

 パイロットはジャケットを脱いだ。軽いが最終緊急艇の装備として最適化されたもので、未開惑星の探索や超低温領域でも耐えうる設計になっている。少女の 肩にかけてやる。彼女には大きすぎるが、身体をすっぽり隠せるためちょうど良い。彼女の露出度の高い格好は見るに耐えない。

「助けられるか?」

 パイロットの言葉に呼応し、AIのカメラ・アイが一瞬瞬いた。

『これからの行動次第です』

「いらないものを捨てていく」

『エネルギー充填可能な地点までの時間と彼女の体重40.0kgが増加したことによる荷重を取り除くため、最適な荷重物投射を交えた必要重量減少量を計算 中。計算が終わりました。残り時間は180ut(単位時間)、それまでに38kg重量を減らす必要があります。ただし6utごとに1kg必要な減少重量が 増加します。現時点であれば最適な投射角で彼女を投棄することで安全を確保できますが、18ut以降はそれ以外に物を投棄する必要性が出てきます。ご記憶 ください』

「180ut以内に38kgの物を捨てる。ぐずぐずしていたら最終的には48kgまで増える。了解」

「あ、あの……」少女がおずおずと言葉を発す。「いったい、なにを?」

「きみの体重分の物を捨てる。そうすれば元通りに航行できる。オングルの人々も助かる」

「そんなことができるんですか?」

『可能か不可能かはやってみないとわかりません』

「大丈夫だ。きみを殺させはしない」

 少女は震えた。

 嗚咽とともに涙の粒を零した。

「ありがとうございます………」

 目の端で、AIの発する問いが見えた。

『本気ですか?』

 パイロットは答えなかった。銃はまだこの手にある。


 4ケルビンの宇宙は冷たい。この冷たい方程式の支配する空間で、どれだけ人間が、機械が、人工生命が抗えるか。この世界で一番冷たいところで。



撃った場合

 撃つ。


 弾丸は少女の頭を貫く。船体を貫かぬよう貫通力が弱く作られているホローポイント弾は人間と比べれば強靱な皮膚を貫きながら変形し、脳に当たる部位を破壊する。


 身体は僅かに痙攣していたが、もはやそれも止まった。徐々に体温が低下していく。

 死んだ少女の身体は冷たかった。


 冷たい少女の身体を、世界でいちばん冷たい場所へ投棄する。

 骨がひしゃげて肉が膨れ上がったにも関わらず美しい死に顔は微笑んでいるように見えた。暖かい笑顔だった。


 ひとりの人工生命の少女の命と引き換えに、最終緊急挺は無事に開拓惑星に到着し、治療薬はその星のすべての人間に届けられた。ひとりの命も落とすことなく、開拓惑星は救われた。


 少女の死体は世界で一番冷たい場所を漂っている。

 今でも彼女の死体のある場所だけが、冷たい宇宙の中で僅かに暖かかい。

/



脱がせる

 服を脱いでくれと言うと、少女は顔を真っ赤にした。

「あの、それは・・・・・・・・・」少女はもじもじしながら言葉をさまよわせる。

「厭だとかもしれないけど、お願い。そのジャケット、全天候用のサバイバルジャケットだから結構重いんだ」

「ジャケットですか?」

「そう」

「ジャケットだけ?」

 パイロットが頷いてやると、少女はさらに頬を紅潮させた。全裸になれという意味で受け取って、その勘違いに気づいて羞恥しているのかもしれない。もっとも彼女がこれまで生きてきた環境を考えると、そんな勘違いをしてしまうのは仕方がないだろう。むしろ勘違いさせるような言い方をしたパイロットのほうが悪い。


 ジャケットを投棄すると、少女は最初に見た切れ目のある白いワンピース姿に戻った。

 肩や太股が眩しく、生地が薄いためか身体のラインが透けて見えている。少女も淫靡な服装だと自覚しているのか、恥ずかしそうにしていた。羞恥心を持つというのは高等な感情だ。やはり彼女は人間と同等の、あるいはそれ以上の存在なのだと感じた。




脱がせる2回目

 服を脱いでくれと言うと、少女は意外そうな表情になった。

「あの、もうこれしか着ていないんですけれど・・・・・・・・・」

 少女の示すとおり、少女は靴下や靴どころか指輪などの装飾品も身につけていない。下着さえも着ていないかもしれない。彼女の身体を暴虐から晒さぬようにしているのは、薄い生地のワンピースだけだ。この薄さでは100gがせいぜいといったところだろう。


-> 脱がせようとした場合

 それでも脱げと言うと少女は首を振って拒絶を示した。そのためパイロットは実力行使で少女から薄衣をはぎ取らなくてはならなかった。

 少女は抵抗を示したが、体重差がありすぎた。少女は押し倒され、外界から身を守るにしてはあまりにも薄すぎる生地が裂けた。薄布で覆われていた、ミルクを増やしたカフェオレ色の肌が現れた。


 少女は泣き叫んで抵抗した。

 少女が反抗の意志を示せば示すほどに男の嗜虐心が高められた。きっと彼女の飼い主も、彼女のこんな反抗心が甘美で、法を犯しながらも心を持つドギーを手に入れたのだろう。


 彼は忘れていた。自分は彼女の所有者ではないことと、少女が人間よりも遙かに力強い生き物で会うということを。

 少女の手が男の頭を掴んだ。そして恐怖を爆発させて、男の首をねじ切った。


 あとには少女だけが残った。


-> やめた場合

 あのワンピースを脱がせても、ほとんど減量にはならないだろう。なにより全裸の少女を目の前にして、自分がどうなってしまうかわからない。今でも彼女は美しすぎるのだ。




パイロット死亡

 ひとりの男が少女の代わりに死んだが、開拓惑星は救われなかった。

 男とは違い、彼女は開拓惑星に関して何も知らなかった。どのような地形なのか、どのように進めば人のいる場所にたどり着けるのか、どのように薬を使えば良いのか。


 そしてなにより、彼女はひとりで開拓惑星の環境にあらがうには心が弱りきっていた。


 世界でいちばん冷たいところは少女と引き換えに、数多くの犠牲を望んだ。ひとりの人間は、冷たい世界の中ではわずかな熱にすぎなかった。





 Pythonで動くテキストベースのゲームとして、会話で動詞と対象の単語を収集し、組み合わせるテキストインターフェイスを考えていました。たとえばShot + Gunなら銃で撃つ、みたいなかんじです。

『霜夜』では単語ではなく、アイテムを組み合わせていますが、行動と対象が単語で表現されるのはこのあたりから来ています。


  • パイロット/AI/少女の3人構成
  • 開拓惑星の疫病治療のための治療薬を運んでいる
  • 少女は人間ではなく、バカ強い人工生命


あたりは共通です。違うのが、


  • 少女が女の子っぽい
  • 少女の体重が40kgしかない
  • AIが少女を助けることに積極的
  • ドギーが獣耳ではない
  • 少女の見た目が褐色肌銀髪で左右の目の色が緑と青
  • 少女が勝手に脱がない(脱がせすぎると反撃喰ってパイロットが死ぬ)
  • パイロットが普通に喋るし、なんかむかつく
  • 表現が全体的にスケベ寄り
  • 銃は持ったまま進行で、いつでも撃てる
  • キーとなる温度が3℃ではなく4K


といったあたりですね。

 

 あとなんかあったかな、と考えて思い出したのですが、→紹介ページにSteamのリンクとか貼ってないことに気づいたので修正したりもしました。配信ガイドラインも追加しました。




🟪雲歩き、物理の時間

 雲歩き/Cloudwalker、相変わらず下地となるゲーム部分を作っています。


 本作、最初に作り始めたときに簡単な物理は作ったのですが、それは「とりあえずビリヤードっぽい」物理・操作でした。

 今回はこれを大きく変えています。


 具体的には、

  1. ボタンを押してチャージ→目押しでチャージした強さだけショットではなく、中心からのマウスの距離で決められる
  2. 球の運動量が基本的に一定。指定した距離まで行くと急速にブレーキがかかる
  3. ガイドラインを表示し、クッションでの反射は完全に再現。的球への衝突以後は不安定化
  4. 的球に当たっても手球の運動量は変化せずに反射。的球は動くためその分だけ運動量の総和が増える

といった内容。


 まず①のチャージ方式なのですが、ビリヤードに限らず球を飛ばすタイプのゲーム、たとえばボーリングなりゴルフなりテニスなりでは、[ボタンを押してチャージスタート] → [目押しをして飛ばす距離を指定]となるのが普通だと思います。

 こうなっているのは「最大で飛ばした方が基本的に良い」からで、なぜ最大に飛ばした方が良いかというと「どこに着地するかは大きな意味がない」ため。ゴルフだと例外もありますが、パッドはともかくドライバーやアイアンだったら最大で飛ばすクラブで振るのが普通だと思います。


 一方で本作はビリヤード。

 おそらく一度もプレイしたことがない……どころか実際のゲームを見たことすらない人もいるかもしれませんが、ビリヤードでは単に点数を取るだけではなく「手球(自分の撞いた球)がどこで止まるか」が非常に重要な競技です。

 目押し方式だとその「どこで止まるか」が調整しにくいため、本作ではチャージする前にマウスと画面中心の距離(ゲームパッドだとアナログスティックの倒す度合い)で完全に距離をコントロールできるようにしました。チャージそのものはありますが、100%でないと撞くことができません(100%未満でボタンを離すとキャンセルされる)。



 次に②の運動量問題。

 当たり前ですが、現実的に撞いた球は摩擦などを受けて減速しながら移動します。


 しかし本作では「球」はボールではなく、敵です。敵を敵にぶつけるのです。おめぇがボールな!

 この場合、ゆるゆる減速していくような表現はゲームのプレイ感にあまりにそぐわない。

 なので、「ぶん殴って後方へギャっと突き飛ばす」→「時間経過で体勢を整えてブレーキかけると止まる」というような表現になるように運動量一定+急ブレーキという方針になりました。



 ③のガイドラインは飛ばす方向・距離を示すものです。

 ①で書いたとおり、「どこで止まるか」が重要なのでこの存在は不可欠。クッションしてもきちんと正しい方向に飛ぶようになりました。


 一方で悩ましいのは「球に当たったときどうするか?」で、これが少々難しい。」

 本作はビリヤードをベースとしているわけですが、その中で「キャロム」という台を使った「四つ玉」というルールに基づいています。

 そして、「四つ玉」というのはざっくり言うと「撞いた球を他の球に当てる」ゲームです。


 四つ玉では盤上に常に四つの球があります。自分の球(自球🟡)、相手プレイヤーの自球(敵球⚪️)、そして2つのどちら的球(🔴)。

 そして点を取るためには「自球🟡を撞いて、それが敵球⚪️か的球🔴のうち2つ以上に当たればよい」です。



🟡       🔴

      🔴     ⚪️


 こういう状況から、


    🟡   🔴

     💥🔴     ⚪️


こう当たって、



      🟡💥🔴

             ⚪️

         🔴


こう当たればいいわけですね……と解説しようとしたけれどなんだこの図はちくしょう舐めやがって。

 まぁとにかく「当たる」が重要です。


 なので、もし他の球に当たったときの衝突が完全にシミュレートできてしまうと、あとはそれを辿るだけになってしまう。

 いやまぁ球を飛ばすゲームって基本そういうもんなのかもしれないけれど、本作では目押しすらないので、何も波乱が起きない(球の再反射で妨害される可能性があるくらい)。


 四つ玉、嬉しいのは「狙ったとおりに撞くことができて、予想通り跳ね返ったぞ!」というときなので、それを残したほうが良いだろう、ということで「球同士の衝突予想がある場合は、その衝突を無視したラインが表示され、半透明になって不確定になる」という表示にしました。


 あとまぁ単純に球の衝突含めると予想ガイドラインがうまく作れないような気がするのでという理由もあります。難しいんだぜ。



 で、これに伴って最後の④ですが、自球の運動量は(ブレーキがかかるまで)不変です。

 普通は止まっている球に動いている球が当たると運動量を分け合うわけですが、そうなると自球のスピードが落ちてしまう。それは②と同じ語ったとおりゲームの動きに沿いません。


 なので自球は的球に当たっても完全弾性的に反射します。

 一方で的球もちゃんと動いて欲しいのでちょっと弾かれる。具体的には自球と同じスピードになるように力積を受けるが、最初からブレーキがかかっているのですぐ止まる、という形式。


 現代でよく知られるビリヤードの台はポケットで、たとえば「ナインボール」なんかはこのポケット台を使って行われます。

 ポケット台には左右上下と斜め隅の合計8箇所に穴(ポケット)があり、ここに的球を落としていくルールです。なので、ポケットでは「当てた的球」のほうにもある程度速度が乗ってほしい。


 一方で今作はキャロムで、これは穴はありません。重要なのは前述のとおり、撞いた手球が他の球に当たったかどうか。

 であれば、的球には大して運動量があろうとなかろうと問題なく、多少動いてやれば機能します。なのでこのように「多少動く」程度のルールとなりました。



 というわけで長々と語ったこのルールでひとまず下地となる物理はOK。

 実際には敵の種類や場の状況によって介入する要素がありますが、とりあえず今回のものを応用していける形にはなったと思います。




🟪スローモーションとカメラ移動

 物理は前述のような形で作れたわけですが、一方で演出のほうをほとんどやっていない。

 いまだにミニキャラも作っておらず、模式的に球で動かしているくらいです。


 これではいかんなぁ、と思いつつ、まずはスロー演出を入れました。



  1. 撞いた球と的球が接近したときに浅いスロー
  2. 接触したときに深いスロー

が入るようになりました。

 

(動画は音入ってないけど)音もぎゅわっとなっていいかんじ……だと思うたぶん。カメラもこれに合わせて動きます。


 ついでにミニキャラを発注するまでは球のままで良いんじゃないかと思いましたが、ミニキャラ入れないとちゃんとアニメーションが間に合うかどうかの評価とかできないので、適当な仮キャラ入れてちゃんと動くかどうか確かめることにしました。






 そろそろBlogger内で紹介ページ作って、キャラクター紹介とかも始めたいところ。

 Steamのストアも早めに作りたいが、そっちはちゃんとしたスクリーンショットが必要になるのでまだまだ先になるだろうなぁ。

 

枕は使わない。


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