アメリカか死か/05/02 Following in His Footsteps-2
翌朝、早速Novaに教えられた通りにGalaxy News Raidioへ向かうことにする。今回は長い道中になりそうなので、犬は家においていくことにした。鍵は保安官のLucasに預け、彼と彼の子供に犬の世話を頼んだ。
「伝言?」
ふと厭な予感がする。まさか酒場のMoriartyではなかろうか。彼からすればLynnは正当ではない手段でJamesの手掛かりを得られなかったということになる。怒っているかもしれない。Lucasの話ではMoriartyは危険人物ということだが。
しかし見張りの人物は予想に反し、『Moiraだよ。雑貨屋のMoira Brown。出掛ける前に雑貨屋に寄ってくれって言付けがあった』と言った。
心当たりはまったくなかったが、相手はMoriartyではないようなので安全だと判断して雑貨店へと向かう。
朝早かったためか雑貨店はオープンしておらず、少し待たされた。店主のMoiraという女性はツナギを着た若い女だった。
「Lynn」と彼は言う。背中にライフルを背負っているところを見ると、用心棒か何かだろう。
「あ、そうそう、Lynnね。で、Lynn。あなた、Galaxy News Raidioまで行くんだって?」
「よく知っていますね」とLynnはちょっと驚いて言う。
「昨日Gobが買い物のとき言ってたからね。羨ましいって。彼、Galaxy News RaidioのThree Dogのファンだから」
「Three Dog?」
「Galaxy News Raidioのパーソナリティ。いつもラジオに出てるでしょ、あの阿呆っぽいおっさん。ま、それはそれとして」Moiraは大袈裟な動作で両手を左から右へとやる。「Galaxy News Raidioってめっちゃ遠いんだけど、知ってる? 道中はRaiderもSuper Mutantも野犬もいっぱい。もう危険極まりねぇぜ、っていう地域なわけ。そういうところ、頑張って歩いていくつもり? そう、わざわざ歩いていくことはない。なぜなら人類には数多くの文明の利器があるんだから」
Moiraは勝手に一人で喋っていく。
「核戦争でいろいろと技術が失われたとはいえ、材料はいくらでもその辺に転がっているわけ。たとえば車とか、バイクとかね。そういうものを修理して使えば、Galaxy News Raidioどころか西海岸までらっくらく。世界が広がること間違いなし。そうっ、今日あなたに紹介するのはこちらっ!」
Moiraが壁にかかっていた布を剥ぎ取ると、何かの図面のようなものが現れた。二輪の、おそらくバイクの図面だ。
「すいません。金がないんで」
話の最中で口を挟むのが厭だったLynnは、ようやくそう言うことができた。
「大丈夫大丈夫。そう言うと思ってね、このバイク、無料だから」
「無料?」
「無料っていうのは言い過ぎかな。わたしはね、バイクの修理を実際にやってみたいのさ。で、きみはその手伝いをしてくれれば良い。完成品に興味はない、とは言わないけれど、ま、一台修理できればこれからもいろいろと修理できるようになるからね、初回は手伝ってくれたお礼にきみにあげるってこと」
「つまりおれに、バイクの修理を手伝え、と」
「そうしかめっ面しなさんなって。大丈夫さね、手伝ってくれれば一日で修理は終わるから。そうなったらGalaxy News Raidioまで早いぞぉ。徒歩で行くよりも断然ね。どう?」
つまり、バイクの修理をしてくれればその完成品はくれてやるということか。
完成品の精度や乗りこなせるかどうか、燃料補給はどうするかなどの問題はありそうだが、移動手段があるというのは悪くない気がする。核戦争から200年が経過した現在では電車や飛行機どころか、自転車のような乗り物さえないのだから。
Lynnは頷いてやった。
「じゃ、この辺まで行って、バイク用のガスタンク1つとハンドブレーキ2つ、それに廃鉄鋼を5個、取ってきてくれる?」Moiraは地図を広げて場所を示す。
この辺、と言って彼女が示した場所は広かった。Megatonと同程度の範囲だ。
「こ、この辺?」
「この辺りは廃屋とかがあるところだから、まぁ壊れたバイクとかいくつかあるでしょ。その辺から適当に取ってきちゃって」
「それはつまり……、泥棒では?」
「あそこの建物は200年も前の遺物だよ。所有者なんていない。だからんなこと気にしなくても良いの」とMoirano返答は軽い。「まぁ、Raiderが住み着いていることがあるかもしれないけどね。それは気をつけてね。死んだら、材料持ってこられないから」
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