かくもあらねば/16/04


Siたちは北側からNelsonへの襲撃を仕掛けた。
南西の高台からはRanger Miloがライフルで援護してくれる。Siたちは北側の関所を襲撃、高台を押さえる。Booneはそこで待機し、突入を援護Siが単独でNelsonを探索、敵を見つけ次第撃破する。他の三人の兵士は後方からSiの後を追い、順次敵兵を撃退した場を制圧していく。

現状の戦力では最適だと思われる作戦だった。人数の上ではあまりにも分が悪い。有利なのは奇襲をかけているというそれ一点のみで、それを生かすには単独による襲撃しかない。
単独行動にいちばん適しているのはSiだ。というよりそもそも、Ranger Fairy Eyeとして教練を受けてきたSiは、単独での戦い方しか知らない。Sumikaと意思疎通をしながら戦うには、他の人間は邪魔なのだ。

他の兵士やBooneを納得させるのには苦労したが、午前5時、作戦は決行された。
Nelsonの家屋でDead Seaを殺害したのは、午前5時50分過ぎ。作戦時間は1時間に満たなかった。

隊の人間はひとりも欠けることなくNelsonは制圧され、人質は無事解放された。6対26という圧倒的な兵数の差があったにも関わらず、ひとりの人的被害もなかったのはひとえにSumikaの索敵があってこそだ。
Siがそう言うと、Sumikaは、そうだね、とだけ返事をした。嬉しそうではなかった。今、彼女の表情がわからないSiには、なぜ彼女がこんな言い方をするのかがわからなかった。あるいはSiの気のせいなのかもしれない。

捕虜は殺せというのが、例のRangerの要請だったと思うが」
Nelsonで磔にされていた捕虜を全員解放し終えて、後のことを他の隊員たちに任せて基地に戻る途中で、Booneがそう言ってきた。 
なんだ、とSiは返す。何か不服があるのか、と。
「Legionは捕虜に苦痛を与えるのを好む。今回の作戦は成功したが、失敗していたらより長く苦痛を与えることになっていただろう。それを考えれば、あのRangerが言っていたように、殺してやったほうが幸せだったかもしれない。結果的にこちらの被害を増大させることになっていたかもしれない。そうなっていたら、死んでいった者たち殺したのは、Legionではなく、命令を下した人間のほうだろう」ともあれ、とBooneは続けた。「おれは今はおまえの部隊に所属している。文句を言うつもりはない。何より、おまえのおかげで助かった命がある

Booneの言葉は混然としていて、いまひとつ何が言いたいのかわからなかったが、つまりはこういうことだろう。ひとつ間違えば、死んでいた。部隊を危険に晒していた。その自覚がおまえにあるのか、と。
知ったことか、だ。
部隊がどうなろうが、仲間がどうなろうか、知ったことか。Siにとって価値があるのは、今や自身とSumikaだけだ。

「やってくれたようだな。カウボーイ」
丘陵の上で、Ranger MiloはSiたちを出迎えた。
「人質は全員解放したぞ。こっちの被害はない。これで文句はないんだろう」とSiは喧嘩腰の態度を隠そうともせずに言った。
「知ってるよ。どうやら糞っ垂れの馬鹿野郎はおれのほうで、おまえはまさしくヒーローだったようだな」
Ranger Miloはそう言うと、小袋をSiに投げ渡してきた。
キャッチしたその袋の中に入っているのは、どうやらCapのようだ。小さな袋なのでたいした金額ではなかろうが、報酬ということだろう。
「正式な作戦じゃねぇから、おれの懐に出せるのはそれが限界だ。ま、おれが方々の耳におまえの武勇伝を吹聴しておいてやるから、それを報酬だと思え」
無言で頷く。もとより報酬を期待しての戦闘ではなかった。

その場を立ち去ろうとしたとき、Miloが引き止めた。「待ちな、カウボーイ」
「なんだ」とSiは言ってやった。「拇印とサインでも必要なのか。身分証明証の写しはいるか」
「違う。ヒーローついでに、助けてほしいことがあるんだ。さっきうちの隊の人間が救助した兵の中に、Renolds二等兵っていうやつがいた。そいつの話じゃあ、Bastard Alexusっていうやつの率いるLegionの一団に襲われたらしい。Alexusの一団は、Renolds二等兵の仲間を捕虜にして、近くの洞窟に立て篭もっているって話だ。あんた、ヒーローついでにそいつらを助けてみないか

Legionの幹部の殺害、捕虜の救出、NCR拠点の拡大。
やる価値は十分にある。
今、NCRを抜けるためにSiたちが必要としているのは、十分な名誉と、金だ。


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