天国/04/203日目
1257年10月05日
203日目
白の一角獣、かつて略奪を行ったシャペシュテの村の償いに敗北を味わうこと、ならびに女および戦友と死に別れること
Name: BillSex: Male
Level: 24
HP: 65
Attributes: STR18/AGI14/INT13/CHA13
Skills:
【STR】鋼の肉体6/強打6/弓術6
【AGI】武器熟練4/馬術4/馬上弓術4/略奪4
【INT】訓練1/戦略4/経路探索1/観測術1/荷物管理1
【CHA】捕虜管理2/統率力4/取引1
Proficiencis: 弓254/長柄武器247/片手武器107
Equipment: 壮麗なバシネット/ベージャー・ラメラー・アーマー/アワーグラスガントレット/錆びた鉄の脛当て
Arms: ベージャーハルバード/黒檀の剛弓/大袋入りの黒檀の征矢/強化された重カイトシールド
Horse: 逞しく優秀な駿馬
Companion: マンスール/ボルチャ/バエシュトゥール/マテルド
つまりは無謀だったということか。堪えが足りなかったということか。
矢傷を受けて痛む肩を抑えながら、今や傭兵ですらない白の一角獣隊長、ウィリアムは思った。
ベージャー王国から一方的な反逆罪の通知を渡されて以来、防戦一方の日々が一月続いていた。
ちろんひとつの国と本格的に戦っていたら、一月もの間耐えることすら難しかっただろう。こちらから手は出せなかったとはいえ、白の一角獣が戦い続けられてきたのは、ベージャー王国が未だノルド王国と争っており、白の一角獣の駆逐に全戦力を投じることができなかったからだ。所詮は傭兵と、侮っていたところもあったのだろう。
それでも厳しいことには変わりはなかった。近隣の村や隊商を襲って食料を略奪し、兵を鍛え、できるだけ戦わぬようにして生き延びた。
しかしひと月を過ごした十月になってからは、それさえも難しくなった。
ベージャー王国とノルド王国の休戦条約の締結である。
これでベージャー王国は、何処の国とも戦争をしていないことになった。
白の一角獣の保有するルンド城一城では、全面から仕掛けられる猛攻に耐え切れるはずがない。否、おそらくは攻撃しなくとも、城を兵士で囲み、兵糧攻めをするだけで事足りるだろう。
何か仕掛けなくてはならなかった。活路を切り開くために提案されたのが、ウェルチェグ攻めである。
ベージャー王国の保有する四つの都市のうちのひとつ、ウェルチェグを攻略し、支配下に置く。ウェルチェグは大量の食料を保有しており、その他イビチェップなど近隣の村をも支配下におけば、当面の食料や徴兵には困るまい。しかもウェルチェグは突き出した岬に存在しており、警戒するのは東側だけで良くなる。
そうして兵力を整え、ベージャー王国との和平を行う。それが白の一角獣の計画だった。
が、負けた。
攻城戦
白の一角獣 対 ベージャー王国
結果 撤退
- 自軍 106名
- ビル(白の一角獣)
- 敵軍 129名
- ベージャー近衛隊長(ベージャー王国)
兵数では均衡していた。
もう少しというところで、ウィリアムは流れ矢を受けて戦えなくなった。既にしてマンスールやマテルドといった指揮官の立場にいる人間も負傷をして退いていた。指揮系統を失った白の一角獣は、そのまま瓦解した。そして、負けた。撤退せざるを得なかった。
現在の白の一角獣を構成していた兵は多くがベージャー王国出身であった。そのため、同郷の敵と戦い続けて士気が落ちていたのか。あるいは単に、兵が疲れ切っていたのか。余裕がなかったか。
なんにせよ、負けた。もはや逃げるしかない。ルンド城まで退き、戦力を立て直す。ルンド城には防備に残した兵がいる。まだ、立て直せる。ルンド城に戻れれば。戻れさえすれば。
馬も人も疲れ切っていた。
だから、兵団が接近してきたことをぎりぎりまで気付かなかった。
戦闘が始まったときには既にして白の一角獣の隊は瓦解していた。そもそもが隊の半数はウェルチェグ攻めで死んだ。生き延びた残りの半数も、その半分は戦えないほどの怪我を負っている。
けして敵の数は多くはない。だが戦力の差は圧倒的であった。
野戦
白の一角獣 対 ベージャー王国
結果 敗北
- 自軍 25名
- ビル(白の一角獣)
- 敵軍 62名
- ベルガル卿(ベージャー王国)
敵は紛れもなく、ベージャー王国の軍団だった。小規模な軍団は、白の一角獣を背後から切り裂いた。
抵抗のしようもなかった。ウィリアムはまたも矢を受けて落馬し、兵たちに拘束された。他の傭兵隊員たちも、ほとんどが拘束され、あるいは切り払われていた。
後ろ手で縛られ、ウィリアムは敵の将の前に突き出された。
敵将は黒く濃い髭を頬から顎にかけて生やした、壮年の男だった。ベルガル卿だ。特に付き合いがあったわけではないが、ベージャー王国の将として戦っていた時代に、いちおうの面識はあった。
わざわざ殺さずにここまで連れてきたのは、いったい何の用なのか。まさか今更、ベージャー王国に戻れだとか、そんな理由ではなかろう。だいたい、一貴族のベルガル卿にそんな権限はない。
ベルガル卿は馬に乗ったままウィリアムの眼前まで近寄ると、腰元の剣を抜き、こちらに向けて突きつけてきた。
「シャペシュテの村を襲い、略奪を行い、民草を虐殺した罪……、その血で購ってもらおう」
(シャペシュテ?)
どうやらウィリアムは、白の一角獣は、かつてその村で略奪を行ったらしい。ベージャー王国から離反した後のことだろうか。なるほど、あるかもしれない。だが、いちいち略奪した村の名前など覚えてはいない。
村の名は判然としなかったが、目の前の男が怒りに燃えているのは確かなようだった。
傭兵として生き始めた頃から、こうなるであろうことはわかっていた。いつか誰かに殺される。戦いで、あるいは怨みで。予想通りだ。
予想できなかったのは、剣を振りかぶったベルガル卿の腕にボルトが突き刺さったことだった。
彼は悲鳴をあげて、落馬した。
「隊長!」
隊長、そう叫んだのはベルガル卿を心配するベージャー王国の兵士ではなかった。
隊長、そう叫ぶ声はもっと遠くから聞こえてきていた。倒れ伏す白の一角獣の隊員の中から。
隊長、動けぬ身体でもはやボルトのないクロスボウを放り出し、ボルチャは叫んだ。逃げろ、と。
ウィリアムは後ろ手に結ばれていた手を隠し持っていたナイフで解くと、馬上に戻ろうとするベルガル卿を踏みつけて鞍に上がった。周囲を見渡す。
ボルチャと同様、倒れ伏していた傭兵たちが起き上がり、抗戦を始めていた。しかしその戦況は芳しくなかった。すべての傭兵が死んだふりをしていたわけではない。むしろ戦う力があるのは極一握り。多くが既に矢を剣を受け、あるいは生き残った者たちも傷ついていた。
反撃の狼煙をあげたボルチャは、既に体中に矢を受けて事切れていた。
ウィリアムは騎上から探した。女の姿を。女の姿は、たとえ鎧を着ていても目立つはずだった。見つけたのは胸に矢を受けて倒れ伏すマテルドの姿だった。
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