かくもあらねば/18/01

汝、左の頬を打たれたら、倍にして返せ
Eye for Eye


Si
Lv.23
S/P/E/C/I/A/L=6/10/4/6/4/9/1
Trait: Fast Shot/Wild Wasteland
Tag: Guns/Repair/Survival
Perk:
[E]: Walker Instinct
[C]: Comprehension/Educated
[I]: Hand Loader/Jury Rigging
[A]: Quick Draw/Rapid Reload
[Others]: Confirmed Bachlor/Finesse/Gunslinger/Lady Killer
Equipment: Lucky/Misterious Mugnum/Hunting Revolver(GRA)+/Cosmic Knife Crean/Throwing Knife/NCR Ranger Combat Armor/Ranger Helmet


「どうだ?」
その囁き声が、自分自身で酷く不快なもののように感じる。今までは必要のなかったその問いかけは、言ってみれば身体にもう一本手が生えてきたようなものだ。急にこんなものが生えてきたら邪魔でかなわないし、不便だ。それ以上にこんな身の上になった自分自身が悲しい

誰もいない……、と思う」とSumikaは曖昧に答える。「窓は全部閉まってて、中は見えない。でも、窓硝子に張り付い耳を澄ませてみた限りじゃあ、人の気配はしない

こんなやり取り、今までは不要だったのだ。Sumikaはヘルメット越しにもこちらの表情から指示を汲み取ってくれたし、Siは彼女のよく動く表情を観察していれば、言葉に出さずとも索敵内容を読み取ることができた。それが今では、どうだ。言葉を解さなくては何も理解できやしない。まるでこの17年間などなかったかのように、他人同士になってしまったかのように感じられた。

息を吐き、吸う。もはや充満するのは臓腑を蝕むSierra Madreの赤い霧ではなく、清浄とは言い難いものの生活する分には不足もないMojave Wastelandの空気である。
Sierra MadreにてChristeanと別れ、Mojave Wastelandに戻ってきたSiとSumikaはForlon Hope基地にてRestoring Hope作戦の後に逸れてしまったBooneと合流後、休憩もそこそこにNovacに向かった。もちろんKutoを追うためである。彼女と共に行動をしていたというBooneのおかげで、Kutoの居住のひとつとして調べがついていたのだ。

 ドアを蹴破り、中に突入する。銃を構え、しかし予想通りに中に人の姿はなかった。念のため、Ranger Helmetの赤外線視機能を用いて周囲を警戒したが、何処かに隠れていたり、罠が仕掛けられている様子もない。
「奥見てきたけど」とSumika。「お手洗いだった。そっちにもいない」
慌てて逃げたって感じはしないな」
Siは銃をホルスターに戻して部屋の中を物色する。金庫から金の延べ棒を見つけた。Sierra Madreの地下金庫にあったのと同じものだ。ということは、少なくともSierra Madreから戻ってきて一度はここに立ち寄ったのは間違いないようだ。
「管理人にでも聞いてみるか」
「それは無駄だ」
 口を挟んだのは、それまでずっと無言だったBooneだった。
「管理人は、おれが殺した

視界に映らずとも、Sumikaが絶句して口元を抑えるのがわかる。
SiはRanger Helmetを外し、Booneに向き直って問うた。「殺した、だ?」
「そうだ。彼女……、Kutoに協力してもらった

この男も、またわけのわからない男だ。Siが、他の誰にも見えないはずのSumikaと会話していても、不審げな様子を見せることはあれ、追求してきたりはしない。追求されないのは楽で良いのだが、何を考えているのかまったく読めず、不気味だ。おまけに、一般人を殺したとは何事か。そもそも彼はなぜ、Kutoと行動を共にしていたのか。

「このアパルトメントの管理人は、おれの妻をLegionに売った。だから殺した」Booneは淡々と質問に答えた。「Kutoにはその手伝いをしてもらった。その礼として、彼女の旅を手伝っていた。おれと彼女の関係はそれだけだ」
あくまで憮然として淡白な回答を返されては、返答のしようもなかった。SiはBooneから視線を逸らす。「彼女が何処へ向かうと言っていたとか、そういう手がかりはないのか?」
「ある」
Booneはこともなげに言った。何処だ、とSiは問う。
「確証はない、が、可能性としてだ。彼女と最後に別れた場所だ」
「だから、そこは何処だ」
「Cottonwood Cove」

Siは舌打ちする。Cottonwood CoveはCaesar's Legionの駐屯基地のひとつだ。Coveという名の通り、湾になっていて湖に面している。そしてその湖は、Legionの本拠であるThe Fortに通じている。つまりは天然の要塞であるThe Fortを守る門だと言ってもいい。もちろん守備は堅牢であり、数多くのLegion兵士を抱えている。もしそこに逃げ込んだとすれば、Kutoを探すのは容易なことではない。
が、行くしかない。なぜならそれが任務だからだ。Kutoという女を捕らえ、Platinum Chipを奪還することが、NCRから受けた、NCRから逃れるための任務だからだ。
 それに、Legionに対する復讐の炎は、幼い頃と比べて弱まりはしたものの、けして消えてしまったわけではなかった。

Cottonwood Coveに向かう旨をBooneに告げる。べつにおまえはついて来なくても良い、とも。生きて帰れるかどうか怪しい場所だ。無理してついてくることはない。
だがBooneは銃を手に取り、頷いた。どうやら共に来てくれるらしい。彼にも戦う理由はあるのだ。亡き妻の復讐という理由が。
そしてRexもひと吼えして、同意の意を示してくれた。
ただひとり、心配そうな顔をしていたのは、おそらくこの場でSumikaだけだっただろう。それは彼女の姿が見えずとも、わかった。

Si、Boone、Rex、そしてSumikaはSearchlight駐屯地を越え、Cottonwood Coveへと向かった。眼下遥かに見えるCottonwood Coveを見下ろす。
「起きてる見張りは4人」と偵察に出ていたSumikaが報告する。「武器はMachetとCowboy Repeater。あと3つあるテントのうち、2つのテントで3人寝てる。その周りに犬が2匹。室内は空いてる場所がなくて、確認できなかった」

明け方である。敵の多くは寝静まり、奇襲には絶好の日和である。
SiとBooneは、まず入口のところで見回っていたひとりを殺し、その衣服を剥ぎ取った。ふたりの男の復讐が始まった。



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