1258年04月02日
382日目
白の一角獣、騎士に乙女を託すこと

Name: Bill
Sex: Male
Level: 30
HP: 68
Attributes: STR21/AGI15/INT15/CHA13
Skills:
【STR】鋼の肉体6/強打6/弓術7
【AGI】武器熟練4/馬術4/馬上弓術5/略奪5
【INT】訓練6/戦略5/経路探索1/観測術1/荷物管理1
【CHA】捕虜管理3/統率力5/取引1
Proficiencies: 弓288/長柄武器283/両手武器142
Equipment: 重厚な面頬付きバシネット/壮麗な黒鉄のラメラーアーマー/アワーグラスガントレット/壮麗な鎖のブーツ
Arms: 名匠の手によるポールアックス/名匠の手による黒檀の剛弓/大袋入りの黒檀の征矢/名匠の手による両手サーベル
Horse: 青毛駿馬
Companion: マンスール/ヴァルディム庶子公

打たれたわけではない、骨も折れていないだろう。生きている。死んでいない
が、戦えるかどうかそれとは別問題だ。身体が無事でも、目が死んでいては、戦えない。

まさしく白の一角獣、ウィリアムは戦えぬ状態だった
それでもマンスールは、彼を引き起こして歩かせた。ここで彼を見捨てては、なぜ危険を冒してノルド領となったウェルチェグまでやってきて、大枚はたいてウィリアムとヴァルディムの解放の交渉を行ったのか、わかったものではない。

白の一角獣がベージャー王国にではなく、ノルド王国の軍勢に敗北したのは、不幸中の幸いと言って良かった。もしベージャー王国に敗北していたら、ウィリアムもヴァルディムも、今頃は処刑されていただろう。ノルド王国にとって、新しい国が興ることは気に食わなくとも、反乱そのものは歓迎すべきことであったのだ。特にかつてのベージャー領を攻める大義名分ができた今回は、ノルド王はむしろ白の一角獣に感謝したいくらいだろう。彼らは漁夫の利としてウェルチェグを得られたのだ。ウィリアムは相応の部屋で軟禁され、ヴァルディムは豪華にもてなされていたほどだ。

「幾らかかった?」
ウェルチェグから出てから出て以来まったく口を利かないでいたウィリアムの第一声は、そんな言葉だった。ウィリアムたちは立派な捕虜として扱われていたのだから、それを解放するには相応の金が要った。
「3000デナルほどです。帳簿つけてあります。ええと、3016デナルですね」
「3000か」
ウィリアムのその呟きが自嘲であることはすぐにわかった。もとよりプライドの高い男である。3000デナルといえば傭兵隊長の身請け金としては十分な大金だが、しかし傭兵隊長としての目安を逸脱していないともいえる。所詮、何処まで行っても傭兵は傭兵か、とでも思っているのだろう。
それでも低いよりは良い。おれは駄目だ、とそんなふうに感じるよりは、少しでもプライドを捨てなければそれで良い。

マンスールは騎上でウィリアムに両手サーベルを投げて寄越す。
「カミーユはクリン城に囚われています」
「金で解決すれば良いだろう」
「彼は一兵卒ですし、脱走兵です。金で済むような問題じゃない。牢に囚われ、処刑されそうになっています」
サランへ向かったマンスールが取って返してきた理由がこれだった。このままでは、カミーユが危ない。未だカーギットへ向かったバエシュトゥールは戻ってきていなかったが、彼を待っている暇はなかった。

待て、と声を発したのはヴァルディムだった。「まさかあれを助けようとでも言うのか」
マンスールが無言で頷いてやると、ヴァルディムは激昂した様子だった。
「何を馬鹿なことを。あれはただの兵卒だろう。碌な兵ではない。今はそんなものに構っている場合ではない。いち早く兵を集め、戦況を立て直すべきだ。まだ戦は終わったわけではない」
「仲間が囚われているのです。助けないわけにはいきません」
「おまえがそう感じるのはおまえがあれを好いているからだろう。おまえは男色家で、あれを男だと思っているそうだが、言っておくがあれは女だぞ。抱けば簡単にわかる

マンスールはかぁと頭に熱が昇るのを感じた。自分を馬鹿にされたというだけではない。カミーユは素直な子だ。世間知らずといっても良い。権力者には、素直に従うようにできている。だから、拒めなかったのだろう。目の前の男は、その言葉通りにカミーユを抱いたのだ。

マンスールが剣を抜く前に、しかしヴァルディムは馬からもんどりうって落ちていた。殴ったのはウィリアムだ。
「あんたとは終わりだ。おれたちは傭兵に戻る」
ヴァルディムからの返答はなかった。彼は地に落ちて気絶していた。

 ウェルチェグからクリン城までは、大軍を率いて行軍すれば三日はかかる距離だ。だがこちらは身の軽い2人部隊。ましてや気高き白の一角獣、乙女を助けるに際して千里万里では止められぬ。
果たして辿り着いたクリン城で出迎えるは、今まさに乙女を処刑せんとする悪逆非道のノルド海賊百余人。
「100人といったところか」
ひとり頭、50人ですか」
「おれが60やるから、おまえは40でいいぞ」
「昨日までぐうたらしていた人が何を言っているんですか。隊長は30人もやれれば上出来でしょう。残りは自分がやります」
「何を言ってやがる。ええい、もうおまえはいなくて良い。全部おれがやる
「隊長こそ、阿呆なことばかり言わないでください」
対するは剣に槍、銃に弓とそれぞれ得意の構える、僅か二人きりの傭兵部隊。
これなるは白の一角獣。


 傭兵隊白の一角獣隊長、ウィリアムはひとり、丘の上に構えて立っていた。
迎え撃つは、ベージャー王国領となったサルゴスの巡回兵40余名

1対40という圧倒的な兵力の中でも不敵に笑っていられる理由が、ウィリアムにはふたつあった。
ひとつはつい先ほど、2対100というやはり圧倒的な人数比を覆い返して目的を達成したという結果があったためである。もちろん100という数そのものと戦ったわけではなく、ウィリアムとマンスールが相対した兵士の数は、その中のほんの一握りであるが、それでも傭兵得意の撹乱戦に持ち込めば、兵力などものの数ではないということを知っている。
もうひとつの理由は、味方が誰もいないためだった。クリン城にて奪取した目標、カミーユの衰弱が著しかったため、マンスールには彼女を連れて逃げるように命令した。ウィリアムは追っての足止めだ。傭兵生活を始めてからというもの、たったひとりで戦う機会などなかった。常に勝利を求めていたからだ。勝つなら大勢で襲い掛かるべきというのは当たり前のことで、となれば今は勝つための戦いではないのだと自嘲したくなる。なんにせよ、気負うものがない。背負うものがないというのは、気楽で良い。

そうしてウィリアムは戦った。

野戦
白の一角獣 対 ベージャー王国

自軍 1名
ビル(白の一角獣)

敵軍 40名
サルゴスパトロール隊(ベージャー王国)

結果 敗北(3度目)


その先の彼の足取りを、マンスールは辿ることができなかった。その戦いで死したとも、敗北はしたものの逃げ延びたともいわれているが、正確なところははっきりしない。なんにせよ、如何に彼が弓の名手だったとしても、クリン城からカミーユを救い出すときに受けた傷や、残りの矢の数を考えれば、戦いに勝つことはなかっただろう

カルラディア歴1258年。傭兵隊、白の一角獣の足どりはここで消える。その傭兵隊長の行く先は、どの歴史書にも記されていない。


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