かくもあらねば/21/01

12月 07, 2012

Things That Go Boom
喧々囂々物情騒然

Si
Lv.25
S/P/E/C/I/A/L=6/10/4/6/4/9/1
Trait: Fast Shot, Wild Wasteland
Tag: Guns, Repair, Survival
Skill:
[S]: M.Weapon=50
[P]: E.Weapon=30, Explosives=30, Lockpick=86
[E]: Survival=63, Unarmed=16
[C]: Barter=64, Speech=28
[I]: Medicine=22, Repair=94, Science=18
[A]: Guns=90, Sneak=62
Perk:
[E]: Walker Instinct
[I]: Comprehension, Educated, Hand Loader, Jury Rigging
[A]: Cowboy, Quick Draw, Rapid Reload
[Others]: Confirmed Bachelor, Finesse, Gunslinger, Lady Killer
[Implants]: Agility Implant, Endurance Implant, Sub-Dermal Armor
Equipment: Lucky, Mysterious Magnum  Hunting Revolver(GRA)+, Cosmic Knife Clean  Throwing Knife, NCR Ranger Combat Armor, Ranger Helmet


 眼前に広がっているのは穴だらけの地平である。辛うじて残っている戦前の家屋や車両も、焼け焦げていて原型を留めていない。辺りには野生動物や変異生物はおらず、またRaiderの気配も無い。RaiderやDeath Crow、Cazadorは危険だが、ここにはそれ以上の危険が有るということだ。


 目の前で爆風が巻き起こり、砂煙が巻き起こる。直撃すれば跡形も無くなるであろう、迫撃砲の一撃だ。Siは岩陰に隠れ、Sumikaからの合図を待つ。
「さて、上手く行くか」
 目指すは遠くに見える金網。相手取るのが長射程の迫撃砲であるならば、あそこまで辿り着くことができれば、避けることも受け流すこともできない爆風に耐える必要はなくなるはずだ。果たしてBoomersの居住まで辿り着けるか。

●Boomers
 New Vegas北東部、Nellis空軍基地に居を構える集団。  居住としている土地柄ゆえ、戦前の兵器を数多く所有しているものの、New Vegasの三つ巴の争いに関しては現在のところ静観を保っている。

 New Vegasの北東、Boomersの居住地域に向かうことになったのは、New VegasのNCR大使、Dennis Crockerの依頼を受けたからだった。


「これはとても重要な問題だ。”妖精の目”たる、きみにしか任せられない、重要な任務だ」
 と招聘に応じてNew VegasのNCR大使館にやってきたSiに対し、Crocker大使は切り出した。
「現在のNew VegasにおけるNCR、Caesar's Legion、そしてMr. Houseの勢力間の緊張状態については、きみもよく知っているだろう。この膠着した状態をどうにかして打開しなければならない
 Siは顎で続きを促す。
 そのぞんざいな態度が気に入らないのか、Crocker大使は一瞬だけ苦虫を噛み潰したような表情になったが、すぐに気を取り直してか、言葉を紡いだ。「New Vegasから北東に在る戦前の弾薬庫に、”Boomers”と呼ばれる集団が住んでいる。わたしが頼みたい任務の一つは、彼らに関することだ。きみには彼らとコンタクトを取り、NCRへの支援を約束させて欲しい
「なんか、危なそうだね」
 とSumikaが肩から呟く。
 ふむん、とSiは少し考えてから、「なぜ、おれにその任務を?」と問うた。
「先刻述べたとおり、Boomerは弾薬庫に住んでいるため、戦前の遺産に依る強大な武力を有している。その上、Boomerたちは自分たち以外の人間に敵意を示し、攻撃してくるという噂だ。戦前の迫撃砲で攻撃してくるため、彼らの住む場所に辿り着くことさえ困難だということだ。そこで、”妖精の目”だ。きみならば彼らの攻撃を避け、Boomerの住む場所まで辿り着けるだろう。この任務を達成した暁には、きみのNCR退役に関して、できるだけの支援をしよう

 Sumikaの姿が見えなくなってしまったSiの現在の目的は、NCRから抜けることであった。Caesar's Legionに復讐してやりたいという気持ちが消えてしまったわけではない。しかしそれよりも、近くに有る、もっと重要なことを忘れてしまっていたことに気付いたのだ。もうこれ以上、大事なものを失いたくは無い。そう思っての退役である。
 一般兵とは違い、RangerであるSiの場合、退役さえも本人の意思だけではままならない。支援してくれる人間か、でなければ金が必要だ。New Vegas地区の大使という肩書きを持つCrockerの申し出は悪くはない。



「あんた、さっき、任務の一つは、って言ったよな?」とSiは確認した。「ってことは、他にも任務が有るってことか?」
 Crockerは顔を顰めた。どうやらSiが指摘した点は、彼にとっては着目されたくない所だったようだ。大方、この任務をSiが達成したところで、任は一つではないと言っただろうとでも言って、さらに扱き使う予定だったのだろう。
「その通りだが、そう長い時間拘束するつもりはない。悪い話ではないと思う」
「ふむん」
 唸っては見せたが、Siに選択肢は無い。Dennis Crocker以外に、NCR有力者へのコネクションは無いのだから。

 そんな経緯も有り、SiはNew Vegas北東のBoomersの領域までやって来たというわけだ。ちなみにBooneとRexは、NCR大使館で休んでもらっている。敵は巨大な迫撃砲だ。大人数で押しかけたところでどうにかなるわけではない。


 その迫撃砲をどう攻めようかと考えているところで、声をかけてきた者が居た。
「おいおい、にいさん。ここは危険だぜ。もうBoomerのテリトリーだ」
 にやついた顔で声をかけてきたのは、ゴーグル付きのキャップを被った浅黒い肌の男である。武器はホルスターに入ったままで、特段の殺気は無い。
 Siが黙ったままでいると、「良い情報が有るんだが、どうだ、聞いてかないか」などと言い出した。

Aid: Beer (CHA+3)
Challenge: Speech (30)→Succeeded

「おれはスカヴェンジャーだが、ギャンブラーでもあるのさ。賭けをしよう。あんたが運良くBoomerの処まで走り抜けられたら、あんたの勝ち。あんたが死んだら、あんたの負け。で、おれはあんたの荷物を貰う。とはいえこのままじゃあ、あんたのほうが不利だ。迫撃砲を喰らっておっ死んじまう。だから、300Capsでおれの知ってる安全な道程を教えてやるよ。無事に帰ってきたら、2倍にして返してやる」


「乗らん」
 どうだと言わんばかりの男に対して、Siは言葉を叩き付け、背を向けた。Boomerの領域へと向かう。後ろから、キャップの男がSiを罵る声が聞こえたが、無視した。

「良いの?」とSumikaが心配そうな調子で言う。「一応、話だけでも聞いておいたほうが良かったんじゃないの?」
「あの男が、本当にBoomerの処まで安全に辿り着ける道を知っているのなら、他にも大勢が通り抜けているはずだ。だったらCrockerはおれなんかに依頼したりはしなかっただろう。そう簡単にはいかないだろ」
「じゃあ、どうするの?」
「一応、作戦は有る」
「作戦って?」
「どんな迫撃砲だって、撃ちっ放しというわけにはいかないだろう。砲撃が収まったタイミングで走り抜ける」
「Silas………」
 呆れたようにSumikaが言う。それの何所が作戦なの、と。

 確かにSumikaの言う通り、普通の人間ならこれは作戦とは言えない。だがSiは”妖精の目”だ。”妖精の目”には妖精が見える。尤も今はSumikaの姿は見えず、声を聞くか直に触れるかでしか彼女を捉えられないので、”妖精の耳と皮膚”といったところか。
 Siは”妖精の目”を失った。視覚に関していえば、他の人間と同じ、つまりSumikaのことを意識できなくなった。彼女だけではなく、彼女の着ている服も見えず、目の前で料理をしたり、文字を書いたりしても、彼女が何かを動かしたり、物を作ったりする様子が感じられないのだ。ただ結果だけが、いつの間にか現れている。
 しかし”妖精の目”を失ったSiにも、Sumikaの場所を感じられることが有る。それは彼女が強い光源など、視覚を刺激するような物を持っている場合だ。強い刺激は、閾下に潜ってしまった感覚を呼び覚ましてくれる。

「これを持って行け」
 とSiが渡したのは小型の鏡である。これで太陽の光を反射させれば、SiにもSumikaの合図が見える。
 作戦はこうだ。まずSumikaが迫撃砲の位置まで飛んでいく。そして装填で砲撃が収まった瞬間に鏡で合図をしてもらい、走り抜ける。

 Ranger Helmetを被り、Sumikaが飛んでいった方向を見据える。爆風を岩で避けながら、合図を待つ。
 明らかに光源や反射物が無い位置が眩しい。Sumikaだ。彼女の合図だ。Siは岩陰から飛び出した。


 Sumikaがタイミングを計り間違えたかもしれない。
 そんな危惧は無いでもなかった。
「だがそうだとしても、どうなる」
 爆風でSiが吹き飛ばされ、死ぬだけだ。Sumikaは無事だろう。南部NCRのRangerが一人死んだところで、誰も悲しまない。
(あいつは一人で生きていけるだろうか)
 唯一の心残りはSumikaだ。鴉や猫に襲われたら、今度は誰にも守ってもらえなくなる。Siが守ってやらなくてはいけないのだ。そう思えば、やはり、死ねない。
 ただひたすらに走った。金網に近づいたときに、背後から爆音が聞こえてきたが、どうやらもう迫撃砲の射程から外れたようだ。

「動くな!」
 警告は金網の内側から発せられた。Power Armorを着た人物が、Rocket Launcherを構えてSiを狙っている。


「糞っ、どうやって爆撃を潜り抜けて来やがった」
 金網越しにRocket Launcherを構えられたところで、恐ろしさは無い。苛立ちの声をあげるPower Armorを着込んだ人物に、Siは肩を竦めてこう返した。
「走ってきただけだ」


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