天国/05/517日目
1458年09月14日
517日目
蠍、主につがいを決められること
Name: Rana
Sex: Female
Level: 31
HP: 55
Attributes: STR12, AGI15, INT14, CHA24
Skills:
【STR】鋼の肉体4, 強打4, 豪投4
【AGI】武器熟練4, アスレチック5, 乗馬5, 略奪4
【INT】訓練5, 戦略6, 経路探索1, 観測術2, 荷物管理2, 治療2, 手術1, 技術者1
【CHA】説得3, 捕虜管理4, 統率力8
Proficiency: 長柄武器261, クロスボウ223, 投擲156
Equipment: 貴婦人の頭布, ブラス・マムルークアーマー, 壮麗なアワーグラスガントレット, 黒金のブーツ
Arms:名匠の手による戦槌, ひび割れたアーバレスト, 鋼鉄のボルト, 投擲用戦斧
Horse: 重いサランのノーブルウォーホース
Companions: ユミラ, アルティメネール
「助太刀いたします」
ハルマールの近隣でベージャー王国の大軍に包囲され、もはやこれまでとばかりに突貫をかけようとしていたビリヤ公の前に、ラナの軍が躍り出る。
敵はこちらの約1.5倍。とはいえ柔な弓兵中心のベージャー国の雑兵如き、蹴散らすに不便は無い。
サラン朝 対 ベージャー王国
サラン朝 273名
ビリヤ公
ラナ
ベージャー王国 398名
ナルデラ卿
ドル卿
クラハスク卿
ヴラン卿
結果 勝利
「間一髪のところで来てくれたな。ラナどのが居なければ、危なかった。心より感謝する」
とビリヤ公は大袈裟なくらいにラナに感謝の意を示した。以前に依頼を受けて、彼の伯父であるガナワ公を救ってからというもの、彼のラナに対する態度は非常に丁寧なものとなっていた。
「いえ、ビリヤ公のお力有ればこそです」
ビリヤ公の賛辞に受け答えをしつつも、ラナの心は何処か遠いところを見ていた。空虚な想いだけが心の中を渦巻いていた。
「そういえば、ラナどのは結婚するそうですな」
ビリヤ公のそんな言葉で、ラナは急に現実に引き戻された。
なんと答えようかと頭を巡らす。手に力を篭める。指が腕に食い込む。
「いやぁ、ラナどのの夫になる男は幸せですな。こんなこと、うちのルワに言えば怒られるでしょうが、ラナどのほど優れた女性は、カルラディア中探しても居りませんからな」
「あの、そのことですが………」
ラナが躊躇いがちに言葉を紡ごうとしたのに気付かなかったのか、ビリヤ公はこう続けた。「これでラナどのとわたしは、遠縁とはいえ一応親戚筋ということになりますか。あいつも悪いやつではないので、よろしくお願いします」
(親戚?)
この人は、いったい何を言っているのだろう。ラナの頭の中は真っ白になった。
*
糞、あの男。なんてことだ。人の上に踏ん反り返って、何もできない無能なやつが。
アジズは己の父親、ハキム帝に対し、堪えられない怒りを感じていた。
バリーエのラナの居室に向かうと、もう午後だというのに、彼女は生地の薄い部屋着のまま寝台に腰掛けていた。
ラナと対面してから、アジズは言葉を探した。何も見付からなかった。かけるべき言葉など、何も。
「ラナ、ぼくは」
アジズはとにかく言葉を紡ごうとした。思ったことを、全て。言うべきか判らないけれど。
「おかしいと思うんだ。厭なら、厭だって言えば良いと思うんだ。だって、ラナが好きになった男は、反逆罪で国を追われて、それで、ラナが好きでもないやつと結婚させられることになってて………」
トゥリビダン公の件を、アジズはハキム帝に問い質した。納得できなかった。トゥリビダン公のことはよくは知らないが、各地を放浪してはいるもの、特段反逆を企てているだとかいう兆候はなかった。何より、ラナが婚約をしたこのタイミングで、おかしかった。
父の言葉は、「おまえには関係ないことだ」だった。
ラナが顔を上げる。目元が赤く腫れている。それでもやはり、美しい。
「アジズ、わたしはべつに、トゥリビダンさまのことは、好きだったというわけじゃありませんよ。ただ、ちょっと……、良いかな、と思っただけです」
「結婚しても良いって思ったんだろう? それは、好きだってことじゃあないか」とアジズは言い返す。「ぼくは、ラナが結婚するのは厭だけど、でも、ラナが好きになった人なら、って、そう思ったのに、それなのに、あの、あの糞野郎、勝手にムーニル公なんかと結婚を進めやがって」
ラナとムーニル公が結婚するという話は、いつの間にか国中の噂となっていた。ラナはカーギット・ハンからバリーエを奪い返し、滅亡しかけていたサラン朝を復興させた人物として女性ながら名高く、ムーニル公は古からサラン朝に仕えている貴族の出だ。その結婚は国中で祝福されるところとなっている。もはや、そんな噂は嘘だと言っても、どうしようもなくなっていた。
アジズはムーニル公が嫌いだ。バリーエの近郊に、バルダク城という領土を持ってはいるが、バリーエの奪還でも特に役には立たなかった。戦下手というわけではない。ただ、不利な状況では己の保身ばかり考えるような人間なのだ。だから、嫌いだ。
「厭なやつだ。従兄弟のビリヤ公なんか、まだ二十代なのに禿げなんだよ? あいつだって、きっとすぐに禿げる」
「アジ、ハキムさまやムーニル公のことをそんなふうに悪く言わないでください」とラナは優しい声で言った。「ハキムさまは、きっとわたしのことを考えてくださっているんですよ」
アジズは己の耳を疑いたくなった。
なにを、なにを言っているんだ、ラナ。
「反逆罪で国を追われる男と結婚すれば、その妻も不幸になるでしょう。ハキムさまは、きっとそうならないようにしてくださったんです。ムーニル公のことも、そうです。彼はサランの重臣ですから、何処の出かも判らないようなわたしの立場も悪くならないと思ってくださったんでしょう」
「違う、違うんだ、ラナ」
アジズは虚ろな目のラナを、必死で呼び戻そうとした。
「あいつは、自分のものが自分の思い通りに進まないのが厭なだけなんだ。他人のことを思って行動するなんてこと、一度も無いんだ。トゥリビダン公が追放されたのも、きっとラナが勝手に結婚を決めようとしたから……」
言葉が続かなかった。ラナの瞳はただただ遠くを見ていて、何を言っても無駄だということは、アジズにも理解できた。
「わたしは、誰だって良いんです」
ハキムさまと添い遂げることが無理なら、誰でも。ラナのそんな言葉は、アジズを絶望の淵に追い落とした。
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