かくもあらねば/25/01

King's Gambit
兵を前に

Si
Lv.27
S/P/E/C/I/A/L=6/10/4/6/4/9/1
Trait: Fast Shot, Wild Wasteland
Tag: Guns, Repair, Survival
Skill:
[S]: M.Weapon=50
[P]: E.Weapon=30, Explosives=30, Lockpick=90
[E]: Survival=76, Unarmed=18
[C]: Barter=76, Speech=28
[I]: Medicine=22, Repair=100, Science=19
[A]: Guns=100, Sneak=66
Perk:
[E]: Walker Instinct
[I]: Comprehension, Educated, Hand Loader, Jury Rigging
[A]: Cowboy, Quick Draw, Rapid Reload, Nerves of Steel
[Others]: Confirmed Bachelor, Finesse, Gunslinger, Lady Killer
[Implants]: Agility Implant, Endurance Implant, Sub-Dermal Armor
Equipment: Lucky, Mysterious Magnum  Hunting Revolver(GRA)+, Cosmic Knife Clean  Throwing Knife, NCR Ranger Combat Armor, Ranger Helmet

 New Vegas、StripのNCR大使館に久し振りに戻ってみると、怪我をして寝込んでいる兵士がいるわ、壁には穴が空いているわ、弾痕の跡があるわ、と酷いものだった。
「戦闘でもあったのかな……、なんだろう」とSumika呟く。


 大使のDennis Crockerも部屋で寝込んでいた。足を引き摺り気味で、どうやら怪我をしたらしい。
「襲撃に遭ったんだ」
Caesar's Legionか? それともKingsか?」
「きみの報告にあった、Caesar's Legionから任務を受けているKutoという運び屋、彼女と行動を共にしていたVeronicaと呼ばれていた女だよ」


 Crocker大使の述べるところでは、Strip地区をうろついているKutoとVeronica、それにED-Eというロボットを発見し、拘束しようとしたらしい。が、結果はほとんどVeronicaという女の大立ち回りで終始したという。
 Crockerの怪我も、その戦いでの名誉の負傷かと思ったのだが、聞けば襲撃者から逃げようと思って、階段から足を踏み外しただけのことらしい。

「ま、そのことは良い。いまは重要ではない彼女らには彼女らなりの目的があったようだが、少なくともこの大使館を襲撃しようというふうではなかったことだ……。さて」とDennis Crocker大使は居を構え直す。「本題に入ろう。きみは以前に、Kingsのボスと親交を持ったという報告をしたな?」
「親交というほどでもないが、こいつは」とSiは足元で寝ているRexを一瞥する。「Kingの犬だ」
「成る程。少なからず交友があるというのは心強い」
 Crocker大使は、NCRの兵士やNCRに協賛する市民が、Kingsの構成員と思しき暴徒にたびたび襲われているという旨を告げた。
「そいつは穏やかじゃないな」
「土曜の午後のティータイムというわけではないからね。残念ながら穏やかな話ではない。だがきみに頼みたい任務が穏やかになるかどうかは、きみ次第だ……。きみにはKingsによるNCRに対する襲撃を止めてもらいたい

「Kingsが襲撃者だというのは間違いないのか?」
 前例があるだけ、いまさら疑うというわけでもなかったが、Siは質問を投げかけてみた。
「間違いない」とCrockerは即答する。「闇討ちを指揮している男が、KingsのPacerという男だということも判明している。この問題の対処にはふたつの方法がある。ひとつは、Pacerを排除するという方法だ。単純に殺すというのでは、われわれが殺したということが感づかれてしまい、良くない。何らかの方法を講じて、NCRの仕業だとばれぬよう、Pacerを殺す
「おれは暗殺者じゃない」とSiは肩を竦める。
「では、もうひとつの方法になる。外交的に、穏便に解決するという方法だ。わたしはきみにこれを期待している」


「穏便に、ね」


 Mojave Wastelandに来て以来、穏便に片が付いたことなど一度としてない。今度こそ、とは、どうしても思えない。Siが呟いたのは、そういう意味でだろう。
「でも、Kingなら話は聞いてくれるんじゃないかな」
 と彼の言うことは理解できたものの、Sumikaはそう言ってやった。
「そりゃ希望的観測だろう」
「そんなことないよ。だってKingって、良い人だもん。こっちにはRexもついているしね」

 果たして正しいのがどちらだったかといえば、Siだった。
 Kingsの溜まり場であるFreesideの演劇学校、そのホールにいつもと変わらぬ様子でKingはいた。都合悪く、Pacerも。


あんたは席を外してくれないか。Kingに大事な用事がある」
 とSiはぞんざいな口調をPacerに向けた。
 Pacerは怒りにか目を吊り上げて何か言おうとしたが、「まぁ、まぁ」とKingによって宥められた。「Pacer、そんなにキレるこたぁないだろう。NCRのも、おたく、そういう言い方はないだろうに。Pacerはおれの腹心なんだ。何があってもな。用があるなら、ここで話していってくれ」

 Siはひとつ溜め息を吐きはしたものの、己の言葉ではKingの心を動かすことはできないし、できたとしても今後の交渉に支障を来たすと思ってか、Pacerの存在は無視して交渉を始めた。
「あんたに頼みがある。NCRへの襲撃を止めさせてくれ
 Pacerが言い返そうと口を開きかけたが、またもやKingが押し留める。
「そいつは無理だな」と彼は応じた。
「あんたはFreesideで戦争がしたいのか?」
「たまんねぇな」とKingは肩を竦める。「おたくにでっけぇは恩がある。Pacerが以前仕出かしてくれたことを止めてくれたこと、Rexを助けてくれたこと。だがな、あんたのそれは、頼みというには少々でっかすぎるな。それに、忘れたのか? あんたは一回、その働きの分の報酬は金で貰ってるんだぜ」



「Rexを助けてやった分の報酬は貰ってない」
「それはRex自身が払っただろう。何やって来たか知らないが、やっこさん、随分頑張ったみたいだぜ」
「あくまでNCRと敵対するのを止めないのか」
「他のことだったら、なんでもやってやるんだがな。あんたの靴を舐めろ、とかでも」
「いまのようなことを続けたら、NCRが軍隊を送り込んでくることになるぞ。そうなったら、Freesideの自治も糞もない。死ぬだけだ」
「だったらあんたがどうにかしてくれ。良いNCRなんだろう?」

 交渉は明らかに失敗だった。原因は解る。KingはSiを軽んじているわけではないし、NCRを舐めてかかっているわけでもない。NCRの本当の脅威を知らないだけで、Siに対しては、むしろ逆なのだ。彼はSiを評価しているといっても良いだろう。そして、SiならNCRを止められると思っているのだ。
 だが現実は、そう甘くない。Siは一介のNCRの兵士だ。Rangerとはいえ、権限はそう強くないし、何より南部NCRから出向しており、これから軍を去ろうとしている身だ。下手なことはできない。

 一先ずはCrocker大使に交渉を失敗した旨を告げるしかなく、SiとSumikaはStripに戻った。
「それは残念なことだな」
 とCrocker大使の態度は軽かったが、しかし表情には深刻さが刻み込まれていた。
「NCRに対する不満が溜まっているんだろう。どうにかならないか」
 と言うSiに対し、Crocker大使は首を振って応じた。「FreesideでのNCRの評判が良くないのは知っている、が、それはもはや話し合いで解決する問題じゃない。大きな蟠りがあるんだ。急に仲良くするなんてことはできない」
 Crcoker大使の言っていることは理解できる。Freesideの人間が、NCRに協力したほうが得だと思っても、それは理屈の上でのことでしかない。いままで憎み合っていた相手と手を取ることは難しいのだ。
「とはいえ、もたもたしてはいられない。Freesideの掌握は本部からの急命だ。こういう場合は、HooverダムのMoore大佐の指示を仰ぐことになっているんだが……」
 と言いながら、Crockerの顔が明らかなる影を帯びる。
「なにか不味いのか?」
「きみは彼女に会ったことは?」
 Siは首を振る。Sumikaも、Moore大佐なる人物のことは知らない。女性だということが、いまのCrockerとの応答で解っただけだ。
「もし彼女に指示を仰げば、きみには完全武装の一個小隊と殺戮の権限が与えられるだろう。そうなったら、被害はKingsだけに留まらない。周囲の一般市民にまで影響が及ぶだろう」
「止められないのか?」


「それは無理だ。わたしは一介の大使であり、軍に発言力はない。だが………」Crockerは閃いた様子で指を鳴らした。「いや、Hsu大佐だ。McCaran基地のHsu大佐がいる。彼ならFreesideの人間に理解があるし、実情も把握している。何より高級将校だから、Moore大佐に横槍を入れられる可能性もないだろう。確か彼は、この辺一帯の水や電力の管理を取り仕切っているはずだ。それを交渉のカードに使えるはずだ。きみ、悪いがMcCaran基地まで行って、Hsu大佐と話をつけてきてくれ……、どうした?」
 Crocker大使は怪訝な顔でSiを見て問うた。見れば、Siは唖然とした表情をしている。
「あんたが存外にFreesideの一般市民のことを考えているから、驚いた」
 とSiは応じた。
 Sumikaには、彼の心持ちが解った。Dennis Crockerという男は、上の者には媚び諂い、下の者を働かせ、その手柄を横取りし、自分は踏ん反り返っている、と一見そんなふうに見える人間だ。その彼が、Freesideの人間を慮っているのだ。

 ふ、とCrocker大使は小さく息を吐く。
「わたしがNCRでなんと呼ばれているか知っているかね?」
「いや」
 Siが首を振ると、Crockerはにやりと笑って応じた。
事なかれ主義、だよ」


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