かくもあらねば/26/01
Heartache by the Number
悲願熱望
Si
Lv. 28
S/P/E/C/I/A/L=6/10/4/6/4/9/1
Trait: Fast Shot, Wild Wasteland
Tag: Guns, Repair, Survival
Skill:
[S]: M.Weapon=50
[P]: E.Weapon=30, Explosives=30, Lockpick=90
[E]: Survival=80, Unarmed=20
[C]: Barter=76, Speech=30
[I]: Medicine=22, Repair=100, Science=19
[A]: Guns=100, Sneak=72
Perk:
[E]: Walker Instinct
[I]: Comprehension, Educated, Hand Loader, Jury Rigging
[A]: Cowboy, Nerves of Steel, Quick Draw, Rapid Reload, Run'n Gun
[Others]: Confirmed Bachelor, Finesse, Gunslinger, Lady Killer
[Implants]: Agility Implant, Endurance Implant, Monocyte Breeder, Sub-Dermal Armor
Equipment: Lucky, Mysterious Magnum Hunting Revolver(GRA)+, Cosmic Knife Clean Throwing Knife, NCR Ranger Combat Armor, Ranger Helmet
ご苦労だった、とCrocker大使は言った。
「すべてが上手くいったわけではないが、大きな被害は出なかった。やはりきみとHsu大佐に任せて良かったよ」
何が良かったのだ、などとはSiは言わない。代わりに、「それより忘れてくれるな。おれの除隊の件だ」と返す。任務を受ける代わりに、Siの除隊について口添えしてくれるという件だ。
「ああ、それは解っている。一先ずこちらの仕事は片付いたわけだから、わたしのほうから本部に伝えておいた。が、少々不味いことになった」Crocker大使は顔を顰める。「HooverダムのMoore大佐がきみの業績に興味を持ったらしい」
「どういうことだ?」
「今回の一連の件、Platinum Chipの追跡やBoomersとの交渉、Freesideでの立ち回りのことを聞いて、自分の下で使いたいと言い始めたんだ」
「Moore大佐に、おれの除隊のことは?」
「伝えたよ。そんなことは許さん、ときた。とりあえずは、別の任務があるといって、彼女の要請を退けたんだが………」
「別の任務?」
「Crimson Caravanからの交渉の任だ。Alice McLaffertyから直々の指名があったんだよ。NCRとCrimson Caravanの繋がりは強いから、無碍にはできない。もっとも、きみである必要性はないわけだから、今回はMoore大佐を牽制するための交渉カードとして使っただけだ。きみ自身は実際には行っても行かなくても良い」
そういえばBitter Springへの物資要請の際に、Alice McLaffertyから、手が空いたら力を貸してくれと言われていたか。ならばSi直々の指名というのも納得がいく。単に知っている名前を出しただけなのだろう。
「とりあえずCrimson Caravanのほうのことは了解した。受けよう。Moore大佐のほうは、任務を受ける代わりに、除隊届けを受理するように交渉してくれないか?」
「それは……、難しい。わたしも彼女の雷を落とされたくはない」と言ってから、Crocker大佐は肩を竦める。「だが、きみには借りがある。できる限りの交渉はしておこう。Crimson Caravanの件が片付くまでには済むだろう」
「ああ、助かる」
Crocker大使は気弱な態度ではあったものの、自信がないというふうではなかった。彼なら上手くやってくれるだろう。この数週間で、Siの彼に対する評価は180度変わった。
「じゃあ、とりあえずはCrimson Caravanだね」
「だな」
とSiはSumikaの言葉に頷いて、Alice McLaffertyの下へ向かった。
Crimson Caravanのバラックで、彼女は2つの仕事について語った。
「ひとつはある小さな隊商の買収」
その隊商の名は、Cassidy Caravan。Cassという女性が運営している隊商で、この件に関しては、できるだけ早く、というのがAliceの要求であった。天下のCrimson Caravanがそんな小さな隊商にかかずらう理由は解らないが、商売というのは色々と面倒なものなのだろう。
「もうひとつは、うちの社員のHenry Jamisonの件。彼は経済力を背景にCrimson Caravanでのし上がってきた投資家なんだけど……、ギャンブル狂の女買いでね」
解任を伝えて、現在の立場を退かせてほしい、と彼女は言った。
「方法は?」
「それは任せる。ただし、乱暴じゃない方法でね」とAliceは皺だらけの顔を歪めて薄く笑う。「Hildren博士とやりあったあなたなら、心配ないと思うけど」
「確かに安全そうな仕事だね。ひとつは買収で、もうひとつは解任要求かぁ」とSumikaが呟く。「どっちもやったことないけど」
「そうだな」とSiは頷いてやる。「まぁ、NCRが後ろ盾についているということを見せたいんだろう。ま、危険はなさそうだ」
Cassidy CaravanのCassはMojave Wastelandの南西、Mojave前哨基地に居ることが多いと聞いたので、Siたちは早速そこへ向かう。
「この辺りも久し振りだね。Primmでの事件以来かな」
と懐かしげにSumikaが言ったので、Siは黙って頷いた。
「ところで、Si。わたし、なんか気になるんだけど……、Cassって名前、どっかで聞いたことなかったっけ?」
「そうだっけ?」
Siは首を傾げた。いまひとつ覚えがない。
「うーん、どっかで、聞いたような気がするんだけど……。うーん、思い出せないなぁ」
「思い違いじゃあないのか?」
Mojave前哨基地の酒場の店主にCassの名を出すと、黙ってカウンターに座っている女を指差した。それでようやく、Sumikaが思い違いをしているわけではないことに気付いた。
「げ、こいつ………」
Cassなる人物とは、以前にこのMojave前哨基地を訪れたときに会ったことがあった。酔っ払いで、急に絡んできたのだ。確か、Caesar's Legionに隊商を潰されたとか言っていたか。
「あ?」
カウンターに突っ伏していたCassが顔を上げた。僅かに顔が赤らんでおり、目の色も濁っている。酔っ払いだ。
「いま、なに、げ、こいつ、とか言った?」
「Cass、いきなり喧嘩腰にならないの」と店主が諌め、Siに視線を向ける。「で、あんた、なんの用?」
「あー……」Siは少し言い辛そうに逡巡したのち、口火を切る。「あんたの商隊をCrimson Caravanが買いたいと言っている」
「そんなもんは灰になったよ。じゃなくても売らなかっただろうがね」とCassは即答した。
「売る気はないってことか?」
「隊商をやりたくて立ち上げた。当たり前だろ」
「灰になったんだろう?」
「Alice McLaffertyは金の払いは良いだろうけど、金の問題じゃあない。あいつはつまり、Cassidy Caravanの名前と信用が欲しいってことだろう。わたしの稼いできた信用を簡単に売れるか。だいたいね、Crimson Caravanが買収したいってことは、Cassidy Caravanにはそれだけの価値があるってことだ。だったら手放すのは損だろう。」
Challenge: Barter≧75→SUCCEEDED
Siは辛抱強く交渉を続けた。命の遣り取りをするよりはましだ、と己に言い聞かせつつ。
「じゃあ、どうしたら売ってくれるんだ?」
「そうね……」Cassは視線を酒場の棚に走らせる。「Lacy、ウィスキーを……、汚染されてない、Dixonのやつでもない、ちゃんとしたやつを頂戴」
「もう呑んでるでしょ」と店主が応じる。
「違う、呑み比べをするの」と言ってから、CassはSiに顔を向けた。「あんたが勝ったら売ってやる。わたしは既にハンデつき。どう?」
Cassの傍には既にウィスキーの空瓶が転がっている。彼女が酒に強いことは明らかだが、いくら酒に強くても、限度量がないわけではないだろう。
「いいだろう」
とSiは襟元緩めて隣に座る。Sumikaの制止する声は無視した。
*
「ああ、もう……。だから言ったのに………」
ボトル3本目。アルコール度数50%を越えるそれを割ることなく呑んでいるのだから、酒に弱い部類ではないSiとはいえ、厳しいものがある。既に顔は真っ赤で、酔いが回っている。
対してCassは最初と変わらない表情で、ボトルを開けるペースこそはSiに合わせてはいるが、かぱかぱと杯を空にしていた。
このままでは勝負に負けてしまうし、何よりSiの身体に良くない。
Sumikaは意を決し、グラスを持ち上げてウィスキーを己の口の注いだ。
吐き出しそうになった。
苦い。SumikaやSiが呑むとすればワインで、アルコール度数がまったく違う。喉が焼け付くようだ。身体のスケールから考えればアルコール消化機能は高いSumikaでも、胃に入ってすぐに真っ赤になってしまった。
「馬鹿、止めろ」
とSiが制止してグラスを引っ手繰る。
「でも、Si、これ以上は……」言いかけて、SumikaはSiがこちらのの行動を認識していることに気付いた。Topsで頭の怪我があって以来、見えなくなっていたはずなのに。「Si、わたしのこと、見えるの?」
「見えるようになったわけじゃあないが……」Siは呂律の回らぬ口調で応じる。「なんとなくぼんやり解るというか………」
酒による酩酊が、Sumikaの生体兵器としての機能を一部妨害しているのかもしれない。ならばこれからは、Siにはずっと酔っていてもらうべきだろうか。
「あんた、なにぶつぶつ言ってんの?」
とCassが怪訝な顔でSiたちを一瞥する。酔いのあまり、彼女の存在を忘れかけていたSumikaである。
「ここに妖精がいるんだよ………」頭が回っていないのか、Siがそんなことを言う。「あんたにゃ見えないだろうが」
「へぇ、どこに?」
とあれだけ呑んでいるはずのCassに見えないのは、彼女のアルコール分解機能が恐ろしく高いためだろう。
「どういうの?」
「可愛いよ」とSiはぼんやりとした目で言った。「ちっこい身体で、いつも一生懸命で、自分のほうが大変なのに、おれなんかのことを助けてくれて………」
ウィスキーのせいだ、とSumikaは思った。自分の欲求がそのままSiの口から聞こえていた。酔っている。幻聴だ。
「妖精ね」Cassは掌で回して笑う。「あんた、妖精の目っていうRangerなんだよね? ほんとに妖精が見えてるわけね。面白いじゃない。いいよ、隊商は売ってやる。条件付きではあるけれど」
彼女が言葉を紡いでいる間に、Siの顔が赤から青に変わっており、カウンターの隅で嘔吐していた。
「Cass、ちゃんと片付けてね」とカウンターの中の店主が言った。
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