かくもあらねば/31/02

 NCRとCaesar's Legionの最終決戦。
 SiはHoover Damで戦った。


 Kimball大統領の護衛という最後の任務が果たせなかったために、Moore大佐との約束はご破算となっていたが、代わりにSiの除隊を支援してくれる者が現れた。大佐どころではない。NCRのLee Oliver将軍


 彼から請け負った任務は、単独にてCaesar's Legionのキャンプに突入し、敵の将軍であるLegate Laniusを殺害するという、あまりにも難易度の高いものである。彼がSiを利用しようとしているのは明らかだった。いまや力を失ったとはいえ、いちおうのRangerとしての能力は備えているSiを捨て石として利用し、Legionの軍を防御に回らせようというのだろう。
 それを理解していても、Siにはほかに道はなかった。


 Sumikaの力を借りずに戦うのは、初めてのことだ。自分の目で見て、自分の耳で聞く。信じられるものはほかにはない。戦いを初めて以来、ずっとSumikaに頼りっ放しだったSiにとって、その感覚は本当に新鮮だった。
 Siは痛む身体を引き摺り、戦った。迫り来るLegionの兵士を打ち倒してキャンプに潜入し、仮面を被り、大刀を振り回す男、Legaate Laniusを殺害することに成功した


 身体は怪我と薬物の影響でぼろぼろで、しかし身体よりも心が痛んだ。Rexが死んだ何の義理もなく、ただ元の飼い主に命ぜられるままに共に戦ってくれたサイボーグ犬が、死んだ


 Siは重い身体を引き摺って、NCRのキャンプへ戻る。
「これで、終わりなんだ」
 Siは諦めなかった。諦めずに、最後まで戦った。
 勝ったのは、ただ単に運が向いていたからだ。努力の甲斐などではない。だが、諦めていたら、運を掴むことさえできなかった。
「帰ったら、それで終わりだ」

 だがSiの帰るべき場所はなかった。
 NCRのキャンプは壊滅していた。


 死屍累々の死体の傍に立つのはふたつの人影。
「お久し振りです、牧師さま」
 ひとりは傍らに小型のEyebotを侍らす、褐色の肌に銀髪の美女、Kuto。

 彼女ひとりでNCR兵士たちが防衛していたキャンプを壊滅させられるわけがない。これだけの業を行ったのは、傍らに立つ男。
 テンガロンハットにポケットの多いウェスタンシャツ。ネッカチーフを纏うその姿は紛れもないカウボーイ。

 死んだと思われた兵士たちの中で、まだ息のある者がいた。Rangerであろうその兵士は、死に物狂いで立ち上がり、銃を手に取りカウボーイへと向けようとする。

 だがカウボーイは、Rangerが撃鉄を引き起こすその前に、抜いたことすら認識できぬ早業で、ホルスターのシングルアクションを撃ち放つ。
(1発)
 撃たれたRangerは絶命。まさしくその場に立っているのはKutoとそのカウボーイだけになる。
「久し振りだなぁ、ボス」
 顔の崩れたその顔は、作業着を着て隠居をしたはずの見知ったGhoul、Raul。
 なぜ、なぜ彼がKutoの味方などしているのか。
「おれは可愛いRafaelaの味方だからな」とRaulは信じられないことを言った。
「そいつはあんたのRafaelaじゃないぞ」
 Siは血を吐くように言葉を搾り出す。
「おいおい、言わんでくださんなって」Raulは大袈裟に肩を竦める。「200年ぶりに見つけた、かくあらねばっていう夢が復活したんだ。妹を守ってやるっていう夢がな。ぶち壊さないでくれよ」

 南部NCRから出向中のRanger、”妖精の目”。
 200年前の世界から生きるカウボーイ。
 もはやふたりの間に言葉はなかった。

 SiはホルスターのRanger Sequoiaを抜こうとする。
 と、足元に一発。先ほどと同じく、見えないほどの速度の抜き撃ちによる牽制射撃は、Siの爪先をすれすれを撃ち抜いた。
(2発)
 それをも構わずRanger Sequoiaを抜くと、もう一発、今度は太腿を弾丸が貫通する。
(3発)
 Ranger Sequoiaの引き金を引くより早く、Raulの銃から弾丸がもう一発発射される。その弾丸は、正確無比にRanger Sequoiaを叩き落した。
(4発)
 Raulの抜き撃ちの速度が己より早いということが解っていたSiは、次の体勢へと移っていた。間髪入れず、ホルスターのMysterious Mugnumを抜こうとする。
 その腕を、Raulの弾丸が貫く。
(5発!)
 穴が開いた腕で、無理矢理にMysterious Magnumを抜くも、やはり精密な早撃ちで弾き落とされる。
(6発!)
「さぁ、これで………」

 Siは知っていた。RaulがSiを殺すつもりはないということを。彼は優しく、そして強かった。己の腕がSiよりも遥かに優れていることを知っているからこそ、Siを殺さずに捕縛することを考えているに違いなかった。
 Raulは知っていた。Siが二挺拳銃を扱うということを。Black Mountainで出会ったとき、Siは彼に銃を貸し、己は己の銃で戦った。そしてそのときには、Siは.45-70ガバメント弾を発射する拳銃を持っていなかった。


「三挺拳銃だなんて………、聞いてねぇぞ」
 それが200年生きたGhoulの最期の言葉になった。
 Siは3本目の銃、Luckyを抜いて、撃っていた。連射したその弾丸はRaulの腕を、胸を、頭を射抜いたのだ。

 言葉はなかった。SiはKutoに向き直り、Luckyを構えた。
 だが彼が引き金を引くよりも早く、衛星兵器、Euclid's C-Finderが唸りをあげていた。


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