かくもあらねば/32/06

Cecilia
Lv. 6
S/P/E/C/I/A/L=4/10/4/5/8/6/3
Trait: Logan's Loophole, Wild Wasteland 
Tag: E. Weapons, Science, Survival
Skill:
[S] M.Weapon=16
[P] E.Weapon=50, Explosives=25, Lockpick=30
[E] Survival=35, Unarmed=12
[C] Barter=14, Speech=14
[I] Medicine=35, Repair=20, Science=60
[A] Guns=16, Sneak=16
Perk:
[P] Run'n Gun
[I] Comprehension, Swift Learner
[Other] Brainless, Heartless, Spineless
Equipment: Sonic Emitter, X-2 Antenna, Patient Gown

 Higgs Villageを出てから、人間の脳髄を演算装置として被ったRobobrain強化改造されたCyber Dogなどに遭遇した。いずれもLobotomiteには無関心なのに、Ceciliaに対しては敵愾心剥き出しだった。



「生きてるからだ」
 Ceciliaはそう己を勇気付ける。自分には脳も、心臓も、脊髄もないかもしれないが、それでも不思議と生きている。Think Tankの科学者たちのよく理解できない会話を聞いていても、Ceciliaは例外的存在のようだが、兎に角、Robotomiteとは違うのだ。
(まだ、生きてる)
 だから死ぬわけにはいかない。


Discovered: Y-17 Medical Facility
Added: Sink Project: Auto-Doc

 Y-17でAuto-Docの人格モジュールを見つけたことで、SinkのAuto-Docがようやく復帰した。


Installed: Auto-Doc

『お嬢さんがこの老い耄れを呼び戻したのかね』
 復旧したAuto-Docから流れ出てきたのは、Central Interigent Unitの落ち着いた声とは全く異なる、渋い中年男性の声である。声質だけではなく、口調まで違う。
(この辺が、Dr. Mobiusって人の拘りだったのかもなぁ)
 とCeciliaは思った。


『さて、今日はどんなご用かな?』
「あの、怪我をしているので……、それを治してもらいたいんですが」
『ああ、怪我ね。成る程、若い女性が怪我をするのはいかんな。どれ、老い耄れの腕を振るわせてもらおうか』
 少々不安が残るAuto-Docの口調ではあったが、治療自体はしっかりしていた。ここのところ、自分でDoctor's BagやStimpakを使って応急処置をするばかりであったが、ようやく人心地ついた気分である。

(さて、どうしようかな………)
 次に向かうべきは、X-8なのだが、CeciliaはThink Tankの科学者たちに話を聞いてみたくなった。己が失った記憶に関する手掛かりを持っているのではないかと思ったからだ。
 しかし実際にThink Tankに行ってみると、彼らは皆一様にCeciliaに対して無関心であり、Ceciliaのほうでも、Higgs Villageで見た光景のことがあったため、いまひとつ声がかけ辛かった。
(やっぱりやめよう)
 そう思って引き返しかけたCeciliaを止めたのは、ひとりの科学者であった。声をかけてきたというわけではないが、彼はCeciliaの前に回りこんできた。
「えっと……」
(これは、誰だっけ?)
 5人いて、それぞれの性格の違いは解っているつもりだが、外見ではどれがどれなのかが判断できない。
 しばらく待ってみて、相手が誰なのか気付く。
「Dr. 8?」
『@@[*...]@@』
 返って来たのはなんとも言語化しにくい音であった。


 これがDr. 8だということに気付いたのは、ほかの4人は喋れるのだから言葉を発するはずだが、Dr. 8だけは発声機能が壊れているためか、喋ることができないからだ。

「あの……」
 何かを伝えようとしているかのようなDr. 8を前にして、Ceciliaは必死で意思疎通を試みようとした。Sonic EmitterをCeciliaに渡してくれたのも、このDr. 8だった。彼は何か、Ceciliaの手助けをしようとしてくれているのかもしれない。
『@@[$&%#}]@@』
 しかしながら努力もむなしく、結局意思を交わすことはできなかった。


 諦めて、CeciliaはX-8を目指すことにした。できるだけ戦闘を避けながら、東へ東へと向かっていく。
「ここかな?」
 ようやく辿り着いた場所は、看板にZ-9と書かれてあった。

Discovered: Z-9 Crotalus DNA Preservation

「間違えた」



 折角なので、入ってみる。Auto-DocやJukeboxのように、Sinkの人格モジュールがあるかもしれない。
 中は下水道の構内のような場所だった。僅かに腐ったような臭いがしており、進むのが躊躇われる。
「や、やっぱりやめようかな………」
 ここに人格モジュールはない気がする。

 踵を返そうとしたCeciliaは、蛇の鳴き声のような音を聞いた。薄暗い空間の中で、目を凝らす。
(Nightstalkerっ!)


 獣の胴体に蛇の顔と尾を持つ化け物が2体、目の前に迫っていた。CeciliaはX-2 Antennaを振るい、1体の身体を吹っ飛ばすものの、もう1体には避けられてしまった挙句、出口を塞ぐように回り込まれてしまう。
 X-2 Antennaを振り回しながら逃げる。


 逃げながら、Z-9内部の風景が目に飛び込んできた。檻。骨。卵。斧。チェーンソー。手術台。死体。標本。
「実験場だ」
 網膜に焼きついた。


「人間じゃないんだ」
 脳が揺さぶられた。
「だから何をやってもいいんだ」


 いちばん奥の部屋には、ほかの個体より一回り巨大なNightstalkerがいた。跳びかかってきたそのNightstalkerを、CeciliaはX-2 Antennaで砕いた。
 震えが止まらなかった。
 生体実験は恐ろしい。Nightstalkerの存在も、それを産み出したThink Tankの科学者たちも。だがそれだけではない。Ceciliaは怖かった。
 自分が目の前のNightstalkerのように、実験材料にされると思うと怖かった。


 確かに既に脳を抜き取られ、実験体そのものにはなってしまってはいるが、いまさら己が何をそんなに怖がっているのか、Ceciliaには自分自身、わけが解らなかった。

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