かくもあらねば/32/16
Cecilia
Lv. 21
S/P/E/C/I/A/L=5/10/4/5/8/6/3
Trait: Logan's Loophole, Wild Wasteland
Tag: E. Weapons, Science, Survival
Skill:
[S] M.Weapon=50
[P] E.Weapon=90, Explosives=30, Lockpick=50
[E] Survival=54, Unarmed=12
[C] Barter=20, Speech=50
[I] Medicine=50, Repair=40, Science=75
[A] Guns=16, Sneak=30
Perk:
[S] Weapon Handling
[P] Plasma Spaz, Run'n Gun, Light Step
[E] Travel Light
[I] Comprehension, Swift Learner, Robotics Expert
[Other] Brainless, Heartless, Spineless, Intense Training, Explorer
Equipment: Sonic Emitter, X-2 Antenna, Elijah's Jury-Rideged Tesla Cannon, Stealth Suit Mk2
『きみは……、自分が何を言っているのか、解っているのか?』
機械の身体ゆえ、表情の変化というものは判らなかったが、Mobiusが唖然としていることは明らかだった。
だがそれよりも驚いたのは、Ceciliaのほうだ。Kutoが何を言い出したのか、理解できなかった。
「解ってますよ」とKutoは唇を尖らせる。「いやね、さっきわたしの脳味噌に、おまえみたいな生活スタイルのやつは御免だって言われちゃったんですよ。だったら、生活スタイルがましな人にあげちゃえばいいでしょ。べつに、脳をこの子にあげても、脳が身体を乗っ取っちゃうとかいうことはないんですよね?」
『それは問題ない……。さっきの例えでいえば、メモリやハードディスクを増設したり、ドライバを作るようなものだ。根本的な部分は何も変わらない。だが……、本気か?』
「わたしは、本気です」
Kutoが、わたしは、のところを強調して言ったのが判る。
Ceciliaは殆ど引き摺られるようにして、Kutoの脳の前まで連れて行かれた。
「おい、わたしの脳味噌」
Kutoが脳へ向けて言うと、脳が返事をした。『おい、また来たのか。わたしは汚くて臭くて危険なWastelandはごめんなんだ。誰だろうと、軟弱な身体の中に入って危険を冒したくはない。ずっとこの中で暮らすんだ』
「言っとくけどね、いつまでもこんなところにいられないよ。Biogelは老朽化するんだから。人間の頭の中に納まったほうが安全だって」
『だがあんたは酒は飲むし、夜更かしはするし、所構わず淫乱なことをするんだろう?』
「そりゃ、わたしはね。でもこっちの子は違うよ」
とKutoはCeciliaを押し出す。おかげで脳に接近してしまった。硝子とBiogel越しに見る脳は、ピンク色で、ぶよぶよしていて、こんなものが頭の中に入っているなんて信じられないほど不気味で、それでいて儚げに見えた。
『誰だ?』
「さっき言ったでしょ。わたしの友だち。ねぇ、Sissy、お酒、飲む?」
「えっと、嗜む程度には………」
『たとえば?』と脳が興味を示したように言う。
「お夕飯のときに、ワインをグラス一杯くらいかな」
『それは良い。それは良いんだ。この女ときたら、朝から晩までビールだの、ウィスキーだのを飲み続けるんだ。それで、起床と就寝の時間は?』
「季節によって違うけど……、えっと、だいたい十時頃には寝て、六時前には起きるよ」
「わたしの頭にきみが戻ってきたら、毎日夜遅くまで深酒しちゃうし、休みの日はごろごろしてテレビ見ちゃうね」
『この女ほど非人道的で、自己破滅的な願望を持った怪物はいない……。それに比べれば、Sissyだっけ、あんたはだいぶましだな』と脳は言って、しばらく逡巡する様子を見せたが、やがて決意したかのように言った。『よし、わかった。あんたで手を打ってやろう』
「商談成立」
そんなKutoと彼女の脳のやり取りを見て、やはり脳と身体というのは似るものなのだなぁ、とCeciliaは思った。
脳はKutoの身体に脊髄と心臓を戻し、Ceciliaの身体へ脳を移植したり、X-2 AntennaやSonic Emitterの機能を埋め込むための手術工程をAuto-Docへ送信してくれた。
その上で言うことには、KleinらThink Tankの科学者たちの介入を防がなければ手術はすべきではない、ということだった。
『間違いなく、あいつらは手術を妨害してわたしを取り返そうとするだろう。その前に先手を打て』
つまり、Think Tankの科学者たちを殺せ、と、そういうことだ。MobiusやKutoも、その意見には賛成らしい。
Ceciliaは、迷っていた。彼らのおかげで、Ceciliaは人間の身体を手に入れることができた。それがどんなにか歪でも、彼らのおかげで、Ceciliaは二本の足で立つことができた。
「まず、話し合わせてください」
CeciliaとKuto、それに脳はMobiusに別れを告げ、Think Tankに戻ると、5人の科学者たちが出迎えた。
『戻ったか、Lobotomite……』とDr. Kleinが言った。『Dr. Mobiusはやったのか? あの腐れ脳味噌を鉄屑にしてやったんだろう?』
「脳は見つけました」とCeciiaは応じる。
「わたしの脳味噌ね」
とKutoが口を挟むと、Kleinは一テンポ置いてから、『おまえの脳味噌、ね……。まぁ、そう考えても良いだろう。またいつでも抜き出せるわけだしな』と言った。
「そういうわけにはいきませんな」とKutoが言い返す。「わたしの脳は、もうこの子のものです」
『何を馬鹿なことを。おまえたちは脳を持っているだけで、それをどうする力もない。ひとりはただのLobotomite、もうひとりは人間ですらない化け物だ。われわれこそがその脳を有効に活用できる。そして外の世界へと出て、すべての謎を解明し、世界を掌握するのだ』
「わたしは人間じゃない化け物は嫌いですけど、それが人間になろうとしているんだから、素敵な話ではありませんか」
『Dr. Klein……、待ってください』
とKutoとKleinの問答に割り込んできたのは、女性の電子音声、Dr. Dalaだった。
『その2体のLobotomiteは、非常に興味深い素材です。だから、その……、どうか、傷つけないようにすることはできませんか?』
『わたしはもともと暴力で何かをしようと思っているわけじゃない。だが』とKleinは強い口調で言う。『こいつらがそれを許さないだけだ』
『Klein。あー、もしかしてきみは、ここで戦おうってんじゃないだろうね?』とDr. Borousも介入する。『その、このLobotomiteたちは、Mobiusと対決させるのに有効なはずだ。今回は失敗したけど。それに、ぼくらは知的な研究が本分で、戦いなんていう野蛮な行為はやめたほうが良いと思うんだよ。どうかな?』
『必要ならやるだけだ。科学のために。その覚悟がないなら、黙っていろ、Borous』
Ceciliaには、DalaとBorousのふたりがCeciliaを助けるために、リーダー格のKleinに口出しをしたのが解った。彼らの心遣いを、無駄にはしたくなかった。
「わたしは、やっぱりあなたたちとは戦いたくはありません」とCeciliaは心を篭めて言った。「Dr. Klein……、どうか、見逃してください」
Challenge: Speech≧75→FAILED
『あくまで逆らうと言うんだな、Lobotomite……、ならば』
Kleinの言葉が途中で止まる。彼のディスプレイに映し出された目は、Ceciliaの背後に向いていた。
振り返ると、KutoがMissile Launcherを構えていた。
「まだ待って、Kuto!」
Ceciliaの制止の声はKutoの耳に届いたはずだ。だが彼女は意に介さず、ミサイルを科学者たちに向けて撃ち込んだ。
*
「調子、どう?」
とAuto-Docから出てきたCeciliaに、Kutoが問いかけてくる。
「ちょっと貧血みたいな………」とCeciliaは頭を掻いて応じる。Auto-Docの適切な処置のおかげで、手術の跡はほとんど残っていない。
Perk: Big Brained (薬効耐性+10%, DT+10%)
Perk:Braineless
「じゃ、そろそろ行こうか」
そう言ってKutoは一丁の銃を投げて寄越す。Ceciliaは慌ててそれをキャッチした。
「この銃は………?」
「ここの子たちから貰った。Mobiusを助けて、あの科学者たちを助けてくれたお礼。これ使えば、外の世界とBig Mtを一瞬で移動できるんだって。展望台まで出れば使えるってさ」
Add: Big Mountain Transportalponder!
エレベータで展望台まで昇り、Central Intelligence Unitが用意してくれた予備のSonic Emitterで防護障壁を破壊し、Big Mountain Transpotalponder!を宙へと向ける。引き金を引くと、目の前が白い光で包まれたのち、いつの間にかCeciliaとKutoは砂漠の中のガソリンスタンドに立っていた。
「ここは……、Mojaveかな」とKutoが周囲を見回して言う。
Ceciliaは大きく深呼吸をする。手術は完璧だったらしい。頭は痛くないし、呼吸も苦しくない。ちょっといがらっぽくて、乾燥した、Mojaveの風だ。
「これから、牧師さまを探すの?」
と問うKutoに、Ceciliaは頷いて返した。「うん……。あの子に、会いたいから」
「わたしも一緒に行っていい?」
「え?」
意外な申し出に、Ceciliaは驚いた。Ceciliaは小柄だし、はっきり言って舐められやすいだろう。それに、人間として暮らした経験が薄いから、世渡りが上手そうなKutoが一緒に来てくれることは嬉しい。何よりも、ひとりよりふたりのほうが良いものだ。
だが、なぜ彼女がそんな提案をしてくれるのだろう。
「いや、わたしはどうせ目的も何もないからさ。手伝ってあげようかと思って。暇だしね。駄目?」
「ううん……、ありがとう」
「そう。それじゃ、これからもよろしく、Sissy……。まだSissyでいい?」
「うん」
じゃあ、行こう。そんなふうに言うKutoの背に、「待って」とCeciliaは呼び止める。
彼女のおかげで、脳が手に入った。Ceciliaひとりでは、どんなに努力しても、このBig MTから脱出することは叶わなかっただろう。
彼女のおかげで、手を汚さずに済んだ。CeciliaはBig Mtの科学者たちを己が手で殺さずに済んだ。
彼女のおかげで、ひとりでMojaveの砂漠を進まなくて済んだ。
彼女のおかげで、夢を諦めずにいられる。
「ねぇ、前も聞いたけど、どうしてそんなに優しくしてくれるの?」
とCeciliaが問うと、Kutoは目を逸らし、少し恥ずかしそうな表情で答える。「たぶん、年取ったから、丸くなったんじゃないかな」
「年取った?」
「もう40近いからなぁ……。いろいろ、若い頃にやったこととか思い出して、清算したいんだよ。ちょうど良いチャンスだと思ってね」
「40近い?」Ceciliaは己の耳を疑った。「え? あの、年齢? Kutoの?」
「そうだよ。ああ、身体は、なんかBig Mt行って手術されたら、なんか若くなってた。若いって、いいね。これも最先端の科学技術なのかな」
「あの、Kuto……、ひとつ聞きたいんだけど、Hoover Damの戦いから、何年経ってる?」
「7、8年かな」
Ceciliaは愕然とした。せいぜい、1、2年だと思っていた。
7、8年経っているなら、もうCeciliaは50歳近い。Ceciliaの探し人も、35歳を過ぎている。もう、結婚しているかも。子どもさえいるかも。
「なに、探すの、躊躇してるの?」
問いかけるKutoに、Ceciiliaは首を振って返した。
「じゃ、行こう、Kuto」
幼い頃のCeciliaには、夢がなかった。狭いVaultの中で、ただただ生きていた。それが幸せで、何も追い求めずに良かった。
Vaultを出てからは、夢ができた。元の身体に戻るという、それはまさしく絵空事の夢だった。自分自身、それが達成できるとは思っていなかった。
いまのCeciliaには、自分の手で、必ず成し遂げたい夢がある。
もう夢を諦めたくはなかった。駄目かもしれない。無駄かもしれない。そう思っても、掴んだ希望は離したくなかった。
だからCeciliaは、Mojaveの砂漠に、一歩踏み出した。
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