アメリカか死か/12/01 Growing Up Fast-1
Growing Up Fast
トウモロコシが育っていく
黒雲から水がおちてくる ポトッ ポトッ
空から雨がおちてくる
トウモロコシの葉からおちてくる ポトッ ポトッ
空から雨がおちてくる
木や草から水がおちてくる ポトッ ポトッ
トウモロコシが育っていく
黒い霧から水が落ちてくる ポトッ ポトッ
(トウモロコシの豊作を祈る歌 『アメリカ・インディアンの詩』金関寿夫/中公新書 より)
Rita
Lv. 8
S/P/E/C/I/A/L=4/9/4/6/4/10/3
Tag: Lockpick, Repair, S.Guns
Skill:
[S] M.Weapon=14
[P] E.Weapon=29, Explosives=30, Lockpick=78
[E] B.Guns=14 ,Unarmed=14
[C] Barter=30, Speech=35
[I] Medicine=25, Repair=60, Science=14
[A] S.Guns=70, Sneak=50
Perk:
[C] Child at Heart
[I] Ammunition Engineer, Daddy's Girl
[A] Thief, Gun Nut
[Others] Black Widow, Gunslinger
Equipment: Browning High-Power Pistol, SIG Sauer Pistol, DKS-501 Sniper Rifle, M79 Grenade Launcher, Vault Exile
*
「女の子だ! 可愛い、天使みたいな女の子だよ、Catherine!」
Jamesが叫んでいる。
彼は泣いているが笑顔で、だからRitaも嬉しい。
女の子、とは、取り上げられているRitaのことだろう。産まれたばかりの赤子の記憶がこんなにはっきりと残っているわけがないのだから、きっとこれは成長した己が伝聞で作り上げた仮初めの記憶なのだろう。
それでも、その記憶は唯一母の面影を残すものだった。
良かった。産まれてきてくれて良かった、と母は言ってくれた。
母はRitaを産んで死んだ。Ritaが殺したようなものかもしれない。
父はしかし、優しかった。父が育ててくれた。父と、それに父の助手だったJonesが。だから真っ直ぐに、とはいかなかったが、とりあえず成長することはできた。
Ritaは過去のことを思い出していた。
父が、友が祝ってくれた誕生日を。
優しい記憶を。
Ritaは思い出していた。
幼き日の、真実かどうかは定かではない記憶を。
「わたしはアルファであるオメガである。始まりであり終わりである。神のものは神へと返そう。誰にも平等な水を」
Ritaは夢想していた。
あのとき、父がVaultが出て行った直後のこと、混乱に見舞われたVaultの中で、Ritaは助けを求めていたことを。
ヒーローの到来を願っていた。誰かが助けてくれることを期待していた。それはしかし、現実にはならなかった。だから夢想だった。
RaiderやSuper MutantだらけのCapital Wastelandでも、やはりRitaはヒーローの到来を願った。だが現実は厳しく、一度として誰かに助けてもらえたことなどなかった。自分の手で、銃で、目の前を切り開くしかなかった。いつでも、どこでも、そうだった。
いや、例外が一度だけ。
Super MutantだらけのGalaxy News RadioでSuper Mutant Behemothと対峙したときだ。あのときは絶望の只中にいた。巨大な化け物相手に、どうしようもなかった。
そのときに、Ritaは見た。真っ黒な姿をしたヒーローの姿を。
太い指が目の前にあった。Ritaは思わず仰け反っていた。
いつの間にか夢から醒めていた。目の前で、少し驚いたような顔をして手を差し出している男は、Lynnという名の得体の知れない人物だ。まさしくRitaが思い出していた、Behemothと戦った漆黒のヒーローである。もっともいまは、姿は人間のそれだ。
「いや……、泣いてたから」
と言い訳じみたように言うからには、Ritaの顔に手を近づけていたことに対してバツの悪い思いを抱いているらしい。顔を拭ってみれば、確かに濡れていた。ひんやりとした風が濡れた頬をくすぐる。
「下水は抜けたのか……?」
風を受けて、Ritaは尋ねた。疲弊と薬の後遺症で意識を失っていたRitaだったが、Jefferson記念館からずっと意識がなかったわけではなかった。時折意識を取り戻して、戦っていた。逃げ道となった下水道に蔓延っていたFeral Ghoulと。
いま、冷たい風を浴びているということは、下水道を抜けたということだろう。いったいどこへたどり着いたというのか。陽が登っていないためあたりは暗く、近くに巨大な建物があるようだが、その形状は判然としない。
「ここ、どこだ」
と訪ねてみれば、「Citadelだって」という回答があった。
「Citadel? じゃあ、BOSの………」
「Lyons! あんたがそこに居るのはわかってる!」
急な怒声が響いて、Lynnとの会話は中断された。
視線を声のあったほうへと向けてみれば、叫んでいたのはLi女史だった。どうやらインターホンへと向けて叫んでいるようで、周囲には警備をしているらしいBOS隊員や、生き残ったLi女史の助手などがいたが、みな唖然としている。離れたところにいたRitaやLynnも同じだった。Li女史という人物は、もう少し物静かな人格だと想像していた。
「聞いてんなら、この馬鹿でかいドアを開けなさい!」
その怒号をまさしく聞いていたのだろう。インターホンの横の巨大な扉が、徐々に上がり始めた。
「これで通っていいんでしょ」
とLi女史が横のBOS隊員に向けて問う。哀れなBOS隊員は、ただただ頷くだけであった。
そんな彼を一瞥し、Li女史は足音を立てながらCitadelへと入っていく。Li女史の助手たちも続く。
「歩けるか?」
差し出されたLynnの腕に、Ritaは首を振って立ち上がった。
父は死んだ。もう頼れない。ヒーローが助けてくれるだなんていうのも、一度きりで終わりだ。
だから自分の足で歩かなければならないのだ。
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