展覧会/『ラストクロニクル』/召還英雄考察 -第4弾白橙紫黒青
目次
- 白
- 《白雪姫》
- 《リチャード獅子心王》
- 橙
- 《ヒッポリュテー》
- 《モンテスマ》
- 紫
- 《アッティラ》
- 《紫式部》
- 黒
- 《ジャック・ザ・リッパー》
- 《玉藻前》
- 青
- 《出雲阿国》
- 《メアリー・リード》
4-008R 《白雪姫》 |
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グリム童話
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「女王、ここでは、あなたがいちばんうつくしい。
けれども、白雪姫は、千ばいもうつくしい。」
『グリム 世界名作 白雪姫』Grimm, Jacob Ludwig Carl、菊池寛訳、青空文庫、No.42308より
グリム童話『白雪姫』に登場する、雪のように白い肌と血のように赤い頬、黒檀のように黒い髪を持つ美少女。
さる王国の姫君であったが、7歳のときに継母から美しさを妬まれ、命を狙われる。
逃げ出して7人の小人の家に落ち着くものの、最終的には毒りんごによって昏睡状態(傍目には死亡したように見える)に陥り、彼女の遺体を隣国の王子が見初めるまで眠り続ける。
なお、有名なディズニー版白雪姫の場合、《白雪姫》は王子のキスによって目覚めるが、本来のグリム童話では王子の家来が彼女の身体の上に倒れ込んだ拍子にりんごを吐き出し、目を覚ます。
繰り返すが《白雪姫》は(逃亡してから時間が経過している可能性もあるが)7歳である。
また繰り返すが、王子は《白雪姫》を死体としてしか認識していない。
『ハーベスト りんご2』 白雪姫はワイプ状態で戦場に配置される。 時代Ⅰ‐Ⅲ:白雪姫は回復フェイズに回復しない。 |
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継母である王妃により、白雪姫は4度、命を狙われる。 一度は狩人に、一度は商人に化けた継母によって絞殺されかけ、一度は毒の櫛で刺され、そして最後には毒りんごで。 狩人に狙われたとき《白雪姫》は持ち前の美しさでその場を乗り切る。 しかしそれ以外の場合では、彼女はまんまと王妃の罠にかかり、死にかける。小人の手助けによってなんとか生き延びるが、最後には毒りんごの罠にかかってしまう。 時が流れ、王子がやってくるまでの間、《白雪姫》は眠り続ける。王子が《白雪姫》を見初め、彼女の遺体を運ぼうとした家来が《白雪姫》の胸に倒れ込み、その喉から毒りんごを吐き出させるまで。 |
[W]、白雪姫からりんごカウンターを1個取り除く:対戦相手のユニットを1体選ぶ。それをデッキの下に置く。 |
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《白雪姫》の物語では、彼女の継母である王妃は、真実の鏡が告げた言葉によって、《白雪姫》の殺害を決意する。鏡の告げた内容とは、《白雪姫》が誰よりも美しいという事実であった。 何度殺そうとしても、不思議とけろりとしている《白雪姫》だったが、最後には毒りんごを使用し、王妃は《白雪姫》を戦場から引きずり落とすことに成功する。 しかし王妃は理解していない。毒りんごはあくまで美しさの戦場から少女を一度離しただけで、彼女を本質的には殺せなかったということを。 |
4-015S 《リチャード獅子心王》 |
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ヨーロッパ史
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十字軍の戦士たちはすぐさま、町中のいたるところに散って、金、銀、馬などを奪い、財宝のあふれる家々を略奪した。その後、有頂天になってうれし涙にむせぶ戦士たちは、イエス・キリストの聖墳墓に参拝し、主の恩義に報いた。
『図説 世界の歴史5 東アジアと中世ヨーロッパ』, J. M. ロバーツ, 池上俊一監修, 創元社, 2003, p223より
イングランド王にして、第3次十字軍の重要人物のひとり。ライオンハート。
中世ヨーロッパには、聖地エルサレムへの巡礼途中のキリスト教徒が、現地のイスラム教徒によって危害が加えられているという認識があった。
そうした状況を打開するため、聖地エルサレムの奪還を目的として派兵されたキリスト教徒による軍隊が十字軍である。
その背景から、十字軍への参加はキリスト教の信仰に基づく神聖な行いであった。そのため十字軍の兵士たちは、まったくの良心の呵責を感じることなく、イスラム教徒を殺害した。
《リチャード獅子心王》は、フランス王フィリップ2世や神聖ローマ皇帝の赤髭王フリードリヒ1世とともに第3次十字軍に参加。サラディン率いるトルコ軍と戦い、アッコンの占領に成功する。
ただし、彼らは互いに足を引っ張り合ったため、聖地エルサレムの奪還には至らなかった。
あなたがクロノチェックをしたとき、ターンの終わりまでリチャード獅子心王のパワーとATKをそのクロノチェックでCAヤードに置かれたカードのCA1につきそれぞれ+500、+1する。 [CB]:リチャード獅子心王以外のCAヤードにあるカードを1枚犠牲にする。そうしたならば、クロノチェックを1回行う。 |
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当時の騎士道の象徴といえば、ブリタニアの《アーサー》であったため、《リチャード獅子心王》は己の剣に《アーサー》の剣、《エクスカリバー》の名を冠した。 しかし彼は伝説の《アーサー》王とは異なり騎士道の模範とは程遠く、蛮勇であると同時に粗暴かつ残忍であるとも知られていた。アッコン占領の際、彼は交渉が遅々として進まないことに腹を立て、3000人近い捕虜をすべて斬首したと伝えられている。 そのため、彼は《アーサー》のように時代を促進させるなどという建設的なことはせず、ただただCAヤードの力を暴力に変える。 |
4-031R 《ヒッポリュテー》 |
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ギリシャ神話
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娘たちは戦士として教育され、敵を三人殺すまでは処女のままでいる習慣だった。
『神々と英雄と女性たち 美術が語る古代ギリシアの世界』, 永田年弘, 中央公論社, 1997, p134より
《ヘラクレス》の12の冒険のうちのひとつに登場する、アマゾン族の女王。
アマゾン族は女だけしか存在しない非常に特殊な民族であり、弓を射るのに邪魔になる右の乳房を焼いて切り捨てていた(ギリシャ語で「ア」が否定形、「マゾン」が乳であるため、「アマゾン」は乳房が無いという意味)。
春になると隣国の男と交わり、子を成す。その子が女の子ならそのまま育て上げるが、男の子なら殺すか、生殖機能を失わせたうえで夫のもとへと送り返す。
『時代Ⅰ:あなたのレベルⅠのすべてのユニットのパワーを+500する。』 |
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古代ギリシャにおいて、女性の地位は非常に低かった。 政治や社会に関わることができず、ただ親に命じられるままに嫁ぎ、家事をし、子を産み、そして死ぬだけだった。 その影響か、紀元前のアテネでは女性の平均寿命は男性よりも10歳近く短かったと言われている。 アマゾン族という伝説的な部族は、現実とは逆に、女性の地位が高く、男の地位を貶めていた。 なればこそ、その女王である《ヒッポリュテー》は、地位の低い時代1ユニットに力を与える。 だがその存在は、あくまで伝説上のものでしかない。時代が進めば消えてしまう儚いものでしかないのだ。 |
4-033S 《モンテスマ》 |
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南米史
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「祭りがはじまり、人々は踊り、歌い、歌に歌が重ねられたとき、スペイン人たちは殺したいという衝動に駆られた。彼らは武装して走り出し、すべての入り口をふさいで、だれも外に出られないようにした。そして踊り手たちの真ん中に走り込んで、太鼓の間に割って入り、それを叩いていた男に襲いかかって両手を切り落とした。頭も切り落とした。首は遠くに転がった。あらゆる人に襲いかかって刺し殺し、切りつけた後ろから襲い掛かると、倒れる者の腸が飛び出した。頭を叩き割られた者は、頭蓋が押し潰されて粉々になった。
『アステカとインカ 黄金帝国の滅亡』増田義郎、小学館、2002, p82より
アステカのメシカ族、最後の王。ウィツィロポチトリ(アステカの戦争の神)の化身。
スペインからの侵略者、コルテスに対して当初は不信感が拭えなかったものの、動員した呪術師団を用いても「彼らは身体が硬かった」(鉄製の鎧の比喩?)ため呪術が通用せず、「海に山を浮かべ」るなどの異能を誇るスペイン人たちを、アステカ神話の神、ケツァルコアトルと解釈。
彼らを迎え入れた結果、最終的に自身とアステカそのものの死を招いた。
あなたのターン終了時に、このターンにあなたのユニットが攻撃していないならば、モンテスマを犠牲にする。 |
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スペインからやってきた白人たちを当初は敵と考えていた《モンテスマ》であったが、白人たちが彼らの常識から反した存在であることや、それ以前に予兆らしきものがあったことから、《モンテスマ》は白人たちをケツァルコアトル、もしくはその化身として受け入れ、権力の返上を約束し、ウィツィロポチトリの祭礼であるトシュカトル(渇き)の祭りに白人たちを招待する。 祭りの最中、白人たちは無抵抗のアステカ人約1万人を殺害する。 その理由に関して、この祭りは旱魃に対する雨乞いの祭りであり、生贄を祭壇に捧げてその肉を食らい、血を啜るという儀式があることをスペイン人たちは知っていたため、己らも生贄に捧げられるのではないかと恐れたのだとも、アステカ人たちが武器を持っていたため反乱を企てたと考えたのだとも、あるいは祭りの高揚に乗せられたのだともいわれているが、正確なところは不明であり、ただ虐殺の記録のみが残る。 その後、《モンテスマ》はコルテスの説得で「戦わず」和睦路線を貫こうとしたが、虐殺の事実を知ったアステカ人の怒りの石礫の前に倒れたとも、白人たちに謀殺されたとも言われている。 |
4-043R 《アッティラ》 |
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東欧史
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彼の杯は木製であった。衣服も同じく簡素であり、他と比べてきわだつのは清潔さだけであった。腰に帯びる剣も、蛮人用ブーツの留め金も馬勒も他のスキタイ人とは対照的に、黄金や宝石やその他のいかなる高価な品物によっても装飾されてはいなかった。
『アッティラ大王とフン族 <神の鞭>と呼ばれた男』, Katalin Escher & Iaroslav Lebedynsky, 新保良明訳, 講談社, 2011, p80
神の鞭と呼ばれ、大帝国を築き上げたフン族の王。
王になる以前のことは不詳。ムンディウクの子であることだけが知られている。
《アッティラ》という名は、一説によれば東ゲルマン語の「父」に「小さい」という意味を付属したもので、「小さい父」という意味になるとされている。
ローマ帝国との決戦の直前、若き花嫁イルディコとの新婚初夜に死亡する。彼の死は鼻血が喉に流れ込んだことによる窒息死だと言われているが、失血死とも、女の短刀によって刺殺されたともいわれている。
なお、《アッティラ》は北欧神話の一形態である『ニーベルンゲンの歌』などにも登場する。
アッティラのATKが3以上ならば、アッティラのレベルを-1すると共に、アッティラは『 速攻 』を持つ。 (レベルは0以下にならない) [3][紫]:ターンの終わりまであなたのすべてのユニットのATKを+1する。 |
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フン族のある牛飼いが牛に誘われ、地中から立派な剣を掘り出した。献上されたその剣を見た《アッティラ》は、その剣が軍神の剣だと判断し、超自然的な力を得たということを確信したという伝説がある。 彼がなぜ、そこまでその剣の力を確信できたのかは不明ではあるが、実際彼はこの聖なる武器から力(ATK)を得、敵に「神の鞭」と称されるほどに勇猛果敢に戦い、ローマ定刻をあと一歩のところまで追い詰めた。 現在、この《アッティラ》の剣とされるものがウィーンの宝物館に収められている。 |
4-052S 《紫式部》 |
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日本史
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――結論…つまり光源氏とゆー人は独りよがりの悩みで周囲の人々を不幸に巻き込むだけでなくさらにその執着心と多情さで不幸を拡大させるとゆー得意技がパターン化された「増殖ワラジムシ」であると言える。
『笑う大天使』川原泉, 白泉社, 1996, p124より
平安時代の歌人であり小説家。日本の恋愛長編小説のはしりである『源氏物語』の作者で知られ、また歌人としては百人一首にも数えられる。
本名不詳。
式部は父親の官位から取られたといわれているが、紫の由来は不明確であり、一説では彼女が記した『源氏物語』の登場人物である紫の上から取られたのではないかといわれている。
全くの余談だが、週刊ヤングジャンプにて不定期掲載されていた『パープル式部』が2014年27号から週刊連載となっているが、これは《紫式部》とは特に関係は無い。
紫式部以外のEPICユニットがあなたの戦場に配置されたとき、紫式部を回復する。 [1][W]:ユニットを1体選ぶ。ターンの終わりまでそれのATKをあなたの戦場にいるEPICユニット1体につき+1する。 |
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『源氏物語』の主人公である光源氏(桐壷)は母親亡きのち、義理の母親である藤壺や、その姪であり藤壺の面影を残す幼き紫など、さまざまな女性と(爛れた)恋愛関係を持つ。 そのため『源氏物語』の第1帖『桐壺』から第54帖『夢浮橋』までには数々の人物が登場し、連綿と続く物語を組み立てる。 殆どの登場人物は通称で呼ばれるが、彼らは決して路傍の草や名も無き人々ではなく、個性を持った人物である。であるがゆえに、《紫式部》はEPICユニットを集めて力を高める。 |
4-067S 《ジャック・ザ・リッパー》 |
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イギリス史
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切り裂きジャックが死んじゃった
ベッドの上で伸びちゃった
サンライト印の石鹸で
自分の咽喉を掻き切って
切り裂きジャックは死んじゃった
『決定版 切り裂きジャック』, 仁家克維, 筑摩書房, 2013, p155より
19世紀末イギリス、ロンドンの連続殺人鬼。切り裂きジャック。
長いナイフ、もしくは外科用のメスを用い、多数の売春婦を殺害した。死体は臓器を切り取られるなど、無残な有様であった。
彼は猟奇的な殺人を犯すだけでは飽き足らず、新聞社に己の犯罪を予告する投書を送り付けるなどして、自分の犯罪を誇示した。この投書が本当に《ジャック・ザ・リッパー》本人のものであるかどうかはわかっていないが、投書の中には切り取った臓器の肉片が含まれていることもあった。
犯人像についてさまざまな憶測があったものの、物的証拠は非常に少なかったため捜査は難航し、犯人の特定は敵わなかった。
刻とともに《ジャック・ザ・リッパー》による事件の数は徐々に減り始め、1892年に警察は犯人不明のまま事件の終息を宣言。
以後、彼の名は歴史上には登場しない。現在でもその正体は不明である。
あなたの時代が発展したとき、ジャック・ザ・リッパーよりパワーの低いユニットを1体選ぶ。それを破壊する。 |
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《ジャック・ザ・リッパー》は女性、特に力も立場も弱い売春婦を好んで殺した。 人体解剖に慣れている様子から、《ジャック・ザ・リッパー》は医者ではないかと推測されることもあったが、被害者が売春婦であるという共通点から、彼の正体は売春婦を憎む男だと言われたこともあり、果ては堕胎医を兼ねる産婆ではないかという説もあった。 |
対戦相手のユニットが戦場から捨て札置き場に置かれたとき、ターンの終わりまでジャック・ザ・リッパーのパワーとATKをそれぞれ+500、+1する。 |
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当時のイギリスは周辺諸国の産業勃興により不況の只中にあり、貧富の差が拡大していた。 7万を超える貧民の下には、10万を超える極貧民がおり、その下には1万人以上の最下層民がいた。彼らは朝5時から飲まず食わずで働き、日雇いの仕事で稼いだ僅かな賃金で小さなフィッシュフライを食べて飢えを凌いだ。 同時に下卑た見世物小屋や賭博が流行し、国内は退廃していた。ロンドンは犯罪の温床であった。 そうした環境だからこそ、《ジャック・ザ・リッパー》の力は高められた。 彼は単なる犯罪者ではない。ロンドンの闇が生み出した悪そのものであり、闇が深まれば深まるほど、人が死ねば死ぬほど力を増し、誰の手にも負えない凶悪な殺人鬼になるのだ。 |
4-070R 《玉藻前》 |
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日本史
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「さてはこの家の者を欺すつもりだな」と思って、その家に入り、「この女は狐が化けた者だ」と教えるが、家の者は「そんなはずはない。この女はこの家の娘だ」という。男は「私はたしかにこの目で、狐がこの女に化け、わらじを赤ん坊に変えるのを見たんだ。きっと、この二人を生松葉でいぶせば正体を現すだろう」といって、二人を部屋に閉じ込めていぶしたところ、二人とも死んでしまった。死んでも狐にはならない。家の者が「お前は人殺しだ。嫁たちを殺した」と泣き悲しみ、男を激しく責め立てた。
『日本妖怪異聞録』, 小松和彦, 講談社, 2007, p44より
弥生時代に中国から日本に渡ってきた老狐。歴史書に登場する傾国の美女の中には、《玉藻前》と思われる人物が登場する。
中国では周の幽王の命を奪うなどした《玉藻前》であったが、日本では鳥羽上皇の前に化性前という名の絶世の美女として現れる。その美しさは上皇の寵愛を受けるほどであったが、彼女は単に見目麗しいだけではなく、あらゆる問いに答えるほどの才女であった。
鳥羽上皇との契りを結んだあとは、上皇の精を食らい、その命を徐々に危ぶめる。
だが当時の陰陽頭であった安倍泰成によって正体を暴かれ、那須野に退散する。
なお、《玉藻前》という名は、暗闇でも身から光を放つ彼女をさまを見た上皇が感激して与えたものである。上皇は彼女が妖怪変化の類だとは疑わず、むしろ前世で善行を積んだゆえの奇跡だと考えていた。
『ソウルバースト2黒黒』 → あなたのユニットを1体と対戦相手のユニットを1体選ぶ。それらを破壊する。 あなたのライフが9以下ならば、玉藻前のパワーとATKをそれぞれ+1000、+1すると共に、玉藻前は『 魂石化 』を持つ。 |
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《玉藻前》は中国から渡来した時点では尾は2本であったが、日本では九尾の狐とされている。 安倍泰成によって狐の姿を暴かれた彼女は、那須野に逃亡するも、上総介と三浦介というふたりの武将に追撃される。 「9」の尾の姿を取り戻した彼女は、武将の弓矢をかわすほどの力を取り戻す。 しかしふたりの武将は妖狐退治のために修練を積み、《玉藻前》を追いつめる。 《玉藻前》は、彼らの夢枕に現れて助命を乞うものの、最終的には三浦介によって退治される。 だが《玉藻前》はただでは死なず、那須野の原で殺生石となり、その身体に触れるあらゆる生き物を殺し、三浦介の子孫を呪う。 のちの世で、那須野を通りがかった曹洞宗の高僧、源翁和尚は殺生石が《玉藻前》の怨霊であることを知り、憐れみを抱いて石を供養してやる。すると石は砕け、《玉藻前》は成仏した。 余談だが、金槌を「げんのう」というのは、この源翁和尚が語源である。 |
4-085S 《出雲阿国》 |
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日本史
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わたしも女子の端じゃもの。大事の男を人の花、腹も立つし、悋気のしようも、まんざら知らぬでなけれども、可愛い殿御に気を揉まし、煩いでも出ようかと、案じ過ごして何にも言わず。六角堂へのお百度も、どうぞ夫に飽れぬよう、お半女郎と二人の名さが、立たぬようにと願立も、儚い女子の心根を、不憫と思うていつまでも、見捨てず添うてくださんせ。
『知らざあ言って聞かせやしょう 心に響く歌舞伎の名ぜりふ』, 赤坂治績, 新潮社, 2003, p89より
歌舞伎『桂川連理柵』
歌舞伎の原型であり、ややこ踊りを発展させた「かぶき踊り」の創始者。
ややこ踊りの名が文献に初めて登場するのは1581年のことであり、宮中の酒宴の慰みとして、獅子舞とともに登場している。ただしこのときの踊り手の名は伝わっていない。
ややこというのは幼子のことであり、通常は赤ん坊くらいの年齢の幼児のことを指す。詳細は不明だが、当時の舞といえば能のようなものが主流であったのに対し、女性の舞うややこ踊りは振付のついた華やかなものであった。
それから20年ほどが経過した1600年に、とある公家屋敷に出雲出身を名乗る女性中心の芸能座が出入りする。このうちのひとりの名を「くに」といい、やはりややこ踊りを舞ったとされている。
出雲大社の巫女を名乗る歌舞伎の創始者、《出雲阿国》の名が歴史上に登場するのはその3年後である。彼女が前述の「くに」と同一人物かどうかは不明であり、そもそも本人は「出雲大社の巫女」を名乗っているものの、出自が不明の謎の人物である。彼女の正体に関しては現在でも説が分かれる。
『ハーベスト:舞踏1』 出雲阿国から舞踏カウンターを1個取り除く:あなたのユニットを1体選ぶ。それを回復する。ターンの終了まで、それは対戦相手の効果に選ばれない。 |
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歌舞伎の語源は「傾く」、つまり変わっているということであり、創始者である《出雲阿国》の恰好や踊りが当時としては非常に斬新かつ派手であったことから、その名がついた。 ゆえにかぶき踊りは一種の異端的な性質を持ち、秩序とは真逆の混沌めいた性質もあった。 かぶき踊りの中には時に淫らであり、猥雑な要素も含まれており、色恋と興奮とが絡めば刃傷沙汰の原因ともなったこともあった。 そのため、女歌舞伎は《出雲阿国》が京で成功を収めてから各地で盛んになったものの、1629年頃から禁止令が出されるようになった。 しかし女歌舞伎はそうした禁令下の中でも続けられた。女が舞えば、どんな暴力であっても止められないのは道理である。ゆえに、《出雲阿国》の舞はどんな効果でさえも無力化し、人を立ち奮わせる力を持つ。 |
4-098R 《メアリー・リード》 |
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ヨーロッパ史
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恋をしているとき、人は最も献身的になるものである。
『イギリス海賊史』チャールズ・ジョンソン, 朝比奈一郎訳, リブロポート, 1983, 上p198より
西インド諸島の悪名高き海賊、ジョン・ラカムの下で働いていた女海賊。
種違いの兄がいたが、彼女が産まれるまえに死亡している。《メアリー・リード》の母親は産まれてきた娘を死んだ息子に見せかけ、養育費を前夫の親類にせびるため、《メアリー・リード》に男の恰好をさせる。
彼女は男として身分を偽ったまま、13歳になった頃に軍に身を投じる。軍艦で運命の男と出会い、結婚し、退役。軍将校の人気の酒場となったものの、夫が急死。
店を畳み、再度男装をしてオランダ軍へ入隊。その後除隊して西インド諸島へ。しかしその途中で海賊に捕えられてから、彼女は海賊の仲間入りをする。
なお、同じくジョン・ラカムの下にいた女海賊、《アン・ボニー》は逮捕後、牢の中で出産し、その後も処刑された記録が無いことから、釈放されたのではないかといわれているが、《メアリー・リード》は熱病にかかり、獄中で死を迎えた。
あなたがカードを引いたとき、ターンの終わりまであなたの【カテゴリ(海賊)】のすべてのユニットのパワーを+500する。 |
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《メアリー・リード》は女性ではあったが、同じ海賊船に乗っていたあらゆる男よりも勇敢であった。 あるとき敵船に捕捉され、白兵戦に持ち込まれたとき、海賊たちの中で甲板を守るため、敵を迎え撃ったのは《メアリー・リード》と《アン・ボニー》だけであった。 彼女は隠れていた男たちを激励叱咤し、それでも怯えて隠れるのを見るや、味方のひとりを射殺、数人に怪我を負わせ、無理矢理に士気を高めたという逸話が残されている。 |
[CB]:あなたのデッキから【カード名(メアリー・リード)】以外の【カテゴリ(海賊)】のユニットカードを1枚サーチし、手札に加える。 |
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《メアリー・リード》は好んで海賊に身を投じたわけではなかった。 あるときはイギリス海賊に捕えられ、唯一のイギリス人であった彼女は無理矢理に仲間にされた。 またあるときは乗り込んだ私掠船が海賊の反乱に遭い、彼女は生き延びるために海賊にならざるをえなかった。 《メアリー・リード》は生粋の海賊というわけではない。だが彼女は海賊を呼び寄せる性質なのだ。 |
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引用・参考文献
『グリム 世界名作 白雪姫』Grimm, Jacob Ludwig Carl、菊池寛訳、青空文庫、No.42308
『図説 世界の歴史5 東アジアと中世ヨーロッパ』, J. M. ロバーツ, 池上俊一監修, 創元社, 2003
『十字軍 ヨーロッパとイスラム対立の原点』, ジョルジュ・タート, 池上俊一監修, 創元社, 1993
『アステカとインカ 黄金帝国の滅亡』増田義郎、小学館、2002
『神々と英雄と女性たち 美術が語る古代ギリシアの世界』, 永田年弘, 中央公論社, 1997
『アッティラ大王とフン族 <神の鞭>と呼ばれた男』, K. Escher & I. Lebedynsky, 新保良明訳, 講談社, 2011
『笑う大天使』川原泉, 白泉社, 1996
『決定版 切り裂きジャック』, 仁家克維, 筑摩書房, 2013
『日本妖怪異聞録』, 小松和彦, 講談社, 2007
『岩波講座 歌舞伎・文楽 第2巻 歌舞伎の歴史1』, 服部幸雄ほか, 岩波書店, 1997
『知らざあ言って聞かせやしょう 心に響く歌舞伎の名ぜりふ』, 赤坂治績, 新潮社, 2003
『イギリス海賊史』チャールズ・ジョンソン, 朝比奈一郎訳, リブロポート, 1983
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