アメリカか死か/16/01 The Pitt -1

The Pitt

プヴァ、プヴァ、プヴァ!
小道に母さんこがね虫
子供が背中で眠ってる
おまえも背中で眠ってる
プヴァ、プヴァ、プヴァ!
(ホピの子守唄 『おれは歌だ おれはここを歩く』金関寿夫訳/福音館書店 より)

Lynn
Lv. 11
S/P/E/C/I/A/L=8/3/10/5/4/8/2
Tag: Melee Weapon, Science, Unarmed
Skill:
[S] M.Weapon=45
[P] E.Weapon=15, Explosives=25, Lockpick=25
[E] B.Guns=31 ,Unarmed=83
[C] Barter=20, Speech=16
[I] Medicine=30, Repair=25, Science=75
[A] S.Guns=25, Sneak=25
Perk:
[S] Iron Fist
[E] Toughness, Strong Back, Lead Belly, Olympian
[Others] Lawbringer, Charge!, Lady Killer, Tackle, Track Star, Power Armor Training (BA), Power Armor Training (Adv)
Equipment: Gauss Rifle, Jingwei's Shock Sword, Trench Knife, Merc Charmer Outfit, Biker Goggles
Resist: 20%
Rad: 305 (Minor Rad Poison; -1END, -5AP)

Rita
Lv. 11
S/P/E/C/I/A/L=5/9/4/6/4/10/3
Tag: Lockpick, Repair, S.Guns
Skill:
[S] M.Weapon=14
[P] E.Weapon=29, Explosives=30, Lockpick=80
[E] B.Guns=35 ,Unarmed=14
[C] Barter=30, Speech=38
[I] Medicine=36, Repair=60, Science=14
[A] S.Guns=80, Sneak=54
Perk:
[P] Infiltrator
[C] Child at Heart 
[I] Ammunition Engineer, Daddy's Girl
[A] Thief, Gun Nut
[Others] Black Widow, Gunslinger, Intense Training (STR), Fineness
Equipment: Browning High-Power Pistol, SIG Sauer Pistol, Silenced 10mm Alloy Steel Pistol, L86 LSW, M79 Grenade Launcher, Vault Exile


Into the Pitt

 ハンドルが随分と軽く感じる。
 それもそうだろう。いつもはふたり乗っているバイクに、じぶんひとりしか乗っていないのだから。


 荒野をひとりバイクで駆けながら、Ritaは数日前までの同行者であったLynnのことを思い出していた。
 G.E.C.K.のためにVaultを探索し続けて数日。最後に訪れたVault 92で、有毒瓦斯に侵されたRitaは、意識を失った。Lynnも同様に体調に異常を来たし、休める場所を探してとある場所に辿りついたらしい。
 それが、Vault 113。彼がJamesによって発見されたときにいた場所だった。

 そこでLynnは、真実を知った。彼が如何なる存在なのかを。
「彼は、放射能除染のための改造手術をされているの」
 そんな説明を受けたのは、Vault 113からCitadelに戻ってきたあとだった。語ってくれたのは、Dr. Liだ。
「どういう意味? それに、あいつはどこへ?」
 有毒瓦斯の治療を受けてベッドに寝かせられていたRitaがそう尋ねたが、Liは悲しそうな顔で首を振った。「彼はいま、BOSのために技術協力をしている。Project Purityが無用のものになる可能性があるから」
「もっと詳しく説明して」
 Ritaがせがむと、Liは言い辛そうな顔で語った。
 Valut-TECのコンピュータの解析とJamesが残していった口述筆記から、LynnのいたVaultがVault 113だとわかったこと。
 Vault 113で行われていたGreat Mother計画、通称GM計画というプロジェクトのこと。
 それが事故で失敗した記録があったこと。
 LynnのいたVault 121がその失敗に巻き込まれたこと。
 数少ない生き残りであるLynnはVaultの除染のために放射能をため込む身体に改造されたこと。
 彼は何度も放射能で死に、そして複製されて生きさせられてきたこと。
 彼の変身能力も、その断片であるらしいこと。
 そして、Lynnのその機能を使えば、現在の汚染されたWastelandを除染することが可能であるということ。


「彼の除染効率は、戦前に開発されていた植物や微生物による除染に比べると遥かに高い。おそらくはVault 113のGreat Motherが人間のいなかった期間を利用して独自に研究開発した結果でしょうね。
 もちろん彼ひとりでは、Capital Wastelandを除染するにはぜんぜん足りない。でも、Vault 113で行っていたように、彼を何人も複製して野に放てば……、何十年かすれば、除染は終了すると考えられる」
「そんなこと、許されるわけがない」
 Liに言っても仕方がないことであったが、Ritaは激昂した。
「わかってる。だから、わたしたちはLynnから、彼に使用した技術だけ取り出せればいいと思っている。その技術を応用すれば、EnclaveがJefferson記念館を占拠しても、その優位さは失われるから」

 Lynnの技術が完全に他に応用できれば、それを利用して除染が行える。そうなれば、G.E.C.K.を探す必要もなくなる。
「応用できなければ?」
 その問いに、Liは答えなかった。
 LiやBOSにとっては、Enclaveに負けないことが至上命題だ。汚染されていない水に関する利権争いに負ければ、Capital Wastelandを支配されたも同然だ。
 だから彼らは、もしEnclaveに負けそうになれば、どんな手段でも使うだろう。それこそ、Vault 113で行われていた非人道的手段も辞さないはずだ。

 だからRitaは、たったひとりで野に戻った。Lynnのバイクを駆り、まだ見ぬVaultを探した。G.E.C.K.を求めた。
(たぶん、完全に解析なんてできやしない)
 できるのなら、きっとJamesがその道を示していただろう。彼はProject Purityに熱意を捧げていたが、それでも別の道筋を他人に提示するくらいのことはしていたはずだ。
 なのにそうしなかったのは、明らかにそれが無理だったからだ。非人道的な行いを別にすれば。

 その行為があまりに非人道的だとか、そんな手段をもってEnclaveに対抗しようとすればそれこそEnclaveと同じになるだとか、そうした想いがRitaを突き動かしているのではなかった。
 Ritaはただ、なんとなく厭だった。厭だと感じた。
(あいつ、放射能除去治療が効かないって言ってたな………)
 ふと思い出す。Lynnは病院で治療ができなかったらしい。当たり前だ。体内から放射能が出ないように改造されているのだから。 
(痛いのかな………)
 体内で放射能が蓄積されていけば、身体はだんだんと放射線の影響を帯びていく。他人よりも、ずっと早く。細胞は癌化し、痛みを訴えるだろう。もうどれくらい、彼の身体は癌化が進行しているのだろうか。

 可哀想だとか、そんな殊勝なことを考えたのではなかった。
 ただ、Ritaには彼がどんな想いでいるかがわからなかった。なぜなら、彼のことを見てこなかったから。自分のことばかり、精一杯だったから。
(それが、悔しい
 ある意味で、それがRitaを野に駆り立てた理由だったかもしれない。



 山道で銃声が響いたので、Ritaは思考を過去から現実へと戻し、視線を巡らせた。
 山道、遥か遠くで銃を構える女たちがふたり見える。銃口はこちらに向けているわけではないので、誰か敵対している相手がいるのだろう。恰好はどちらもRaiderのそれだ。
 無視しても良かったが、RitaはバイクをRaiderへと向けた。走りながらBrowningを抜き、撃つ。連射して、ふたりのRaiderの胸に当たった。崩れ落ちる。


 ギアを1速にして、警戒しながらゆっくりとRaiderの死体に近づく。まだこのRaiderの仲間がいるかもしれないし、Raiderの敵が善良な市民とは限らないからだ。
「やぁ、助かった」
 その声が後方から聞こえてきた瞬間、Ritaはバイクに乗ったままで銃口を背後へと向けた。

 立っていたのは、眼帯をした男だった。
「い、いや、待ってくれ! あんたに危害を加えるつもりはねぇ。助かったよ。あいつら、おれを追ってきたんだ……。あんた、おれの通信を聞いて来てくれたんだろう? 助かったよ」
 男は両手を挙げ、慌てたような口調で言った。汚れた服や伸び放題の髭は不潔さを感じさせるものでありながらも、どこか人を惹きつける魅力に満ちた男だった。


 Ritaはしばらく考えてから、銃をホルスターに収めた。
「通信? なんの話?」
「違うのか? だったら、たまたまってことか……、まったく、いや、しかし、神の思し召しってやつだな。あんたに助けてほしいんだ。助けを求めているひとたちがいる。あのPittには、病と汚染で満ちているんだ。誰かが助けてやらないといけないんだ」

 もしLynnのことがなければ、Ritaは彼のことを無視していただろう。
 だがRitaはLynnの事情を知っていた。ただ除染を行うために生まれ、殺されてきた彼のことを。
「とりあえず聞くから……、話して」


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