展覧会/『ラストクロニクル』/第8弾フレーバー考察



■敵は海賊

 最初に目覚めたのは、ティルダナの翼持つ獅子だった。


8-011C《白導の天獅子》
目覚めし者が持つ光碧の力……それは最初、翼持つ獅子により導かれた。

 のちに光碧と呼ばれる力、それはその個々人によって異なる力であり、いったい如何なる理由があってその異能が生まれたのかは誰にもわからなかった。
 選ばれた者のみが手にすることができる力であるという噂もあったが、一罠師がその力を手にすることもあり、盗賊が己が商売のために役立てることもありで、その力の向きに指向性は無かった。


8-091R《黒墳墓の夢破り》
光碧の力の副産物は、軌跡じみた器用さの墓暴きと盗みの達人たちだった。

 そんな状態が変わったのは、五ヶ国の中で謎の声を聞いた少女が現れたことからだった。
 

8-015S《勇愛の戦導姫 ぺネタ》
「ティルダナでもまれな大風が吹き、砂塵が星と月を覆い隠したある夜……一人の少女が、その『目覚めよ』という声を聞いた。」
~歴史家ロディチ、「聖秘話 白導の章」より~

 ティルダナ大神官の娘、ぺネタが奇妙な声を聞いたのは、砂嵐の吹き荒れる夜のことだった。
 「目覚めよ」というその声は、この世界、レムリアナに真の邪悪による危機が迫っていることを告げたところで途切れたがため、ぺネタたちは声の正体やその目的を知ることができなかった。


8-041S《命魂の戦導姫 イオータ》
「レムリアナに迫る危機が、木の葉を震わせるささやくような声によって告げられたとき……緋色森の戦士たる一人の少女が、新しき力に目覚めた。」
~歴史家ロディチ、「聖秘話 朱導の章」より~

 事実として残るのは、その声と同時に5人の少女たちが、他に類を見ないほど強力な光碧の力に目覚めたということである。
 未熟な少女たちはその力の目的を知らぬまま、戦争を導く旗手――戦導姫となり、その力を己が国を護るため、戦争だけのために使い始めた。


8-076S《恐冥の戦導姫 キカ》
「声が途切れる前に告げた、真の邪悪とは何か? レーテで目覚めた少女は、それは今、かの地の力を削ごうとする他勢力だと信じ、ただただ憎悪をつのらせた……」
~歴史家ロディチ、「聖秘話 黒導の章」より~


■スタンダード・ブルー

 ところで光碧の力がなぜ光碧と呼ばれるか、というのは、カードに印刷しているCAの色を見ればよいザインの使徒にとっては一目瞭然であるが、レムリアナに住む人々にとってはCAの色などは与り知らぬ部分のはずである。

 その力が発揮されるときに青い光を放つ、だとかいうわかりやすい性質は無いということは、イラストを見ればわかる。
 たとえば光碧の力を加えて炎術の力を高めた結果の《勇炎烈火槍》しても、その炎は普通のそれと変わらずに赤く燃えている。


8-069R《勇炎烈火槍》
「さあ、勇気をさらに燃えたぎらせるのです……この新たなる光碧の力で!」
~情炎の戦導姫 アヤノ~

 答えは簡単で、最も強い光碧(と名付けられるであろう以前の)力に目覚めた戦導姫の5人の少女たちには、「目覚めよ」の言葉だけではなく、奇妙な青い光玉も送られていたからである。


8-112S《理性の戦導姫 ロゼル》
「かくして少女たちは、王たちが命ずるまま、未熟なまま世界を導く。声が消えるとともに、手中に現れた不思議な青い光玉……その真の意味すら、まだ知らぬままに。」
~歴史家ロディチ、「聖秘話 青導の章」より~

 この青い光玉が何を意味するのかは定かではないが、この玉の色合いから、新たなる力が「光碧」と呼ばれるようになったのであろう。

 青の光玉は5人の戦導姫のイラストでも確認できる。
 ちなみに光玉を物品と組み合わせている《恐冥の戦導姫 キカ》と《理性の戦導姫 ロゼル》に関しては判り難いが、それぞれ首飾りと杖の先端に青い球が見えるのがわかる。

 さて、これらの光碧の力が戦導姫にだけ与えられたのではないことは先にも述べたが、その力は単純な利に留まらないように感じられる。
 たとえば、《暴竜化の呪言》である。


8-045R《暴竜化の呪言》
新しき力は、ときにもっとも猛々しい原始的な進化として、戦士たちの肉体にもたらされる。

 フレーバーだけを見れば、新たなる力は単純なる恩恵として捉えられるようにも見えるが、その力は呪いであり、それによって化するのは暴竜である。
 暴竜という単語は天空編1が初出で、たとえば《三本角の暴君》がそれだが、これらは凶暴な原始生物である。それに化してしまうこの光碧の力は、あまりに危険だ。

 それまで存在していた生物が奇妙にねじくれてしまう、という現象は、前世界、アトランティカでも見られた。
 《黒岩熊》や《虹色カメレオン》などの奇妙な生物は、クロノグリフの他の項からやってきた改竄者、《滅史の災魂 ゴズ・オム》の干渉によるものだった。

 《黒岩熊》は《滅史の災魂 ゴズ・オム》が自ずから手がけたものであったが、《虹色カメレオン》の場合は干渉に伴う偶然の産物である。
 さらに《傭兵女帝 ベルスネ》や《玉虫勾玉》に至っては、《滅史の災魂 ゴズ・オム》に対抗するかのように励起されたものだった。
 また、《滅史の災魂 ゴズ・オム》のクロノグリフ改竄の余波として、その後は《理法の元首 ロギナス》をリーダーとするロジカ勢力が未来から来訪しており、クロノグリフを改竄する《滅史の災魂 ゴズ・オム》でもすべてが意のままになるわけではないということがわかる。

 《勇愛の戦導姫 ぺネタ》らに光碧の力を与えた謎の声が、果たして《滅史の災魂 ゴズ・オム》のような外部からの改竄者なのか、それとも精霊神のような内部の存在なのかはわからない。その目的も。

 唯一、真実に近づきつつあるのはヘインドラの《理性の戦導姫 ロゼル》であり、《青明の時探り》のフレーバーの中では何かを悟ったようなことが示されている。


8-115R《青明の時探り》
「ああ、ついに悟りました……! 無限の時と歴史がつむぐ真実の中にあっては、私の浅知恵など無も同様だと……!」
~ロゼルの嘆息~

 が、いまのところわかっているのは、光碧の力が正にも負にも働くという事実だけである。


 8-086U《灰色まといの死霊》
闇の目覚めの代償は、魂の刈り取りという形で支払われる。


■笑う肉仮面

 《命魂の戦導姫 イオータ》のフレーバーで述べられている「レムリアナに迫る危機」、《情炎の戦導姫 アヤノ》で述べられている「真の敵」が果たして何なのか。


8-059S《情炎の戦導姫 アヤノ》
「声はやがて、運命を占う神竜盤の炎が吹き消えるときのように、そっと途絶えた……。目覚めたヤルハンの巫女に、真の敵の名を告げぬままに。」
~歴史家ロディチ、「聖秘話 紫導の章」より~

 それが既に登場している人物なのか、新たに外からやってくる人物なのかは不明だ。
 だが「もし既に名前が出ている人物なら……」と考えてみることはできる。

 各国の現状を見ると、青のヘインドラには特に不審な点は見受けられない。
 橙のメギオンでは暴竜の出現が問題にはなっているが、それだけだ。
 幾分か怪しいところがあるのは、白のティルダナと黒のレーテ、それに紫のアズルファである。

 ティルダナは王家の《聖夜月の歌姫 エシャローテ》が《千の剣王 ラハーン》の実子ではないということがハンドブックで示唆されており、彼女の出自が何らかの問題になりうる可能性は無いでもない。
 が、どちらかというとその血はティルダナを作った一派、聖光の女王のものを色濃く受け継いでいるようであり、負の側面があるようには見えない。

 レーテは《慟哭城の魔王子 ビザル》や《慟哭城の魔姫 ベルファーラ》を迎え入れている慟哭城の主が浮き島に関して何らかの秘密を知っているらしいということが《レーテの浮き島探し》のフレーバーで述べられている。
 黒というカラーが前の世界、アトランティカでは特殊な勢力であったことも合いまり、いかにも怪しい。
 が、現段階では大きく不審な動きは無い。

 であるからして、問題はアズルファなのである。


8-066U《スウ・アの炎柱陣》
「ふふ、火の龍脈に少し触れるだけですの……ほら、夜空を飾るには、素晴らしい花火でしょう?」
~炎皇后 スウ・ア~

 天空編1の時点でもフレーバーで触れたように、アズルファの皇后、スウ・アは享楽を尽くしており、混乱を巻き起こす存在である。

 スウ・アの領地である紫天園からその守護者たちが加わったことで、アズルファの戦力は増大した。
 が、いまのところその戦力はいたずらに戦争を拡大させているだけであり、本来為すべき浮き島探しと精霊力の回復には何ら役に立ってはいない。


8-052R《炎護の魔神 ナユガム》
炎術の守り神たるナユガムは、古来から道士たちの信仰の対象となってきた……スウ・アの献策により、紫炎帝が己を神の化身として崇めさせるようになるまでは。

 傾国の美女によってひとつの国が滅亡したという話は珍しくはないが、その中には妖魔の類が己が策略のために権力者を惑わしたという話もある。
 たとえば《妲己》や《玉藻前》がそれで(しばしばこの2人は同一視される)、スウ・アの享楽ぶりにはそうした傾国の美女に通じるものがある。

 特に《紫天園の焚書炉》のフレーバーの中では「文字が美しくない」という如何にも怪しい理由で焚書を行っている。


8-070C《紫天園の焚書炉》
「あら、この本のこの文字、美しくないわね……燃やしてしまいなさいな!」
~炎皇后 スウ・ア~

 彼女は何者なのか。
 焚書をした書物には何が書かれていたのか。
 もしかすると、光碧の力を与えた謎の声が脅威と認識した存在なのかもしれない、などと書いてしまうと、天空編3発売になってから「ぜんぜん違うじゃないか」となること請け合いであろう。



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