展覧会/『ラストクロニクル』/第13弾フレーバー考察






 陽光世界レ・ムゥ。その秩序は崩壊し、ついに千年夜が訪れた。

13-109U《紫の高揚と青き波乱》
レ・ムゥのあらゆる精霊力が一気に弾け、巨大なる波乱が世界に引き起こされたのだ。

 そこに至るまでの道程はそれほど複雑なものではなかった。

 陽光2の時点でメレドゥスと他4国の間で戦いがあり、ヴェガ以外の国はメレドゥスに対して一時的な敗北を喫した。
 しかし負けた国にしても、地面を舐めて泥を啜るだけでは終わらなかった。そのきっかけとなったのがレ・ムゥに突如として出現した力――宝種である。

13-042U《赤陽の宝種》
突然、宝種と呼ばれる存在が、レ・ムゥ各地に生まれ落ちるようになったのだ。それは小太陽の力の欠片だとされた……

 シャダスでは危険な状況にあった《天機の新星将 ティリス・ルリア》を《銀陽の宝種》によって復活した《再臨の銀聖王 アスハ》が助け、《浄化の聖嵐》によって《黒魔将 瘴気のゲーテ》を撃退。

13-021R《浄化の聖嵐》
「残念だったな、光の軍勢よ……わが魂は不滅だ! すぐにエルゴ・ウドスの一部となろうぞ……ヒヒ、千年夜で会おう!」
〜瘴気のゲーデ〜

 他勢力も宝種の力を得て、侵攻しつつあるメレドゥスに対して反撃の火蓋を切る。

 その中で前線に立ち、最も大きな活躍を果たしたのは新たな剣を手にした《目覚めし黄金覇者 アルマイル》であろう。

13-030U《赤眼火山の神工 ドルキマル》
「赤陽が認めし小さき王女よ、今こそ我が神炉で、運命を切り開く刃を打て! 古き友人の遺した剣に、熱き正義の炎を加えて!」
〜黄金覇剣誕生の逸話〜

 オルネアでの試練を経て黄金覇者として覚醒した彼女は、《赤眼火山の神工 ドルキマル》の助けを受けて神炉にて自らの新たな剣――父と兄代わりの男の魂への誓いを込めた黄金覇剣を鋳造。黒覇帝の前に躍り出る。

13-041R《黄金の大反抗》
「ゴルディオーザ! それはレ・ムゥの大地がお前に与える、怒りと哀しみの一閃と知れ!」
「ふっ、さすがは黄金覇者よ!だが……もう引き返すことはできぬ。俺も、この世界もな!」

 黄金覇剣を手にしたアルマイルが《黒覇帝 ゴルディオーザ》に僅かな傷を負わせたことが《黄金の大反抗》のフレーバーでは描かれているが、残念ながらあくまで手傷を負わせたに過ぎず、《ゴルディオーザ》にはそのまま逃走されてしまう。




 このように危ういところで危険を回避したゴルディオーザではあったが、すべてが思い通りに進んでいるかというとそうではなかった。

13-078C《メレドゥスの流民》
「ヴェクターめ、力なき者どもに憐れみをかけ、この黒覇帝に逆らうとは……。その娘たるメニズマを差し向けなかったのが、せめてもの情けだ!」
〜黒覇帝の嘲笑〜

 それが強大な力を持つ黒魔術師《魂換術の大魔道 ヴェクター》による裏切りである。

 《ヴェクター》がなぜ《ゴルディオーザ》を裏切ったのかという理由は、少なくとも《ゴルディオーザ》の視点から見たものは《メレドゥスの流民》のフレーバーで描かれているがように、単純に黒覇帝の圧政に耐えかねてということのように見える。

13-071S《魂換術の大魔道 ヴェクター》
「わが師父、ヴェクターが、なぜ黒覇帝に反逆したのか、と……? 人の弱さ、情………ううっ、頭が! なぜだ、割れそうに痛む!」
〜麗獄の魔闘士 メニズマ〜

 だが《魂換術の大魔道 ヴェクター》のフレーバーでは、「おめーはガラフか」と突っ込みたくなるような《麗獄の魔闘士 メニズマ》の語りとともに、気になる記述が述べられている。

 そもそもからして、《ヴェクター》は【人間】であり、《メニズマ》は【悪魔】である。であれば血縁であろうはずもなく、《メニズマ》自身はあくまで《ヴェクター》を「師父」と表現している。
 しかし《メレドゥスの流民》のフレーバーでは《ゴルディオーザ》ははっきりと「メニズマはヴェクターの娘である」と述べている。

 この矛盾を解き明かすための手がかりとなるのがCR版の《ヴェクター》のイラストとフレーバーである。

13-071S《魂換術の大魔道 ヴェクター》
若き日に彼が流した涙の理由は、まだ小さき邪悪の手による痛みのせいではない。そう、“もう一人の魂の娘”との、別離の哀しみこそが……

 親子のような姿のCR《ヴェクター》のイラストを見るだけなら、あくまでふたりの関係は幼い頃からの師弟関係であり、親子同然であるが血の繋がりはないというふうに考えることができる。
 だがフレーバーでは《メニズマ》が《ヴェクター》の「魂の娘」であるということが暗喩されているとともに、もうひとり「魂の娘」が存在するということが述べられている。
 
 果たして「魂の娘」というのが如何なる概念なのかは滝先生(金髪美少女)の心の裡でも読まぬ限りはわからない。
 が、「もう一人の魂の娘」が誰なのかを推測することはできる。

13-104R《救済島への漂着》
「古き大聖女セゴナを祀る、静かな孤島の神殿……わたくしはそこで、生涯ひっそりと暮らしていくつもりでした……でもまさか。このような出会いと運命が待っていようとは!」
〜救聖女 レティシャ〜

 ――救済島。大聖女セゴナを祀るこの島で暮らしていた女性、《救聖女 レティシャ》。《メニズマ》との死闘に敗れて流れ着いた《五海覇の遊剣 デルナード》を救助したこの人物の頭につけられている耳のような装飾品。これは《メニズマ》や《ヴェクター》のものと瓜二つだ。

 この装飾品が何らかの魔力の媒介なのか、それとも《ヴェクター》が「パパとお揃いにしようよぉっ、ねっ?」というノリで買い与えたのかは不明だが、この奇妙な装飾品の共通性や登場のタイミング、外見年齢から、《レティシャ》こそが《ヴェクター》の「もう一人の魂の娘」である可能性が高いように思える。

 では《メニズマ》と《レティシャ》の関係は何なのか? 単純に姉妹であれば「魂の娘」という表現にそぐわず、また親子のカテゴリの違いが説明できない。
 そこでヒントとなりそうなのが、黒覇帝の研究と「召喚英雄」という概念である。

 黒覇帝は戦争の中で、とある技術を求めていた。それが存在と本質の複製である。

13-083U《黒陽の宝種》
そして、ついに完成した魔導具複製の研究……存在と本質を複製するその技の源となったのは、クロノグリフ召喚術についての深い知識と、黒き小太陽の正体の把握であったという。

 この研究は長年行われてきたものであったが、それにはクロノグリフ召喚術が関わっていた。
 そして召喚術といえば召喚英雄である。
 召喚英雄とは別世界の英雄の魂を新たな魂の鋳型に流し込み、新たに作り出された英雄である。ゆえに召喚英雄は元となる魂が同じであったとしても、鋳型が違うことでまったく別物に見えるような存在になりえる。同一世界の中でもそれが起きるのは《関羽》が好例だろう。

 黒覇帝は《宝種複製邪法の完成》を求めていた。そのためには実験が必要だった。
 そしてその実験行為の中で、召喚英雄もどきのようなものを作り出す試みをしていたのではなかろうか? 《ヴェクター》はそれに協力していたのではなかろうか?

13-082U《魔魂置換の呪法》
「価値なき魂を、闇の知恵をもって魔の力に変える……ヴェクターよ、なぜ顔をしかめる? これはお前が最初に生み出した術だぞ。」
〜黒覇帝 ゴルディオーザ〜

 《魔魂置換の呪法》は価値なき魂を魔の力に変える呪法である。かつて黒覇帝に唆された《ヴェクター》は、まだ未完成であった複製邪法を娘に施して魂を分割するとともに、片方に《魔魂置換の呪法》を施したのではないだろうか? そしてそれが《メニズマ》となり、もう片方が《レティシャ》となったのではないだろうか。

 であれば《ヴェクター》の反乱は単なる義憤に駆られてではなく、かつての黒覇帝と――そして何よりもその甘言に乗って実験を行った己自身に対する怒りによるものなのかもしれない。




 前置きが長くなったが、黒覇帝は《宝種複製邪法の完成》を達成した。

13-084R《宝種複製邪法の完成》
「尊い美姫の犠牲の果てに、五つの神秘はすべて黒覇帝の元に集った。『これでいい……明日からは歴史すらも、この俺にひざまずくだろう』。その満足げな声が、私にはなぜか、少し震えて泣いているかのようにすら思われた。」
〜暗黒史書官の最後の日記より〜

 フレーバーでは幾つかの情報が散りばめられているがその中で最も重要なのは「既に尊い美姫=《夜露の神樹姫 ディアーネ》が死んでいる」ということだろう。もちろん「犠牲」と書いてあるからといって、字面通りに死んだとは限らないわけだが、《宝種複製邪法の完成》のために利用され、死に至ったという可能性は非常に高い。なぜなら宝種はヴァルハラ宇宙に根付く世界樹の果実の結晶であり、《ディアーネ》は「神樹姫」だからだ。

13-062U《紫陽の宝種》
それは、巨大なる世界樹の果実——五つの小太陽が吐き出した精霊力の歪みが、結晶となって凝縮したものだった。

 以前に書いたがヴァルハラとは北欧神話では主神《オーディン》の命を受けた美神フレイヤや戦乙女ヴァルキューリによって集められた戦士の魂を(エインヘルヤル)が寝泊りをする館の名である。彼らは朝から晩まで互いに殺し合って訓練をし、夜になると生き返って食事を取る。そして〈力の滅亡〉――ラグナレクが訪れたとき、彼らは手に手に剣を槍を取り、ヴァルハラの540ある扉から駆け出していく。

 そして北欧神話で神樹といえば〈世界樹〉ユグドラシルである。三平面九世界を貫くこのトネリコの大樹は世界を安定させているが、根は邪竜ニドヘグに齧られ、葉や枝は栗鼠のラタトスクや他の獣に齧られるなど常に攻撃に晒されている。

 北欧神話の世界樹には実はない。ユグドラシルは唯一無二の存在だ。ただし破壊と再生という北欧神話のひとつのテーマに逸脱した存在ではなく、火の国の魔人スルトの炎を受けたときは焼け、一時的に力を失う。しかし神々や土地の再生とともにまた新たな新芽を吹くのだ。

13-011C《シャダスの流民》
「ああ、わしらの銀陽が力を失っていく!」
「神罰だ! 過ぎたる力を扱った傲慢さの報いだ! 宝種なんて頼るべきではなかったんだ!」
〜民の嘆き〜

 北欧神話ではラグナレクの直前、世界は力を失って剣の冬、盾の冬、狼の冬と三度冬が続き、そのあとにフィムブルヴェト――冬の中の冬が訪れるといわれている。

 レ・ムゥ世界も戦いを経て、北欧神話のラグナレクのように力を失いつつあった。 

13-105U《青陽の宝種》
その完成と同時にレ・ムゥ世界は、小太陽の正体を……それが世界を照らす大霊樹の実であり、エーテルの障壁を通じて輝きゆらめく、精霊力の光であったという真実を知ることになる。

 ところで、ラグナレクといえば北欧神話では最終決戦の舞台でもある。魔狼フェンリルが独眼の主神《オーディン》を呑み込むのを皮切りに、主神の息子ヴィーダルがフェンリルを踏みつけて殺し、終わりを告げるヘイムダルは《ロキ》にお互いの剣先を食い込ませて相打ちになる。軍神チュールは獄犬ガルムとやはり相打ちになり、雷神《トール》は世界蛇ヨルムンガンドに勝利するも、直後にヨルムンガンドの毒によって倒れる。豊穣神フレイは己の剣を女のために手放したことで鹿の角を手に戦うことを余儀なくされ、火の国の魔人スルトとの乱闘の挙句にぎりぎりのところで敗北する。そして世界はスルトによって浄化されるのだ。

 ちょうどレ・ムゥの状況は北欧神話のラグナレクに酷似している。世界からは力が失われ、五魔将との戦いが各地で繰り広げられる。そして最後に訪れたのは、黒覇帝による破滅だった。

13-115U《黒き創勢と白き希光》
“彼”が到達した万物の記述改竄の秘術が、レ・ムゥ世界の最後の秩序を破壊したのだ。しかし滅びを止める手立ては、今やすべて失われたかのように見えた……。




 ところで前回のフレーバー考察で、「黒覇帝は黒の覇王ではなく《滅史の災魂 ゴズ・オム》ではないか?」という仮説が出た。

 研究を重ねた結果の万物記述改竄の秘術――すなわちクロノグリフ改竄は《ゴズ・オム》の得意としていた技であり、“彼”――すなわち《ゴルディオーザ》が《ゴズ・オム》である証左のようにも感じられる。

13-007U《光逆の下僕獣》
「黒覇帝め、神にでもなったつもりか!? こんな歪んだ生命を生み出すとはな……!」
〜顔を歪めた討伐隊長〜

 また、《光逆の下僕獣》のような奇妙な生物の作成も研究過程で行われており、これもまた既に《ゴズ・オム》が行っていることであることからも、《ゴズ・オム》説は補強されるに十分な後ろ盾があるといえる。

 つまり、《ゴズ・オム》はクロノグリフ改竄を得意としていたが、それは《ゴズ・オム》が覇者になったがために手に入れた力なのではなく、《ゴルディオーザ》がクロノグリフ改竄の手法を得たがために覇者としてその名をクロノグリフに刻むことになったというわけだ。

 この考え方の利点は、陽光世界が【滅史の災魂】に敗北せずとも《ゴルディオーザ》=《ゴズ・オム》説を採用できるという点だ。さすがに三つの幻想大陸物語が敗北で終わってしまうというのは考え難い。

13-070U《黒陽の小司祭 ミド・ルーサ》
千年夜が訪れし時、全ての魂は新しき闇の目覚めを体験するでしょう。それらは混沌の王の元に集まり、まったく新しい形と魂を備えた存在へと、生まれ変わるのですわ。

 《黒陽の小司祭 ミド・ルーサ》の述べる内容は未来予測や体験からの推量というよりは願望、あるいは単なる妄言のようにも感じられるが、メタ的にはたいていこういった人物が言うことはアテになるものである。

「混沌の王」が《ゴルディオーザ》ならば、彼はまったく新たな存在に生まれ変わらなければならない。すなわち、《ゴズ・オム》に。

 だが一方で、黒覇帝はやはり黒の覇王であるとする補強材料もある。それが、《黄金の大反抗》で《アルマイル》によってつけられた朴傷である。

 もしこれがひとつのイラストだけで描かれている傷であれば、それは単に「皮一枚傷つけられたが無事だった」ということを示すものでしかない。だが、ほかのイラストでもその傷があくまで残っていたらどうだろうか?

13-084R《宝種複製邪法の完成》
「尊い美姫の犠牲の果てに、五つの神秘はすべて黒覇帝の元に集った。『これでいい……明日からは歴史すらも、この俺にひざまずくだろう』。その満足げな声が、私にはなぜか、少し震えて泣いているかのようにすら思われた。」
〜暗黒史書官の最後の日記より〜

 そしてその傷が《暗殺》でも見えていたとすれば。

《ゴルディオーザ》は《ゴズ・オム》になった。だがそうならなかった部分もあったのではないか。

 かつて《メニズマ》と《レティシャ》がふたつの魂に分けられたように、《ゴルディオーザ》も《ゴズ・オム》と黒の覇王に分けられたのだとすれば――陽光3で提出された情報は、何もかもがひとつの糸に繋がるのかもしれない。




 とはいえ、《ゴズ・オム》の部分がそのまま世界を改竄し続けてしまったのだとすれば、アトランティカのことなど気にする必要もなくなってしまう。陽光4では究極の魔導生命体と化した《エルゴ・ウドス》=おそらく将来の《ゴズ・オム》を撃退しなければならないのだ。

13-069R《黒魔将 瘴気のゲーテ》
「エルゴ・ウドスはまさに今、究極の魔導生命体として完成しつつある……クク、ティリス・ルリアとやら、我を倒したとて止められぬぞ!」

 だが《黒き創勢と白き希光》のフレーバーでは、まさしく滅びを止める手段が残されていないということが述べられていた。

 ではどうすればよいのか?

 簡単だ。手段がないなら、他所から持って来ればよいのだ。

13-018C《天光の旅立ち》
「ああ……わが旅立ちに、闇を退ける銀光の加護を!」
〜エル・ニーサの祈り〜

 既にご存知のとおり、のちの《神告の秘使者 エルニィ》である《翔光の聖急使 エル・ニーサ》はつるつるぺったんボディペイントが本人の趣味であるということを暴露しつつ天空世界へと旅立った。

 そして大陸が浮かぶ奇妙な世界、レムリアナで起きた一連の事件と顛末、英雄譚を我々は知っている。世界を落とさんとした魔王と、それに抗った勇者たちの物語を知っている。

 ところで陽光3と同時発売されたラストクロニクル陽光編3公式ハンドブック(浅原晃著/ホビージャパン)はお買い求めだろうか?
 この記事ではそこからフレーバーは引用しつつも、基本的にはそれ以上は引用せずにあくまでフレーバーの考察という体裁を取っている。そのため、本来はその記事に触れるのはご法度であるのだが、フレーバーの内容に踏み込むために記事内容に言及する。

 陽光3ハンドブックには陽光4の紹介画像として、3つのイラストが掲載されていた。そのうちひとつは、明らかに《聖求の勇者 セレネカ》と《魔血の破戒騎士 ゼスタール》にしか見えない人物を背景に、見知らぬ女性が佇んでいる画像であった。
 が、この見知らぬ女性、ハンドブックを改めて見て貰えばわかるが、前掛けのような衣装のために前と裏で見たときで違いが大きいためにわかりにくかったが、実は陽光3で登場していた人物であった。

 それは《神船工匠 ラセーズ》である。

13-092U《神船工匠 ラセーズ》
大船を造ることにかけてはミスティカ一と称された彼女が、後に「伝説そのもの」を造ることになるとは、そのとき誰も予想すらしていなかった。

 イラストを改めて見返してみると(ハンドブックを参照されたいj)、《セレネカ》&《ゼスタール》のイラストには上部に白黒のふたつの船のマストが見えるが、下部に見える船底はひとつである。このことから、《聖求の旗艦 メルアンタ》のような《セレネカ》たちの船を《ラセーズ》の船が運んでいる状況なのだろうと推測される。

 すなわち、「伝説の大陸から勇者を運んでくる船を作る」というのが《ラセーズ》のフレーバーで述べられている「伝説のそのもの」なのだろうと考えられるが、こう考えると、ひとつさらに推測できることがある。

 《不可思議な導き》のイラストに描かれている女性の霊のようなものは、確かに《大翼神像 セゴナ・レムリアス》に酷似している。ならば《デルナード》を導いたのはセゴナだ。

 ではなぜセゴナが(単に力が強いだけの)一海賊である《デルナード》を救ったのか?

13-103U《不可思議な導き》
「俺がどうやってあの島へ着いたかって? 雲間から青い光が差して、道を示してくれたのさ……あれは神の導きというほかないね、きっとこの色男に惚れた女神の、さ!」
〜デルナードの回顧談〜

 それは、世界を飛び越えて勇者を乗せて戻ってくるなどという使命を託せるような人物は、レ・ムゥ広しといえども5つの海を渡り歩いた《デルナード》しかいないからではないだろうか?

 陽光4で、間違いなく《エルニィ》はふたりの勇者を連れてレ・ムゥに戻ってくるだろう。《セレネカ》と《ゼスタール》、彼らはかつて敵同士であったが、最後には背中を預けて戦った勇者である。

 だが果たしてそれでクロノグリフ改竄術を身につけた黒覇帝に勝てるだろうか? 《セレネカ》も《ゼスタール》も確かに天空世界を救った勇者だが、所詮は弱い人間に過ぎない。彼らは様々な助成を得て辛うじて勝ち得たのだ。彼らは仲間と共にやってくるかもしれないが、クロノグリフ改竄術の前ではあまりに矮小に感じられる。

 そんな不安を前にして、実はもうひとつ、未だ表舞台に出ていない強大な戦力が存在することを考慮に入れなくてはならない。

 ヴェガの精霊砲。

13-063R《精霊砲建造計画》
リュンサとメンツァー、天才と奇才の出会いは、ヴェガの運命にとって、とてつもなく大きな衝撃を生み出すことになった。

《炎智の到達者 リュンサ》と《魔鋼翼の神工匠 メンツァー》、ふたりの天才が力を合わせたことで建造された精霊砲はその姿を露わにしていないし、その実力を未だ発揮していない。
 もちろんこんなものひとつで《ゴズ・オム》を撃退できるようなら、話は台無しである。

13-044C《ヴェガの流民》
「あの精霊砲の弾は巨大なる精霊力だ、国を守るために土地が死んでいくのは、本来憂うべき矛盾なのだが……。」
〜メンツァーの苦悩〜

 だがもしかすると、この最終決戦で何らかの結果――たとえば黒覇帝を倒しきることはできなくても、別の世界へと弾き飛ばしたり、その力を構成している宝種を分解したりすることができるのではないかと思わずにはいられない。
 なぜならば、世界はまだ続いているのだから。天空が終わり、陽光が潰えかけた先には、アトランティカが存在しているのだから。


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