素晴らしき我が町
My Kind of Town

1

Kutoは道を歩きながら思い切り伸びをした。

昨日はGood Springを出た後、道端のキャンピングカーにて一泊した。そこはPowder Gungersの根城だったようだが、居座っていた2人の男たちはまるで無警戒だった
Good Springを襲撃しようとしていたCobbという男もそうだったが、なんて彼らは無警戒なのだろう。後ろから近寄って導火線に火のついたダイナマイトを突っ込んであげても気付かなかった。火が火薬に近づいて、もう逃れられないといったところでようやく気付き、声を挙げるのだ。あれは愉快なものだ

Good Springではいろいろと物資を得ることができた。今着ているレザーアーマーもそのひとつだが、これはあまり気に入らない。気心地があまり良くないので、次の町で売り払ってしまって良いかもしれない。弾丸と医薬品はどこでも役に立つだろう。それに今日の朝、貴重なキャップを集めているという老人からその貴重なキャップをスることもできた。本当に貴重なキャップだというのならば、何処かでそれを扱っている人間もいるだろうから、きっと高く売れる。
Good Springの事態をほっぽり出してきてしまったが、きっと大丈夫だろう。名前を聞き忘れていたが、あの牧師はかなり強い。Kutoは今まで数多くの男を見て、寝台を共にしてきたが、彼ほど巧みに銃を扱う人物は数人しかいない。普通に戦えば、数人のPowder Gungers程度ならばものともしないだろう。

朝から清々しい気分だった。
しかも目の前にはさらなるお宝が待っている。KutoはGood Springを出る前に、Doc Mitchellの診療所からいただいてきた一枚の紙を見る。それはPlatinum Chipの輸送をMojave Expressに依頼した旨の伝票だった。
この伝票の持ち主であるJimとは知り合いだった。とはいっても、彼が死ぬ三日前に旅は道連れということで知り合い、二度ほどベッドを共にした程度の浅い仲である。彼とはGood Springの手前で別れたが、まさか殺されたとは。泣くほどの仲ではないが、彼の持っていた伝票については気になっていたので、伝票を得られたのは幸いだった。
プラチナのチップかぁ………」
白金製ならそれだけでお宝だ。しかしわざわざそれを狙ってJimを殺した人間がいるということは、材質に価値のあるお宝というわけではないだろう。材質は隠れ蓑で、何かの秘密があると考えて間違いない。
ではその秘密とはなんだろう。わくわくする。旅というのはかくあらねば

次の目的地はGood Springから南に行ったところにあるPrimmという町だ。この町にはJimが所属していた運び屋組織であるMojave Expressの支部がある。Platinum Chipに関する情報がきっと得られるだろう。
自然と鼻歌が出てしまう。スキップなんかもしてしまったりして。
だから最初は呼び止められたときも気付かなかった。
待て、そこの女。Primmは現在立ち入りが規制されている」


Primmの手前のところで声をかけてきたのは軍服を着た男だった。服装と全体的な雰囲気からNCRの軍人であるということがわかる。
「規制って……」鼻歌を歌いながらスキップをしているのを見られただろうか、とちょっと気にしつつKutoは訊いた。「Primmでなにかあったんですか?」
丘の上の収容所を脱走して来た囚人どもがこの町まで降りてきた。Primmの住人は皆隠れているか、囚人たちに殺されてしまった。今この辺りにはPowder Gungersそれに属さない囚人たち、二つの悪漢どもが犇いている。あんたは見たところ商人ってところか? Good Springに引き返したほうが良いだろう」
「でも、NCRの方々がいらっしゃるんですよね?」Kutoは頬に指を当てて尋ねる。「それならばどうにかなりそうな気も……」
「確かにわれわれはNCRだが……、Primmの住人たちはわれわれの介入を好ましく思っていない。彼らはわれわれが町の支配権を握るのを恐れているようだ」NCRの隊員は言い難そうな表情になる。「それに……、われわれにはPowder Gungersを撃退することができない。十分な物資がないんだ。補給が滞っている……、このままでは事態は良くならない。だからとにかく、Primmには近寄らないほうが良いだろう」

(そうはいってもなぁ………)

近寄るなと言われてはいそうですかと言うことをきくわけにもいかない。
KutoはNCR隊員の目を掻い潜って彼らの監視キャンプの中に入った。隊員が二、三人巡回していたが、彼らはみなPrimmへと注意を注いでいたので見つからずに進むのは簡単だった。
東側のPrimmへの架け橋はNCR隊員が見張っていたため、そこを迂回して北側からPrimmの敷地内へと飛び込む。こちらは見張りがほとんどいなかった。


Primmの街中には確かに柄の悪そうな連中が居座っていた。しかし彼らの行動はどうにもPowder Gungersのものとは違うように思える。街中を銃を持ってふらついているだけで、統制が取れていない。Powder Gungersは脱走した囚人の集団とはいえ、もう少し統率が取れていたという話だったが。

(そういえば、Powder Gungersとそれに属さない集団がいるって言ってたなぁ……)

先ほどのNCRの隊員との会話を思い出す。ということは、Primmを襲撃したのはそのPowder Gungersに属さない人間だということだろうか。だったら大したことはないかもしれない。
Kutoは脱走者たちに見つからないように町を進む。目指すはMojave Expressの看板のある建物だ。どうにか安全に辿り着いたKutoだったが、建物の前に誰かが座り込んでいるのが見えて仰天した。



よくよく見てみるとそれは死体だったので、Kutoは安堵した。死体は襲ってこない。安全だ。Primmの住人かと一瞬思ったが、服装や武装を見る限りでは一般市民というのとは少し違う気がする。携帯しているショットガンやきっちりした身なり、そして倒れている場所を鑑みるに、おそらく脱走者やPowder Gungersでもない。

「となると……」

Kutoはひとりごちながら死体をMojave Expressの建物の中へと引っ張り込む。幸いにも戸には鍵がかかっていなかった。
Mojave Express支部の中は誰もいなかった。これ幸いとKutoは死体を調べることにした。死体は黒人の成人男性で、年頃は三十代といったところだろう。短く刈り込んだ頭は最近きっちりと手入れをしたということだろう。やはり脱走者たちではない。腹部の銃創から流れ出る傷は完全に固まってはいなかった。撃たれたのは最近だ。

鞄から配送伝票を見つけることができた。やはりJimと同様、Mojave Expressの運び屋だったようだ。今見つけた伝票とGood Springで拝借してきた伝票を見比べる。日付、文面、報酬などは同じだ。配達先も、VegasのStripというのは同じだ。異なる箇所は2つ。Jimの伝票はナンバーが6/6だったが、今見つけたものは4/6だ。そしてJimの配達していたものは規格外の白金製ポーカーチップだったが、こちらは奇妙な物質(と伝票には書かれていた)で出来た2つのサイコロだった。
どちらもカジノで使う品だろう。しかしカジノの備品がこんなに厳重に運ばれたり、奪われたりするわけがない。やはりお宝の予感がする。

Kutoはもう少しMojave Express支部の中を探索してみた中はほとんど個人商店のような有様で、大したものは見つからなかった。唯一気になったのはカウンターに置かれた球形の機械だ。アイボットという名前の、主に広報や宣伝目的で戦前使われていたというロボットらしい。
動作はしていなかったが、外装は比較的綺麗だった。胴体下部にレーザーガンのようなものがついているので、もしかしたら戦闘用かもしれない。Good Springで会ったVictorというロボットと違い、人間臭さがなくて可愛らしい。

とはいえ動かせないのではどうしようもない。Mojave Expressを出て、次は道を挟んだ向かいにある大きな建物を目指す。Mojave Express支部には社員の死体はなかった。何処かに隠れているとすれば、一番可能性が高そうなのが大きな建物だった。窓はカーテンで仕切られていたが、中からは明かりが洩れている。
もしかすると脱走者の根城となっているかもしれないが、一か八かだ。もし脱走者のアジトだとしても、すぐに撃たれたりはしないだろう。Kutoは再度建物の看板を見上げ、
「うーん……、カジノかな?」
と呟きながら中に入ってみる。施錠はやはりされていなかった。
いきなり頭に銃を突きつけられた。

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