好きな漫画を挙げろといわれたら、まず挙がるのがわたしの場合『RED』だ。

■RED living on the edge
(村枝賢一/講談社)
村枝賢一の魅力のひとつは、キャラクターの描き分けだと思う。
色や髪型だけでキャラクタの描き分けをする漫画の多い昨今、シルエットだけでキャラクタの判別ができるように描けるのは村枝賢一だけだといっても過言ではないだろう、と書く場合はたいてい過言だが。

実際のところ弾丸が球形のマッチロック方式の銃でどれだけ命中率が期待できるのかというのは怪しいところであるが、そんなのどうでも良くなるほど格好良いのがイエローである。

もちろんキャラクタの描き分けができていればそれだけで良い漫画なわけではないし、できなければそれで駄目というわけでもない。しかしキャラクタの容姿とは漫画を読むに当たって、単に個々人が判別できるというだけではなく、物語を読み込む上でも重要な要素だ。

これは実際の人間の容姿について語る場合に似ている。
人間は顔ではない、容姿ではないというが、もちろん容姿が重要ではないわけではない
人を顔だけで判断するべきではないという言葉はあるが、見た目をまったく判断材料に入れないのは馬鹿らしい

容姿は個性のひとつだ。容姿の差異が個性を際立たせる。
何が言いたいかというと、『RED』はイエローが格好良すぎる

『RED』のあらすじをおおまかに説明しようとすると、話はレッドとイエローが中心となる。

19世紀末、アメリカ合衆国。
幕末の動乱の中、逃げるようにアメリカにやってきた日本人の侍、伊藤伊衛郎(イエロー)。彼は凄腕の火縄銃の使い手だったが、友のように死ねずに戦場から逃げ出したということを恥じ、銃を持てない惨めな日々を送っていた。
しかしあるとき幼い頃に民族の虐殺に遭遇し、復讐を試みるインディアンの男、レッドに遭遇する。彼との出会いの中でイエローはふたたび銃を手に取り、「死ぬための勇気」を取り戻した。
イエローは、復讐という実りない行為に身を落とすレッドの手助けをすることを決意する。

見える範囲なら何処でも当ててくるイエロー。
レッドが向こう見ずに突進していくだけに、イエローの技術が際立つ。

アメリカ合衆国ができる以前、そしてできて間もない頃、インディアンは白人たちには人間とは思われていなかった。インディアンだけではない。黒人も、黄色人種もだ。
しかしイエローはそのことを詳しく知っているわけではない。イエローがレッドを助けることを決意したのは、まさしく「死ぬ覚悟を取り戻させてくれた」という一点だけだ。
アメリカ合衆国という場所において、バックグラウンドはまったく違うものの、レッドとイエローの立場は「白人ではない」という点においては似通っている。
それでもイエローがレッドを助ける理由はカラード(有色人種)であるということとはまったく関係がなく、単なる友情によってのみだけなのだ。

それが格好良いではないか。

話を追うにつれて、さまざまな心情を抱えた人間がレッドの元に集う。
かつての想い人とレッドを重ねるアンジー
真の目的をひた隠しにしつつレッドを利用しようとするグレイ
贖罪と自らの正義のためにレッドに手を貸すゴールドスミス
インディアンの誇りと大切な少女のために戦いに参加するチリカ

様々な人間たちが各々の目的のために人種や民族の壁を越えて集う。
しかし純粋にレッドに友情に感じて戦うのはイエローだけだ。

アンジーとグレイ、そしてゴールドスミスも物語を彩る上で重要なキャラクタだった。
グレイとゴールドの外伝も欲しかったなぁ。グレイがサーキットライダーになったばかりのころとか、虐殺後のゴールドスミスとか。

格好良い。
格好良いぞイエロー!
見た目はべつにまったく格好良くない。短足で鼻が大きく、四角顎で三白眼だ。もちろん酷く醜悪に描かれているわけではないが、いわゆる「格好良い」という単語から想像する造詣ではない。
だがそれでもなお、いちばん格好良いのは間違いなくイエローである。

そもそもが武器が火縄銃である。連装式の拳銃が出回っているこの時代(19世紀末)に前込式の火縄銃
しかもこれで敵を圧倒するのだから恐ろしい。銃で戦う漫画はたいてい何発撃ってもなかなか当たらないものだが、イエローが狙いを外すことはほとんどない。火縄銃の特性上、一発一発撃つのにやたら時間はかかるが、それでも狙いをつけた一発が確実に当たるのだから格好良い。
武器が狙撃銃で近距離戦に弱いかと思いきや、実は無手でも強かったりするのがイエローである。どれくらい強いかというと、頭ひとつ分以上体格差があるレッド相手に投げ飛ばすほど強いのだから恐ろしい。

そして女には弱い
女好きというか、惚れっぽいくせに女に弱いのだ。もうなんだ、典型的なキャラではないか。それで良いのだ。
見たまんまのキャラなのだ、イエローは。
だからこそ格好良いのだ。
『RED』外伝の『Yellow』と『White』はそれぞれ12-13巻と16巻に収録。
『White』はアンジーがレッドに興味を持つ切っ掛けとなったインディアン、ウィーピングオウルが格好良い。

前述の通り、レッドでは様々なキャラクタが登場する。
ひたすら復讐のために生きるレッド。
白人でありながらレッドたちに助成するアンジー。
ラスボスとして圧倒的な存在感を誇るブルー。

その中でもやはりイエローがいちばん格好良い
(*画像は『RED living on the edge』村枝賢一/講談社 より)

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2014/05/25追記
2014年5月から新装版が発売されるようです。


(RED living on the edge レビュー)

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