2日目

白い矢羽を靡かせて、矢が男の左胸に突き刺さる。馬に乗って略奪の指揮を執っていたその男は、馬から落ちてそのまま事切れた。


「わが名はウルギッド! 騎馬兵60を従えしステップの住人! 動くな盗賊ども、ここよりきさまらを掃討する!」
ウルの声に従うように、エペシェ村の周りから声が響くに。火が灯る。

圧倒的な兵数の前に、賊たちは反撃する様子も見せずに散り散りになって逃げていく。ウルは追わず、矢だけを射かけさせた。届かぬ矢ならば問題ない。

ある程度矢を消費してから、ウルは村に戻った。
「ウルどの……、ありがとうございます」とエペシェの村長が進み出て挨拶をした。「まさかこれだけの少人数で、本当に」
ウルを中心とした商隊は確かに騎馬で構成されていたが、数は10程度の小規模な部隊であった。先ほど声を挙げ、火を掲げたのはほとんどがこの村の農民であった。

「相手がきちんと退却してくれたから良かったものの、これからは無茶はやめてください」と元商人で、今はウルの商隊に属しているマルニドが言った。「賊がこちらの策にはまってさっさと逃げてくれたから良かったですが、もしこちらが少人数だと気づかれていたら危なかったですよ
「射落としたのは賊のリーダーだった。装飾を施したいちばん良い馬に乗っていたかな」
ウルはにべもなく答えた。リーダーがやられれば、追い剥ぎの類などであればとりあえず逃げるしかできないものだ。
「よくそこまで………」
村長が驚嘆したように頷いたが、ステップの住人であるウルの目はどこまでも広がる草原をずっと見てきた。矢が届く距離であれば、馬の具合程度見るのはたやすいことだ。

「それと村長、まだ盗賊団の撃退は終わっていない」ウルは馬から下りて言った。「二、三日でやつらは復讐に来るだろう。そのときを叩く
「倒せますか……?」

不安そうに村長が言った。先ほど村にいた盗賊は16人といったところだっただろうが、敵の本隊はその2倍から3倍の兵力があると見て間違いない。対してウルの隊は11だ。こちらのほうが騎馬兵が多く、相手の馬は多くて3頭程度だろうが、それでも数の差は圧倒的だ。

村の人間にも協力してもらう」
「協力するのはもちろんですが、われわれは戦った経験がありません」村長が言うと、集まっていた村人たちが頷く。「それで戦力になりますでしょうか?」
「もちろん訓練はつける。それに元より戦力としては期待していない

ウルはとにかく敵を食い止め、なによりも声を挙げるようにと教えた。
武器の振り方を教えるのを最小限に留めたのは、しょせんは農民は農民で、武器を使っての戦いは得手ではなかろうと思ったからだった。

「声を出すのをやめたら死ぬと思え」ウルは農村の若者たちの前で言った。「逃げても良いが、叫びながら逃げろ。そうしないと助けてやれんし、敵の位置がわからない」

またウルは罠の作り方、設置場所を教えた。

数日後、襲撃を仕掛けてきた賊をウルたちは殲滅した。こちらの被害は農民が数名死んだだけにすぎず、ウルの部隊には負傷者ひとりたりともなかった。

村からの礼である塩や干し肉、さらに賊の馬と武器を得て、ウルたち一行は海を目指して馬を進める。

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