Kutoらしき人物がFreesideに現われたという急報がThe Kingの子飼いの人物から齎されたとき、Jacobstownではバーベキューパーティーの真っ最中だった。
Siはすぐさま出発の準備を整えた。といっても、コートを着て、雑嚢を背負っただけだ。元々、いつでも出られるように準備はしてあった。

「行くの?」と食事と酒とを存分に楽しんでいたSumikaがSiの肩に乗る。
「もう出発するのか?」と箸と皿を持ったMarcusも近づいてくる。「もう遅いし、明日にしたほうが良いんじゃないか?」
「いや、急いでいる

Henry医師も引き止め、Arcadeは帰ることを渋った。もっともSiが、じゃあひとりで帰れ、と言うと彼はすぐに出発の準備を始めたが。

「Jimmy」とLilyが皺で歪み、瘤で膨れ上がった顔をさらにくしゃくしゃにして声をかけてきた。「気をつけて帰ってね。この辺りはいろいろな獣がいるし、物騒な人もいるから……。そうだ、おばあちゃんがついていってあげようか? そう、それが良いね。おばあちゃんがついていれば安心だもの」
Siが断りきれなかったのは、Lilyに関する事情をHenryから聞いていたせいかもしれない。彼女の精神はもはやぼろぼろだ、と彼は言った。
LilyはHenryによるNightkinの精神治療の被験者だった。彼女が被験者になったのは、彼女の症状がもっとも進んでいたためというのもあるが、なによりも彼女が自身で志願したためだった。
彼女は心の危険を承知で、それでも実験を続けたい、と言った。

もうひとつ彼女に、というよりNightkinに関することで、騒動があった。Henryが治療のためにと研究していたStealth Boy Mk-2のことを、強硬派のNightkinが嗅ぎつけてきたのだ。Mk-2を使うことで、より高みに近づけると考えたらしい。
Super Mutantだらけの場所で戦闘を起こすわけにもいかず、SiとHenryは大人しく彼らの要求を聞き、Mk-2の仕様書や実験結果を渡した。Henryによれば、これでNightkinたちのStealth Boy中毒が悪化し、また厄介ごとを増やすようになるだろう、と述べた。それでも争いになるよりましだ、とも。
NightkinでありながらHenryに加担するLilyとしては、今後の心労が増えるだろうとSiは考えていた。だから彼女に、同情したのかもしれない。

New Vegasの明かりが見えるようになったあたりで、ここまで来れば大丈夫、とLilyに告げた。
「わかった。でも、本当に気をつけてね? それと、おばあちゃん、Jimmyが来てくれれば大歓迎だから、いつでも遊びに来て」
「わかってるよ」薬はちゃんと飲むように、Henryの実験が厭になったらいつでも辞めるように、とも言い含め、去り往くLilyにSiは手を振った。「おばあちゃん」


気分を落ち着かせるために目の前にあったカジノ、Gomorraに入ったKutoは考え事をしながらスロットを回していた。
FreesideからStripへと入って早々、厭なものを見た。Good Spring、Novac、そしてBounder Cityと行く先々でKutoの前に現われたSecuritorn、Victorがまたしても現われたのだった。
無視しようもなかった。彼は一輪で近づいてくると、機械と思えぬ陽気な口調で話しかけてきた。
ようこそ、New Vegasへ。またまた会ったな、ねぇちゃん」

Kutoは深呼吸をした。いくら陽気な声調を偽ろうとも、目の前にいるのは明らかな機械だった。しかもただの機械ではなく、人間を偽った機械だ。吐き気がする。
「あの……、ごめんなさい、ちょっと、急ぎの用件があって………」
縞のスーツの男に関してだろう? わかってるって。だがよ、こっちもちょっと話したい用件があって、Lucky 38までご足労願いたいのさ。Mr Houseが、誰もが知ってるNew Vegasの頭あんたと会いたがってるんだ。良ぃい話があるんだぜ」
「でも……」
頭が回らない。今回は出会いが唐突すぎた。Stripに入れるので気分が昂っていた。Freesideで想像したところよりも、Stripは遥かに素敵な場所だった。その気分が一気に落ちた。落差が大きいほど、精神のダメージは大きかった。
「あの………」
「まぁよ、後でも良いから来てくんなって、かわいこちゃん! Mr Houseはきっとあんたをお気に召すだろうし、あんたもそうだろうさ。待ってるからな、絶対来てくれよ」
言うだけ言って、Victorは去っていった。

どうしたものか、と考えながらブラックジャックやスロットに興じていたら、1000チップが10倍以上に膨らんでいた。スロットの出目の中央には檸檬が並んでいて、8000チップが吐き出された。嬉しい。
喜びも束の間、フロアマネージャーらしき禿頭の男性が声をかけてきた。彼は慌てた様子で矢継ぎ早に言葉を紡いだ。もう十分稼いだだろう、それ以上稼ぎたいならTopsにでも行け、といったことを言った。要約すれば、もうここではゲームはするな、ということだった。

「はぁ………、また追い出されちゃった」換金してからGomorraを出、溜め息を吐く。「どうしてなんでしょう………?」
「いや、そりゃあ………」
Booneが言い辛そうに視線を彷徨わせ、Kutoはようやく気付いた。
あ、そっか」長旅で汚れていない服がだんだんなくなってきたため、今着ているのはGreat Khanのホットパンツとノースリーブだ。こんな服装でカジノに入れば、追い出されるに決まっている。「ドレスコードですね」

Booneが何か言いかけていたが、原因が今となっては彼にそれ以上の言葉を出させるのは心苦しかった。厳格そうな彼のこと、女性の服装にけちをつけるというのは、するべきではないこととして心の中に刻まれているのだろう。だからあれだけ言い難そうだったのだ。

今度は大丈夫だ、とドレスに着替えたKutoは思う。今度こそ大稼ぎしてやる、と。向かう先はTopsというカジノだ。
Topsが縞のスーツの男、Bennyが経営するカジノだということを、KutoはVictorの話のために、忘れていた。


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