そのSecuritronは、見ようによってはモニタに映し出されている顔が違うだけのSecuritronだ。
だが異様に荒れ果てた室内とも相まって、とても奇妙な物体に見えた。
何より、そのSecuritronにはSumikaが見えているようなのだ。Secritronのように、ある一定以上のセンサや思考系統を備えた機械は、人間と同様にSumikaの存在を感知しないことが多い。実際、New VegasのほかのSecuritronはSumikaを存在しないものとして扱った
だがこのSecuritronには、Sumikaが見えているようだった。

「あなたは………?」
おそるおそる、Sumikaは尋ねた。
「良い質問ですねぇ!」とそのSecuritronは、Good Springで出会ったVictor以上の人間らしさと不気味さを兼ね備えた調子で応じる。「PDQ-88bタイプのSecuritronです。どうぞYes Manとお呼びください。Yes Manの仕事はMr.Houseのネットワークの監視と、暗号データの解析です」
「Yes Man………?」
「はい、Yes ManはYes Manです! Bennyはそう呼んでいました。おそらくYes Manがとてもおせっかいだからでしょう」

(Bennyって……、あそこで死んでいた人のことだよね)
ということは、このSecuritronは、Bennyが作成、もしくは改良したものだということだろうか。
そう質問すると、Yes Manは「それは正確ではありませんね! Yes Manを改良したのは、彼の友人です。Fortに住んでいる方のようですが、正確なところはYes Manには入力されていません!」
自分でおせっかいな性格だというだけあって、このSecuritronは質問には答えてくれるようだ。喋っていることが事実なのかどうかを後で確かめる必要はあるが、とりあえず聞いておいて損はないだろう。

「えっと、隣の部屋でBennyさんが死んでいるみたいなんだけど……、なにがあったか、知らない?」
「Bennyは殺されました! 褐色の肌、銀髪の女性にです。彼女はPlatinum Chipを奪って逃走しました!」

(Kutoが、殺して、奪った……)
KutoはGood SpringではSiやSunnyを裏切ったし、Primmでは拘束されていたBeagleを放って逃げてしまった。そしてこのStripでは、Siを罠にかけた。
それはわかっていたものの、彼女が人を殺したのだと聞いて、少し恐怖を感じた。Good Springで会ったときは、少し気に入らないとは思いつつも、人を簡単に殺すようには思えなかった
否、あるいは彼女はBennyに襲われて、自分の身を守るために殺したのかもしれない。しかし彼女の笑い声を、スイートルームで確かに聞いた。彼女は、Bennyに加担していた。そして利用するだけ利用し終わったら、殺したのだ。
彼女にそれだけのことをさせた、Platinum Chipとは、いったいなんなのか。
SiとSumikaはNCRから、Mr. Houseが運び屋に依頼したという謎の貨物に関しての追跡調査、奪還の任務を受けていた。貨物が運び屋の手に渡ったということは突き止められたが、その貨物が具体的にどんなものなのかは知らない。貨物がPlatinum Chipであるということ自体、Good Springで初めて知ったのだ。

「Platinum Chipは、一種のデータ記憶装置です!」Yes Manが言う。「ホロテープと同様のものと考えてもらっても良いでしょうが、それよりはさらに高度なもので、Mr. Houseの防衛システムをグレードアップさせるためのデータが収められているそうです。Platinum Chipは特殊なフォーマットで記録されていて、中のデータを読むためには、特定のハードウェアを使用する必要があります」
「それって……」
「ネットワーク上には、ふたつの場所があります。ひとつはLucky 38、もうひとつはFortification Hillの地下です。BennyはMr. Houseを殺し、Lucky 38のメインフレームでYes Manの電子頭脳内ネットワークにデータをコピーしようとしていました。Platinum Chipに収められているSecuritron強化データを使用すれば、New Vegasの支配はより簡単になっていたでしょう」

Lucky 38はNew Vegasの支配者、Mr. Houseの本拠だ。NCRでもそう簡単には入れない。
Fortification HillはLegionの現在の本拠のひとつだ。
そこにSecuritron強化のための、特殊なハードウェアがあるということは、RangerであるSiやSumikaにも初耳だった。
(とにかく、このSecuritronの情報をSiに伝えないと……)

話に没頭していて、Siのところに戻るのを忘れてしまった。Siが、Sumikaを探している声が聞こえている。また怒られるかもしれない。
Sumikaは元の部屋に戻ると、ゴミ箱を漁りながらSumikaの名を叫ぶSiの姿があった。
「Sumika! どこ行った!?」
彼はどうやら、Sumikaがゴミ箱の中にいると思っているらしい。失礼なことだ。

「Si、隣の部屋に、変な機械がいたんだけど……」
SumikaはSiの肩の上に留まって言った。
「Sumika?」ようやくSiがゴミ箱から離れる。「おまえ、どこ行って……。変な機械? なんだ、それ」
「とにかく、会ってみればわかるから」
「おまえ、どこ行ったんだ?
Siが首を動かして辺りを見回す。
「だから、隣の部屋に行ってたんだって」
「じゃなくって、今、どこにいるんだ?

(え………?)

Sumikaは震える肩を抑えて、Siの肩を離れた。Siの目の前でホバリングする。
「Silas………?」
「Sumika」Siはまだ辺りを見回していた。「どこに行ったんだ………?」

SumikaがSiの鼻に触れると、彼はびくっとして驚いた表情になった。
触れられる。
声も聞こえる。
だが。

Sumikaは確信した。
きっとSiも気付いた。
Siの目にSumikaが映らなくなっていることを。
唯一、彼女を見ることができる存在であったSilas、妖精の目の名を持つRangerの瞳にさえ、Sumikaが映らなくなってしまったということを。



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