「ここでBooneさんと出会ったんですよね」
KutoはBooneの腕に手を絡めながら言った。最初は抵抗していたBooneだったが、もう諦めたのか大人しくなっていた。

New Vegasから徒歩で2日、KutoとBonne、それにED-EはNovacまで来ていた。Mr. Houseが、そしてCeasar's Legionが指定していたFortへの舟が出ているCottonwood Coveまで、あと1日といったところだろう。

恐竜のモニュメントの前に、もはやJannie May Crawfordの死体はなかった。Novacの人間が片付けたのかもしれないし、あるいは野犬に持ち攫われてしまったのかもしれない。
いずれにせよ、彼女の死体のことはどうでも良かった。今大事なのは、Booneにこれから行く場所のことを何と説明するべきか、だ。今のところは誤魔化し誤魔化しで旅ができているが、そろそろ苦しくなってくる。Novac以南というと、Niptonの街か、いくつかのNCRキャンプがあるくらいだ。

ED-Eの電子音が鳴り、Kutoは思考から現実に引き戻された。そのときには既に視界の中でぎりぎり見える程度の位置にいたFeral Ghoulの頭が粉々に砕けていた
「このあたりは放射線密度が濃いな」
スナイパーライフルを下げて、Booneが呟くように言った。
「早々に抜けるぞ」

彼の言うとおり、元Seachlight駐屯地付近は酷い放射線密度だった。NCRの小隊が、通行人が立ち入らぬように見回っていたくらいだ。
だがKutoにとっては、この放射線密度も逆に好都合だった。
ここから東に行けばCottonwood Cove、普通ならBooneに引き止められそうだが、放射線密度を言い訳にすればなんとか東へは進める。勢いに任せてLegionの基地に入ってしまえば、彼もたったひとりで抵抗しようとはしないだろう

見積もりは甘かった。
放射線密度が濃く、Ferarl Ghoulが密集していた地帯を抜けたところで、BooneはKutoを引き止めた。
「おい、ここから先はLegionの奴隷収容所の近くだ。以前に来たことがある」
「はい、えっと、でもこの近くに依頼人の方ががいるはずなんです」
苦しい言い訳だろうか。相手はLegionではないか、と勘ぐられはしないだろうか。

Booneが急に銃口を上げた。
なんだと思ったが、彼が狙っていたのは道の向こう、遥か遠くのLegionの兵士だった。見回りか、あるいはKutoとBooneの様子を聞きつけて警戒しに来たのか。
彼の目的はわからなかったが、Kutoの見ている前で、彼はBooneの狙撃銃で胸を撃ち抜かれて吹っ飛んだ。

見ての通りだ」Booneは息も乱さずに言った。「もしこれ以上先に行くなら、おれは全員ぶち殺して進む。そうしたいか?」
Legionを怒らせるのは、いかにも不味い。しかしBooneに、KutoがLegionに勧誘されていることを知られるというのも不味い気がする。

Kutoが返答に迷っていると、Booneは続けた。「わかった。ここで別れよう。あとは勝手にしろ
「え?」Kutoは急なBooneの言葉に驚いた。「あの、えっと、じゃあここでちょっと待っていてください。すぐに用を済ませてきますから……」
「構うな。おれはもう行く」
「でも、わたしひとりじゃあ……」
「勝手にしろ」

そう言うと、彼は背を向けて行ってしまった。
KutoはED-Eとともにその場に残された。Deathcrowの群れの中に放り込まれた気分だった。

とにかくここでじっとしていても仕方がない。前はLegion、後ろはGhoulの群れ。いちおう招待されてはいるのだから、Legionへと向かって歩いたほうがまだ安全だ。
Kutoは溜め息ひとつ吐いてから、Cottonwood Coveへの道を降りた。
途中、Great Khanらしき男が、Legion名物の磔にされているのが見えた。助けを求めていたが、ここはLegionの領地、下手に手助けをして敵対者だと思われてはかなわない。Kutoは男を放っておいて、さらに歩いた。

坂を下っていくと、やがてLegionの兵士らしきフードを被った男がやってきた。青い目の、黒人系の顔立ちをした男だった。
「Cottonwood Caveになんの用だ?」
と男は尋ねて来た。武器は持っていないが、コヨーテを連れている。すぐに攻撃してこないだけ、上出来というところだろう。
「Caesarさんに招かれたものです」
KutoがVulpes Incultaから受け取ったメダリオンを胸元から取り出すと、Legionの男は目を見開いて驚愕の表情になった。
「これはCaesarの………!」彼はKutoを上から下まで眺め回し、下唇を噛んだ。「Cursor Lucullusが待っていたというのはあんたか。わかった、行け」
「どうもです」
難癖をつけられないうちに、KutoはそのLegionの兵士から離れて坂を下っていく。

(Cursorさんってどこだろ……)

Kutoはきょろきょろと辺りを見回しながら歩いた。残念ながら、KutoはCursor Lucullusなる人物の顔を知らないが、相手はKutoの顔を知っているはずだ。歩いていれば出会うはずだが、Legionの集落を歩くのは、Booneがいないことも手伝って、だいぶん心細い。

歩いていると、建物の庇の上に立っている人物が見えた。他のLegion兵士とは一線を臥す、おそらく幹部であろうことを示す鎧だ。
風の臭いでも嗅いでいるのか、邪悪なエナジーでも感じているのか、あるいは一句詠んでいるのか、その人物は腕を組んでいたが、急にこちらを向くと、飛び降りてきた。重そうな音とともに着地する。

「おまえが行くのはこちらではない」腕を組んだまま、その男は言った。「Caesarに呼ばれた者だろう。Cursor Lucullusが船渠の艀でおまえを待っている」
「船渠……、ですか?」
「あちらだ」鎧の男は湖の先を指差した。確かに桟橋のようなものが見える。「彼がおまえをCaesarの元へと連れて行くだろう」
「立派な鎧ですけど……、あなたは幹部か何かですか?」
「当たり前だ。わたしはCenturionだ。愚かしくも反抗を企てるNCRのSearchlight基地の討伐の折り、Caesarの命によって愚か者どもを鎮圧した不死鳥のAureliusだ」苛立った演説口調でAureliusと名乗った男は言う。「Caesarを待たせるな、早く行け」

話が長くなりそうだったので、Kutoは言うとおりにした。
桟橋まで行くと、先のほうに男が立っているのが見えた。彼がCursor Lucullusだろう。

Cursor Lucullusは髪を纏めた、東洋人風の中年男だった。
「準備はできたか」
とcursorはKutoを見るなり言った。
「Cursor Lucullusさんですよね?」Kutoはいちおう確認する。
「おまえをFortification Hillまで護衛するように言われている、Cursor Lucullusだ。それで、準備はできたか?」忙しい口調でCursorは返答した。
「えっと、Fortでは何が?」
「それはあらゆる民族の征服者であるCaesarに直接訊いたほうが良いだろう。準備はできたか?

3度も忙しなく尋ねられては、頷くしかなかった。
すぐに舟に乗せられた。舟といっても、数人が乗るのがせいぜいだろうという木製の小船だ。特に動力などは見当たらず、どうやら流れがあるおかげでこんな船でも簡単に着くらしい。

「わたしの知る限りでは……」
船に乗ってしばらく進んだところで、それまで沈黙を保っていたCursorが口を開いた。
Caesarがじきじきに人を招いたことなど初めてのことだ。しかもそれが女だというのだから、驚きだ。Caesarの興味を引くほどに注目に値する人物だということだろうが……」
「女だと、なにか不味いんですか?」
女は肉体的にも精神的にも男に劣る」当たり前のようにCursorが答える。「女のすべきことは、子を孕み、育てることだけだ」

Kutoは自分が他人より賢いと思っているわけではないが、劣っている、と真っ向から言われてさすがに腹が立った。とはいえ反論もできない。

「まぁ、すべての女がそうというわけでもなかろう。Caesarの判断に間違いはない」
と勝手にCursor Lucullusは納得していた。

河を下って数時間。
ようやく舟はFortification Hillに到着した



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