現在NCR、Caesar's Legion、そしてMr. Houseと三つ巴になっているNew Vegasの支配権争いで、CaesarはまずMr. Houseをパワーゲームから叩き落すつもりらしい。

この施設に入る前、CaesarがKutoに要求したのは、半分はMr. Houseの要求内容と似通っていた。The Fortの戦前の施設にPlatinum Chipを使用して入ることだ。
後半は違っていた。Mr. Houseが要求したのは、施設を稼動させること。Caesarが要求したのは、施設を使用不能にすることだった。
彼は施設を作ったのがMr. Houseであり、Platinum Chipが施設のハッチを開けることやKutoがそのために遣わされて来たことも知っていた。

Lucky 38でMr. Houseは言った。Legionからの招待があっても驚くべきことではない、なぜならLegionのスパイがいることは承知しているのだから、と。
逆にいえば、それはつまり、彼はKutoとVulpesが接触したことそのものを知らなかったということだ。あくまで、そういったことがあってもおかしくはない、と言っただけで。
それどころか、KutoがPlatinum Chipを奪ったということすら、報告するまで確証がなかったのだ。Legionは知っていたというのに
Mr. Houseは、所詮は機械に頼るしかない人間だ。彼の力は、機械が及ぶ範囲にしかない。たとえばStripの雑踏の中では、彼の力は及ばないのだ。

だが、Legionは違う。
彼らの力の根源は人間の力だ。人を力とし、人を武器とし、そして彼らは人間であるがゆえに、機械も使用できる。
Mr. House側についていては、Legionには勝てない。

施設の入口のモニタ装置は沈黙していた。どうやらLucky 38との接続は切れてしまったらしい。
それでもKutoは言った。
「あなたの負けですね、Mr. House」

振動が酷い。どうやら発電施設の破壊により、施設そのものが不安定になっているらしい。
急ぎ施設を出る。外には上弦の月が昇っていた。

Caesarのところに戻ると、やってくれたようだな、と満足げに頷いた。どうやら施設破壊の振動をこちらでも感じ取ったらしい。



「これでMr. Houseを表舞台へと引き摺り出すことができた。これで為すべきことは簡単だ」
Mr. Houseの暗殺ですか」とKutoは応じた。
「きみに任せよう」満足げにCaesarは頷く。「彼が何処にいるか、どうすれば死ぬか。Lucky 38のセキュリティに関しては、きみのほうが詳しいだろう」

Kutoは肩を竦めた。未だにCaesarからは威圧感めいたものは感じない。しかし言うことをきかなくてはならないという気がするのだから、不思議なものだ。
どちらにせよ、Mr. Houseは今回の出来事で、Kutoを敵と認識するようになったはずだ。いまさらドロップアウトはできない。このパワーゲームで上手く立ち回り、どうにか生き残るしかないのだ。

「Lucky 38まで送り届けてあげたいところだが、残念ながらそうもいかない。その代わりといっては何だが、Nelsonあたりで休むと良いだろう。向こうには話をつけておこう」それと、とCaesarは続けた。「きみが撃退したRangerについてだが……」
「Ranger?」
「Strip、Topsでの話だ」
「あぁ………」
Kutoは合点がいった。Good Springで出会い、Primmまで追いかけてきて、New Vegasで間接的に再会したガンマンだ。
牧師さまですか」
「そう、巡回牧師を名乗るあの男だ。きみは彼の正体を、Mr. Houseを通して知ったのだろうが……、何を聞いた?」
NCRのRangerで、Platinum Chipを追っているということだけですが……」
「なるほど。それだけかな?」

Kutoはその質問を不思議に感じた。NCRといえば、Caesar's Legionにとっての最大の敵だ。もちろんスパイや斥候を幾千万と潜ませているはずで、Rangerの情報は常に収集している情報のひとつだろう。
だがCaesarの訊き方は、彼もあのRangerについての情報をよく知らないとでも言いたいように感じられた。

Kutoがそう言うと、Caesarはゆっくりと頷いた。
「その通りだ。あのRangerについての情報はそう多くはない。理由は、彼が南部NCRから派遣されたRangerで、こちらに来てからまだ日が浅いからだ。McCarran基地にも碌な情報は伝わってきていない。彼については何かしらを示すのは、この書類だけだ」

Caesarが示したのは、茶けた羊皮紙のコピーだった。巡回牧師の男の顔写真と、階級のRanger、それに名前欄に『FE』の二文字だけ。たったみっつの情報しかない。

「FE?」
Fairy Eye……、彼は妖精の目を持つといわれている。その略称、通称だ」
冗談を言っているのかと思ったが、Caesarの表情は真剣そのものだった。とりあえずKutoは笑っておいた。
「妖精?」
「そう、妖精だ。まさしく、Nomen est omenだ」
「なんです?」
名は体を表す、だ……。彼は妖精を見ることができ、その妖精を通し、様々な情報を得るらしい。その能力を見込まれ、Platinum Chip捜索の任務のための派遣された」
「なるほど。妖精の目ね」Kutoは肩を竦めた。「まぁもう死んだんですから、良いじゃないですか
彼は死んでいないよ。一命を取り留めたそうだ。もう任務に復帰するという情報が入った」Caesarの目には穏やかな笑みが浮かんでいた。「だから、気をつけることだ。運び屋Kuto。妖精の目はどこにあるかはわからないものだ
とCaeesarは締めくくった。それ以上話をすることはない、Mr. Houseを殺すまでの間は、という態度だった。勝手なものだとは思うが、腹は立たない。

Caesarのテントを出ると、モヒカンの見張りの男がED-Eに、あんたたちがどんな人間なのか楽しみにしてたんだ、と話しかけていた。どうやら彼は、ED-Eが自律するロボットとは思っていないらしく、おかしかった。
彼にとっては、ED-Eも妖精のようなものだろう。正体不明のもの、よくわからない、しかし実は緻密な物理法則によって動いているものだ。この世のものはすべからく、自然起源のものしかないのだ。そう考えれば、何が妖精の目だ、という気がする。

Fortの丘を降ると、Cursor Lucullusが待っていた。帰りも彼が乗せて行ってくれるらしい。
巡回牧師のことは不安だったが、それ以上にこれからの道程が不安だった。Booneがいない。Novacに行っても、仲間に加わっててもらえるかどうかわからない。
とりあえずNelsonまでのLegion兵士には話が通してあるということで、素直にCaesarやCursor Lucullusの忠告に従い、Legionの目があるルートでNelsonまで目指しそこからはNovacに行ってみることにする。New Vegasへ向かうのはその後で良かろう。

Nelsonまであと少しというところまで来たとき、ED-Eが急に警告音を鳴らし始めた。辺りには人影も、動物の姿もない。ED-Eの故障か。
故障か否かを判断する前に、Kutoは本能的に伏せた。Kutoの耳に弾丸の発射音が遅れて響く。敵だ。だが何処から
ED-Eがレーザーガンを発射する。方向は下方だ。双眼鏡を取り出して、そちらを見る。NCRのRangerだ。300m以上の距離があり、ED-Eのレーザーガンはそこまで遠くの敵を狙えるほどの精度がないというのに、相手は正確に撃ち返してくる。恐ろしい精度だ。

そもそもどうして発見されたのか。これだけの距離があるというのに。Rangerというのは敵の気配がどれだけ離れていてもわかるのか。いや、それよりもKutoにとっては、自身がNCRの敵として認識されてしまったという事実のほうが重要だった。HELIOS ONEでNCRには多大な被害を作り出したが、それでもあちらから撃ってくるようなことはなかった。どうやらTopsでのあの牧師を襲撃したことが引き金になってしまったようだ。
NCRは西海岸での最大派閥だ。下手に敵に回すと、周りが敵だらけになる。Kutoは立ち回りを後悔した。

とにかく目的地まではあとわずかだ、Nelsonまで逃げなくては。
Kutoはそう判断し、危険を孕みつつも障害物の陰にできるだけ隠れるようにして、走り出す。

しかしKutoを出迎えたのは、NCRによって制圧されたNelsonだった。


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