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Trigger the Gala Event


ようやくカジノに電力を送るためのコントロールを行う塔の頂上に到達した。道中、長かった。まるでこの塔を守っているかの如く、Ghost PeopleたちはSiとKutoの行く手を阻んでいた。あるいは彼ら亡霊は、まさしくカジノが開かれるのを恐れているのかもしれない。あれらが開かれぬカジノの怨嗟が産んだかの如き亡霊ならば、カジノが開かれれば雲散霧消してしまうだろう。

そう、この塔から操作を行うことで、カジノの扉をようやく開くことができるのだ。正確にいえば、この操作盤で花火を打ち上げ、Siera Madreカジノのグランドオープンを演出することで。
まったく馬鹿げた話だが、と3人の協力者を集めたSiとKutoに、Elijha老人は説明してくれた。
『まったく馬鹿げた話だが、Siera Madreのオーナーは、Gala Eventをカジノを開ける鍵とした』
「Gala Event?」
花火だよ。どでかい花火を打ち上げさえすれば、カジノのドアは開かれる。が、打ち上げるためにはふたりの力だけでは不可能だろう』

まさしく馬鹿馬鹿しい話であるが、ふざけるな糞っ垂れ、花火遊びがしたいのならば河原にでも行けと言い捨てるわけにもいかない。何せSiとKutoの首には爆弾首輪がついており、Elijhaに命を握られているに等しい状態だ。こんなところでは死ぬに死ねない。何より、Siがここで死んだらこの赤い外気の中、Sumikaは生きてはいけないだろう。
改めて、ポケットの中のSumikaを取り出す。呼びかけると一応の返答はあるものの、あまりにも弱々しい。こんなときに、彼女の姿を見られないのが不安だ。
カジノの中なら、この赤い空気も侵入しては来ないはずだ。とりあえずは安全地帯に辿り着くという意味でも、カジノの中に入るというのは悪くない。ならば馬鹿げたことでもやってやる。 

Dog/God、Dean、ChristeanをそれぞれSiera Madreの各所に配置し、SiとKutoはGala Eventを実行するための操作盤へ向かった。迫り来るGhost Peopleの群れ、飛び交う槍やガスボンベ、トラバサミなどを潜り抜け、撃ち落し、そしてようやくこの操作盤のところまで来たのだった。
各地に散らばった3人の首輪つきと連絡を取る。特にDog/Godに関しては、変電所に取り残されることを嫌がったDogに対し、無理矢理Kutoが閉じ込めてしまったので心配はあったものの、全員準備は完了していた。あとはSiたちが操作を行えば、Gala Eventは開始される。

「えー、では、カウントダウンから始めましょうか。えっと、0からで良いですか?」
そうおどけるKutoは無視して、Siはスイッチを押した。ああ、とKutoは残念そうな顔をする。もっと楽しんでも良いじゃあありませんか、と。
「そんなことを言っている場合じゃない。それよりも……」

Siがそう言いかけたときに、Gala Eventは始まった。宙に打ち上げられる花火、赤い空を照らすスポットライト、華やかなファンファーレ。豪華絢爛な風景である。
しかしどれも偽物だ、とSiは冷めた気持ちでそちらを見やった。どうだ豪華だろうと、そんな風景を見せられても、所詮は戦前の遺物。捨てられ、見放され、あとは朽ち果てられるだけの物体だ。やってくるのは盗掘者くらいのものだろう。
SiとSumikaもあのカジノと同じように、塵芥に埋もれた亡霊になるわけにはいかない。この首輪を外し、ここを出なければ。

「どうするつもりだ」
改めて、Siは問うた。
そうですね、とKutoは顎に手をやる。「まずはカジノへ向かうのが手はずになっていますから、またGhost Peopleの群れを突っ切って行きましょう。牧師さま、お任せします!」
「そうじゃない。そうじゃなくて、だ。これからだ」Siは首輪に手をやり、腕のPip-Boyに視線を向ける。おそらくこちらの会話はElijhaに筒抜けだ。しかしこのタイミングならば、彼は200年の時を経て開かれたカジノへと突入している頃合だろうから、会話を聞かれる心配はない、とそう判断する。「あの男の言うことを素直に従っていても埒が明かん。おれには戻ってやるべきことがある。おまえも、そうだろう?」
「ないと言ったら、どうします?」
わたし、べつに、いつ死んでも良いんですよ。ええ、今、自殺しても良いくらい。べつに死んでも良いし、でも特に死にたいわけでもないから、ただ生きてるってだけです。ですからべつに、Mojave Wastelandに戻ろうが、戻れなかろうが、どっちだって良いんです。
Kutoはにっこり笑ってそう言った後、片目を瞑ってからこう言った。「冗談です」

わたしも同感ですよ、とKutoは肩を竦めて言葉を続けた。
「とはいえ、抜け出すのは簡単ではないでしょう。なにせ、この首輪です」と彼女は自身の首輪に手をやる。「Chrsiteanのいた病院を見る限り、この首輪は確かに爆発するのは間違いなさそうです」
彼女が言っていたのは、Christeanを探していたときに発見した物言わぬ死体の群れだった。すべての死体は、首が千切れていた。首輪の破片のようなものが辺りには散らばっており、首輪の爆破実験をしていたことは明らかだった。
「ただ、ひとつ勝機があるとするならば、この鎖の存在があるかと想います」
そう言って、Kutoは自身の首輪とSiの首輪とを繋ぐ銀の鎖を持ち上げた。
「どういう意味だ?」
「病院にあった死体で、鎖のついた首輪なんてものをつけているのはありませんでした。それにDeanさんやChristean、Dogにしても、みんな首輪は単独で完結しています。なのに、わたしたちだけが繋がれている」

確かにその通りだ。Siには思い当たらなかった。Kutoはわざわざそんなことを考えていたというのか。ぼけとした顔をしてはいるが、何も考えていないというわけではないらしい。
それで、それがどういう意味になるんだ、とSiは続きを促した。
「これは、枷なんだと思います」とKutoは断言した。
「枷?」
「あの人は言ってましたよね。あなたのこと、南部NCR最高のポイント・マンだって。おそらくは」とKutoはエメラルドのような瞳を翻して言う。あなたのことを恐れているんではないかと、と。「あの人の目的は明白です。カジノの中の宝が欲しい。でも自分の力だけでは得られないから、他人の力を借りようとする。無理矢理にでも、こんな首輪の力を借りて屈服させて。でも、ほんとに屈服させることができるのならば、こんな鎖なんて要りません。だって牧師さま、わたしがくっついていたら、邪魔でしょう? わたしがいないほうが、もっと効率良く行動できるはずだし、Elijhaさんにしても牧師さまに効率良く動いてもらったほうがありがたいはずです。なのにわたしを一緒に組み合わせて行動させるのは、いざというときの動きを絶つためでしょう。それがつまりは、あの人の弱点です。おそらくは首輪を任意のタイミングで爆発させられるというのは本当なのでしょうが、たとえばボタンを押してすぐに爆発する、みたいなものではないのでしょう。相手が反撃してきたら、すぐには爆発させられないような仕組みのはずです。だからわたしたちの前に、というより、牧師さまの前に姿を現すことを恐れているし、いざ姿を現すときにしても、わたしという枷をつけることで不用意に反撃されないようにしているのでしょう」
「この鎖は」Siは鎖をじゃりと握る。「切ると爆発するって言っていたな」
「ええ。ただ、それははったりだと思います。この鎖、中に何か入っているようには見えませんし、首輪と違って、ちょっとしたことで切れて爆発したら困りますから」とはいえ、とKutoは念を押した。「まだ切るべきではないと想います。切ったら、その時点で反撃の意思ありということになりますから。まずはElijhaさんと対峙できるタイミングを待つべきです」
なるほど、と頷いた。どうやら彼女はSiと比べて、余程現状を正しく理解しているようだ。

まずはカジノへ向かい、Elijhaに恭順の意を示すべきだ、ということでSiとKutoの意見は合致した。鎖で繋がれたまま、Ghost Peopleを退けて走る。
カジノの門は開いていた。本当に、あの馬鹿げたGala Eventがカジノの門を開く鍵だったらしい。

カジノの豪奢な扉を開いたSiが目にしたのは、Dog/God、Dean、Christeanら3人の首輪つきが暗闇の中、倒れ伏している光景だった。
程なくして、Siも意識を失った。


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