「ようこそ、外の世界からやって来た若者よ。あなたたちのような人間が来るのを、わたしたちはずっと待っていました」
「あんたは予言者かなんかか?」
 手を広げてSiを出迎える、Vault Suitを改造したような服を着た老婆に、Siは怪訝な表情でそう言った。



 背後には未だ、Siをここに連れてきたPower Armorを着たBoomersが立っている。こちらに向けてこそいないが、武器は携えており、Sumikaは毎度ながらのSiの軽口にはらはらした。
 Sumikaの心配は杞憂だったようで、他のBoomersにPearlと呼ばれている、どうやらBoomersの長らしい老婆は、Siの口の利き方を咎める様子はなく、むしろ笑みを浮かべてきた。
「わたしたちは、単に待っていただけです。あなたたちのような、野蛮な……、失礼、砲撃をも物怖じせずにやって来るだけの度胸と力とを持った、外の人間を。時代が移り変わろうとしている。わたしたちも、その時代に対応しなければならないのです」

 今ひとつ、具体的に何を意味しているのかよく解からないPearlの話し方に苛立ったのか、Siは彼女の言葉が終わるか終わらないかのうちに口を開いた。
「単刀直入に言おう。おれは南部NCRからNCRに派遣されてきたRangerだ。NCRは知ってるな?」
「勿論」とPearlは鷹揚に頷く。「ただ、南部NCRというのは聞かないですね」
「テキサス周辺の自治組織だ。いちおう、NCRの傘下に入ってる。内部構造は少し違うがな。おれはそこから来た」
「なぜ?」
「それは………」

 Caesar's Legionに復讐するためだ。
 少なくとも、そのはずだった。そのはずだったが、だがSiはそれを口に出して述べようとはしなかった。Legionとの恩讐を断ち切ろうとしているからだ。Sumikaはそのことをとても嬉しく感じ、また一方でほんの少しだけ悲しく思う。

おれのことはどうだって良いんだ」とSiは問いをはぐらかした。「おれの任務は、来るべきCaesar's LegionやMr. Houseとの戦いに際して、あんたがたにNCRに協力してもらうことだ。あんたたちは、LegionにもMr. Houseにも組していないな?」
「今のところは」とPearlがもう一度頷く。
「そうか。で、返事はどうだ。NCRに協力してくれるか? もし同盟を組むというのなら、相応の見返りは約束できると思う。もっともそれを決めるのはおれじゃあない。上の人間だが………」
 と言葉を紡いでいたSiを、初めてPearlが遮った。まぁ、待ちなさい、と。
「それを決めるためには、誠意を見せてもらわないとね」

 PearlがSiに要請したのは、Nelis空軍基地のBoomersの手伝いだった。
「とりあえず、Raquelに話を聞いてみるのが良いでしょう。彼女は、虫のことで問題を抱えているから。あとは医学に関して知識が有るのならArgyll先生を。機械や工作が得意だったら、LoyalJackを手伝ってくれても良いでしょう。歴史館のPeteも暇を持て余しているから、耳を傾けてあげても良いんじゃないかしら」
 彼女が言ったのは、つまりは、助けて欲しいなら、まずはそちらから奉仕をしてみせろ、とそういうことだ。
「とりあえず、仲間を呼ばせてくれ。大人数じゃない。一人と一匹だ」
 とsiは頼んだ。良いでしょう、とPearlは頷く。「一人では大変だものね」

 BooneとRexがやって来るまでの間に、SiとSumikaはPearlの住む小屋から出て、Boomersの本拠、Nelis空軍基地を歩いた。
「軍の駐屯地みたいだな」
 とsiが呟いたが、Sumikaもほとんど同じ感想を持った。戦前の飛翔体が丸ごと入りそうな大きな建物といい、コンクリートに包まれた大地といい、NCRの駐屯地そっくりだ。戦前は兵器庫だった場所だというから、当然かもしれない。
 違いといえば、NCRの駐屯地には普通、子どもが居ないが、ここには平気で子どもがうろついているということくらいだ。むしろ南部NCRの駐屯地に近い。
 Nelis空軍基地からやって来たSiを物珍しそうに見つめる子ども、怯えて遠巻きに見つめる子ども、「ディノサウルスだぞー」と子どもがSiの足元にぶつかってきた子どもさえ居た。Siはそれらを全て無視した。



「少しくらい、遊んであげれば良いのに」
 とsumikaが言うと、「それどころじゃないだろ」という返答が返って来た。しかし足向きは急ぐふうではないので、その言葉はむしろ照れ隠しだろう。これでも昔は、孤児院でよく小さな子と遊んでやっていたものだが、長らく子どもとの付き合いが無いと、照れ臭いのかもしれない。

「遊んであげれば良いのに」
 とSumikaが言ったのとほとんど同じ言葉が投げられてきたのは、中央の大きな倉庫のような建物から少し離れた処を歩いていたときだった。声がしたコンテナが積み上げられた場所へと視線を動かしてみると、積み上げられたコンテナの上にある椅子に座る、髪を後ろで束ねた女性の姿があった。



「Pearlが、あなたに対しては砲撃しないようにって皆に通達してた。あなた、とりあえずはPearlに信頼されたみたいだね。信頼を裏切らないように」
「あんたは………」
「あんたじゃない。Raquel」
 とsiと言葉を交わすこの女性は、Nelis空軍基地で既に出会っていた。見張りのRocket Launcherを持ったBoomersと、金網越しに一触即発の状況であったSiを助けてくれたのが、彼女だ。彼女のおかげで、Pearlに面会が叶ったのだ。

「ああ、あんたがRaquelか。ちょうど良かった」
 とsiが言うのは、Raquelという名がPearlとの会話で出てきたからだった。確か、虫の問題で困っていると言っていたか。
 Siがそう尋ねると、ああ、あの糞っ垂れどもについてね、とRaquelは頷いた。話せば長くなるんだけど……、手短に言うよ。数日前から発電所がおかしくなって、原因が発電室にGiant Antが入り込んで巣を作ったことだって解ったの。で、排除するために何人かで向かったんだけど……、上手く行かなくて、2人殺されて、3人が行方不明。酷いものだよ」



 会話の間に、Siはコンテナの上まで昇ってRaquelと目線を合わせた。どうやらここは見張り台のような場所らしい。
「おれに頼みたいというのは、生存者の救助か」
もし生きていれば、ね」とRaquelは肩を竦めた。「あとはGiant Antの排除と電源の復旧をお願い」
「あんたらは色々と武器を持ってるみたいだが、Giant Antくらい自分たちでどうにかできないのか?」
「そりゃ、1匹や2匹だったら、誰だって簡単だよ。でもあそこのGiant Antは、物凄い数が居るの。それに、わたしたちの武器だと、都合が悪いんだ」とRaquelは言う。「発電所は弾薬庫にもなってるの。Giant Antは弾薬も食い散らかすから……、ミサイルなんか撃ったら爆発しちゃう。レーザー兵器も駄目ね。拳銃とかなら、そこらへんに落ちてる弾頭に直接当てなければ大丈夫だと思うけど」
「だったら問題無い
 とSiはホルスターの拳銃を指で叩く。貫通力の低い弾丸を使えば、Siの腕前を持ってすれば問題無さそうだ。


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