BOSに戻ったKutoに渡されたのは、「ご苦労だった」の言葉一つの鍵である。
 この鍵がKutoの目的の扉を開くものになるかと思ったら、なんのことはない、別の場所にあるBOSの秘密基地のひとつの鍵で、便利そうではあるものの、いまのKutoの目的には関係がないものだった。

(どうもこのまま行っても駄目そうだな………)
 Veronicaの言うとおり、確かにBOSの人間は他人を使おうとするところはあるものの、閉鎖的な集団である。Kutoとしては、BOSのバンカーの中に部屋でも貰えればと思うのだが、それは簡単にはいかなそうだ。

「とりあえず、いまのBOSが糞っ垂れなのは伝わった?」
 とElderの部屋を出た廊下で、Veronicaが話しかけてくる。Elderや彼の護衛が聞いているかもしれないのに、まったく堂々としたものである。
「マシだった時代はあるの?」
「前のElderのときかな」ふぅと息を吐き、Veronicaは言う。「兎に角ね、いまのままじゃあ駄目なの。BOSは、組織として生き残るためのものがない。組織が生き残るために必要なもの、わかる?」
「お金?」
「うん、あなたの価値観は非常に解り易いね」と、もう一度Veronicaは息を吐く。「答えは人と役割。新しく人が入ってこなければその組織は終わっちゃうし、役目がなければ組織として生きてはいけない。BOSにはどっちもない。見習うべきは、Followers of the Apocalypseだね。技術を使って人助けをしてるから、人に好かれるし、尊敬もされる。BOSと違って敵じゃなくて、友だちがいっぱいいる。だから、ああいうふうになりたい。ああいうふうにしたい」



 そのために、VeronicaはKutoをBOSのバンカーに連れてきた、と、こういうわけらしい。
「Veronicaって、意外と真面目なんだね」
「あなたよりはね」
「で、どういうアイディアがあるの?」
「とにかくElder McNamaraに、いまのままじゃ駄目、っていう証拠を突きつけてやれば良いんだけど……」
「たとえば?」
「McNamaraは戦前の遺産じゃないと目を留めないから、それ系」
「で、それ系は何処にあるの?」
「それが解らないから困ってるの」と言ってVeronicaは唸る。「Elijahだったら良いアイディアがあるんだろうけど」
「Elijah?」
 何所かで聞いた名前だな、と思ったKutoは尋ねた。
McNamaraの前のElderだよ。戦前の遺産を直すのが得意でね、あんまり人のこと信用しないタイプだったから失脚して失踪しちゃったんだけど……」
 自分の知っている人間とは別人だろうか。同一人物にしろ、Kutoが間接的に殺したようなものだから、言わないほうが良いような気もする。
「そのElijahさんの残していった情報は何かないの?」
Elijahの隠れ家みたいなところだったら外にあるけど………、何かあるかなぁ」
「まぁ、とりあえずそこに行ってみようよ」

 とりあえず目的地が決まったところで、扉のところにPower Armorを着込んだBOSの人間たちが立っているのが見えた。まるで扉を塞いでいるようだ。


「Veronica」と彼らのうちのひとりが声をかけてきた。「その女が、おまえが連れてきた人間か」
「そうだけど、何か用?」
「おまえは単独行動が多すぎる」
「なんか問題ある?」
「おまえはBOSの原理を忘れている。わざと曲解しているのかもしれないが」
「あんたたちの古臭い原理なんか……、Kuto、わたしのこと盾にするの止めてくれる?」
 とVeronicaが振り返って言う。
「だって、なんか危なそうだし……、Veronicaならどうにかしてくれるじゃない」とKutoは隠れたままで言った。
「おまえが連れてきた女は役に立たなさそうだな」とPower ArmorのBOSが言う。「まぁ、良い。Veronica、あまり勝手なことはしてくれるなよ」
 言いたいだけ言うと、Power Armorを着込んだ集団はさっさと行ってしまった。
「ばーか」
 とVeronicaが彼らの背に向けて舌を出す。どうやらVeronicaは、BOSの中では異端の存在らしい。
(まぁ、そのほうが個人的には都合が良いけどね)
 とKutoは心の中で思った。

 Elijahの隠れ家というのは、Novacから僅かに北西に行ったところにある、小さな小屋だった。


「あー、あったあった」
 と小屋の中で唯一稼動していたコンピュータの鍵盤を叩いてVeronicaが指を弾いた。
「なんか良い情報?」
「うん、えっと、みっつあるね。どれにしようかなー。パルスガンと、距離計と、あと農作技術」
「距離計にしよう」とKutoは即答する。
「え? なんで?」
「危なくなさそうだから」
「そうでもないと思うけどなぁ………。まぁ、良いか」と言いながらVeronicaはコンピュータを操作する。「えっと、ScavengerがStripの土産屋に売った可能性有り、だって。店、知ってる?」


「あー、あそこかぁ………」
 Stripはカジノは多いが、店は少ない。その中で戦前の物品を扱う可能性がある場所となれば、すぐに検討が付く。主人がVault好きで、趣味が高じてVaultをそのままホテルにしたというあの店だろう。
「あそこ、NCR大使館の向かいの通りだよ」
 以前にあの近くをうろついていたときにNCRに捕まりそうになり、戦闘になったことがある。Veronicaがついていれば大丈夫だとは思うが、それでもあまり近づきたい場所ではない。
「まぁ、変装して行けば大丈夫でしょ」
 とVeronicaは気軽に言う。


 仕方なく、KutoはNCRの変装をして、Stripの店へと向かった。
 しかし女店主に尋ねてみた結果は、「あれなら売ったよ」という返事が返ってきたのみだった。


「誰にですか?」
変な襟の男の人」
「変な襟って?」
「えっと……、なんか金属みたいな。Freesideに向かったみたいだったから、探して交渉してみれば?」

 言われた通りに探してみると、Freesideの壊れたビルの中でその人物はすぐに見付かった。既に事切れていたが。


「あー、やっぱりなぁ……」と死体を検分してVeronicaが言う。「金属みたいな襟って言ってたから、厭な予感がしたんだ」
 Kutoもほとんど同じ感想である。死体の首についていたのは、Sierra Madreカジノで見た爆弾首輪であった。
「これさ、Elijahが持ってた爆弾首輪なんだわ」とVeronicaが親切にも解説してくれる。「Elijahが買いに行かせたのかな。あの人、外出歩くの嫌いだから」
「爆発してないみたいだけど」
 とKutoは言ってみた。男の首はきちんとついている。
「爆破するタイプじゃないのかな。毒が出てくるとか……、でなきゃ自然死? ま、良いや。問題は」とVeronicaは死体を放り出して言う。「距離計、持ってないね。誰かに盗られたかな。聞き込みでもしてみようか」

 Veronicaはビルの近くにいた浮浪者のひとりに声をかけ、射線計を見なかったか、と問いかける。が、浮浪者はにたにたと笑うだけだ。


「駄目だよ、Veronica」とKutoは彼女を押し退けて浮浪者に10 Caps握らせた。「この辺で古い銃のようなものを見ませんでしたか?」
 浮浪者は手の中の金を確認し、歯のない口でにやりと笑ったのち、「子ども」と答えた。
「子どもって………」Veronicaが背後を見やる。危険なStripの通りとはいえ、子どもはほかに遊ぶ場所もなく、走り回っている。そのうちのひとりが、銀色の玩具の銃のようなものを振り回しているのが見えた。「あれか。おっさん、ありがと」


 Veronicaは礼を言うなり、子どもたちに向けた走り出す。Power Armorを着たフードの女という、奇怪ながら興味惹かれる人物に、子どもたちはいったん逃げかけたが、Veronicaの呼びかけに応じて立ち止まり、会話を始めた。どうやらVeronicaは平和的にも、少年から銃を買い取ろうとしているらしい。

「これは宇宙一凄い銃だぜ。100万Capsもしたんだぜ」
 などとのたまう少年に対して、Veronicaは財布を取り出し、「えっと、1000Capsくらいなら払えるけど………」などと言ってる。
「1000Caps?」と少年の眉根が曇る。「冗談だろ?」
「冗談に決まってんでしょ」とKutoは口を挟む。「そんなぼろっちいの、いいとこ20Capsってとこだよ」

Challenge: Bater≧45→SUCCEEDED

 Veronicaは批難の視線を向けてきたが、Kutoは気にしなかった。 
「20Capsもくれんの?」
 と予想通り少年は明るい表情になり、銃、というか距離計を売ってくれた。


「Kuto、あんた、お金にがめついってのは知ってたけど、子ども相手に値切るって………」と少年たちが去ってから、Veronicaが呆れたような口調で言った。「あれは相当に価値のあるものなんだし、お金なんていっぱいあるんだから、20Capsなんて端金言わないで、1000Capsくらいあげれば良かったのに」
「その端金であの子は喜んでたんだけどね……。さっきのおじさんに渡したお金を見て解るとおり、ここらじゃああのくらいの金額が大金なんだよ。なのに、その50倍のお金なんて渡されたらどうなると思う?」Kutoは手の中で距離計を弄びながら言う。「あとこれ、どうやって使うの?」
 Veronicaは難しい顔になって距離計を受け取ると、横についていた緑色のカートリッジを弾装に篭めてKutoに返した。「お金の価値が解らなくて、一日で使っちゃう?
「はずれ。強盗に殺されて奪われる。終わり」
「だから1000Capsなんてあげちゃ駄目だったってこと?」
「まぁ、そういうこと。ちなみにこれ、どういうものなの? ただの距離を測る道具じゃないみたいだけど」
狙い定めて引き金を引くと、目標地点の座標をArchimedesⅡっていう衛星兵器に送って、その場所にレーザーが射出する兵器。一日一回しか使えないらしいけど………」
「へぇ………」


 Kutoが何気なく引き金を引くと、空から光が集まり始めた。何処かで見た覚えのある光だ。
 そう、まるでHELIOS ONEでNCR兵を焼き尽くしたような………。

「馬鹿っ!」
 気が付けば、地面に倒されていた。ほとんどVeronicaに押し倒される格好である。


 遅れて、爆発が起きた。衛星兵器から射出されたレーザーが、Freesideの一角を焼き尽くしたのだ。VeronicaのPower Armorが盾になったおかげで、ほとんど被害はなかった。
 Veronicaも怪我はなかったようで、ゆっくりと起き上がる。
「衛星兵器だって言ったのに……、なんで簡単に引き金引いちゃうわけ?」とVeronicaが大きく溜め息を吐く。
「まぁまぁ」とKutoは言ってやった。「Elderの良い説得材料になりそうだって証明されたじゃない?」


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