展覧会/少女政府 ベルガモット・ドミニオンズ 

6月 22, 2013
 高校時代の社会は地理だった。

少女政府 ベルガモット・ドミニオンズ
高田慎一郎/ほるぷ出版
→コミックメテオ 少女政府 ベルガモット・ドミニオンズ
→休日のベイルアウト(作者のブログ)

 HXLの中だといちばんアルクベインが好きで、などと書き出してみると、たぶん反応できる人があまりいないので、上のような書き出しになった。小説でも漫画でも作家買いなので、この作家の作品に出会った経緯でも書こうと思ったが、面倒なので止めておくことにする。

 で、この作品だが、作者ブログによると、

さて。
怒られる前に先んじて。
「ス○パンのパクリじゃないか!」
と仰るかもしれない諸兄々へ。
それは違います。
丸パクリです 
ス○パンは勿論のこと、
コンセプトとして影響を受けたのはTROPICOというゲームだったりです。
これもご存じの方はお分かりですね、「プレジデンテ!」という響きで。
プレゼン時、分かり難いと思ったので
「大勢の女の子でやるシムシティですよ」
と、何ともアレな例え話をしてしまいました。
もうなんか色々スミマセン…_| ̄|○<お金が出来たら4買います
(ともに公式ブログ『休日のベイルアウト』 2012年11月28日より)

 とある。「ス○パン」というのは、アニメを基本的に見ないわたしでもいちおうなんとなくは解釈できている『ストライクウィッチーズ』のことだろう。『TROPICO』は南国っぽいシムシティみたいなやつだ、くらいのいいかげんな解釈だ。
 とりあえず上の2作品を知っていれば、たぶんすんなりと理解できるのではないかと思う。知らない人は、女の子が11人で妖精の国の政治をやっていくお話だと考えれば解り易い、というかまんまじゃないか



 個人的にこういう女の子だけの話が好きではない。というのも、こうした作品において女の子というのが非常に神聖かつ純粋無垢な存在として崇め奉られており、べつの物理法則と法規制の上で動いているのではないかと思われるためである。そんな女はいねぇ

 『少女政府 ベルガモット・ドミニオンズ』(以下、『少女政府)ではどうなのかというと、まぁ基本的に少女しかいないので特別視されているのだが、まぁ妖精の国だし良いか、という気がする。
  基本的にそこまで仲が良いわけではないというか、ありがちな少女同士の協調や友情よりも、議論をして国を良くしていこうということがメインなのが気に入ったのかもしれない。


 11人の少女たちは世界各国から集められている。アメリカ人やドイツ人は、日本人が想像する典型的なアメリカ人やドイツ人のテンプレートみたいな具合で、これは珍しくない設定だと思う。少女政府ではさらにそれに役職を上乗せしていて、政府を形作る主要な閣僚をそれぞれの特色に応じて割り振っている
 たとえばそれは、「チェコの人って経済強そうなので」という理由でチェコ出身のターニャが経済産行大臣、文部科学大臣は「たしか教育先進国だっけ?」のフランス出身のアレットがそれぞれ役職に就いている。
 もっとも、「台湾料理おいしいので」で台湾出身の台鈴が農林水産大臣で、「地元ロシアが国土広いので」という理由でロシア出身のマリアが国土交通大臣に割り当てられたりしている。 イタリア出身のジーナが警察庁長官に割り振られた理由にいたっては説明がなくて、たぶんマフィアから来てるんだと思うが、まぁそんな感じでいいかげんだ。
 とはいえ、いいかげんはいいかげんなりに、良いキャラ付けになっている。

 『少女政府』における政府というのは、機関としての政府というよりは、国そのものといった感じで、妖精王の統べるアヴァロンから送られる巨像と戦いながら独立を保ち、経済を発展させていくという流れになっている。
 作者はこれまで、スペインのアステカ侵攻について扱った『ACLLA 太陽の巫女と空の神兵』近世の大戦付近の技術構造を下書きに書かれた『ククルカン 史上最大の作戦』などを書いてきたので、趣味か仕事かは知らないが、もともとこうした歴史や経済の話には詳しいのだろう。




 個人的にいちばん気に入っているのはフランスのアレット・デュマで、名前は間違いなく軍人から偉大なる作家を産み出したアレクサンドル・デュマの血脈から来ているのだと思われる。
 これがいちいち(といっても、1巻時点だと2回だけだけど)偉人の言葉を引用するのだ。


「私じゃダメなのかな…」「今までが順調すぎたんだ 気にすることはない」「ていうか なんで私だったんだろ… たった3日早く着いたってだけで」「『物事を決める前に完全な明確さを求める人はけっして決定できない』」「?」「アンリ・フレデリック・アミエルよ ななこさんの長所は失敗を恐れず決断が早いことよ メルもそれは認めてるはず」
(『少女政府』第1巻より)




「『山から遠ざかればますますその本当の姿が見ることができる』 『友人にしてもこれは同じである』」「それは誰の?」「アンデルセンよ」
(『少女政府』第1巻より)

 こういうキャラは素敵だ。

 余談だが、11人の少女たちが政府を作るというコンセプトを見て、第1話で2人しか少女がいなかったとき、「あー、成る程、きっと1話ごとにひとりずつ仲間が増えていくんだろうな」と思ったわたしが甘かった2話終了時に9人やってきて11人揃ってしまった。展開早ぇ。

(画像は、『少女政府 ベルガモット・ドミニオンズ』第1巻より)

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